IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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最近大学の研究室の友人達と一緒にボーリングをしに行ったんですが……


平 均 ス コ ア 三 ケ タ 未 満 っ て ど ゆ こ と ?


いくら人生通してボーリング場に行った回数が二桁未満とはいえ、この下手さ加減は何なんだと、我ながらあまりのガーターっぷりにビビりました。どうやったらボーリングって上手くなるんでしょう? 真っ直ぐ投げるのがあんなに難しいとは思いませんでした………ストライクも二ゲーム通して一回だけでしたし。


第十四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 湊さんの調子がすこぶるいい。

 

 

 

 ……いや、この言い方だと誤解を招きそうだから言い換えよう。

 

 

 

 

 湊さんの、ISの腕前がほんの先日前よりも明らかに上達しているのだ。ちなみに本人の顔色は何だか悪そうだ。

 

 

 

「大丈夫ですか? 風邪なら休んでた方が…」

 

 

「い、いや、風邪じゃ無いから大丈夫だよ。平気平気」

 

 

 

 ならその目の下の隈は何なんですか。それに訓練以外の時も空を見て呆けていたじゃないッスか。

 

 

 寝不足だと本人は言っていたけど、枕が変わると眠りが浅くなるとかだろうか? 子供じみて可愛らしいとは思う反面、かなり不便な体質だと同情を禁じ得ない。

 

 

 先にも言った顔色もそうだけど、束さんや山田先生のスキンシップにもリアクションが薄かったし、湊さんの親友だという柳崎さんは目に見えて心配を露わにしていた。実際訓練が始まる前……

 

 

 

『おいコラ』

 

 

『あた、どうしたのさ一体』

 

 

『お前なぁ……どうしたじゃないだろ? そんな隈を濃くして今日も訓練するのか? 休んだって』

 

 

『大丈夫だって! 全然平気! それに今なら上手く動かせそうな気がするし』

 

 

『……本当に、平気なんだな? もし異変があったら引き摺り落としてでも寝かせるからな』

 

 

『怖いこと言わないでよ…』

 

 

 

 無論そのやり取りを遠巻きから見ていた若干二名がハンカチを噛み締めていた光景なんて俺は見てないし、そんな光景はありはしなかった。そうだと言ってるんだからそうなのだ。

 

 

 

 しかしどうして。湊さんが言っていた通り、今日の訓練で湊さんの動きは前回のように手を引かなければ動けなかった時とはまるで違っていた。

 

 

 

「えっと、こんな感じで…………おー、と、飛んでる飛んでる!」

 

 

「(まだ歩行速度ぐらいですけどねー……にしたって凄い進歩だ)」

 

 

 

 浮くのは自動操縦で出来ていたからあれは除外としても、今の湊さんは自分の意志でアリーナ内をIS基準の速度で言えば止まっているようなスピードではあるがそれでも確かに自分の操縦で動けていた。

 

 

 何かコツを掴む切欠でも得たんだろうか。ひょっとするとそのせいで寝不足なのかもしれないな。

 

 

 

 止めるべきかもしれないけど、本当に嬉しそうに空を歩く?湊さんを見てるともう少しだけこのままにしておきたい気持ちもまた湧いてくる。

 

 

 

「(姉……って言うか、世話の焼ける甘姉? うん、湊さんはギャルゲーだとそんな感じかな)」

 

 

 

 した事は無いけど、弾の奴が確か勧めてきた学園物のゲームのサブヒロインで血縁関係の無いダダ甘なキャラクターが良いんだと力説していた覚えが、あるよーな無いよーな。

 

 

 うちの姉はやたら歪んだ愛情を持っていたと幼馴染である束さんからの証言で知ったばかりではあるけど、例えば湊さんがそのゲームのようなキャラで俺の姉だとしたら…………

 

 

 

「ぽわんぽわんぽわわ~ん」

 

 

「? いきなりどうしたの?」

 

 

「あぁいえ、ちょっとイメトレに入ろうかなーと。湊さんは引き続きアリーナを今度は大きくとりながら飛行してみて下さい。慣れてきたら速度を上げて」

 

 

「あ、あぁうん。それは良いけど宣言しなくても……てか今しなくても」

 

 

「まだ先のことなんですけど、学年別クラストーナメントがありまして、それで俺クラスの代表として参加する事になってるんで今のうちの自分の戦い方を見つめ直したいんです。こうして折角アリーナを貸し切って使えてるんで、どうせならISを装着したリアルな感触を確かめながらイメージしてみようかと」

