IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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お久しぶりです皆様! イイ日旅立ちは帰ってきましたよ、この魑魅魍魎が跋扈する魔窟にねぇ……!

とか言ってみたりして、最近はライジェネ2が欲しくて堪りません。目移りしそうなものが多いのって良い事ですけど、文無しには困るんですよねぇ……


前作では結構な湊君無双な場面があったような気がするところまで来ましたけど、今作においては基本鈴ちゃんにスポットを当てます。何故か? 私が大好きだからに決まってますがな!(ヲイ


第二十一話

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が再開され、再び鈴音ちゃんと一夏君がぶつかりあう。

 

 

 

 その様子を僕達は先ほどのアリーナの観客席ではなく、管制室のモニターから観覧していた。

 

 

 

「……ふぅ、一応呼びかけ成功したけど。何か様子変じゃない?」

 

 

「鬼気迫った顔してるようだが……(どう考えてもコイツのせいだよな)」

 

 

 

 まぁ迫力が増した分、先の停滞を咎める事無く観客も皆熱気を再燃させて歓声を上げているし問題無いか。

 

 

 空を高速で飛び交いながら互いの得物をぶつけ合う様はまさに現代の戦。

 

 

 かつて地上を舞台に剣を交えていた中世以前の時代の戦争を彷彿とさせるかのような剣の舞踏。

 

 

 

 鋼の龍は二刀を用いて苛烈に、そして一件奔流のような怒涛の攻めの中には明らかな意図が含まれ冷静に獲物を追い詰める狩人の如き強かさを覗かせ、白の騎士は未熟ながらも加速度的に剣閃の鋭さを増し、時折龍の牙を折らんと返撃の一閃が際どく奔る。

 

 

 

 それはかつてと今の交差。剣という現代の戦闘において銃器に取って代わられた武器が今、目の前で最先端の戦いの得物として揮われる。これが、全世界を魅了したISによる戦闘。

 

 

 こうして改めてIS同士の戦闘を見るのは初めてなのだが、実に魅入られる。

 

 

 

「………凄い」

 

 

「湊?」

 

 

「あぁいや、そのさ。自分もあれと同じ物を動かせる筈なのに、あんな風には動けないからさ。凄く……羨ましいなぁって」

 

 

「……そうか。でも、それで済ませるつもりじゃないんだろ?」

 

 

「当然! 俄然やる気が出てきたぐらいさ! 僕はまだまだ底辺だからね、ならあそこにいる二人に情けないとこ見せない程度にはISを使いこなしたいよ」

 

 

 

 布都御魂や打鉄ちゃん達と触れた時とはまた違う熱を帯びるのを感じる。

 

 

 久しく忘れていた、挑戦する事を。僕はいつも劣っていて、だからこそ何事に対しても常に“挑戦する”という立場から挑んでいた。

 

 

 でも大人になって、色んなことに慣れてきて、あの二人のように切磋琢磨し上を目指すような情熱をいつの間にか無くしてしまっていた。

 

 

 それが悪い事かどうかは僕には分からない。大人が子供と全く同じままではいけないし、何時までも子供のままじゃいられないのも当然の事だから。

 

 

 

 でも、それは決して子供の時の自分を捨てる事とは違う筈だ。

 

 

 

「……むむむ」

 

 

「え、えっとぉ……その、山田さん? いや山田様? 何でそんなにむくれてらっしゃるので……?」

 

 

「さっきから良い雰囲気ですねっ。でも今は試合中なんですから、話してないで観戦に集中してないとダメじゃないですか?」

 

 

「ううっす! 了解しました先生!」

 

 

 

 ま、まぁ訓練は後で頑張れば良いよね! てか何で怒ってんの山田さん、笑顔なのに陰影背負うの止めて下さい、本当に。

 

 

 

 言われるままにモニターに視線を向ける。そこでは相も変わらず激しく火花を散らす二人が映っているが、それを見てどういう訳か同じく管制室に何故かいた箒ちゃんと金髪ちゃんが首を捻って不思議そうというか、怪訝な表情を浮かべていた。

 

 

 一応気になったので、箒ちゃんの方に声をかける。金髪ちゃんとはまだ面識が無いから話しかけるのもアレだし、てか管制室に来た時一瞬だけど険のある視線をぶつけられたし。僕が何をした。

 

 

 

「ねぇ箒ちゃん、何か試合に違和感でもあるの?」

 

