IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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色々と原作の部分は省きながら進めていますが、原作だとこの一件の裏で一夏VSセシリア戦が行われていたりします。

エピローグ部分は描きたいと思っていますが、基本そんなに変わってないのでちょろいさんが出てきた時は既に一夏フラグが立った状態になります。


そこのところを踏まえて十一話。そして、少しばかりシリアスなのかそうでないようなお話となっていますので、中途半端が嫌いな方はトラックバックを。残った方は続きをどぞ~


第十一話

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だけど、僕こと崩上湊は男である。

 

 

 

 これは遺伝子的にも明らかな事実であり、個人的には最近になって漸く生まれてきた性別間違えたんじゃねと思えるように諦念を抱けるようになったけど、それでも僕は男だ。

 

 

 可愛い物よりも格好良い物に惹かれる。

 

 

 ぬいぐるみよりもプラモデルに興味を持つ。

 

 

 魔法のステッキよりも刀とか拳銃の方が大好きだ。

 

 

 

 上記を見ただけでも分かる通り、一応趣味ぐらいは男らしい部分はあると思う。あるといいよね。でも今時格好良い物好きの女の子も少なくないよね? ………ま、まぁ考えないことにしよう。

 

 

 

 その中でも特に刀。海外でも芸術品とまで評価を受ける武器が、僕はたまらなく“格好良い”と思えた。

 

 

 男の子なら誰もが一度は憧れるんじゃないだろうか。

 

 

 刀を腰に差して、悠然と抜刀しながら悪者を切り捨てる自分の姿を。子供心に想像してしまう男の子は割といると思う。

 

 

 

 柳崎から道場に誘われて、そこで剣術も教えていると知った時に僕はつい刀を振る自分という姿を思い描き、何となく師範に尋ねてみたことがあった。

 

 

 

『ししょー! あの、僕も練習したらししょーみたいに刀を使えるようになりますか!?』

 

 

 

 なんてことはない、それは自分も本物の刀を持てるかもという期待を籠めたいかにも子供じみた質問だった。

 

 

 だから返答も『そのうちな』的なもっと修行を頑張れという檄がくるぐらいにしか考えてなかった。

 

 

 

 ………だから、僕はその時の師範の言葉を受け止めるのに少しばかり時間がかかった。

 

 

 

『あ? いや刀持ってもいいけど、お前、才能無いから止めとけ止めとけ』

 

 

『………………………………………ふぇ?』

 

 

『や、そう涙目になられたら私が殺されるんじゃが。ただな湊、お前には刀を使う(・・・・)才能が(・・・)まるで無い(・・・・・)から、私みたいにはなれないぞ。絶対にな』

 

 

 

 敢えて例えるならば、サンタクロースの存在を信じていた子供が夜中に何の扮装もせずに枕元に頼んでいたプレゼントじゃない妥協された物品を置いている親を見たような、そんな感じ。ちなみに僕はその後しばらく父さんとは口をきかなかった。

 

 

 柳崎に無理矢理引っ張られて続けていただけの武術だったけど、面と向かって『オメーに才能とかねーから!』と言われてから、僕は初めて自分の意志で武術に取り組み始めた。

 

 

 

 何度も言うが、僕だって男なのだ。言われっ放しなのは、悔しかった。

 

 

 

 しかしやり始めると嫌でも自分には才能が無いことが浮き彫りになって、悔しかったので他のことをやればそっちの方は自分でも驚くほど“化けた”

 

 

 まぁ志していた道というほどでも無かったけど、師範の無茶な修行のせいできっと精神的に歪んでしまったせいか考え方も少しドライになった部分も出てきたし、武術を習ってから色々と変わったと言われれば変わったし、そのせいで変わらなくなった物も出来た。今の外見がその最たる物だろう。

 

 

 とはいえ、趣味もそこそこ男らしい部分もあるし、武術を修めていることからも分かる通りそんなに弱い訳でもない。

 

 

 

 

 

 ――――――――――そう、思っていた時期が僕にもありましてねー。はい。

 

 

 

 

 

「ひっぐえぐ……うぅ、り、りゅ、りゅうざきぃぃぃ~~………」

 

 

「あ~、はいはい。良い歳した男が、びーびー泣くんじゃない」

 

 

「び、びんながぼぐを………じだくないって、いっだのに゛ぃぃぃ……!」

 

 

「事情はお前の格好を見てれば分かるから、無理して喋らなくていいぞ。ほれ、よしよし」

 

