IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
やろうやろうと思っていた番外編なんですが、かねてより考えていたものじゃなくて何故か『ネギま!?』とのクロスに………解せぬ。
とはいえ、原作ヒロインはタイトル通り一人しか出ていませんしラブコメ要素は限り無くゼロです。これは本編でも似たようなものですn(ry
てな訳で番外編、多々あるツッコミどころには目を瞑って下さいませ。それでは。
不思議なことなんてそこらじゅうにある。むしろ在り過ぎてありがたみやら珍しさが因果地平の彼方までぶっ飛んじゃってる気がしなくもない、そんな場所。
それが僕こと崩上湊が住む学園都市【麻帆良】。
小学校卒業と両親との死別を機に、母の知り合いの伝手もありこの都市にやってきたのだが、正直に言えば両親の死に暮れるような暇も無く怒涛の勢いで十年が過ぎたように思う。
何せこの麻帆良、それまでの短い人生で僕が見てきた常識だとか世界観だとかを、あっさりとぶち壊してくれたのだから。
その紆余曲折を話せば長くなったり嫌な思い出とかを想いだしてまぁネガティブになる事請け合いなので、割愛させてもらう。
ともあれ、一種の人外魔境というか、常識が通用しない世界に十年もいれば嫌でも自分の中の色々な物が破壊され、それを惜しむ間もなく適応せざるを得ない状況が続いてくれたのである意味助かったと言えるかもしれない。
それを意図して僕をこの魔窟に寄越したのだろうか。だとしたらその慧眼には驚く事しきりだ。若干の恨み言はこの際飲みこんでおくとする。
そして現在。麻帆良で中学、高校、大学とエスカレーター式に進んだ僕は学生時代での経験を経て教師になる事を決意。
教員免許を取得した今、麻帆良学園初等部の体育教師として日々を送っている。
ぶっちゃけてしまえば体育教師なんてのは小学校で必要無いんだけど、学園が小中高と一貫式の制度を取っているため偶に他の部の自習監督も任されたりする。それでも暇と言えば暇なので、大体一日に授業を多くて三回、それ以外は職員室でのデスクワークがちょっと。
それなりの量はあるけど、クラス担任などに比べるとやはりどうしても少ないのは仕様だ。流石に自分ばかり楽するのも気が引けるのと一番の若手という事もあって御茶を酌むのは専ら僕の仕事である。
「どうぞ、今日入ったばかりの新茶なのできっと美味しいですよ」
「いやぁ、どうもどうも。やはり綺麗所からいただく御茶は格別ですなぁ」
「はぁ。それはいいですけど、僕野郎ですよ?」
「この際顔が良ければ問題無いですよ。それに、崩上先生は最近の若者には珍しく純朴で素直だ。是非そのままの先生でいてくださいね」
「は、はぁ…」
少し草臥れたスーツを着た初老の古株教師にそう言われても、こちら立場上反論とか出来ない訳で。褒めてるようで中々なセクハラ発言な気がしなくもない。
何故か年配の人受けが良いのでこういう時は好意的に見てもらえるから助かってるっちゃあ助かってるけど、お酒もOKな年齢の大の男が美人扱いというのは、ちょっと複雑だ。
しかしそれも偶に役立つ時があるのだから世の中は不思議というか、それが罷り通る麻帆良が可笑しいのか。
「ところで崩上先生、また一つお願いがあるのですが良いですかな?」
「……あの、ほんとに勘弁して下さい。僕あそこに行くの嫌なんですけど」
「それは私達もですよー。何せ学園長に書類を提出するだけで女子生徒達の奇異の目を受ける訳ですから。私みたいなおじさんが行くのは色々とねぇ、ほら、見ただけでセクハラ扱いとか嫌じゃないですか」
「僕にもその可能性があるとは考えてくれないんですか」
「え?」
「………一切の余地無しですかそうですか」
これだ。というかこの学園の長が飛びきりの変人というか、あれは本当に人なのだろうか?