 

「湊さん………いや、一夏の方は分かるんですけど、凰の動きがちょっと不自然というか……」

 

 

「―――何故あの方は近接武装しか(・・・・・・)使わない(・・・・)のか、ですわね?」

 

 

「あ、あぁ、その通りだ」

 

 

 

 箒ちゃんの言葉を金髪ちゃんが継いだ形で、その違和感の本質を突いた。

 

 

 一夏君の機体【白式】にはあの刀のような武器“雪片弐型”しか無いらしく、それ以外の武装、離れて戦うための武器が一切無いという。

 

 

 だから彼は近づいて斬る以外の選択肢が無く、既に近接戦闘スキルにおいて鈴音ちゃんに上を行かれているのを承知で近づく事しか出来ない。それでも今の善戦は十分に凄い気がするけど、二人が気になっているのはそこじゃないという。

 

 

 

「えっと貴女……ホーガミさん、でしたわね? 貴女は凰さんと親しいようですが、何故あの方が遠距離武装を使わないのか御存じかしら? あの【甲龍】には空気を圧縮して衝撃弾として放つ“龍砲”という武装がある筈です」

 

 

「あの背中に浮いてるユニットの事なら、そうだった筈だよ」

 

 

 

 鈴音ちゃんに訓練をつける際に、一応IS戦闘の事は分からないまでもアドバイス出来る範囲で支援しようという事で彼女のISの事も簡易的にだけど教わっている。

 

 

 その中でも衝撃砲の事は強く印象に残ってる。“衝撃”だけに……ゲフンゲフン。

 

 

 何せその龍砲という武器なのだが、その性質上砲身も無ければ弾も見えない。大気を歪ませるため陽炎のようなものならかろうじて目で見えるらしい。

 

 

 でもそんなものを悠長に確認しながら動ける程IS戦闘は鈍く無い。

 

 

 鈴音ちゃん曰く、砲身も無いため自分が動かずとも照準を定める事も出来るため、実質三百六十度全方位に死角は無いという。

 

 

 その話を聞いた時はその武器の反則さと、その“弱点”に気付いた僕だったけどそれ以上に彼女の口から出た言葉に驚いたのと同時に、その心意気に惚れ惚れした。

 

 

 

「じゃあ何故あの方は手加減をしてらっしゃるの!? 一夏さんを侮るのも大概に……!」

 

 

 

 金髪ちゃんの指摘も尤もだ。でも、その言葉を聞いて黙っておくことは僕には出来なかった。

 

 

 

「―――――そうじゃないよ」

 

 

「…湊さん?」

 

 

「鈴音ちゃんはね、一夏君と同じ舞台に立った上で打倒するって決めてこの試合に望んでるんだ。自分の持つアドバンテージを捨てた上での選択を、驕りだなんて言わないで」

 

 

 

 今回の試合において、鈴音ちゃんは一夏君を完全に負かす為に武装を敢えて使用しない事を決めていた。

 

 

 

 それは完全に一夏君にとって有利になる選択だ。

 

 

 何故なら、彼を打倒する上で最も効果的な遠距離武装でしかも不可視の弾頭という鬼札を捨てるのだ。仮に操縦者の実力が鈴音ちゃんの方が上だとしても、一夏君と白式のコンビと同じ舞台に上がるには甲龍のスペックでは劣るのは明らかだった。

 

 

 馬力も速度も上を行かれ、何よりも相手の持つ武器。よくは知らないけど、あれの直撃を受けたら一発でアウトらしい。それほどの攻撃力と常に零距離で鍔迫り合うその精神的ストレスは一体どれほどか。

 

 

 

 それでも彼女はその道を選んだ。

 

 

 

『だから鍛えられるだけクロスレンジのスキルを上げたいの。だからお願い、崩上さん』

 

 

『う、うん……それは構わないけど、何で? 勝ちたいなら持ってるものを全部使えばいい。態々不利な条件に身を置いてまで、どうして?』

 

 

 

 理由を聞くまで全く不可解なその行為に、僕は尋ねずにはいられなかった。けど、彼女は溌剌とした笑顔で堂々と言い放った。

 

 

 

『だって、私の方が経験で勝って武装としても有利に運べるのは当然でしょ?』

 

 

『だからって手加減するの?』

 

 

