side梓澤梓
春…出会いと別れの季節。
卒業式、誰からも声をかけられずに終わった私は春休みに準備を整え、今日。雄英の校舎を見上げている。
雄英高校ヒーロー科。その驚異の倍率300倍には実はタネがある。該当クラスA組B組合わせて36名。
通常の学校の一クラス分もない。
そこに全国からトップヒーローになりたいと望む若き芽が集まる。多くのプロヒーロー、その中でもトップヒーローを排出してきた実績からの信頼だ。
故にこそ、首席という重圧は重いものであって…
「ね、眠い…」
校舎に入った私は瞼を擦っていた。
理由?遠足前の小学生の心理と言えば察して頂けるだろう。
“1-A”と書かれた教室の前に着いた私は、バリアフリー対応なのかとても大きい扉を開けた。
席は…廊下側一列目前から4番目か。
窓際が良かったが、これが“あ行”の宿命だ。しょうがないだろう。
高校によっては窓際に配置されたかもしれないが、はっきり言って些事だ。
なんてことを思っていると、見知った顔を見つけた。
「切島君。受かっていたんだね。まぁ、あの実技成績なら当然か。」
筆記を考慮しないのは、彼なら当然のように乗り越えて来ると思ったからだ。
「俺も梓澤の合格は間違いないねぇって思ってた!芦戸!」
切島が一人の女子に声をかけていた。
席の位置関係で言うと、私の2つ前。
「なになに?」
「こいつが入試で0ポイント敵をぶっ倒したって俺が言ってたやつだ!」
「切島がめっちゃ凄いって言ってた人!?はじめまして!芦戸三奈です!」
「こちらこそはじめまして。梓澤梓です。」
私としては無難に返したつもりだったのだが…
「えぇー!カッチコチだよ!もっとフランクに行こうよ!」
と押され気味に返されたので…
「わ、わかった…梓澤梓だ。よろしく頼む。」
「よろしくねー!」
コレが…陽の者か…
などと考えていると、少しづつ人が集まってくる。
中には試験説明中に質問をしていた眼鏡の男子もいた。
実力は確かだったらしい。
すると、ボンバーヘッドの男子が入ってきて、椅子に座り、机に足を掛けた瞬間、私はゴングが鳴る幻聴を聞いた。
「君!机に足を掛けるな!雄英の先輩方や机の製作者の方に失礼だとは思わないか!?」
「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」
ストッパーが欲しい所だが…
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。」
「聡明ィ〜〜?くそエリートじゃねぇか、ぶっ殺し甲斐がありそだな。」
「君酷いな!本当にヒーロー志望か!?」
無理だな、これは。皆身を引いている。
関わりたくないのだろう。
確かに、これはひどい。
すると、眼鏡の生徒…飯田はドアの場所に立っている男子生徒に向けて歩いていた。
話を聞く限り、“試験の構造” “気づいて”などの単語が聞こえる。
大方、入試のレスキューポイントの話だろう。
なるほど、あの緑毛もじゃもじゃの彼も気づいて…いや、アレはたまたまだな。
謙遜というか、慌てている印象を受ける。
恐らく最後の生徒が入ってきた所で、声が聞こえた。
「お友達ごっこしたいなら
成人男性の声…教師か?
「ここは、ヒーロー科だぞ。」
現れたのは寝袋から身を出した無精髭の男性…
というか、なんだ?ゼリー飲料?
まさか…全食ゼリー飲料とか…ない、ないな、一時期の私みたいな奴が他にいてたまるか。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠くね。」
合理性の結果その格好ですか…え?不審者?
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
あぁ…担任………色々とぶっ飛んでるな…
「早速だが
え?その寝袋…某ネコ型ロボットのポケットかなんかですか?
女三人よれば姦しいと言う。
私達(一人)はその秘密を探るべく
…などと言いつつ、私は速攻で着替えて更衣室を出た。
雰囲気に耐えられなかったのだ。
「やはり私は陰の者…」
グラウンドに着いたのは私が一番早かった。
皆がグラウンドに揃うと、相澤先生がやると言ったのは…
「「「個性把握…テストォ!?」」」
皆の驚きが纏めて言葉になっている。
「入学式は?ガイダンスは?」
先程最後に入ってきた女子生徒…麗日さんが私の疑問を代弁してくれていた。
私は一応入試首席。新入生代表挨拶をさせられると思って原稿まで書いてきたのだが…
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出ている暇ないよ。」
だそうだ。…マジか…
「雄英は“自由”な校風が売り文句…だがそれは教師側も然り。」
「“ソフトボール投げ” “立ち幅跳び” “50m走” “持久走” “握力” “反復横跳び” “上体起こし” “長座体前屈”…」
「中学の頃からやってるだろ?“個性”禁止の体力テスト。」
「国は未だに画一的な記録を作って平均を作り続けてる…合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ。」
公務員資格二つ持ってるだろうにお上の批判をするとは…凄い胆力だな…そもそも気にしていないのか。
「入試一位は梓澤だったな。中学の頃のソフトボール投げの記録は?」
突如凄まじい怒気が斜め後ろから放たれたが無視を決め込む。
「59mです。」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円を出なきゃ何してもいい。
「はい。」
頭が冷えていく。思考は加速する。
頭の中で“式”が組み立てられていく。
よし。
「これで行こう。」
骨子は固めた。後は…
「えぇっ!なんだこりゃ! 」
「うわぁぁ!凄い“風”!」
投げるだけ。
全力投球で投げた球は、窒素の爆風で天高く飛んでいく。
結果は…
1036.2m。
1kmと少し…処理落ちしないよう出力を下げたけど、いい感じではなかろうか。
「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」
「すっげぇぇぇ!1km越え!?」
「なんだこれすっげー
「“個性”思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」
ふと相澤先生の表情を見て、地雷が作動したのを感じた。
先程の誰か…或いは全員が踏み抜いたのだろう。
「ヒーローになるための三年間、ずっとそんな腹積もりで過ごす気なのかい?」
よし、先生はそう一呼吸置いた。
「トータル成績最下位の者は見込みなしとし除籍処分としよう。」
一秒遅れ、皆が意味に気づき絶叫する。
「生徒の如何は俺達の“自由”。ようこそこれが…」
雄英高校ヒーロー科だ
陽キャ共の中にただ一人の陰キャ…
(緑谷はオタクだが、女子耐性のないただの陽キャであるものとする。)
第3話、どうだったでしょうか?
キリが良かったので相澤先生の台詞で締めてしまいました。次話大丈夫かな…
あと、後の展開を大幅に変更したので微チートがチートになってます。
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