side梓澤梓
あの後、有害物質が出ないよう気をつけて参考書を燃やした。
灰は肥料に 心は花に
かつて耳にした似非短歌に従って一週間。私は今朝ポストに入っていた雄英高校からの封筒を開けた。
「これは…?」
中に入っていたのは、通知書ではなく、機械。
困惑していると、ヴォン、という効果音と共に映像が投影された。
私が投影された!
「…ッ!オールマイト…!」
アメリカンな画風で目を引くこの男性はこの国のヒーロー、その頂点に立つ者。今日においで平和の象徴とまで謳われる存在。
しかし何故雄英からの合否発表に…
「はじめまして、梓沢少女。何故私が投影されたのか、それは!この春から雄英に勤めることになったからさ!」
なるほど、であれば筋も通る…
「なんだい?巻きで?後がつかえてる?あーあー、オーケー…」
しかし、オールマイトが後進の育成に入ったか…
平和の象徴という偶像はもうあまり保たないのかもしれない。
トップヒーローを研究した時気づいたが、オールマイトは年々活動時間が減っている。
動きも少しは衰えた筈。
人は、時間には抗えない。
しかし、だとしても今は試験の結果を聞くべきだろう。
今は、まだ学生なのだから。
「筆記は殆ど満点!凄いな!実技もヴィランポイント51!十分に合格圏だ。だがしかし、私もエンターテイナー!これだけでは終わらない!」
この言い方は…!
「先の入試、見ていたのはヴィランポイントだけにあらず!」
「
「きれい事?上等さ!命を賭してきれい事実践するお仕事だ!」
私は続く、決定的な言葉を待った。
「
「梓澤梓。50ポイント!」
「首席合格だってさ…!」
「来いよ!梓澤少女!ここが君のヒーローアカデミアだ!」
思わず涙が零れる。
倍率300倍を、突破した!しかも、首席で…!
合格の自信はあった。でもそれは確信じゃない。
首席なんて想定外。
でも、人生は想定外の連続、へこたれていられない。
だから…
「はいッ!」
決意を込めて大声で返事をしてしまった私は、そんなに悪くないと思う。
sideout…
「実技総合成績出ました。」
少なくない人数が見つめるモニターには今年度の実技試験の映像が映っている。
「今年度の注目は3人ですね…」
「雄英高校創立以来2人目、オールマイト以来の実技総合100点越え…彼女、“現象演算”という個性で窒素を操って戦っていた。どんな場所でも基本的に戦えるという点も素晴らしい。」
「習熟度的に今は窒素だけかもしれんが…これでまだまだ手札が増えるのか…!」
「そして次席の彼!レスキューポイント0で2位とはなあ!」
「下位ポイントの仮想敵は標的を捕捉し近寄って来る。後半他が鈍る中、派手な個性で迎撃し続けた…タフネスの賜物だ。」
「対照的に7位の彼、ヴィランポイントが0、しかしレスキューポイント60で合格…」
「アレに立ち向かった生徒は過去にもいたけど、ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね。」
「思わずYEARって言っちまったからなー」
「しかし自身の衝撃で甚大な負傷…まるで個性が発現したての幼児だ。」
「妙なやつだよ…あそこ以外は典型的な不合格者だった。」
ったく…ワイワイと…
一人の男の呟きは、虚空に消えた。
sideout…
「お父さん。お母さん。お兄ちゃん。帰ってきたよ。」
三月末。私は、家族の墓に手を合わせていた。
両親の資産を殆ど毟り取られ、残ったお金も使い果たした私が今生活できているのは、私の将来性を見込んだ(と言っていた)“パトロン”の助力があってこそだ。
別に、ヒーローになるのは、金のためでも、名誉のためでもない。ましてや、家族を奪った
“誰かを守りたい”
一人生き延びたが故の悔恨と言えば聞こえはいいが、要は代償行為だ。
虚しいと、ヒーローに相応しくないと、わかっている。
しかし、その程度の感情で追い求めるのを止めるつもりはない。
これが私の存在意義だからだ。
生きる理由だからだ。
そうであれと、そうでなければとこの身を鍛えてきた。
どうやら雄英高校は私がヒーローに相応しいと言っている。
ならその甘言に乗って、やれる所までやろう。行ける所まで行こう。
己の器に抱え切れる限りを助けよう。
私は、その器を広げるために雄英に行くのだ。
「行ってきます。」
私は墓石に一礼をして、墓地から出た。
雄英高校ヒーロー科。
今から、少し楽しみだ。
最初の似非短歌は私がかつて塾で講師に合格祝いに渡されたカードに書かれていた短歌の改造版です。
(本家はもっと物騒でした。)
第二話、どうだったでしょうか?
次回は個性把握テストの終わりと放課後まで書けたらいいな、と思っています。
投稿頻度は明後日からガクッと落ちますのでご了承ください。