『ううん、そうじゃないの。私はね、アイツと肩を並べて歩くのがその……夢なのよ。だから、アイツとは同じ目線で戦いたい。今は喧嘩してるけど、だからこそアイツと、一夏の舞台で戦って、勝って私の気持ちをぶつける。これで勝てたら………きっと素直になれる、そんな気がするの』

 

 

 

 その瞬間、僕は柄にも無く“シビれた”。そう思った。

 

 

 

 鈴音ちゃんは自分が素直になれなくて、だからこそ今の一夏君との行き違いがあって強がっていてもその事を悔やんでいた。

 

 

 そんな自分を乗り越える為に、自ら彼に踏み出す事を決めて戦い方を限定してまで一夏君とぶつかる事を決意した。

 

 

 その想いの一途さ。ある意味子供だからこそ、その感情に赴くままに行動を素直に起こせる純粋さに、僕は痺れた。憧れと言い換えてもいい。

 

 

 少なくともそうした思い出が無い僕にとって、想いのままに全力で行動する彼女が眩しかった。

 

 

 

 だからこそ、彼女には勝って欲しいと思う。その場合、見事にここにいる二人や僕の知らない誰かが困ってしまう気がしなくも無いけど、鈴音ちゃんには悪いけど想いを伝えてそれですぐに一夏君が答えるとも思えない。

 

 

 多分意識するのようにはなるからアドバンテージは取れるんだろうが、うぅむ………実に難儀な鈍感さ。君達も厄介な子を好きになったねぇ。

 

 

 

 試合も中盤に差しかかり、一夏君の異常な成長速度が徐々にだが鈴音ちゃんの動きを捉え始めた。二刀による手数の多さを、僅かな空隙を突く一閃で帳消しにしていく。伊達に織斑の弟では無いと、改めて血筋の怖さを実感させられる。僕の童顔が母譲りであるのと同じく。

 

 

 

「(頑張れ、頑張れ鈴音ちゃん……!)」

 

 

 

 半ば祈る様な気持ちでモニターを食い入るように見つめる。そして、再度二人がぶつかり合おうとしたその瞬間―――――――

 

 

 

「っ!? 織斑先生! アリーナ上空から謎のエネルギー反応!」

 

 

「…何?」

 

 

「それも高速でこのアリーナに向かって………来ます!」

 

 

 

 ――――――黒い異形が、龍と騎士の決闘の舞台に割り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 エネルギー残量も心許無く、後数回“零落白夜”を使えば戦闘続行すら不可能。

 

 

 鈴がここまで強かったとは思わなかった。決して侮っていた訳じゃないが、近接戦闘だけに時間を費やし同じ舞台で戦えば代表候補生とだって渡り合えるとセシリアからのお墨付きをもらえるまでに強くなった筈なのに一向に攻めきれない。

 

 

 

「(アイツだって頑張ってきたんだよな……)」

 

 

 

 そうだ。確かに鈴は代表候補生だけど、ISに触れたのは中学以降。詳しくは知らないが下手したら一年にも満たないかもしれない時間しかISに触れられていないのに、鈴は代表候補生という高みにまで上り詰めた。

 

 

 それがどんな努力を積めば到達できるのか、未だセシリアに相性だけで勝ち星を上げる事しか出来ない俺にとって未知の領域だ。

 

 

 だからこそ、そんなアイツに勝ちたい。

 

 

 最早喧嘩していた事なんて忘我の彼方。ただ、アイツに追いつきたい一心で“雪片弐型”を構える。

 

 

 

 そして会心とも言える加速で踏み込めたその瞬間、俺達の間に『何か』が落ちた。

 

 

 

『織斑君! 凰さん!』

 

 

「山田先生?」

 

 

 

 <プライベート・チャネル>を通じて管制室から山田先生からの通信が届く。それに上の空で返事をしつつ、俺の視界には黒い異形が異彩を放ち映っていた。

 

 

 それはISのようで、それでいて異常な出で立ちをした何かだった。

 

 

 顔に当たる部分は何の装飾も無いまっさらな黒い装甲で覆われ、手足も異様に長く人型から一線を画したデザインのそれに、俺も鈴も戦いを忘れて無意識のまま“それ”に対し迎撃の構えを取った。そして、それが正解だと回答はすぐに出た。

 

 

 

『………』

 

 

「ちっ……! 来たぞ、鈴!」

 

 

