IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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原作一巻の内容は基本的にダイジェスト風味になるため薄くなりがちになりますが、そこらへんはご了承ください。

今回は特に注意するような内容では無いんですが、とりあえず湊君のIS事情についてちょこっと触れてます。それでは。


第十二話

 

 

 

 

 

 

 

『そういえば一夏』

 

 

『ずずーっ……ん? 何だ箒。このかき揚はやらんぞ?』

 

 

『そうじゃない! いよいよ明日だろ、クラス代表を決める決闘は』

 

 

『んぁ? そうだっけ?』

 

 

『そうなんだ! ……私が特訓に付き合っているだろうが、それぐらい覚えてるものだろ普通』

 

 

 

 

 昼食。

 

 

 IS学園の食堂は各国からの生徒を招いてるだけあってそのメニューの豊富さは生半可な高級レストランの比では無く、俺が今食べている“釜揚げかき揚うどん定食”というありふれた定食メニューでさえ絶品と化している。

 

 

 

 中でもこのかき揚に使われている具材の大きさといい配合具合といい、噛んだ時の食感や口の中で広がる野菜の甘みがたまらない。

 

 

 そしていざ二口目に勤しもうと思っていた矢先に隣で“焼きサバ定食”を頼んでいた箒が変なことを聞いてきた。

 

 

 悲しい誤解の末に何故か俺はクラスのイギリス代表候補生とやらと勝負をしなければならなくなり、その試合に負けたら俺はそいつの奴隷にされるらしい。国際法が適用されることを切に願うしかない。

 

 

 

『って待て!』

 

 

『はむはむ……んだよ箒、焼きサバとうどんの相性はそこまで悪くなさそうだが塩分濃度的に流石に食えんぞ』

 

 

『誰がやると言った!? だからそうじゃなくて、お前はアイツに勝つ気が無いのか!? まるで緊張感が足らん!』

 

 

 

 あれ? どうして箒がその事を知ってるんだ? 心を読める訳でも無しに。

 

 

 

『あの時の啖呵を切ったお前は何処に行ったんだ!』

 

 

『\ここにいるぞー!/』

 

 

『馬岱かっ』

 

 

 

 う~む、六年前は普通にツンケンしてててっきり嫌われてるものとばかり思っていた相手なのだが、学園で再会してからは中々。からかい甲斐があって楽しい。ツッコミはやっぱ勢いが大事だよな。

 

 

 ぜぇぜぇと荒く息を吐く箒を余所に最後におつゆを飲んで完食。あっさりめでありながら成長期男子でも満足できるお味、お見事でした。さてと。

 

 

 

『一応試合については真面目に考えてるぞ? 負けるのは悔しいしな』

 

 

『な、ならもう少しこう、なんだ。緊張感とか高揚感とか……』

 

 

『俺喧嘩でテンション上がるタイプじゃねぇんだよなぁ。どっちかっていうと正論畳み掛けて潰す感じかなぁ? ほら、丁寧語のままで相手の反論を許さないで言い包める感じで』

 

 

『うん? だが、昔のお前はどちらかと言えば』

 

 

 

 箒の認識は強ち間違いじゃない。

 

 

 昔の俺はどちらかといえば直情径行型。良く言えばまっすぐで悪く言えば考えなしでただただぶつかっていくことしか考えなかったし、それでどうにかなると本気で思っていた。

 

 

 

 でも、何でもそう上手くいく筈が無いと思い知らされてる今、俺は俺に出来る範囲で勝てる手段を尽くしたうえで勝算をたてるようになった。

 

 

 

 そのための努力は惜しまないし、今でもISの基礎知識を洗いざらいに勉強中だし箒に頼んで剣道によるフィジカル面の訓練と学園に配備されてある予備機を使った実践訓練もしている。

 

 

 何でも俺にはデータ取りの名目の下、専用機が与えられるそうで予めどんな機体かを知らされていない以上、やれる範囲でISを使った動き方を覚えなくてはいけない。

 

 

 しかし訓練を通して箒との共通認識で分かったこともある。

 

 

 俺には射撃の才能が一切無かったこと。もしも機体が射撃一辺倒な機体だったらまず間違いなく宝の持ち腐れになるため、せめて近接武装が一つでもあることを祈るしかない。残念なことに。

 

 

 

