IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
基本原作に触れないせいで流れが分かりづらいと自分で気付いた昨今、まぁ以前も似たような感じでしたし何とかなるでしょう。
作者は基本バカなので計画性という言葉が嫌いです。計画通りに物事を進めた試しが無いので。
「………という訳なんで、二人にも相談とか色々協力してもらいたいんだけど、いい?」
「おりむーもしょうがないねぇ~。でもりんりんのためだしいいよ~、手伝ったげる~」
「り、りんりんって私!? それじゃパンダみたいじゃない!」
「……わ、私もっ。幾らなんでも、プロポーズを忘れるなんて、酷いと思うし」
「うっ、め、面と向かってプロポーズって言われると結構恥ずかしいんだけど…」
「ううん。凰さんは凄い、と思う。そんな風に自分の気持ちをぶつけられて、凄いよ」
「あ、あはは………お願いだからそんな真っ直ぐ褒めないで。尊敬のまなざしがちょっと痛いからって崩上さんも笑ってないで何か言ってってば!」
同盟を結成した明くる日。
僕は再び女子の制服を纏って身分を誤魔化しながら食堂へと赴き、予め会う約束をしていた簪ちゃんと本音ちゃんとの席に鈴音ちゃんを同席させ同盟の増員に成功した。
とはいっても、特別一夏君を敵視する訳じゃなく本音ちゃんは同じクラスだから色々と一夏君の様子を探り易いし、やはり恋の悩みは同年代の友人と共有したり励まし合ったりした方が何かと気が楽なんじゃないかという思惑が動機なんだけど。
最初は人見知りするかとも思ったけど、会って早々に簪ちゃんと鈴音ちゃんの方が意気投合していて本音ちゃんや僕のフォローを一切必要としない程二人の仲は良好だった。
これは鈴音ちゃんが元より社交的というか人に対して尻込みしない開けっ広げな性格が大きな要因ではあるんだろうけど、何より簪ちゃんが自ら積極的に話しかけている姿に驚いた。
僕の知ってる限りじゃとても人見知りが激しく心を開くまでに時間のかかる少女だと思っていたんだけど、やはり年頃の少女は大人が思うよりずっと大人なんかねぇ。しみじみしちゃうねぇ。
くいくい。
「…ん?」
そんな風に思っていると不意に裾を引っ張られ何となくそちらを振りむく。
本音ちゃんが耳を寄せるような仕草でこちらを呼んでいるようで、とりあえず話し込んでる二人の邪魔をしないよう静かに耳を寄せる。
「…どうかした?」
「ううん~。ただ~、ウガミーの今回の狙いが当たって良かったねぇ~って」
「………何ノ事カナ?」
「惚けるつもりならそれでもいいよ~。ただ、ウガミーが思ってるよりかんちゃんはずっとしっかりしてるから過保護じゃなくてもいいかな~」
「……………参りました」
この少女。いつも眠たげでのほほんしてるだけじゃなく僕の意図まで読んでらっしゃった。いつも思うんだけど、そんなに僕の思惑ってバレやすいんだろうか?
というのも今回二人に鈴音ちゃんを紹介したのは味方を増やすという目的の他にもう一つ、簪ちゃんの人見知りを改善したいという意図が含まれていたのだ。それをこうも簡単に本音ちゃんに見破られるとは思わなかったけど。
けど、本音ちゃんが言うように確かに僕の過保護だったんだと楽しそうに会話している二人を見て思い知らされる。
告白という乙女にとって一つの大きな壁を経験済みな同性に対する純粋な尊敬を向ける簪ちゃんに、それを恥ずかしそうにしつつも満更でもなさそうに受け止めている鈴音ちゃん。
やぱり恋愛絡みの話題はこの年代の女子の興味を引っ張り易いのだろう。実に生き生きとしている二人に僕が何かを心配する必要なんて無かったのだ。
「(告白が空回りって、経験は無いけどきっと辛かった筈だからね。少なくとも、簪ちゃんみたく告白自体を肯定してくれる相手がいれば鈴音ちゃんの方も立ち直り易くなるかもしれないし)」
明るく振る舞っているとはいえ、告白はそんな簡単に乗り越えられる物じゃ無いと思う。故に、鈴音ちゃんが無理をしているかどうかなんて分からないけど、気に掛けない訳にもいかない。
だからこそ簪ちゃんの告白の肯定は彼女にとって良いファクターになってくれれば……そう思わずにはいられない。
