IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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中々ゴーレム戦が終わらない……! 自分でも引っ張る事に関しては上手くなった気がしなくもありません。ぶっちゃけ上達していいスキルじゃないんですがねぇ……


第二十二話

 

 

 

 

 

 

 

「いい? まず前提として、あのISは無人だって事を頭に据えた上で話を進めるよ」

 

 

 

 

 

 管制室からマイクを使って、アリーナで戦闘を強いられている二人に呼び掛ける。

 

 

 本来なら飛び込んででも助けに行きたい。でも僕の腕前では行ったところで的ぐらいにしかなれないし、役に立たないのは分かりきっている。

 

 

 他の教師を始めとした応援部隊でさえも、アリーナを統括しているシステムが全部切断されるという不可解な事故によりシャッターが開けずにいる。

 

 

 現在は篠ノ之がシステムの再構築を、イクスちゃんが外部からの干渉を試みているがそれでも二人が時間を稼ぐにはあまりに長い。

 

 

 

 であれば、二人が生き残るためにはあのISを二人が倒さなければいけない。一番大きい障害がそのまま、乗り越えなければならない壁として立ちはだかっているのだ。

 

 

 

 悔しくて握り締めた手からは血が流れる。けど悔しく思っているのは僕だけじゃない。

 

 

 山田は他のマイクを使って避難するよう必死に呼びかけを行っているし、織斑も飛びだしたい筈の体を押さえつけるように険しい目でアリーナの戦いを見つめている。

 

 

 大人として何も出来ない事を歯痒く思いながら、それでも自分のやるべき事をやらなくては被害がより広がってしまう。それは、今頑張っている二人の踏ん張りを無駄にしてしまう事に他ならない。

 

 

 

「(そんな事はさせない、鈴音ちゃんも一夏君もギリギリで頑張っているんだ。だからこそ、確実に倒さなきゃいけないんだ……!)」

 

 

 

 こちらも出来る限りのバックアップを行うつもりだが、今のところアリーナのシールドをどうにかしない限りは干渉はマイク越しの呼びかけ以外に無い。

 

 

 だからこそ、この事態を打開するべくこちらで分かった事を二人に伝えるべく僕は口を開いた。

 

 

 

『えっ!? ちょっと崩上さん! 何よそれ、そんな事あり得ない筈じゃ!?』

 

 

『やっぱり……道理で』

 

 

『ちょっ、一夏? 何でアンタは頷いてるのよ。ISが無人なんて、そんな事あり得ないでしょ!』

 

 

 

 予想出来ていた通り鈴音ちゃんの方から驚きの声が上がるが、一夏君の方は僕が言った事に理解があったのかむしろ納得したような声を上げていた。やっぱり、一夏君は良い“眼”を持ってる。

 

 

 

「いい二人とも? 鈴音ちゃんの言う通り確かに無人のISっていうのはあり得ないらしいけど……現に、あのISからは人の気配というか、とにかく人の匂いがしないんだよ。柳崎も僕と同じ意見だし、そうじゃないなら動きが不自然(・・・)なんだ」

 

 

 

 二人が持っているであろう疑問を氷解させるべく、簡潔に事実を述べる。

 

 

 

 最初見た時から感じていたというか、いやむしろ感じられなかったからこその違和感を柳崎との私見も交えて確信へと至った。

 

 

 あのISからはまるで人の匂いがしないのだ。それは物理的な匂いという意味ではなく、剄操作において気配察知や気の流れを読み取る事に長けた僕の感覚的な部分で、あの黒いISからはまるで人を感じられなかった。

 

 

 

 それに何より、僕にはあれに人が乗っていない事を断言できる理由があった。この場にいる誰よりも、ISについて詳しい存在が。

 

 

 

【あれは………おかしいよ。あの子からは何も感じないの。それに、ぼくあんな子知らない……】

 

 

 

 同じ存在(IS)だからこそ、打鉄ちゃんは誰よりもあのISについて理解していた。現存している467機のIS全てが姉妹関係のような存在である彼女達にとって、自分達の知らない存在は恐怖対象であるのだろう。とりわけ、打鉄ちゃんは子供の精神構造と変わらないのでそれが顕著だった。

 

 

 

『不自然って、どういう事?』

 

 

「だって、もしアレに人間が乗っているとして、こうして僕達が会話してる間に攻撃しないのっておかしくない?」

 

 

『………あっ』

 

 

『確かに、俺達が話してる間は何つーか……観察? 絶好のチャンスの筈なのに様子を窺ってるんじゃなくて、こっちをただ見てるっつーか……』

 

 