『まっ、簡単に負けたくは無いけどさ。相手は一応代表候補生だろ? 素人が勝てるような相手じゃないってのは試験の時のビデオを見て思い知ったし、ワンアプローチで落とさねぇとまず不利になるからなぁ。理想としては油断してる隙にバッサリ切り捨てる、みたいな』

 

 

『お前なりに考えがあっての余裕、と考えていいのか?』

 

 

『余裕っていうか、俺喧嘩とか勝負事の前になると普段以上に普通になるらしいぞ。よく分からんが』

 

 

 

 これを友人の五反田弾に言わせると、『嵐の前の静けさってやつがあるけど、お前の場合その落差が激しいんだよ』とのこと。

 

 

 勝負の前の互いの緊張が高まる瞬間とか漫画であるけど、俺はどうもそういう時思考が冷めるタイプらしい。その代わり、勝負開始と同時にギアがマックスになるからそのギャップが凄いのだと言う。自覚が無いからよく分からないが、下手に気負ってしまうよりは良いだろう。

 

 

 

『出来れば一撃必殺! みたいな武器が搭載されてねぇかなぁ~。欲を言えば剣型の武器でさ』

 

 

『確かに……お前の射撃精度から考えればそうだな。しかし、そんな武器があってもリスクが大きそうな気がするんだが』

 

 

『だよなぁ、使う度にシールドエネルギーめちゃくちゃ消費する、みたいな?』

 

 

『そうそう。さらにはそんな武器を積んだせいで他の武器が持てないとかもありそうだな』

 

 

『うわっ、それなんて欠陥機? やっぱ牽制程度でいいから少しは射撃系の武装もあった方がいいよな』

 

 

『当たらなくても弾幕ぐらいにはなるしな。或いは、当たらなくても広範囲に威力を広げられるような………グレネードとかショットガンタイプな武装だったら十分イケると思うぞ』

 

 

『ど~なんだろな? 楽しみなような、不安なような……』

 

 

『大丈夫だろ。何せ貴重な男のIS操縦者のデータ採集を目的としているぐらいなのだから、特化型の機体よりはバランスがとれた機体の方が望ましいし、ましてやお前は素人だぞ? いきなりピーキーな機体を渡すような事はしないだろう。普通そういうのは操縦者のクセがある程度分かった上で無いとな』

 

 

 

 ………あれ? 今どこかから“それ以上はダメ!”って声が……気のせいか?

 

 

 

『あはは! だよなー! これでもし今言ったみたいな機体がきたら俺どうしよ?』

 

 

『ふむ。ならば山をはっていっそ近接戦闘だけの訓練に残りの日数を絞ってやるのはどうだ? 私も言う程射撃に詳しい訳ではないし、剣だけを突き詰めてみるのは』

 

 

『……そうだな。ならそうすっか』

 

 

『方針は決まりだな。今日もびしばし扱くぞ!』

 

 

『………手加減してくれよ。或いは湊さんにチアリーダーになってもらえれば俺はどんな訓練も耐えれる気がする』

 

 

『それは私が集中出来なくなるから諦めろ』

 

 

『はぁ……』

 

 

 

 

 後日、俺はこの時の会話がフラグになったことを激しく後悔する羽目になるのだが、それは今激しくどうでもいいことだ。

 

 

 

 近接戦闘オンリーどころか武器だって【雪片二型】なんて燃費最悪な刀一本しかないIS【白式】を与えられ、奇しくもこの時の話題に挙がった悪い予測が当たってしまったとはいえ、今の俺にとってむしろそれは望むところとさえ言える。何故なら!

 

 

 

 

 

「うわわっ!? ちょっ、逆さになってる逆さになってる! 僕逆さになってる助けてー!?」

 

 

「よっと。大丈夫ですか、湊さん?」

 

 

「うぅ……気持ち悪い。飛ぶのってこんなに難しいんだねぇ……それに比べて一夏君はもうすいすい飛べるんだし、いいなぁ」

 

 

「そんな事無いッスよ。湊さんだって慣れればすぐです」

 

 

「だといいんだけど……そ、それより手離しちゃやだからね? また何か変な方向に回りそうで怖いし……」

 

 

「大丈夫です。ちゃんと飛べるようになるまで訓練付き合いますよ」

 

 

 

 

 ―――――何故なら、こうして湊さんとマンツーマンで訓練が出来るから! 専用機ありがとう! そしてIS学園に入れてマジ良かったッッ!!