「ま、まぁそれよりありがとね? 私転校してきたばかりだから、友達が出来て嬉しいわ」
「友達……? って、あ、あのっ、いきなりそんなっ」
「え? もしかして……嫌だった?」
「(ブンブン!)そんなこと無いよっ、凄く嬉しい! でも……」
「何言ってんのよ簪! 私なんて初対面の相手にこんなこっ恥ずかしい話してるんだからもうとっくに友達になってるものだって思ってんのよ? だ・か・ら、アンタが遠慮する必要はないの」
「……えへへ、うんっ。ありがと、凰さん」
「その呼び方は友達って感じじゃないわね~。私の事は“鈴”で良いわよ、私なんてもう呼び捨てにしてるしね」
「そ、それじゃ………り、鈴…………さん」
………何て和むやり取り。ともすれば写真に収めたい程微笑ましい光景についつい笑みが浮かんでしまうのも致し方の無いことだと思う。
現に本音ちゃんは表情を緩いもののままにしながらも何処からか『パシャパシャ』とシャッターを切るような音が。
よくよく見てみると長く伸びた袖に隠れて何かが光っている様子が見えた。あれは……まぁ、気にしたら負けだろうな、うん。
そして簪ちゃんと向かい合っている鈴音ちゃんの方の様子も何かおかしいような。何かウズウズしてない? その衝動にはよく覚えがあるだけに、次に彼女が起こす行動は何となく悟ることが出来たのでそのまま静観する事にした。その直後だった。
「く~~~~~っ! このっ、可愛いじゃないこのこのっ!」
「ひぅっ、り、鈴さん?」
「あ~もう何この萌生物っ! 何でこんなに可愛い訳? 悔しいじゃない抱きしめてやるっ」
「あ、あ、あわわわ……!? 本音っ、湊さんも見てないで助け……っ」
「あう~。可愛いよ~かんちゃ~ん~。およっ、このアングル頂きっ」
「…………和むにゃぁあ」
「二人とも!?」
簪ちゃんには悪いけど、この小動物同士の戯れにもうしばらく癒しになってもらうとしよう。やっぱ本物の女の子は見てて心がほっとするっていうか、篠ノ之達とは違うよねぇ。うんうん。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「――――――何て思ってないから! 全然考えてないからとりあえずその唸りを上げるチェーンソーみたいなの引っ込めて!?」
「はっはー。今日はお昼からって言ってたよねー? なのにみっちゃんたら来ないどころか女の子達とキャッキャウフフだったよねー?」
「別に如何わしいことはしてないって! ただ精神的にここ数日中の疲れが全部吹き飛んだぐらいの爽快感は感じてはいるけど!」
「爽快感!?」
「喰いつくとこがまた微妙に危ない部分だなオイ!?」
そーいや鈴音ちゃん達との事に関わり過ぎて自分の用事をすっかり忘れていた。
思い出せたのは昼休み全部を鈴音ちゃんの暴走とそれに巻き込まれた簪ちゃんを見守ることに費やしきった後。
のんびり部屋に戻るつもりでいたところにきて漸く篠ノ之に呼ばれていたことを思い出して急ぎ研究所に顔を出した途端、先のやり取りに戻る。
まさか扉を開けた瞬間目の前に回転刃を向けられることになるとは思わなかったのですげぇビビる。てか、それどう考えてもIS用の武装でも何でもなくね?
「うふふー、最近ヒロインとして出番が如何こうって悩んでるってのにさー、みっちゃんはそんな私を無視しちゃうんだーへーふーん………へぇ」
「ひぃぃ!? てか最後めがっさ声低いんだけどどっから声出した!?」
「ツッコむとこそこなの?」
「そこのロリも見てないで何とかしてくんね!?」
「だが断る」
篠ノ之の目からハイライトが消えてるような気がしなくもないし、合法ロリはニヤニヤとこちらを観察するだけで布都御魂の調整でもしているのかキーボードを叩く手を止めていないし。
割と絶体絶命なこの状況。これはもう余裕だの言ってる場合じゃなく、死に物狂いで何とかしなければガチで篠ノ之にやられる。
唸るチェーンソーを前に思考はフル回転。恐怖に煽られた本能は普段以上に思考を加速させてくれるが、正直この頭が導き出した答えに未だかつて碌な目に遭ったためしがない。
けど偶には、少しぐらい期待したいじゃないか。偶には状況を悪化させずに篠ノ之を宥められるような、そんな手段を思いつけ僕……!