 

「うぅぅ、うぇぇぇぇぇぇええええええんっっ!!」

 

 

 

 現在、僕は自分が男だとか24歳だとかいう肩書を全て投げ捨て、遠路遥々IS学園まで来てくれた親友の胸を借りて泣きに泣いていた。

 

 

 そこには無様にも泣き喚いているのは桃色ウサギの着ぐるみではなく、同じ桃ウサギは桃ウサギでも和名“ウサギ少女”な格好を強いられた哀れな存在。ぶっちゃけ僕だった。

 

 

 

 IS学園に残らざるを得なくなった翌日。

 

 

 その日の夜はかろうじて前もってとっておいたホテルに戻れたから良かったものの、元よりすぐに帰るつもりだったのでそれ以上ホテルに泊まれる資金も無く、一応秘匿されなければならないらしくあくまでも学園には身分を“女”と詐称して篠ノ之達の研究所に籠らなければならなくなったのだ。

 

 

 そのため前日のように逃げ回ることも出来ず、また普通に授業のある一夏君達を僕の問題に巻き込むのも本意では無かったので結局僕は篠ノ之達の魔の手から逃げる術を持たなかった。

 

 

 払おうと思えば運動音痴の篠ノ之や僕より小さいイクスちゃんを退けるのは簡単だろう。

 

 

 でも、それを出来なかった僕がチキンなのか。だって素人だろう相手に手をあげるなんてどう考えても無理なんだもの! 例え自分の自尊心が著しく損なわれると分かっていても、傷つけるよりはマシだと思ってしまったのが運の尽き。

 

 

 

 その結果、僕は男であるにも関わらず特殊成形加工が施されて男が着用しても何ら違和感の無いハイレグウサギ少女スーツに身を包む羽目になり、そのあまりのそつの無さ過ぎる自分の姿と暴走した篠ノ之に心の防波堤が決壊。

 

 

 存分にセクハラ&写真撮影という羞恥地獄に僕の(精神的な)HPはみるみる目減りしていき、終いにはポージングや台詞を言わなけりゃ首輪を外さないとまで言われ今度は僕の方の防波堤がぶっ壊れた。

 

 

 恥も外聞も泣くワンワン泣いていたところに柳崎が来てくれて、現在唯一頼れる相手に僕は躊躇い無く縋りついたという訳である。

 

 

 

「まぁしっかし……いくら私でも、流石にこんな格好を強制させたことは無かったんだがなぁ……えぇ?」

 

 

「うぐっ。そ、その、悪いとは思ってるんだよ? でもあんまりにも似合うものだから歯止めが…」

 

 

「反省はしている」

 

 

「黙れアホウサと電波幼女。しかも何だ、この首輪のせいでコイツが帰れないだぁ? それで湊を泣かして玩んで………」

 

 

 

 僕を片手であやしながら柳崎の言葉は、さながら鋭い杭のように篠ノ之とイクスちゃんに突き刺さる。

 

 

 顔が見えないから声だけで判断すると、篠ノ之の声のトーンは明らかに落ちているがイクスちゃんは変わった様子を見せない。電波幼女は伊達じゃないのか。

 

 

 

 

 ………でもまぁ、今だけは安心できるし、少なくとも今は柳崎に甘えておこう。どうせ男らしさだとか今更だし、こうでもしてないと今ちょっと一人で立ってられなさそうなので。うぅぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「……すぅ」

 

 

「寝たか。全く、本気で幼児退行してからにこの阿呆は……全く」

 

 

 

 今は自分の膝を枕にしながらあどけない表情を晒し眠りに就いた湊を見てつい溜息が零れた。

 

 

 

 本当ならその無垢な表情にもう少し見惚れていたいところではあるが、それよりも先に釘を刺しておかなければならない奴らがいる。

 

 

 

「私が首輪(こんなの)ぶっ壊せれば良いんだろうがな、そうもいかないんだろ?」

 

 

 

 私がその気になれば恐らく、いや確実に湊に何ら危害を加えずにこの首輪だけを破壊することは可能。

 

 

 でもそれは出来ない。そんなことをしてしまったら、余計に湊にとって迷惑になってしまうから。それは何故か?