「わぁってるわよバカ! 人の一大決心を邪魔してくれたわね悪趣味木偶の坊……!」

 

 

 

 装甲が開き、そこから覗くレンズのような砲口から放たれたのは極大のレーザーだった。

 

 

 それもセシリアのIS【ブルー・ティアーズ】の持つ“スターライトMk-Ⅱ”の物とは比べ物にならない威力。センサーが教えてくれた威力の通りなら、あれはISのシールドどころかアリーナのシールドですら破りかねない威力の筈だ。

 

 

 

「(そんなもんを撃たせる訳にはいかねぇ……!)鈴ッ! 分かってるな!」

 

 

「誰に物を言ってるつもり? とりあえず、私達であのレーザーの的を散らすわよ、私は上から牽制するからアンタは下から! 良いわね!?」

 

 

「了解っ!」

 

 

 

 通信越しに山田先生が引くようにと指示を何度も伝えてくるが、応援が来るまでなんて待っていられない。その間にアリーナのシールドが破られたら? 避難が思うように進まず戦闘の余波が観客に向いたら?

 

 

 最悪の展開なんて望まない。だから、俺が出来る事をやるだけだ。今は俺達だけが、この場にいる全員を護るしか無いのだから!

 

 

 

 しかし異形との戦闘はさっきまでの鈴との戦いとはまるで違う物だった。

 

 

 

 鈴との戦いでは予想していた射撃武器が無く、乗せられている事は分かっていたがアイツが俺と対等に戦うために敢えて武器を青竜刀だけに限定している事はしばらくして分かった事だ。

 

 

 それをナメているとは思わない。戦ってる時のアイツの顔を見ればそんな事は一発で分かった。だが、今目の前にいるISにはそういった、意志のようなものが感じられない。

 

 

 顔が見えないせいかもしれないが、攻撃もどこか単調というか機械的に感じられる。しかもそこに付け入る隙が見つからない。

 

 

 

 さらに言えば相手の攻撃力の高さもこちらの精神を消費させられる。なまじ威力がセンサーを通じて理解出来てしまうあまり、一度の回避に神経を削られる。

 

 

 

「(畜生……ッ。このままじゃ埒が……!)」

 

 

 

 近寄る事も儘ならず、エネルギーも後二度も零落白夜を発動出来る程度。それもあくまで発動させるために必要なエネルギーであって、実質回避し続けてる現状から言えば一発だけ。それでアイツを沈めなければ、後は本気で応援部隊にまる投げするしかない。それも、何時来るか分からないという最悪な注釈付きで。

 

 

 

『いっくん! 聞こえてるいっくん!?』

 

 

「束さん!? こっちもそろそろ限界……! 応援部隊は未だなんですか!?」

 

 

『ごめんっ。そのISにはネット遮断能力もあるみたいで、こちらからのアクセスが全部繋がらなくなってるの。今大至急で新しくネットワーク構築とアリーナのシステム掌握を同時進行で進めてるんだけど、いーちゃんでも後五分はかかるって……」

 

 

「五分……」

 

 

 

 うどんでも作れそうな時間だと笑いたかったが、存外笑えないその時間に茫然とした呟きを思わず漏らした。

 

 

 何せ五分だ。こちらのエネルギー残量も既にレッドラインだというのに、それだけの時間を逃げ切る事なんてまず不可能。であるなら取るべき道はただ一つ。

 

 

 通信を繋がずとも目が合った鈴も同じ結論に至ったのか、力強く頷いてくれた。

 

 

 戦意は十分。でも、戦うための力が決定的に足りない。笑える程に絶体絶命という言葉がリアルに脳裏を埋め尽くそうとして、

 

 

 

『―――――一夏君、鈴音ちゃん、聞こえてる?』

 

 

「「っ!? 崩上/湊さん!?」」

 

 

『良かった、まだ驚ける元気はあるんだね?』

 

 

 

 一気に熱を冷ますような、涼風のような声に俺達の絶望が一瞬だけ晴れた。

 

 

 

『いいかい? 応援部隊の到着は、正直諦めて。モニターしてるからこっちでそちらの状況も把握出来てるから、あと五分もエネルギーが保たない事は分かってるからね。だから、今から僕が話す事をよく聞いて…………これから僕が話すのは、勝つための話だ』

 

 

 

 

 そして、俺にはその声がまるで………勝利を齎す戦乙女のように聞こえた。

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