うちの麻帆良学園は小中高通したエスカレーター式であるとは先ほど言った通りだけど、その総責任者も一人だけなのだから何か変な気がしなくもない。多分、
そしてそんな学園長の部屋がある場所が女子部の校舎。
初等部はまだ共学なんだけど、中学以降は男女別々の校舎になってしまい男子校で六年を過ごした僕の私見で言わせてもらえば、男子垂涎の場所である女子部に部屋を態々置いた学園長はきっとツワモノ、というかキワモノだ。色んな意味できっと素直な性格なんだろう。
それはまぁいい。いや良くはないんだろうけどここで問題になるのが、学園長に直々に書類などを渡さなければならない事がある場合、普段は通わない女子部を通らなければならないため男性教員からしてみれば元々女子部の教員でもない限り近づき難い印象がどうしても纏わりついてしまう。
先に年配教師が言った通り、多感なお年頃である女子達が見知らぬ男性を見て気分を害す可能性なんて考えたくない事だし、娘や孫がいる人ならば余計にそんな誤解を受けたくは無いだろう。
そんな理由から、現在初等部唯一の一人身であり女子部にいても不思議じゃなくね?的な外見な僕に白羽の矢が立ったという訳だ。
これで結構な回数女子部に訪れては学園長室に赴いているのだが、今まで一度だって不審に思われたことが無い。それはそれで、男としてプライドが傷つく。
しかし一番の下っ端が言いつけを断れる筈も無く、結局は書類の束を受け取り女子部に向かうしかないのだ。実に悲しきは上下社会の形態である……おいよいよ。
「ではお願いしますね。まぁ心配しなくても、崩上先生はあちらにお知り合いが多いと聞きますし大丈夫でしょうけど」
「いやいや、何ですかその情報は」
「あちらは変わり者の教員が多いと聞きますし、きっと崩上先生もすぐに受け入れられるのでは?」
「僕をさも当たり前のように変人枠に組み込まないで下さい!?」
「はっはっは。冗談ですよ、冗談」
「笑えないから止めて下さいってばぁぁ……はぁ」
遊ばれてるなぁと自覚はあるけど、これも下っ端の『運命』と書いて『デスティニー』、或いは『さだめ』。もしくは『むせる』でもいいかもしれない。あ、やっぱ最後のは無しで。
ともあれ、上下ジャージの一張羅で向かうは麻帆良学園女子部。足取りが重たいのは、気のせいじゃないんだろうなぁ………本当にあそこに行くの嫌なのに。色んな意味で。
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「ノックしてもしもーし。ぬらりひょんないしエイリアン、もしくはフリー○様第三形態の疑いのある学園長ー。いますかー?」
「儂返事もしてないのに勝手に入ってきて言うのそれなの? しかも人外認定?」
「………え、嘘ですよね? その頭で人間だなんて、そんな嘘いくら僕でも騙されませんよ?」
「うぅぅ……孫同然に面倒を見てきた筈の相手に詰られた。老人愛護の精神はいずこへ!?」
「いい歳して女子中学生に熱を上げる助平爺を愛護するマイナー趣味は無い」
一刀の名の下に言い捨ててやれば後頭部が異様に発達してるくせにその中身は中学生並に性への欲求が渦巻いている老人はその高そうな机に頭を突っ伏した。何か水が滴り落ちているけど、あれはお茶を零してるだけなので気にしない気にしない。
学園長室に来るまでの道程、一度も女子生徒達から疑いの視線を投げられる事無くむしろ元気に挨拶すら寄越されて若干不機嫌だった僕はその苛立ちを発散する意味も兼ねて、目の前の老人を軽くいぢめる事にした。
先ほどから扱き下ろしている相手であるが、こんなんでもここの学園長。最低限の礼節は弁え無ければいけないんだろうけど、子供の頃から知っている相手なので今更遠慮する気も起きない。
「それと、これを。初等部の教員に対する学生を対象としたアンケートの結果です。最近の子供は見るとこ見てるみたいで、中々厳しい意見も多かったというのが感想ですかね」
「ふむ、儂へのフォローは一切無いのかの……あと仕事御苦労じゃったな。どうじゃ、このまま久しぶりに爺と囲碁でも打たんか?」
「仕事しろよ助平爺」
「ぐほぉっ!………湊や、最近ガチで儂への容赦なくね?」
「元々だバカ野郎」