 

 

 

「まさかとは思うが……お前は、こうなると踏んだ上で湊をここに置こうと? コイツがISから逃げられないよう、物理的にも首輪をつけて」

 

 

「っ」

 

 

「……図星じゃないにせよ、遠からず、か。とんだ天才科学者だな」

 

 

 

 ISの数には限りがある。

 

 

 それはISという超兵器が起こすであろう世界情勢のパワーバランス崩壊を防ぐために、国際条約で各国で所有できる保有数というのが定められている。

 

 

 それ以上の製造は禁止されており、世界で唯一コアを生産できる二人がIS学園に『軟禁』という形で閉じ込められているのは一重に、何かしらの悪意によってコアを作らせないようにするため。ひいてはこれ以上のISを増やして不用意に情勢を刺激しないため……らしい。とあるお嬢が言うには。

 

 

 

 であるなら、ISとはつまり世界的に見ても非常に有用な“資源”であり、それが損なわれてしまうことは世界にとっての損失に他ならないという事。

 

 

 

 湊の首に纏わりついてるIS。これもまた立派なISであり、しかも初期型の量産されている物とは根幹から違う高性能なAIを持った物だ。

 

 

 これの価値を換算することは生憎、又聞き程度の知識しか無い私には出来ないけど。

 

 

 だがそれでも、湊の首輪を破壊する行為がどういう事態になるのか。ここに来る過程でお嬢から耳にタコが出来る程言い聞かされた。というか、言われなかったら問答無用でぶっ壊していたところなのだが。

 

 

 

 曰く、もしも湊の首輪を破壊するようなことがあればそれだけで湊は犯罪者になるのだと。

 

 

 

 それを引き起こす原因は主に二つ。

 

 

 一つは前述したようにISのコアの数には限りがあり、その中でもとりわけ貴重な初期型のコアである物を破壊してしまうことで被る関係各所から来るであろうバッシング。

 

 

 もう一つは、こちらはより理由としては最悪なのだが………そのもう一つの理由というのが、湊が“男”だからというもの。

 

 

 

 ISの登場により女尊男卑に傾いた世界において、ISとはまさにそんな世情の象徴だと言える。

 

 

 それを男である湊が所持しあまつさえ破壊などしようものなら、その行為はそのまま女尊男卑への反発と見られてしまう。

 

 

 私が直接手を下せばという問題では無い。

 

 

 湊がISを所持しているという事だけでも問題なのに、それを壊してしまったという事実だけで湊への激しいバッシングは避けられない。

 

 

 バッシングだけならまだマシだろうが、さらに尾ひれがついて国家反逆罪だの国際的なニュースにまで取り上げられてしまうほど大事にされてしまえば実刑すらあり得るのだ。

 

 

 この女尊男卑の歪みがそのまま、湊をISから逃れられない“首輪”として縛り付けている。

 

 

 

 そう。この首輪がある限り、湊は絶対にISから逃げられなければ自分から逃げることさえ叶わない。

 

 

 

 それはつまり、首輪が外れ無ければ湊はずっとその身を隠すためにこの学園に秘匿され続ける事になるということで。

 

 

 

「(――――――そうまでして手放したくないのか、湊を)」

 

 

 

 あらゆる社会的な縛りを使ってでも、目の前の兎は湊を手元に置こうとしている。それが故意にせよ結果にせよ………いや、コイツに限って結果なんかじゃない。

 

 

 コイツは、首輪が湊を選んだ時点でこうなることを予測していたのだろう。首輪がある限り湊はISから、自分から離れる事は無い。

 

 

 何故なら、自分こそがそのISの第一人者なのだから。誰よりもISについて詳しいのは自分なのだ、自分が何をしなくても相手から自分を頼ってくる。

 

 

 

 あくまでも推測で、しかも途轍もなく穿った見方であるのは承知で、私は自らの考えを兎に告げた。

 

 

 

「これじゃどちらが兎なんだか。むしろお前には魔女の方が似合うんじゃないのか? 首輪で獲物を捕えて、獲物は自分が食べられるなんて疑いもせずに魔女に懐く、童話みたいだな」

 

 

「…っ、それ、は」

 

 

「どうでもいいさ。お前がどれだけ湊に入れ込んでいるかなんてな」

 

 

 

 おーおー茫然としてるなーウサミミ魔女。でも、これは紛れも無く私の“本音”だ。

 

 

 

「別にどうだっていいんだ、私は。だって、お前が湊をどう想ってようがそれで私が変わる訳でも無ければ変わる必要だって無いんだから」

 

 

 

 まぁ“十年越しの想い”だ。それがどれだけ重たいのかは理解できないけど、“十年分の想い”というのであれば私にだって理解できる。

 