「そうだよ一夏君。だからこそ、こうして話しながら作戦を立てる事が出来るんだ」

 

 

 

 或いは、その時間を敢えてこちらに与えてくれているのかは定かではないが、そんな親切な輩がそもそも殺傷力抜群のレーザーを引っ提げて学園に殴り込みになって来る筈が無い。

 

 

 それにあのISが最初から殲滅を目的に動いているのなら、一夏君達を無視してアリーナにレーザーを叩きこめばそれで事足りるのだ。

 

 

 だけどアレはそうはせず、動いてる時に限定して二人に照準を定めているしその動きも精密さを感じさせるが、細かい挙動には対応できない機械的な無機質さもそこには浮かんでいた。

 

 

 

「(となると目的は……あの二人? いや、希少さで考えれば一夏君か。ならアレの目的は……)」

 

 

 

 あちらの目的はさておき、殲滅を目的としない動きしかせずにあくまで有視界内の反応だけを追って動くだけの物だとしたら。そこに、勝機がある。

 

 

 

「………鈴音ちゃん。一夏君」

 

 

『何ですか湊さん?』

 

 

「あのさ、これが終わったら僕が腕によりをかけて御馳走作ってあげる。パインサラダとか」

 

 

『崩上さん!? それ洒落にならない死亡フラグなんですけど!?』

 

 

「大丈夫だって。ワザと立てるフラグは無効フラグになるから。それに、まさかそれを信じちゃう程に鈴ちゃんは弱気になっちゃってるのかなぁ?」

 

 

『ぶっ!? な、なわけ無いでしょっ! この凰鈴音が、あんなKY木偶の坊なんかに負けるかってのよっ!』

 

 

「うん、その意気。だから、勝ちに征くよ」

 

 

『『当然ッ!!』』

 

 

 

 作戦は決まった。

 

 

 

 二人とあと金髪ちゃんを交えて僕の考えた作戦の概要を話す。概ね受け入れられたけど、大人勢特に織斑からは大顰蹙を買った。まぁこの作戦において一夏君が重要なポストにいるからなんだけど、もう一つ彼からの“とある提案”が織斑の心配に拍車をかけた。あわや作戦の立て直しかと思われたが彼の

 

 

 

『千冬姉。俺を信じてくれ。何、ちょっくら過激な人形遊びってだけさ』

 

 

 

 という何とも頼り甲斐のある台詞で納得してくれた。ただ、かなり久しぶりの一夏君からの親しげな声だったからか今織斑は椅子の上で体育座りしながらぶつぶつ何事かを呟いている。この場を彼に見られなくて心底良かった。

 

 

 

「あぁ後」

 

 

『『??』』

 

 

「…………あ、あー、その、一夏、それに凰」

 

 

 

 そしてもう一つ。この作戦において欠かす事の出来ない要素。僕は自分の準備をするために管制室から出て、チョーカーとなっている打鉄ちゃんに意志を伝える。

 

 

 

「そんじゃ、頼むよ打鉄ちゃん。一応、僕達の役目ってば重要だからね、魅せ場だよ」

 

 

『任されたー! だいじょぶだよみなと! ぼく達ならできるよ!』

 

 

「もっちろん! さて、子供達のために、気張るよー」

 

 

「『えいえい、おー!!』」

 

 

 

 

 ―――――それじゃ、最初の仕事頼んだよ、箒ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『まずはその、こうした形でしか協力出来なくてすまない。お前達二人だけを死地に置いて、自分はこんな守られるだけで……』

 

 

 

 湊さんからの通信が箒に代わり、箒から聞こえてきたのはアイツらしからぬか弱い声だった。

 

 

 

「気にしないでよ。別に、誰もアンタを責める訳じゃ」

 

 

『あぁ分かってる。それは分かってるんだ。ただ、私が、私自身がここで何も出来ずにいる事が許せないんだよ。皆やるべき事をやろうとしているのに、私に出来る事はこんな事ぐらいだ。本当に、すまないと思っている』

 

 

 

 違うだろ。そうじゃない。

 

 

 お前がそんな事を思わなくたって、そこにいるだけで俺は立ち上がる気力が湧く。守るべき存在が背中で待ってくれているからこそ、俺はこの作戦における自らの役割に一切の恐れを抱かずに済んでいるのだ。

 

 

 それを伝えようとして、俺が口を開く前に箒が通信越しで大きく息を吸い込んでいるような吐息が……って、まずいっ!?

