IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
私も熱望していたのですが、弟に絶対買うなと釘を刺されていたので動画あがった時に見ようかなんてヘタレ思考満載なイイ日旅立ちです。
番外編をそろそろ書きたいけど中々ネタが絞れない……何か見たいのがありましたら感想にてご意見お待ちしております。それでは。
――――――湊・夢世界。
「……って、何今の。何で僕の夢ん中にタイトルなんかあんの?」
『いえ、単なる気分です』
「……お前は人の夢だからって勝手に」
言うまでも無く夢の世界。もっと言うと、コアのAIとの強制リンクを行うための疑似空間。そこに僕と白髪褐色肌の女性、布都御魂はいた。
篠ノ之がしばらく使い物にならないとイクスちゃんに言われて暇になったので、どうせと思い会いに来たところだ。
いつか寝不足を訴えてISによる身体保護目的の強制催眠を受けて以来、ISを纏った状態で寝ると何故かこの世界に移動してしまい、そこではその装着したISのコア人格が必ずいる事がここ最近漸く分かってきた。
布都御魂は今目の前にいるような白髪を腰まで下ろした褐色の十代後半の姿を模した少女。
打鉄は大和撫子然とした小学校低学年ぐらいの幼女。
でもって試しに乗ってみたラファールという機体の場合だと、何故か、メイド衣装の金髪少女だった。それらが僕の妄想かどうかはさておき、こうして会う事が出来る以上色々と話をしてみたいと興味が湧き、暇な時間はこうしてISと語り合う機会を自ら作るようになった。
ちなみに余談だが、ワンオフのような一機しか無い専用機とは異なり打鉄やラファールといった量産型のISの場合だと皆似たような外見になるらしいがそれぞれ個性はしっかりと備わっているらしい。僕が装着したことのあるISがたまたまそうだっただけで、中にはグラマーな打鉄もいれば小悪魔風なメイド衣装のラファールもいるのだとか。ISって分かんない。
暇という理由でIS達と話すこともある僕だけど、それを快く思わない存在もいたりする訳で。それが専ら、目の前で頬をあざとく膨らませている布都御魂本人だったりする。
『湊様の愛機となるのは私です。それを湊様は他の女共を乗り回してはイチャイチャイチャイチャ……そういうプレイ、好きじゃないです』
「プレイ言うなおバカ!? てか、言い方をもう少し考えてくんない?」
『……ISをとっかえひっかえ』
「アウトおおぉぉぉおおおお! だからっ、僕何にもしてないの悪しざまに言うの止めれ!」
初っ端の冗談で何となく悟っていたんだけど、今日も今日とてこの少女?の機嫌は悪い。
僕がISと夢限定とはいえ会話できると分かり、他のISに試乗することを快く思わない布都御魂はこうして僕を困らせる言動をしょっちゅう使ってくる。ここに他の人がいなくて本当に幸いである。
というか、コイツからしてみたら僕はそんなにプレイボーイみたいな奴に見えるのか。ISの感覚は分からないけど、確かISって人を選ぶんだっけ? 確かに幾ら汎用を目的とした量産型の機体とはいえ、そういくつも乗っていたら彼女達からしてみればそう見えるのかもしれない。
……いや、それでもまだ三機だし………そう言い訳してしまうのは、ひょっとしたら心の何処かで僕はこの事を悪いと思っているのだろうか?
