本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン4   作:JUBIA

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沈黙、公然、傭兵達の調べ~儚き想いを纏う竜

【沈黙、公然、傭兵達の調べ】

 

 ハンター達がモンスターを狩ることで、残されたモンスターの子供達は皆、孤児となってしまう。

 親を失ったモンスターの子供達は、捕食者の餌食になるか、衰弱していくかのどちらかであった。

 

 この現状を(なげ)いた一頭の心優しいモンスターが、そういった孤児達を集めて世話をし、強く、(たくま)しく生きていく術を教えるため、モンハピ孤児院を設立した。

 

 孤児院で育ったモンスターの子供達は、通常、親離れの時期を迎えると、皆、孤児院を卒業していくか、または、そこに留まって新しく迎える子供達の世話を手伝ったりしていた。

 

 今日は、ゴア・マガラがモンハピ孤児院を卒業し、旅立っていった。

 

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 俺は、卒業したあと、旅立つのを選択した。

 この世界のどこかに、いるべき場所を求めて……。

 そんな俺が最初に見付けたのは、様々なモンスターが集い、チームを組んで、依頼をこなす傭兵集団のような場所だった。

 

 そこにいる連中は、ごろつきやら、腹にイチモツを抱える(やから)がほとんどだ。

 ここでは誰しもが他者に対して余計な詮索もせず、淡々と依頼をこなしている。

 殺伐としたこの雰囲気が、今の俺には心地よかった。

 

 ある日、新しい依頼をこなすため、俺はチームを探すことにした。

 この危険な依頼には、俺の作戦だと4頭は必要だ。

 俺は、残り3頭をどうにか集めた。

 

 空中からの偵察に()けているアルセルタス。

 地中からの奇襲が得意なガララアジャラ。

 そして、肉弾戦に強いテツカブラ。

 

 皆、この道が長いベテラン勢だ。

 この中で俺は一番若く、依頼にもまだ慣れていない新モンだった。

 今回の依頼にある目的の場所までは、少し遠い。

 俺達は、無言で目的地に向かった。

 

 その沈黙を破ったのは、最年長で一番この仕事を長くやっている、通称「隊長」と呼ばれているテツカブラだった。

 

「おまえ、まだ新モンだろ、どこ出身だ?」

 

 ……え?

 互いに詮索するのは、ここではタブーだったんじゃ!?

 

「モンハピ孤児院……だ」

 

 俺が答えると、少しの沈黙が流れた。

 今までもそうだった。

 俺の出身を聞いた奴らは、決まって憐みか蔑むような眼つきで俺を見る。

 きっと、こいつらもそうだろう。

 

「……ぶ……ぶっ、ぶわっはっはっはーーーーっ!」

「くすくすくす」

「くっくっくっ」

 

 ふっ、笑い者にされるのも慣れている。

 別に、どうってことはない。

 

「誰もそこまで聞いてねーよ、ぶはははっ」

「どこの地方から来たか、って聞いてたんだよ。ぶぁーかっ」

「無粋な奴だな、ったく。くっくっくっ」

 

 ……っ?

 そ、そうだったのか。

 

「い、遺跡平原からだ」

「へー、そうか」

「俺は、地底洞窟出身さ」

「俺は原生林だ、よろしく!」

 

 なんだか、調子が狂う。

 

「ところでおまえ、孤児院出身で俺達が同情したり、蔑んだりするとでも思ったか? そんなことしねーよ。ここの皆はな、おまえなんかよりハードな人生を過ごしてきた輩ばっかなんだよ。だから誰も余計な詮索なんてしねーのさ」

「何もおまえだけが特別ってワケじゃないんだ」

「そう、そう。飯が出るだけ、おまえなんてまだいいほうだぞ?」

 

 きっと、ここではそうなんだろう。

 俺はまだ……幸せなほうだったのかもしれない。

 

「ところでよ、やっぱアレか? あだ名とかで呼び合ったりするワケ?」

「飯、美味かったか?」

 

 ……?

 これって……思い切り詮索してんじゃねぇか?

 

「チームを組んだからには、俺らは隠し事一切なしだ」

「そうそう。信頼関係が壊れるからね。詮索はしないが、隠し事は一切なし! これが我がチームの結束力!」

 

 説得力に欠けるセリフだな。

 というより、こんなにフレンドリーな奴らだったのか?