 

 

「成程、そうのも大事なんだね。なら僕はちょっと一周してくるよ」

 

 

 

 我ながら咄嗟にしてはなかなかに良い嘘が吐けた。多少良心が痛むが、これもダダ甘姉な湊さんをよりリアルに妄想するため。さてと、ではもう一度ぽわぽわ(ry………

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

『ねぇ~、一夏君っ、一夏君ったら起きて~! もう朝ご飯出来てるよ~?』

 

『……うぅん? あと五十分……』

 

『長すぎるよぉ!? いいから起きてったら~!』

 

『………zzz』

 

『……起きないつもりなんだね。ならいいもん、起きないならこっちも実力行使をしちゃうから』

 

 

 もぞもぞ、がさごそ

 

 

『―――――って、何人の布団の中に潜り込もうとしてるんだよアンタはっ!?』

 

『あっ、おはよー一夏君っ。やっと起きた~』

 

『そうじゃねぇよ! てか、もう俺高校生だぞ! アンタは大学生! 分かるな!?』

 

『当然だよ~?』

 

『ならいい加減分別を弁えろ! 思春期の男の子の布団に潜り込むな!』

 

『却下します』

 

『0.1秒で答えるなよ!?』

 

『だってぼく達姉弟じゃない。なら、一緒のお布団で添い寝しててもふつ~だよ~』

 

『普通じゃねぇ! 世の姉弟の皆様はちゃんと別れて寝てるわぁぁ!』

 

『余所は余所。うちはうちです。えっへん』

 

『偉そうにのたまうことかー!?』

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「………うん、凄くいいかもしr」

 

 

「切り捨てぇぇぇ………御免ッ!!」

 

 

「あべしッ!?」

 

 

 

 ぽやぽや笑顔な湊お姉ちゃん(妄想)との会話でかつてなく和んでいた俺の額と鳩尾と下腹部をほぼ同時に襲ってきた衝撃に世紀末的な悲鳴が漏れた。

 

 

 

 分かったのは白式が伝えてきたダメージが“90”を示していた事、そしてその異常を成し遂げた存在が目の前怒ポニテ天を突く勢いの幼馴染だという事ぐらいか。痛みでぼやけた意識でそこまで理解し、復帰してすぐに口を開いた。無論出るのは文句だ。

 

 

 

「…テメェいきなり何しやがる!? 俺なんかしたか!?」

 

 

「あぁしたとも! 湊さんが操縦ミスしてアリーナの障壁にぶつかって気絶してるのを放置してたと思ったら、終始にやけ顔でこちらの呼びかけも無視していただろうがぁ! このうつけぇぇ!!」

 

 

「なぁっ!?」

 

 

 

 子供の頃でも見たことの無い怒りの形相よりも、湊さんが気絶したという話を聞いて慌ててセンサーに意識を割いて湊さんを探す。

 

 

 そして見つかったのはアリーナの地上壁際で仰向けに倒れている湊さんと、駆け寄っている柳崎さんの姿。

 

 

 一気に血の気が引くような感覚に体が震え、慌ててあちらに向かおうとして箒の持つブレードに道を塞がれる。

 

 

 

「安心しろ。壁にぶつかったとはいえスピードが出過ぎていた訳じゃない。見てた限りじゃテンションが上がっていたせいで自分の疲れ具合が分からなかったんだろ。今はぐっすり眠っているだけだ」

 

 

「そ、そうか……良かった」

 

 

 

 でも俺の監督不届きで湊さんがあわや怪我をしかねない状況だったのは違いない。急いで謝ろうと思うもまた箒によって阻まれる。文句を言おうとして、俺以上の怒気を孕んだ箒の笑顔に黙殺された。

 

 

 

「ちなみに、姉さんと先生と柳崎さんからの伝言を預かっている」

 

 

「……え、えっと、それは何ディスカ?」

 

 

 

 聞きたくない。聞きたくないけど、これは自業自得。逃げ場は………無いんだろうなぁ。仕方ない、大人しく受け入れよう。

 

 

 

 

 

「――――――何人のモン()で勝手に妄想してんだコラァ。小僧が頭に乗るな……だそうだ。という訳で、私が三人に代わって制裁をな」

 

 

「……………ヤサシクシテ?」

 

 

「すまないな一夏。個人的な理由も多分にあるが、それ以上に私はまだ死にたくないんだ」

 

 

「ですよねー………あ、あはは」

 

 

 