分からない感覚だし、独占欲を持たれても困るのはこちらなんだけど………難儀な事に、相手が女の子である時点で僕は妥協する道しか選べない。だって、
「(これも環境だよねぇ………女尊男卑関係なく女性に逆らえない体質って……とほほ)」
母親しかり幼馴染’Sしかり柳崎しかり、とかく周囲の女性はキャラが濃くて僕は碌に我儘とかを通せた記憶が無い。
家事全般が死滅してる母さんの代わりに家事を必死で覚えたのが小学一年の時だったし、女性に逆らえない事は既にその時点で悟りきっていた事実でしかなかった。
父親は論外だし、ぶっちゃけ24年の人生の中で男が女より強かった姿を見たことが無い。
それは相手が兵器でも例外では無かったらしく、例え本体が厳つい機械だとしてもこうして『女の子』の姿をされるとどうしても強気に出れない。いつもより厳し目な口調でツッコみ入れるぐらいがせめてもの抵抗という辺りに僕の情けなさがにじみ出てるような気がしてならない。
というような事も手伝って、仮に相手がそれまで関わりの無かった世界に引きずり込んだ元凶であったとしても、不機嫌そうにされるとどうしても、こう、何というか。
「分かったから! 今度から打鉄ちゃんとかラファールちゃんと会う時は首輪のお前を連れてく! それで妥協して下さい!」
ひょっとしたらこうした行為が“崩上湊プレイボーイ疑惑”に繋がってるのかもしれない。でもそんなつもり無いんだけどなー、むしろいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも弄られてばかりだから不機嫌にしないよう最大限注意を払ってるだけのつもりだし。
多分コイツの場合、自分の預かり知らないところで僕が他のISに乗ってる事が嫌なだけだろう。何せ人を強制的に自分の操縦者に仕立て上げるようなことまで仕出かす程の我儘娘だ。独占欲は人、いやIS一倍に強いんだろう。
それを見越した上での先の発言に、布都御魂は少し考えこんでから、
『……ふぅ、やれやれ。我儘なドライバーだとたま困っちゃいます。湊様がど・う・し・て・も!というのであれば仕方ありません。私が常に御傍でにいますから、決して一人で他の子と会っちゃダメですからね? もし会ったら許しません』
「うん。すげぇ飲みこみにくい台詞があったような気がしたけど、もう気にするだけ無駄っぽいからスルーするね!」
ISって篠ノ之が中学の頃から開発が始まったものだから……年齢的には十歳ちょいか。なら、この俺様発言も多少は赦せる………かな?
ここら辺で何も言えないのが自分の情けないところだと自覚しながら、口調こそ強いけど表情に隠しきれない嬉しさを滲ませる布都御魂を見てるとどうでもよくなってくる。成程、とことんまで女の子に甘いから僕はプレイボーイなのか。少しだけ納得。
そして布都御魂の機嫌も直ったところで、漸く“本題”に話は繋がる。
「はぁ……ところで、今日も“アレ”、やるの?」
『はい。一応データ上とは言え大体のスペックデータの構築は済みましたので、私を使いこなして頂けるよう今日も今日とて特訓です。特訓あるのみの佃煮にです!』
「そんな料理誰が食うんだよ……ちなみに僕は絶対嫌だからね?」
『やだなーもう、その場のノリにおける適当かつ最適な言葉遊びじゃないですか。湊様はもう少し教養やギャグセンスを磨いた方がいいんじゃないですか?』
「うわぁいありがとーそして凄いイラってきた今のー」
いつか泣かしてやると心の中で呟きながら、僕はいつもより投げやりに手を布都御魂に差し出す。
『では、これより
「へーい」
『……むぅ、あの、湊様。折角一体化するんですからもっとドキドキしてくれません? ロマンが無いじゃないですかぁ』
「……はんっ」
『うわあああああああああん!? 鼻で笑う湊様も小悪魔的憎らしさで可愛いけど、うわあああああああああああああああん!?』