 

 

 

『すぅ………、一夏ああああああああああああああ!! 負けるな!! そんな訳分からんような物に遅れを取る事は断じて許さん! 絶対に、絶対に生きて帰ってこいっ!! 分かったな!?』

 

 

「~~~っ、うるせぇバカ!? しかも耳じゃなくて頭に直接ガンガン来たぞ!?」

 

 

『後凰、一夏のサポートを頼む。今この場だけは、一夏の背中をお前に預ける』

 

 

「フンっ。今だけじゃなくて今後ずっと、でも、私は構わないけど?」

 

 

『それはダメだ。私とて、何時までもこの場所で手薬煉引いて立ち止まっているつもりなど無いからな』

 

 

「……ふふっ、アンタ気に入ったわ。私の事は“鈴”でいいわよ」

 

 

『なら私も“箒”で構わない。では………健闘を祈る』

 

 

 

 俺には言いたい事だけを言っておきながら、鈴の奴とは何だか女の友情を感じさせるイケメンな会話を交わしていた。何この差。

 

 

 でもお陰で喝が入った。後で絶対意趣返ししてやるとして、今はこの大一番を乗り切らなければそれもままならない。

 

 

 

 ……それに、勝てば湊さんの手作り料理。うん、死亡フラグとか鈴が訳のわからない事を言っていたが何せ湊さんのて・づ・く・り! 料理だぞ? むしろ気力300越えで毎ターン愛と奇跡の重ね掛けってなもんだ。

 

 

 

「にしても、アンタ本当に大丈夫? 崩上さんの作戦上、今から二分は絶対にアイツの注目を集め続けなきゃいけないのよ?」

 

 

「五分から三分も縮んだじゃねぇか。それに、それが勝ちに繋がるなら耐えられる。耐えて、俺達で決めるんだよ。お前こそ竦んだか?」

 

 

「冗談………死なないでよ」

 

 

「死ぬかよ。勝って湊さんの手作り料理をあーんで食べさせてもらうんだよ俺は」

 

 

「後半捏造してんじゃないわよ!? でもまぁ、また崩上さんのデザートが食べられるなら………じゅるり」

 

 

「オイコラ待て。お前とはアレ片付けた後、決着をつけなきゃならない理由がたった今出来たぞ」

 

 

 

 ますますやる気が出てきた。何だその幸せそうな顔は。あるのか、湊さんの料理食べた事あるのか。羨ましいなこんちくしょう!

 

 

 

『……えっとぉ、雑談中のところ悪いんだけど、こっちの準備は一応整ったからそろそろ作戦開始したいんだけど』

 

 

【何やってるのさぺたんこ&とーへんぼくぁwせdrftgyふじこlp】

 

 

「「!?」」

 

 

『あ、こら今はダメだってば!………ゴホン、何でも無いから、それじゃそっちのカウント5で始めるから、それじゃっ』

 

 

 

 ちょっと話過ぎた……湊さんに注意されてしまったが、途中で何だか子供っぽい声が混ざったような……? あんな声をした知り合いはいないし、湊さんが遮ったから特定も出来なかった。

 

 

 

 ………まいっか。それより、そろそろこちらも始めるとしますかね。

 

 

 

 残り二分。一発分の零落白夜のエネルギーを残さなければならない事を考えると、動きを最小限にして回避に努めなければならず、尚且つこちらに的を絞らせるため休む事は許されない。実質二分間をフルに最大戦速で飛ばなければならない。

 

 

 体への負担はバカにならないが、誰かが死ぬよりいい。むしろ誰かを護るために身を削るなんて男冥利に尽きる、格好良いランキングベスト10に入るじゃないか。

 

 

 

「……こんな時に使うんだっけな」

 

 

「あん? 何をよ?」

 

 

 

 

 ――――――3

 

 

 

 

「いんや。たださ、俺達が大勢の命を背負って戦うってこの状況がさ…………ナイスな展開じゃねぇかと思ってさ。やる気出るだろ?」

 

 

「っ……! あ、アンタはそういう事をこの非常事態に言わないでくれる!?」

 

 

 

 

 ――――――――2

 

 

 

 

「バカだな鈴。男は逆境でこそ燃えるんだよ」

 

 

「ふ、フンっ。なら私の前で下手打たないでよねっ」

 

 

 

 

 ――――――――――1

 

 

 

 

「…………応、任せとけ」

 

 

 

 スラスターにエネルギーを回し、姿勢を低く刀を担ぐように構える。そして、

 

 

 

『――――――――――――0! それじゃ、作戦開始!』

 

 

「「「了解っ!」」」

 

 

 

 湊さんの号令の下、黒い異形に向かい最大加速で突っ込む。さぁ、そろそろ引っ込んでもらおうかデカブツ……!

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