 

「なあ、そこにもやっぱ魔王とかいたのか?」

 

 ……た、隊長も???

 

 俺達は、依頼を完了した頃には、家族同然の仲になっていた。

 なんだかくすぐったい感じもしたが、またそのくすぐったさが……案外、悪くない。

 

 俺は、自分の居場所が見付かったような気がした。

 

 

【儚き想いを纏う竜】

 

 ここは、モンスター学園。

 若きモンスター達は、勉学に励み、青春もまた謳歌(おうか)していた。

 

 クラスで随一の人気を誇るのは、シャガルマガラだ。

 容姿もさることながら、勉強も学年トップで運動神経も抜群ときている。

 クラス中、いや、学園中の女子達は、そんなシャガルマガラに熱い視線を送っていた。

 

 シャガルマガラに恋する一匹の女子、テツカブラは勉強がまったくダメで、運動音痴だった。

 だが、菓子作りが趣味の乙女らしい特技を持っている。

 

「あ~も~ダメっ! 全っ然分かんないっ!」

「ん? どうしたカブラ?」

 

「あっ、ゴア君! ここのね、遺跡平原に生息する虫をすべて、書き出せってところが分かんなくて」

「なんだ、そこか。そこは……」

 

 幼少の頃から、テツカブラと同じクラスだったゴア・マガラは、何かとテツカブラを気に掛けていた。

 

「ゴア君、ちょっと相談があるんだけど……いいかな?」

「なんだ?」

 

「あのね……シャガルマガラ君なんだけど、その……好きな子とか……いると思う?」

「……さあな。直接、聞いてみたらいいんじゃねぇか?」

 

「えっ? えっ? そんな……」

「アイツのこと……好き、なのか?」

 

「えっ、えっ、好きとか……そんなんじゃ。……好き……だけど」

「……じゃ、告ればいいじゃん」

 

「えーっ!? だって……その……私なんか」

「ウジウジしてっと、ほかの女子に取られるぞ?」

 

「……うん、わかった! 勇気だして言ってみるね、ありがとうゴア君!」

 

 ゴア・マガラは、去っていくテツカブラの背中を寂しげに見つめた。

 

 その日の放課後。

 テツカブラは、モンスターっ気のない体育館裏に、シャガルマガラを呼び出した。

 

「用事ってなんだい? テツカブラ」

「シャガルマガラ君、あのね……好きです! 私と……お付き合いしてください!!」

 

 それに驚いたシャガルマガラだったが、告白されるのも慣れていたせいか、すぐにいつもの表情を取り戻した。

 

「ありがとう、僕に好意を持ってくれて。でも……僕は君とは付き合えない。ごめんよ」

 

「……ほ、ほかに好きな子とか……いるの?」

「うん。全然、片思い中だけどね」

 

「えっ? シャガルマガラ君なら、相手の子もウンって言うよ、きっと! 勇気を出して告白したほうがいいよ、絶対っ!!」

「そ、そうかな? じゃ、考えてみるよ。なんか、逆に勇気をもらってありがとう」

 

「ううん。私、シャガルマガラ君のこと……応援するから!」

 

 テツカブラは振られたのを悲しむより、シャガルマガラの幸せを願い、その恋を応援しようとした。

 

 翌日。

 シャガルマガラは、園舎にある大きな木の元へやって来た。

 木の下では、昼寝中のゴア・マガラがいた。

 

「よっ! 賭けは僕の勝ちだったな。約束通り、ポポノタントリプルバーガーを奢ってもらうよ」

「ちっ。テツカブラのやつ、本当にオマエに告ったんだな」

 

 二頭は、テツカブラがシャガルマガラに告白するかどうかを陰で賭けていた。

 

「しかし、君も罪な男だな。昔からテツカブラと仲良かったのに。……って、まさか君、テツカブラのこと……」

「は? あんなズングリムックリの女なんて、ハナから興味ねーよ。俺とも釣り合わないし、な」

 

「……(僕となら……釣り合う、のかな?)」

「俺はもっとこう、スレンダーな女子がいいんだよ!」

 

「……(スレンダーな()()、か)」

 

 シャガルマガラの想いは、永遠に届きそうにはなかった。

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