本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン4   作:JUBIA

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悪達のハーモニー~3卓談義(操虫棍編)

【悪達のハーモニー】

 

 地底洞窟の奥深い場所で、ゲリョスとネルスキュラが両者睨みあいのさなか、一色触発の状態にあった。

 

 ネルスキュラは大好物のゲリョスから目線を逸らさず、ズズッと滴り落ちそうなヨダレを啜った。

 

「うわっ、きったねー! おまえ、今、ヨダレ(すす)っただろ?」

「は? 啜ってねーし!」

 

 ゲリョスは、ペッと紫色の毒液をネルスキュラの目の前に吐いた。

 

「おわっと、きったねーな! てめーこそ、クソ(たん)吐くなや!」

「は? 痰じゃねーし!」

 

 ネルスキュラは体を伸びあがらせると、腹を前方へ向けて、尻から毒液をゲリョスの目の前に噴射した。

 

「うわっ、きったねー! おまえ、腹壊してんのか?」

「は? 腹壊してねーし!」

 

 ゲリョスは、尻尾をゴムのように伸ばしながら、その場で右回転をした。

 

「へっ、なんだ、そのクソターンは? ここまで届かねーし!」

「は? 別に、おまえに届かせようとは思ってねーし!」

 

 ネルスキュラは、軽快に横へステップを踏んだ。

 

「ふっ、なんだ、そのヘッポコステップは?」

「は? てめーにはできねー芸当だし!」

 

 ゲリョスは頭を持ち上げ、バチバチと数回トサカを鳴らして閃光を発した。

 

「へっ、そんなの全然……効かねーし!」

 

 ネルスキュラは、ピヨピヨと小さなイャンクックを頭の周りに羽ばたかせながら、頭がクラクラしていた。

 

「ふっ、効いてんじゃねーか!」

 

 ネルスキュラは目まいをしながら、尻から放った糸でゲリョスを拘束した。

 

「ふん、……拘束したつもりだろーが、全然ユルユルだし!」

 

 ゲリョスは、糸を振り解こうと必死にもがいたが、羽に絡み付いた糸は、まったく解けない。

 

「へっ、効いてんじゃねーか!」

 

 まだ頭がクラクラしているネルスキュラと、糸で拘束されて身動きが取れないゲリョス。

 ネルスキュラの目まいが治ったと同時に、ゲリョスは自力で糸の拘束を解いた。

 

「ハァハァ……」

「ウゥッ……」

 

「明日こそ、てめーを天井から吊るしてやるからな!」

「できるものならやってみろ! 今度こそ返り討ちにしてやっからな!」

 

 二頭は、翌日の決戦を約束し、それぞれのねぐらに帰って行った。

 

 

【3卓談義(操虫棍編)】

 

 ここは、とある酒場。

 今日も3卓では、いつも仲良し4人組のハンター達が、酒を酌み交わしていた。

 

A「今日のフィニッシュは、珍しくDが決めたね~♪」

B「おうっ! 珍しくDが活躍したな!」

C「そうそう、あれは珍しくDの貢献によるものだったね」

D「フフフっ」

 

 酒のせいもあってか、この日、Dは珍しく顔を赤らめていた。

 

B「よしっ! 今日は、Dの話題で大いに盛り上がろうぜっ!」

A「さんせーっ♪」

C「そうだね、たまにはDの話題に付き合うのもいいね」

D「フフフっ、では……(ゴホン)」

 

 Dは、テーブルの下で、膝の上に隠し持っていたモノをテーブルの上に乗せた。

 

A「キャーーっ!」

B「ちょっ……おまえっ?!」

C「い、いつの間に……?」

D「フフフっ、では自己紹介させて頂きますよ」

 

?「コンバンワ、ボクはウカドューレのウカドンです、ヨロシクね」

 

 Dは、羽の生えたカブトムシのような虫を、自身の顔の前に両手で持ち上げ、その後ろから裏声を使って虫に自己紹介をさせた。

 

B「おまえ、武器は置いてきてるよな?」

A「酒場に虫を連れてくるなんて……」

C「まさか、狩りをしない時でも、君は虫と一緒なのかい?」

D「フフフっ。今では私と、このウカドンは寝食を共にする仲で、24時間、いつも一緒にいますよ、フフフっ。どうです? この見事な色合い!」

 

 Dは、自分の肩に乗せたウカドンを、ウットリと眺めている。

 

A「ト、トイレも?」

D「フフフっ、そうです。虫でも躾をすれば、きちんとトイレで排泄してくれるようになるんですよ。フフフっ」

 

B「ふ、風呂も……か?」

D「フフフっ。さすがに泡で洗うわけにはいかないので、その時は浴室の扉に張り付いてますよ。フフフっ」

 

C「まさか……寝る時も一緒の布団に?」

D「フフフっ。もちろん、枕も二つ並べて、一緒に寝ていますよ。フフフっ。でもこのウカドンは、なかなか寝相が悪いらしく、朝起きたら私の額に、ウカドンの鋭い前脚が刺さっていることもありますね。フフフっ」

 

 Dの額には、何度も刺されたような傷跡がいくつもあった。

 

A「あれっ? たしか、操虫棍って強化したら虫も変わるんだよね?」

D「フフフっ。そうなんですが、このウカドンは、これが最終形態なんですよ。ほかにもシナトモドキのシナキーと、アルジャーロンのアルルンが、家でお留守番していますよ。フフフっ。ですが、シナキーは蛾のせいか、ちょっと叱ると家中に鱗粉をまき散らす、おてんば娘で少し困ってるんですよ。フフフっ」

 

 Dは困った様子もなく、嬉しそうに語った。

 

B「おまえの家には、遊びに行きたくねーなっ」

A「……虫御殿」

C「あれ? なんか、肩から血出てるよ?」

D「フフフっ。これ、これ、ウカドン君。肩を齧ってはいけません、っていつも言ってますよね? フフフっ」

 

ABC(……躾できてない)

 

[完]


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