うん、少しスッキリしたし、泣かすのはまた今度でいいや。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『……同期完了。湊様、何処か不都合な個所がある訳無いので聞くだけ無駄なのは承知なんですが、こうした方がAIっ娘っぽい気がするんですけどどうです?』
「はいよー、問題無いからそのあざとさを前面に押し出すキャラ何とかならない?」
『いえ、これが私のキャラですので』
「面倒な設定作ってからにこの子は……!」
そんなに個性が大事なのかと思いながら手足の調子を確かめる。とはいえ、所詮は疑似空間で
一通り体を動かして………うん、問題無しと。まぁこうして体の動作確認をするのにもちょっとした理由があるから飛ばす訳にはいかないといった側面もある。
「しっかしつくづく打鉄ちゃんとかラファールちゃんとは違うよねぇ、お前って」
『えっへん。そこらの量産型や専用機の類と一緒にしてもらっては困ります。従来の躯体の場合、どうしても湊様が躯体の動かし方に違和感を拭えないという意見を採用して今の姿を構築しているのですから、違って当然です』
大気圏外での運用をそもそも前提に作られた布都御魂だけあって、最初の時点で装甲の面積が従来のISよりも多くなっているのだけど今開発中の機体は装甲の面積云々という話では無くなっている。
全身を覆う装甲はむしろ甲虫のような外骨格へと姿を変えているせいで生身の部分が一切無く、顔も全部覆ったヘルメット式、
僕という小柄な人間が中にいるにも関わらず全長は2メートルをやや超える程度になっているのは布都御魂曰く「仕様と当たり負けしないため」とのこと。
「………というか」
『?』
「何ていうか、この格好って何かを彷彿とさせるんだけど。何か、無性に叫びたくなる感じがする」
『マイク壊したり超音波みたいな大声で、ですか?』
「そうそう! こう、必殺技を叫びたくなる外観だって言いたいんだよ、この格好って」
何で今僕の例えにコイツがついてこれたのかはさておいて、今の自分の格好はISというよりは変身ヒーロー物の造形に近い気がするのだ。大好きだから構わないけど、それにしては背中のスラスター大きい気がする。他のISでもここまで大きくは無いと思うんだけど……
しかも、そのせいで散々な目に何度も遭ってる身から言わせてもらえばもう少しぐらい小さい方がいいと思う。強く思う。
『そんな事はありませんよ? 高速機動用の装備を積んだISなら亜音速下での戦闘も可能ですし、高速戦用のISならば推進部が肥大化するのはそう珍しいことではありません』
「当り前のように心を読まれた!?」
『だってここ湊様の夢の中ですし。考えてることはすぐ分かりますよ』
「そういうものなの?……まぁいいや」
ISの事はよく分からないし、今この状況のことだってそもそも碌に理解してないのに変に理解しようとか思わない方が精神的に優しい。
ちなみにこんな感じで大体の躯体のデータは完成して後は組み立てを待つばかりらしいんだけど、武器の方も一応完成しているらしい。
曰く遠近どちらの武装も一通り用意したというけど、うぅぅん。不安だ。
『武器のデータも再現出来ますが、どうします? 今日も飛行訓練しますか?』
「あれ飛行って言う? 僕はISに乗ってたとしても弾丸になった覚えは無いんだけど」
もしも夢の外、現実でこの機体に乗って訓練をしていたらと思うとゾッとする。
だって、現実なら僕は一体何度『ひんし』になったか分からない。
大型のバーニアはその外見に違わず文字通り爆発的な加速を可能にし、初速から尋常じゃ無い速度を実現する。
その速度は“
常に音速に迫る速度を強いられるのは例えISの保護機能による負荷軽減があっても厳しいものがあるし、そんな速度を制御するのは素人同然である僕にはまず無理な話だ。
そうと分かっているからこそ、こうして物理的に被害の無い夢の中で訓練をしている訳だけどどうにも。未だに殺人的な布都御魂の速度を制御出来ずにいるのが現状。
てか、打鉄を使って必死で頑張って空中遊覧飛行がやっとこさの自分が出来るわきゃねぇのだ。一瞬だけならまだしも、恒常的にはまず無理。