篠ノ之の背後のバックパックが何やらミサイルらしく弾頭を見せ始めたその時、僕の頭脳がはじき出した“この場を切り抜ける行動”を実行することにした。この際、自分を信じて動かなきゃ本気で首と体がお別れしそうだったのでその手段を僕は一切考慮しなかった。つまり、
――――――ひしっ。
「もうみっちゃんにはちゃんと調ky…もとい、教育しないとだ――――――――ふにゃ?」
「おぉ」
「ごめん約束忘れた僕のが悪かった! でもその凶器は流石に受けきれないかな!? だから落ち着いて篠ノ之後で好きなだけコスプレするし弄っていいから!」
……うん、これびっくりするほど僕にとって(社会的)死亡フラグ。でもこうでもしないと今度は物理的に死亡フラグが立っちゃう訳で……本当に、難儀な人生である。また今度簪ちゃん辺りで癒されよう。
物騒な伐採用器具を振り回させないよう篠ノ之に密着して、我ながら後で死ぬほど後悔するであろう台詞を叫ぶ。まぁ柳崎ほど身長差が無いからしがみ付くような形よりは抱き合う形に近い分、相手の動きを制限しやすいのでこれで迂闊に凶器は振り回せない筈。
ある意味自分を生贄にしたこの行動。篠ノ之から何のリアクションも無いのが少々不安………うん?
「(それにしたって無反応て……いやまぁ、そりゃしょっちゅう抱きつかれたりはしてる訳だけどもうちょい反応あっても……やっぱ玩具扱いなんだねぇ、僕ってば)」
昔からそんな立場であるが、もうちょいこう……いや何を期待してんのか僕は。
いつも抱きつきにくる相手だ。そもそも僕が抱きつこうがむしろ鴨が葱背負ってきたぐらいの感覚ぐらいしかあるまい。だからこそ今の台詞を思いつけた訳で、遊んでいいからチェーンソーは止めて欲しい訳で、かといってこうも無反応だとぶっちゃけ恐怖心が。
恐る恐る篠ノ之の顔を見てみれば、先のハイライトの消えた笑顔ではなくなっているもののぽかんと口を開けた状態のまま固まってしまっている。
「……篠ノ之?」
「今はそっとしておいた方がいい」
「イクスちゃん? でも、何か変じゃない? いつもなら僕があんな台詞を言えば大体食いつくと思うんだけど」
「そっとしておいた方がいい」
「いやでm」
「そ っ と し て お い た 方 が い い」
「お、おぅ……」
嫌に強い語調に押され、促されるまま篠ノ之から離れて布都御魂の基礎フレームだけ組みたてられたハンガーに向かう。
離れても尚動かない篠ノ之が気懸りだけど、イクスちゃんの方で何とかしておくとの事だったのでとりあえず任せることにした。それにしたって、篠ノ之の奴どうしたんだろ?
「(普段は自分から抱きつくクセに……抱きつかれるのに弱いとか? いやそれも違う気がするし……それとも僕に抱きつかれるのが嫌だったとか……普段弄ってる相手が調子に乗って気に喰わなくてストレスが有頂天だったから固まったままで………………考え過ぎだよね?)」
まぁ好かれているというよりは遊ばれてるぐらいな感じでしかなかったし。ちょっと自分好かれてるとか調子に乗ってたのやもしんない。これからは気を付けよう。
……別に、自惚れてた訳じゃないし、そもそも十年以上も離れていた相手なのだ。むしろ今までのような過剰なスキンシップのが可笑しいのであって普通は距離を置くものだろう。うん、これが普通なのだ。最近の僕の感性が些か麻痺していただけで。
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「――――って誤解してると思うけど。そこんとこ。どう? 実は攻められると弱い兎さん?」
「…………はにゃ?」
「思考自体が麻痺してる。どんだけ受けに向いてないんだろこの子は。まぁ。だからこそいつも羞恥心を感じないようにノリだけでアピールしてるんだろうけど」
もっとこういう純情な面を出せば多少は印象も変わるだろうに。つくづく天才とは度し難い生き物だ。
おそらく脳内では先の青年の発言の先を妄想し過ぎて現実に思考が追いついてないだろう。徐々に顔に赤みが差しているところをみると。妄想が発禁レベルに達し始めているのか。どちらにせよ。
「意中の相手に抱きつかれた程度でこれじゃ。まだまだだよ
これが○○において黒幕的存在だとは誰が思うのか。私が思っている以上にどうやら。この世界は歪んでいるらしい。
そしてその中心であろう件の人物の向かった先に視線を向ける。今まではつまらなかったけど。これからは楽しくなりそうで何より。
「………もっと。楽しませてね?」
私が私らしく満足できる全ての為に。やはり。あの子は今後も私の観察対象だ。