Monster Hunter Link 1 ~幻影の悪魔~   作:ヌカカ

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その2 大地の伊吹に導かれ

 私は早速ハーグとともに閃晶竜の居場所を突き止めるため,作戦会議を始めた。何しろここは私にとって未開の地。慎重に行動しなければ未知の生態に追いやられてしまうだろう。

 

 「ところで,さっき閃晶竜を初めて見たような反応していたけど,もしかしてアリシオは初めて?」

 「ええ,まあ。私自身研究職に就いたのも最近で,それまでは現大陸の生態ばかり担当していましたから。それで,アリシオを担当している研究員が枯渇しているから私がこうしてここにやってきました。」

 「おいおい難儀だなあ。不慣れな人をよこされるなんて,こっちも気が抜けないよ。」

 「ハーグさんにはご迷惑をかけないよう,慎重に行動するつもりです。どうか気負いすぎず…。」

 「まっ!それならなおさら俺がいるかいがあるってもんだな!ロスタールさんがここを気に入ってくれたら,それだけで儲けもんよ。」

 ハーグは,ロスタールの肩に手を置き,話をつづけた。

「ハンターってのは,このアリシオの自然とともに生きる者を支え,その素晴らしさを伝える事が役目だからな。ハンターなんていらねえなんて奴もたまにいるが,俺はこの大自然がある限り,突き進むだけさ。そしてロスタールさん,あんたももちろんアリシオの大自然を守るのに欠かせない人だ。最後まで守り抜いて見せるさ。」

 

 その言葉を聞いて,私は彼の図太さに圧巻された。アリシオのハンター業は衰退したと聞いている。だが彼の中のハンターの魂は,未だに輝かしく燃え上がり,私の心にも火をつけるかのようだった。この人の,いや,この大陸のハンターたちに尽くしていきたい,そう思った。

 

 さて,ハーグと共に作戦会議をしたところ,最近の閃晶竜は『エルジナ峡谷』に頻繁に目撃されるという。エルジナ峡谷は,ハンターたちの間で『風谷』の相性で親しまれている。その名の通り,谷の中は常に風が吹いており,あらゆる飛行モンスター達が旅の出発点としているという。そのため,生態系も豊富で,温厚なモンスターから獰猛なモンスターまで,多種多様な者たちがはびこっている。ハーグさんが持ってきてくれた風谷の地図には,谷に挟まれた土地に,そこそこの大きさの湖や針葉樹林,花畑まで点在することが確認できている。

 

 「資料提供ありがとうございます。それでは明日の…。」

 「明日?そんなこと言わずに今日行こうぜ!今日!なにしろこの街からちょっとボンギ車に乗ればすぐだぜ!」

 ボンギ車とは,この大陸固有の草食種モンスター『ボンギ』がけん引する客車に乗って移動する乗り物だ。ボンギは大きな図体に毛むくじゃらの背中,オスには大きな角が特徴だ。蒸気ビークルが進めないような悪路でも突き進むため,移動手段として欠かせないばかりでなく,彼らから刈り取った『ボン毛』は衣服や家具の素材として重宝されているらしい。現大陸のお土産に持って帰りたいものだ。

 

 「今日ですか…!?でもまだ準備が全然できてませんよ。」

 「心配するな。俺たちハンターってのはいつでも出動できるようにすでに準備を済ませてある者さ。もちろん手紙を見てからあんたの分だってある。さあ!一狩り行こうぜ!」

 「そ,そんなあ」

 なにやら聞き覚えのあるフレーズを耳にしながら,私たちは早速ボンギ車に連れられ,目的地の風谷へと向かった。

 

 1時間ほどたっただろうか,確かにそこまで苦労せずついてしまった。目の前に広がるのどかな野原や湖の奥には小さく針葉樹林が見え,この土地の周りはとんがり帽子の山々がそびえたっている。

 