忘れもしない。
母の知り合いを語り僕をここに連れてきた張本人であるこの爺の、傷心の僕に対して行ったあの仕打ちを、僕は絶対に忘れない。
あの一件で確かに両親の死から立ち直る事は出来た。出来ただけなら良かったんだけど、この狒々爺は僕に一生もののトラウマまで刻んでくれたのだ。
母の知り合いだと言ってここに連れてきた若い女性の顔が剥がれたと思うと………目の前に出てきたのはUMA。
その時に“魔法”なるものの存在を知ったりしたのだが、それ以上に美女に変装してドッキリを仕掛けたこの爺を僕は一生許さない。あの時手を差し伸べてくれた綺麗な叔母さんに初恋すら抱いたというのに、それが木端微塵になるどころか原子崩壊されたのだ。当時僕が受けた衝撃は計り知れないものである事が分かっていただけると思う。
またそれ以来、自分の中にある母親から受け継いだ“異能”についても教えてもらいさらに使いこなせるように特訓までしてくれたのだけど、それも僕に苦い思い出を刻みつけてくれたものだ。
総評すれば、僕はこの爺に対して一切の尊敬の念を持たず唯一素で毒を吐けるのがコイツであり、何時か法律が殺人を許容してくれれば確実にこの手でトドメを刺したい相手でもある。
「何か今、儂想像の中でグロテスクな死体にされておらんか?」
「心を読まないで下さい。あと、死体なんて残すようなヘマはしません」
「義孫の言葉で今日も儂のglassハートが傷つくのぅ」
「無駄に発音が良いの腹立つから止めれ」
この学園に就職したのも、この爺が好き勝手しないように見張るためというのと、さっさとこの十年御世話になった分のお金を返して義理を返すため。
教師に向いているとは思わないけど、それでもこの仕事に就いたのは結局目の前の好々爺然とした胡散臭い笑みを浮かべた爺が元凶であり、僕がこう思うこともひょっとしたらコイツの目論見通りなのかもしれない。仮にそうだとしても、こうして毒を吐いて鬱憤を晴らせるので五分五分ではあるんだけど。
書類を渡せば後は用は無いのだが、帰っても仕事は既に終わっているし僕と学園長の関係を知っている人が初等部にもいるので恐らく戻ってこなくてもいいと思われている。ここに来るように仕向けたあの年配教師が実は爺とメル友である事実を僕は掴んでいる。
「のぅのぅ、木乃香も最近冷たいし、儂の相手をしてくれるのエヴァぐらいなんじゃよ~。寂しい老人の孤独死という辛い現実を突き付けるのかの? 湊はそんなに冷たい人間なんじゃったんじゃね~」
「ぐぬぬ……! あのねぇ爺。木乃香ちゃんも思春期なんだから友達との遊びの方が大事なんだろうし、そもそもエヴァちゃんは今大がk」
「――――――だから、ちゃん付けで呼ぶなと言っているだろうがぁぁぁぁあああああああ!」
『『ん?』』
いつも通りのやり取りの最中、怒髪天を突くような大声が部屋中に木霊した。
この部屋自体には爺特製の防音結界が敷かれているので音が外に洩れる心配は無いんだけど、それでも外どころか女子校の校舎全域に響いてるんじゃないかと思える程の大声に会話を中断して音源に目を向ける。
より正確には、部屋にある応対スペースの高級ソファー。学校の設備として考えてもかなり高額である年季の入ったそれが、まるで引き立て役にもならない程にその音源の存在感は際立っていた。
その金髪や苛烈な意思と怜悧な知性を思わせる翡翠の瞳も、成長期の少女特有の丸みを帯び始めた曲線も、全てが夢物語の中の住人のような精緻さで整っていて、怒りを露わにしている今でさえその浮世離れした美しさは何一つ損なわれていない。
そんな最上級の美少女を前に、僕と爺は同時に溜息を零した。多分、反応が間違ってると思うけどこれは僕達の共通認識において“当たり前”の反応でしかない。
「のうエヴァよ、儂らそんなに離れていないんじゃからそんな大声出さんでもよかろうに」
「そうだよエヴァちゃん。ひょっとして挨拶しなかったの怒っちゃった? ゴメンね? 無視したつもりじゃ無いんだけど」
「やかましいわぬらりひょんコンビ! お前ら私がいると分かっててさっきまでのやり取りを続けていただろ!」
『『え? 何の事かさっぱり分かんない』』
「ならその笑顔を止めろ! 揃って嫌な性格だよお前たちはっ!」