 

 私がもし目の前の女と同じ立場であれば、ひょっとしたら同じことをしていたかもしれない。或いは、もっと手段を選んでいない可能性だってある。

 

 

 

 その手段がとても褒められたものじゃないとして、それを私は責められない。だって、私だって気持ちは恐らく目の前の女とそう変わり無いのだから。

 

 

 

「(だから、これぐらいは言わせてもらっても罰は当たらないだろ?)」

 

 

 

 何も知らなかったままなら。湊から連絡も来ずお嬢からの緊急連絡が無かったら私は何も知らずに湊を延々と待ち続けて、帰ってこない理由を聞いて暴れ狂っていた自信がある。

 

 

 

 気持ちは分かるから、せめてちょっとした愚痴ぐらいは言っても赦されるだろう。呆けたウサミミの顔を見て溜飲を下げた私は、敢えて挑発するような表情を作って再度口を開いた。

 

 

 

「…なぁ、ウサミミ」

 

 

「っ、だ、だから私はそんな名前じゃないってばっ! ちゃんと私には篠ノn」

 

 

「なら束だ。なぁ束、お前が湊をどう想ってるのかは分かった。だから、今しばらくお前のところにコイツを置いてやってもいい」

 

 

「にゃ、何さその言い方ー!? まるでみっちゃんが貴女の所有物みたいじゃないのさー!」

 

 

「それをお前に言われる筋合いは無いと思うぞ? それに、私はコイツの保護者として言ってるんだ。私には湊を護る責任があるからな」

 

 

 

 『あの出会い』でそう願い、これからだって違えるつもりなど毛頭ない私だけの誓い。

 

 

 

 

 

「と、いう訳でだ。私はコイツのSPとしてこれから学園にいさせてもらおう」

 

 

 

 

 

「……………にゃんですとぅ?」

 

 

「……わっつ?」

 

 

 

 ウサミミ―――ではなく束が訝しげに首を傾げ、その隣では金髪電波幼女が無表情のまま首をコクリと横に倒していた。

 

 

 

「(コイツ…………まさか………?)」

 

 

 

 でも今は良い。そんなことよりも私の立場をここで明確にしておかなければならない。

 

 

 

「丁度運良く私には定職と呼べるものが無くてな、さらに都合が良い事にこの学園にちょっとした知り合いがいて、その知人はなんと湊のことも知っているから事情についての情報漏洩の心配も無いときた。ここまで来たら私が湊の傍にいることに何か不都合があるか? 無いよな無いだろうなら問題あるまい」

 

 

「いやちょっと待った赤……じゃなくてらいちゃん!? そんなメアリー・スー的展開が罷り通ると思ってるの!?」

 

 

 

 や、それはお前だけには言われたくないから。そう視線で告げてやれば目に見えてウサミミは折れていった。どうやら自分のやっていることにも自覚はあったらしい。

 

 

 

 

 

 こうして、私の明日からの仕事が地方学校の秘書から湊専属のボディーガードにジョブチェンジすることになり、その事実に泣いて喜んでいた湊は地上最強に可愛かったとここに記しておこう。

 

 

 

 

「……ところで、桃ウサギ君とやらの写真を貰ったのだが、私と一緒の部屋の時でいいから見せてくれないか? それに直で触ってみたいんだが」

 

 

「う、ぅん……その、柳崎なら安心できるから、いいけどさ………あんまり激しくしないでよ? 割とトラウマだから」

 

 

「分かってるって。お前の方こそ抑えてくれないと困るからな」

 

 

「? 抑えるって、何を?」

 

 

「……何でもないさ、無自覚野郎」

 

 

「そんなのって……みっちゃんとらいちゃんが同じ部屋だなんて……! いくら上層部の決定だからって、そんなのってぇぇ………!」

 

 

「た、束ちゃん束ちゃん! あの赤くて背が高くて美人でおっぱいな人は誰なんですかぁ!? しかも湊君すっごく安心した顔であんな……あんなに泣きついた写真を見せられた私はどうしたらいいんです!? この衝動をどこにぶつければいいんですかっ!?」

 

 

「束さんだって羨ましすぎてどうにかなっちゃいそうなんだよ~! まーちゃんばっかりが悔しい訳じゃないんだからね! 私だって、私だってみっちゃんに泣きつかれて抱きしめながらよしよししてあげたかったよ! そのまま慰めながら同じお布団で夜明けを迎えたかったよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――あの赤いのは―――――――」

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