 その時の箒の目は俺と同じくらい恐怖に濡れていた………だから少しぐらいは手加減して欲しかったなーと思うのは、俺の我儘だろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『今日は一日フリーです! 昨日みたいなことが起きたら困るし、みっちゃんなら“コレ”を着てれば学園にいても誤魔化せるから一日リフレッシュしてきてねっ!』

 

 

 

「……なら学園の外に出させてくれよな……まぁいいけど」

 

 

 

 訓練中止まり方が分からない。自転車の練習をしたことのある人なら分かるであろう恐怖と痛みを経験した次の日、流石に体調の面から訓練やISに触れるのは今日一日禁止となり、その代わり今日だけは完全にフリーになれる権利を貰えた。

 

 

 

 柳崎も篠ノ之もイクスちゃんも山田もいない。柳崎は学園にいるという知り合いに会いに、篠ノ之とイクスちゃんは布都御魂の組み上げ、山田は仕事で当然のようにいない。

 

 

 一夏君と箒ちゃんも授業中でいないし、一夏君は監督役の任を解かれ今は自分の訓練に打ち込む運びになった。あれは僕が無理を推したせいもあるんだけど、あの場の雰囲気では僕の発言権などあって無いようなものだろう。

 

 

 

 てな訳で一日フリーになったのは良いけど、何もIS学園の制服を着たまま校内を歩きまわる羽目になろうとは………

 

 

 

「(そりゃ背は低いしご丁寧に腕章で『篠ノ之ラボ所属』って書いてあるから怪しまれはしないだろうけど…)』

 

 

 

 篠ノ之達の研究所はISの最先端であるため、そこを目指してこの学園に入学してきた学生も多いそうだけどこの腕章を持っているのは全校を見渡しても一桁で事足りる程度らしい。

 

 

 審査基準は能力は勿論のこと、篠ノ之とイクスちゃんという個性半端無い連中と真っ向から付き合える人間か或いはあの二人の濃さに負けない熱意や濃さを持ってる人間であること。

 

 

 てかそうでなければまず数日とも保たない気がしなくもない。

 

 

 

「僕でさえぶっ倒れるぐらい心労が嵩んでたんだし………いや、これは特例か」

 

 

 

 篠ノ之達の相手に疲れたのもそうだけど、夢の中ではISのコアに宿っているらしい仮想人格にやたら『動かし方が下手』だの『もっとこうしろ』だの指図を受けたことも、未だ柳崎との相部屋に慣れていない事もある。

 

 

 もう少し甲斐性を持っていたら違っていたかもしれないけど、寝ても覚めても夢の世界でも安らげなかったのだ。そりゃ一週間でぶっ倒れても仕方ないんじゃなかろうか。

 

 

 

 だから今日はISも知り合いもいない。本当に気を抜く事の出来る貴重な一日なのだ。制服を着てる事だし不審者扱いにはならないだろうから………よしっ。

 

 

 

「(もうすぐお昼休み! 一夏君達から話は聞いてたけど、ここの食堂のご飯ってすっごく美味しいらしいんだよねー………ふふふ、楽しみだなぁ)」

 

 

 

 宿直室で食べるご飯は全部自分で調理したものだし、その食材も学園の敷地にあるアウトレットから柳崎に頼んで購入してもらってるという状態。

 

 

 それじゃあまりに今までと変わらなさ過ぎたので、そろそろ自分で作った料理以外を食べたいと思っていたところだ。折角のこの機会、活かさない手は無いだろう。

 

 

 

 …………思い立ったが吉日という訳で昼休みを待って食堂にれっつらごー。がしかし。

 

 

 

「待ってたわよ一夏!」

 

 

「そりゃどうも。でもさっさと席つくかしないとラーメン伸びるぞ?」

 

 

「わ、分かってるわよそんなこと! アンタが遅いのが悪いんじゃない!」

 

 

「無茶苦茶なこと言うなお前。あー分かったから、それじゃあっちの席で待っててくれ。すぐに行くから」

 

 

 

 食堂に入ってすぐに聞こえてきたそんな会話。今日は一人で過ごしたいと思っていただけにいきなり知り合いの声が聞こえて思わず気配を消して食券を購入してしまった。

 

 

 

「(あ、しまった慌て過ぎて蕎麦定食がかき揚丼定食に!?)」

 

 

 

 ちょっと手違いはあったが一夏君達に僕の存在を悟られること無く料理を受け取り、出来るだけ身を潜められそうな席につく。幸いにして今日は空いている日らしくテーブル席の数にも余裕があったので一人で座ったとしてもそれほど違和感は無かった。

 

 

 

「ふぅ、ちょっと失敗したけどまぁいいや。それよりこれ中々美味しs…」

 

 

「で、一夏。ソイツ誰よ?」

 

 

「そ、ソイツとは何だ! いきなり失礼だぞ君!」

 

 

「あぁごめんごめん。で、誰?」

 

 

 

 …………どうして後ろの席に付くのさ………っ!?