プイッとそっぽを向いて『私は怒ってるぞ!』と体で表現している少女につい笑みが浮かぶ。別にからかってるつもりは無いんだけど、反応がこうも面白いとつい爺のペースに乗ってしまう。
僕がエヴァちゃんと呼んでいるこの少女の本来の名前は“エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル”。吸血鬼の女の子。
爺の魔法とこの子の正体を知って、僕は麻帆良を人外魔境と評するようになったのはまぁ、余計な話だろう。
入室した時から一人で棋譜を並べていたようなので邪魔しないようにしたつもりだったのだが、どうやら爺の方が敢えてエヴァちゃんの存在を無視して会話を続けようとしていたようだ。相変わらず大人気ないUMAだ。
それにしても爺に似ているとは心外な。ぬらりひょん扱いも止めて欲しいものである。僕はあそこまで後頭部を異常発達させる予定など無いのだから。
「全く……貴様も貴様だ、湊! お前の能力を使いこなせるように鍛えた師匠たる私に対してお前は敬意が欠ける! それで教師が勤まるとは思えんな!」
「……じゃからまた私の家に戻って家事をしろと、エヴァは言いたいんじゃな。ツンデレじゃね」
「爺貴様ァ! 余計な事をぬかすならその頭輪切りにしてサバトの贄にしてやるからな!?」
見た目とは裏腹に五つか六つほど世紀を跨いで生きているエヴァちゃんに、現代を生きるぬらりひょんの会話は大体爺がペースを掴む場合が殆どだ。長く生きていても悪知恵が回るという訳じゃないというか、それだけ生きててこれだけの素直さを保っているエヴァちゃんの方が凄いのか、よく分からない構図だ。
爺による苦いトラウマと、エヴァちゃんとの特訓で刻まれた臨死体験上等のトラウマと。この二つがあったからこそ僕は変に落ち込んだり悩んだりする暇も無かった訳だけど、今にして思えばよく生きてたものだ。
「何じゃ何じゃ。湊の家事スキルが上達して中学の頃『エヴァ姉ちゃんに、その、恩返し……』と言われて翌日散々惚気話をしてきたクセに。茶々丸の手料理スキルも元のデータは湊のものらしいしの。そろそろ本物の料理も食べたいんじゃろ?」
「だ、だ、誰がそんな事言った!? 年を取り過ぎて耄碌したんだな、可哀想に!」
「なら儂よりも数倍年上なお前さんは耄碌通り越してバb――――」
「よし殺す今殺すその口凍らせて二度と動かぬよう壊死させてやるぅぅぅうううう!!」
こんな二人に育てられたようなものだから、大概の事には驚けなくなった。今ならドラゴンを見ても食用に出来るかどうかを考えられると自負している。
「(……そろそろ止めるか)」
疲れたりイライラしたりするのは当たり前。それが生きてるって事で、それが無い人生なんて張り合いが無さ過ぎてつまらない。や、決してM的な意味じゃなくてね?
とりあえず、今日は久しぶりに三人でご飯を食べよう。二人を宥める意味も兼ねて、そうじゃなきゃ他の人達に迷惑がかかるだろうし。
――――だから決して、楽しみでやる訳じゃないのだ。これは、あくまで仕方ない措置としてなのだ、うん。
軽い設定
ぬらりひょん(学園長)
原作よりも悪戯心というか、色んな意味で残念かつエネルギッシュな老人。湊の母親とは師弟関係のような間柄であり、湊の面倒をみるために両親と死別したあとの湊を引き取って麻帆良に置いた張本人。その際、湊の悲嘆をどうにかすべく魔法を使って変装をしたが却ってトラウマを植えつける結果になってしまい、生来の残念さも相まって湊からは“唯一毒を吐いても心が痛まない存在”と認識されている。ちなみに本人はこれを『可愛げのあるツンデレ』と言っているらしい。
吸血鬼(エヴァ呼びだとロボットしか思いつけない私って一体……)
多分原作でも上位人気のキャラクター。二次創作でしかネギまを知らない私ですが、原作に思わず興味を持って衝動買いしそうになった程萌えるキャラを書いてる人がいたのでそれで気に入って今回のネタを思いついた次第。なのにどうして学園長ェ……。
湊の異能の訓練を受け持ち、当初は暇つぶし程度で遊んでいたが徐々に愛着が湧いて姉というか母性本能による過保護に目覚めた。けれどツンデレ。