『何を弱気な発言をしているのですか! 通常航行速度において私は現時点で最速ですよ!? つまり、私を使いこなせればどんな攻撃だろうと「当たらなければ、どうということはない!」の名台詞が言えるのですよ!?』
「そりゃあんなバカ加速で飛び回れたら言えるだろうさ、赤い人も真っ青な速度だし。ライトニングカウントだって戦い方考えるレベルだわ」
『でも、湊様の記憶を拝見するにあれぐらいなら何とか出来ると踏んでたんですが』
「だ~か~ら~、生身と機体とじゃ感覚が違うの! 自分の足で加速するなら感覚が分かるんだけど、別のところからの加速は何だか勝手が違うっていうか」
『? そうだったんですか?』
「最初からそう言ってるんだけど!?」
僕が武術を習った上で唯一褒められた技術が一つだけある。
俗に“気”とか“剄”とか言われる生体エネルギー操作法。他はからっきしな僕がたった一つだけ師匠や柳崎よりを上だと言われたので、密かに自慢だったりする。
これを使えば体を強化して衝撃に強くしたり、感覚を鋭敏化させたり、瞬間的に体内で爆発させて加速にも用いることが出来たりとその応用範囲は幅広い。以前、織斑から殺されかけた時もこれで感覚を強化して気配を察知してたりする。
そして操作法の一つにある“軽神功”と呼ばれるものがあり、多分布都御魂が言ってるのはこのことだと思われる。
簡単に言えば、全身に剄を巡らせることで人外の速度や跳躍力を得ることが出来る技で、これを使えば病院の四、五階ぐらいからなら飛び降りても足すら痺れない。以前逃げ出した時に密かに使用したのがこれだ。
確かに軽神功を使った状態の僕なら通常のISの速度と同程度の速さは再現できるけど、だからその生身の感覚とISを装着した状態じゃあまりに勝手が違うのだ。
例えるなら両手両足の感覚が無いというか、正座した後の痺れのようにまるで自分の物じゃ無いような感覚と言うべきか。
外骨格状の布都御魂は確かに人型の延長線上にあるけど、かと言って自分の体じゃない以上普段の感覚で体を動かすと“ズレ”が生じてしまうし、仮にこの状態で軽神功を使おうにもまずISに適応させた剄の操作法を覚えないといけない。
勿論、そんな都合の良い物は端から無い。だからこそ布都御魂と自分の感覚を可能な限り同期、つまりリンクさせて僕自身がこの状態を“もう一つの肉体”と定義した剄操作技術を確立させなければならない。
という訳で、今日も今日とて布都御魂を乗りこなせるようになるための訓練をする訳だ。どちらかといえば操縦訓練というよりは感覚を掴むための訓練に近い。丁度、自分の中で剄の存在を掴む修行をしていた時の感覚に近いと言えば近いかもしれない。
「本当に機械って感じがしないよねぇ~。ほんと、お前って何者なのさ」
『私は私です。湊様の伴侶になりたいだけの健気なウルトラスペックAI娘ですよ? どうです、萌えるでしょう?』
「僕の記憶を知ってるなら簪ちゃんクラスの萌え生物になるんだね。あれぐらいじゃなきゃ僕は萌えない!」
『あの人はレベルというか次元が違うと言いましょうかジャンルが違うというか………あの、積極的ご奉仕メイド的なAIは萌えませんか?』
「流石にそんな想定はしたことねーよ」
何だか最近コイツに対して何の遠慮もしなくなった気がする……ある意味、柳崎よりも近しい感覚がするのはこうして夢を共有しているからだろうか?
何はともあれ、機体が完成するまでに何とか操作法を考えないとなぁ………あれ? 自分からISに向かい合うのって、これが初めてのような…………
だいぶ毒されてきた事実には気付かないフリをしながらふと思考は現実に事を思い出した。
「(そーいやクラストーナメントが近いって鈴音ちゃん言ってたっけ? 応援行きたいけどどうしようか。それに一夏君との関係も何とかしたいし……)」
しかしその時の湊は気付かなかった。事態は既に、最悪の方向に動いていた事に―――――ッ!
『――――――なんて風に締めたいんですけど、どうでしょう?』
「いきなり語りに割ってくるんじゃない!?」