 「それでハーグさん,ついたのはいいですけどもうすぐで日が暮れます。このままでは夜になり我々に危険が…。」

 「さっきの作戦でも話したが閃晶竜は夜行性だ。むしろいま動いた方が色々と都合がいい。安心なさい。キャンプ地はすでに用意されている。あの針葉樹林の手前に丘が見えるだろ?あの丘の真ん中あたりに洞を掘って,そこをキャンプ場にしているんだ。」

 

 私たちはそのキャンプ地へと向かうように野原の間を歩いた。黄色と黒の縞模様の警戒色が特徴のトンボである『トーセンボ』,幼虫を触ると気性が荒ぶる毒を持つ『カドタテハ』,緑色の体毛で低木に擬態する草食種の『グラスタイン』等,様々な生物が見られる。さらに野原の傍らにある湖には,まるで卓球のラケットのような形状の『ピンポンパルム』や,首を振る姿がかわいらしい『ウナズナマズ』等が見られた。

 

 「おーい。夜は危険だと言い出したのは誰だったかー。」

 そうだった,観察に夢中ですっかり本来の目的を忘れていた。私たちはそそくさとキャンプへ着き,荷物の整理や晩の食事を手短に済ますと,早速閃晶竜が現れるという針葉樹林の奥部へと向かった。

 夜になりかなり暗くなったため,なにやら林がうぞぞぞぞ,と騒がしい。夜行性のモンスター達が活発になってきたころだろう。実際,温厚な夜行性モンスターである猿型の『エンテ』たちが見えた。しかも『ミエンテ』『イエンテ』『キコエンテ』の三種類がすべて見ることが出来たため,私は心底興奮していた。

 

 「そろそろ松明をつけよう。」ハーグはそういって私の分の松明を渡してくれた。それを受取ろうとした瞬間,

 

 ずん…ずん…

 

 となにやら振動が地面から伝わった。

 

 「この振動は…まずい!そこの低木に隠れろ!」

 

 私は言われるがままに隠れた。そして,その“何者か”に見つからないように低木の隙間から覗くと,そこには茶色の体毛に,鋭い爪を持った巨大な牙獣種と思われるモンスターが,向かい側の針葉樹林の影から姿を現した。

 私は顔を青ざめた。体中の血液が駆け巡り,四肢が凍ったように固まり,呼吸もままならなくなっていた。ハーグは私の肩を抑えながら,奴の様子をひっそりと伺っていた。

 

 「あいつは『炎爪獣 バルグリンデ』だ…。本来は後日俺たちが調査するはずだった奴だ。冗談じゃない。こいつと閃晶竜が対峙してしまったら…」

 その時私は体の震えが限界になり,膝が崩れ落ちた。落ちた膝の先には脆い枝があり,不幸にも私の膝がその枝を折ってしまったのだ。奴の耳が動き,こちらに目線を向け,牙をむき出しにしながら呻いている姿は,まるで地獄の番人の様に見えた。

 しまった。もうだめだ。ごめんなさいハーグさん,ごめんなさい現大陸の皆,ごめんなさい父さん母さん…。

 

 「おい!しっかりしろ!奴は任せて逃げろ!」

 ハーグが私に向かって声をかける。だめだ,ハーグさんが戦っているのに僕だけ逃げるなんて,何か,僕に出来る事。

 「あんたがいなくなったらアリシオの異変をだれが現大陸に伝えるんだ!安心しな!俺は生きて帰ってくる!」

 僕はその言葉を聞き,やっと足が動き出した。そしてもと来た道,キャンプ地の方へ戻ろうとした。

 しかし,炎爪獣は私の姿をとらえるとすぐさまこちらに疾走しだした。この速さじゃ逃げられるわけがない。でもこの時の私はただ走ることに必死だった。無理だと考えることもできなかった。

 

「やめろおおおおお!!!」

 ハーグの雄たけびと走る音が聞こえたその時,空から一匹の黒い飛竜がこちらに向かってくる姿が見えた。

 その漆黒の身体からは,月に照らされた結晶が瞬き,逃げることを忘れるほど私の心を魅了した。

 閃晶竜ラジュエリオン。彼は炎爪獣バルグリンデの姿をとらえるとともに,その巨体に向かって襲い掛かった。

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