 

 

 

 明らかに僕が食券を購入する前に料理を持っていた子まで今一緒に座ったという事は、場所取りをせずに一夏君達が料理を貰うまで待っていたということか。その健気さはともかく何故に態々僕の後ろに……! そこに作為が無くても、この処遇を嘆くことぐらい許して欲しい。

 

 

 仕方なく、食事中だというのに極力気配を消したまま食事に集中する。その際やけに後ろからの会話が聞こえてくるが、知っている二人以外の二人の少女の声。何だかどちらも地が強そうというか何というか。

 

 

 

「へ、へぇ……そいつがもう一人の幼馴染ってわけ? 私は“凰鈴音”よ。コイツの幼馴染。まっ、よろしく頼むわね、昔の幼馴染さん?」

 

 

「むぐっ…! こ、こちらこそ。まぁ、いきなり喧嘩腰な相手と仲良く出来る自信は私には無いが」

 

 

「言うじゃない……!」

 

 

「こ、こほん。では次はわたくしが……」

 

 

「別に要らないわよ? 大して興味無いし」

 

 

「な、なんですってぇ!?」

 

 

 

 わぁすごいこわい。思わず平仮名でそう思ってしまう程の甲高い声だった。

 

 

 バレないように振り向けば、金髪でふわふわとロールした金髪が特徴的な垂れ目少女と、髪を左右アップで結っているツインテールの少女がメンチの切り合いをしているではないか。これが女子校の恐ろしさか。

 

 

 構図的にはツインテの子の物言いがあからさまに悪く、それに過剰に垂れ目の子が反応している感じ。

 

 

 あっちのツインテの子はどうも思ったことを堂々と言うタイプらしく、さらに自分に自信があるのだろう平然と人をこき下ろす物言いを使ってのける。

 

 

 それは初対面相手じゃ誤解を招きやすいと思うんだけど案の定。喧嘩を売られたと思ったのだろう垂れ目の子はさっきから顔がトマトのように真っ赤っかだ。

 

 

 

「(一夏君はどう……って頭抱えてるなー。あの様子だと止められないっぽそう)」

 

 

 

 一夏君の性格なら面倒でも知り合いの喧嘩は仲裁に入りそうだけど、あの二人は何を言っても無駄と判断したのか大人しくご飯を食べている。

 

 

 そして箒ちゃんの方は二人の今にも掴みかかりそうな雰囲気をどうしようか考えあぐねている様子で、チラチラとどちらにも視線をさまよわせて…………あっ。

 

 

 

「(湊さん!? 何その格好……じゃなくて! そこにいるならこの状況を何とか!)」

 

 

「(知り合いでも無い第三者が首突っ込んでマシな事になるとは思えないんだけど)」

 

 

 

 視線が合って五秒。僕達は視線だけで意思疎通が出来てしまった。でも嬉しくないのは何でだろ?

 

 

 

 見過ぎたせいか箒ちゃんと目が合ってしまい、懇願してくる眼差しにすまないとは思うもあそこにつっこむとまず間違いなく僕まで変な誤解を受けかねない。特にツインテの子を刺激するような要素は少ない方がいいだろう。

 

 

 

「(ことが終わったら僕も一緒に考えるから、今は一夏君と二人で。ね?)」

 

 

「(湊さんの意地悪ー!?)」

 

 

 

 後ろ髪引かれる思いで視線を逸らす。決してこれ以上関わりたくないと思った訳じゃない。訳じゃないよ?

 

 

 それにこちらもまだ昼食が済んでいない。湿気ってしまう前にさっさとかき揚をばいただいて……

 

 

 

「あむあむ。ん~、桜エビが入ってない揚げはいまいちだね~」

 

 

「…勝手に食べて言う台詞がそれなの?」

 

 

「だいじょぶだいじょ~ぶ~。ウガミーなら許してくれるって~」

 

 

「………後でちゃんと謝るように」

 

 

「はぁ~い~」

 

 

 

 

 

 

 ―――――お、おやぁ? こ、このお二方はもしかしてもしかしなくても………?

 

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