 

 

 

 

 

「………むぅ。一夏の奴め、気持ちは分からなくもないがあんなに嬉しそうに……むぅ」

 

 

「あんのガキゃぁぁ………後で釘刺しておかないと」

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 【布都御魂】の改修が行われている間、僕はしばらくぶりに首輪から解放されることになったのだがだからといって自由と言う訳じゃない。

 

 

 

 布都御魂に見初められている?ということで、僕も一夏君と同様にISを動かせるんじゃないかという当然の疑問を解消すべく量産型ISの【打鉄】に触れてみたところ案の定、そこにはISを纏った僕が爆誕してしまったのである。

 

 

 

 流石に“二人目”ともなれば今以上に面倒な事態になってしまうためこの事実は一部の人間と学園の上層部の間だけの秘密扱いになった。

 

 

 

 一応時期を見てと言っていたけど、そもそもISに取り憑かれたとして一部関係者の間では僕の名前は知られているらしいのであまり意味はなさないかもしれないとも言われた。面倒はゴメンだけど、こればっかりは僕の力が及ぶ事じゃないからなぁ……

 

 

 でも、そうと分かったからには改修された後の【布都御魂】のパイロットになることが確定してしまっている以上、最低限訓練を積まなければならなくなったのは仕方の無い流れと言えよう。

 

 

 

 知識は正直、頭に自信が無いから覚えられる気がしなかったし、一夏君に見せてもらった参考書の厚みを見ただけで泣きたくなった。あんなん一年かけてやっと覚えられるかどうかなのに、一週間で暗記しろと言われた一夏君の待遇には同情を禁じ得ない。

 

 

 

 という訳で当面は練習機である打鉄を使った訓練を行うことになったんだけど、これが実に捗らない。

 

 

 まず僕には“空を飛ぶ”という感覚自体が未だに掴めていないし、それを理解出来てもいないのだ。

 

 

 だから空を飛ぼうと思って軽くジャンプしてみれば天高く何処までも登りそうになってしまうし、移動しようとしても上手く動けるわけも無く墜落しそうになる度に一夏君や機体の自動操縦(オートパイロット)機能に助けられてる。そうでなくてもちゃんと空中で姿勢すら安定させられない辺り僕にISを動かす才能は無いと思う。

 

 

 事実、打鉄を装着した時の僕のIS適性は“E”。これはあくまで動かせるレベルのランクであるらしく、とても高速で飛びまわる戦闘行動は無理らしい。

 

 

 

「(まぁ戦わないってんならそれが一番いいんだけど……)」

 

 

 

 ISを使わない戦闘ならまだいいけど、ISを使ってと考えると正直勝てる気がしない。未だに操縦に悪戦苦闘してるのに、敵がいるなんて考えたくも無い。最大の敵は自分自身とは言い得て妙だと強く思う。

 

 

 そんな訳で現在、一夏君に手を引いてもらいながら空中移動の訓練な訳だけど……多分、傍から見たらプールで手を引いてもらって泳ぎの練習をしている様子を彷彿とさせる光景になってるんだと思う。

 

 

 

 というか武者然とした打鉄を装着している僕が足をバタつかせながら恐る恐る空中散歩とも呼ぶべき速度で動いているのは、たまらなくシュールだろう。

 

 

 

「ゆ、ゆっくり、ゆっくりだからね?」

 

 

「はいはい。大丈夫ですから、湊さんはその姿勢のままスライドするような感じでこっちに……おおっ」

 

 

「わわわわわわっ!?」

 

 

 

 自分が立ったまま空を移動するというのはちょっと、今までの経験というか師範の『空を駆ける』姿を見たことがある身としてはちょっとカルチャーショックとでも言えばいいのか、未だ自分の中でこうして空を飛んでいる自分が確立出来ずにいる。

 

 

 そんなあやふやなイメージを打鉄は確かに読み取ってくれたのか、浮遊したままその場で僕を360度振り回しながら時折ブレるように揺さぶりをかけてくるものだから体がギシギシ軋む気さえする。

 

 

 

『みっちゃーん、大丈夫ー?』

 

 

「そうに見えるのかよお前は………うえっぷ」

 

 

『あちゃー。それにしてもたまちゃんが選んだからてっきり適性も高いものとばっかり……』

 

 

『むしろ起動出来てることが不思議なぐらい。IS自体があの子を拒んでる感じ』

 

 

『そうなんだよねぇ~。ふぅむ、これはひょっとして……』

 

 

 

 通信越しには篠ノ之とイクスちゃんが何やら話し込んでいる様子が届いているが、内容も理解出来なければ聞き取りに集中出来る状態でも無い。

 

 

 進展の様子が見られないという事で訓練を切り上げピットに戻る。無論、自力では無くISを解除した状態で一夏君に運んでもらっているんだけど。

 

 

 

 ピットに戻り打鉄をハンガーにセットする。一夏君の白式は解除すると同時にガントレットになって右手の装着されていて、あれが彼の待機形態らしい。首輪よりよっぽど格好良い。

 

 

 

「ごめんね一夏君。折角手伝ってもらってるのに、迷惑かけてばっかりで」

 

 

「いいですって。俺だって一つ一つ確認出来てありがたいですし、最近こっちの訓練も厳しいんで良い息抜きになります」

 

 

「そう言ってもらえると助かるよ……はぅ」

 

 

 

 一夏君は最近あったクラス代表決定戦でクラス代表になる事が決定し、その際イギリス代表候補生の子に勝ったという。僕とは比べるべくもなく、既にISに順応を見せている。羨ましい限りだ。

 

 

 そんな一夏君も自分の訓練があるようで、暇があったらそのイギリスの子や箒ちゃん達と頑張っているんだそうな。

 

 

 ただ、毎回二人が喧嘩し何故か二対一になるから気苦労が絶えないという。そんなに仲が悪いのかな、その二人。

 

 

 箒ちゃんが言うには『仲というか……相性と言いましょうか。まぁ、敵と言えば敵ですかね』と煮え切らないコメントを残していた。どんな関係なんだろ?

 

 

 

 まぁ喧嘩の理由を知ったところで僕が如何こう出来るとは思えないし、この話はここまでとして改めて打鉄を見る。

 

 

 これに触った時には布都御魂のように意識を落とすような事は無かったけど、それでも何となく動かしづらさというか、当然僕が下手くそというのもあるんだろうけど何となく“ズレ”を感じてしまう。

 

 

 僕の動きがまるで伝わったいないというか、イメージ通りに動かない理由の一つには打鉄と僕の相性にも問題があるんじゃないかなんて巫山戯た考えが浮かんですぐに頭を振って思考を切り替える。

 

 

 

 これは確かに量産型で一夏君の持っている【白式】や【布都御魂】のような一品物の機体じゃないとはいえ、篠ノ之やイクスちゃんがしっかり整備してくれた物だし、僕が動かせない理由を機体のせいにするのは違う気がする。

 

 

 

「(………ゴメンね。僕がもっと上手に飛べたら、君も気持ち良く飛べるのに……)」

 

 

 

 少なくとも、ISを使って空を飛ぶ一夏君は年相応に楽しそうにしているし、僕だって風を感じる瞬間というのはやはり気持ちいいと思う。

 

 

 だからこの子にもそれを知って欲しいと思う。でも、僕にはその域まで未だにISを動かせない。

 

 

 

「……情けないなぁ。僕なんかが乗っちゃって、ゴメンね……?」

 

 

 

 別に返事が返ってくるのを期待しているわけじゃないけれど。自分の不甲斐なさからか、そう言わずにはいられず装甲の表面を撫でながら小さく呟く。

 

 

 

 

 

 

 ………………す。……………………っ。

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

 

 

 今、何か聞こえたような……? それにこんな事が前にも―――――――

 

 

 

「……ん。湊さん!」

 

 

「うぴゃぁっ!? ど、どうしたの急に大声出して?」

 

 

「それはこっちの台詞ですよ。声かけたのにずっと打鉄に触ったまま固まってたし、どうしたのかって思っちゃいましたよ」

 

 

「そ、そう……」

 

 

 

 一夏君の心配そうな顔を見て心配をかけさせないよう敢えて明るめに振る舞いながら、ピットにやってきた篠ノ之や観客席にいた柳崎達と合流する。

 

 

 

「(……気のせい、だよね?)」

 

 

 

 帰る途中、打鉄を振り返りながら僕は先ほど感じた違和感を拭えずに内心、首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・それがどれだけ異常なことかを知るのは、そう遠くない未来のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――あーもうっ。お姉ちゃんのせいで全然○○出来なかったーっ。今はぼくがあの人のISなんだから、じゃますんなバカー!

 

 

 ――――――知りません黙りなさい妹の分際で姉に逆らうんじゃありませんっ! てか、私だってまだ一度だって起動さえしてもらってないのに何度も何度も乗り回して振り回されて……きーっ! 羨まけしからん妹ですよあんたはっ!

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