IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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ちょっと無理矢理感がありますけど、とりあえず無人機戦しゅーりょー!ヒャッハー!


……なんか最近だれてテンション無理矢理上げないとやる気が……リアルってどうやったら二次元になるんでしょうね? あははhhh……


第二十三話

 

 

 

 

 

 

 

 以前布都御魂自らが提案した自己改造案において、それまでノリノリで製作していた篠ノ之達が一度だけ渋い顔を作った事があった。

 

 

 

 

『進行どんな感じー? 休憩がてらにレモンパイ焼いてきたんだけどぉっ!?』

 

 

『あむっ。…………ん。美味』

 

 

『そりゃどうも……ていうか、今反応おかしいぐらい速かったよね? 僕が反応出来なくてしかも気付いたら籠から抜き出されてたとか』

 

 

『いーちゃんは甘い物に目が無いから~。それに、いーちゃんの“美味”を貰うなんてそうそう無い事だよ?』

 

 

『ほぅ、そんなにうるさいの?』

 

 

『こないだ会食で各国のよく分からないお偉いさん達が招待してくれた三ツ星レストランで爆睡するぐらいだから』

 

 

『……僕、えらいハードル上げられて怖いんだけど』

 

 

 

 その日は打鉄ちゃんを使っての訓練を終えた後でも余裕があったので、頭脳労働で疲れているであろう二人におやつを持参して見舞いに行っていた。

 

 

 二人は美味しそうにパイを食べてくれたのでこちらとしても口にあって安堵しながら、ラボの中を見渡して作業の進行状況を見てみた。

 

 

 

『ほぉー、もうだいぶ体? えっと、機体のフレームみたいなのは出来てきたんだね』

 

 

『あむあむ。んっ、注文通りの全身装甲(フルスキン)仕様にするのが大変だったんだけど、そこは束さんの実力でバッチリ解決済みだよ!』

 

 

『ふぅん……それで、僕が来た時には何か手が止まってたみたいだけど、何か困ってたりするの?』

 

 

 

 何気なく呟いた言葉だったが、それが篠ノ之の表情を曇らせたと悟った瞬間流石に慌てた。特に気に障るような事を言った自覚が無かっただけになおさら。

 

 

 すぐに取り繕おうと言葉を浮かべるも最適な物は得られず、何やら疲れた表情の篠ノ之の発言をそのまま許してしまった。

 

 

 

『……はぁ。それがねぇ、たまちゃんからの要望通りの機体の方は何とかなりそうなんだけど……』

 

 

『問題は武装の方。もっきゅもっきゅ』

 

 

 

 持ってきていたパイ三枚の内二つを一人で平らげそれでも何食わぬ顔をしているイクスちゃんが、最後のピースを齧りながら補足を入れてくれた。

 

 

 曰く、布都御魂が二人に改造を持ちかけた際、自分専用の武装を注文したらしいのだがそれがあまりに現在のIS事情を鑑みない突飛なものだったらしい。

 

 

 

 例えば射撃用の武装なら、通常の弾頭とビームを切り替えられる機構を持ち、尚且つ大抵のぶつかり合いにおいても銃身が歪まない接近戦にも対応できる強度を持った長銃。

 

 

 近接戦闘用の武装の場合だと、絶対に折れない、曲がらない、壊れない大剣でさらに状況に応じて変形機構も備えた近中対応武装に仕上げろだのetc。

 

 

 

 ISについては全くの素人である僕から見ても無茶だと分かる注文。それはISを開発した二人の天才をしても代わり無く、さらには布都御魂自身が事細かく注文をつけてくるそうでその再現が難航しているのだとか。

 

 

 

『なら妥協するなりすればいいのに。僕からアイツに声をかけて我儘言わせないようにしても―――』

 

 

『それだけはダメッ!!』

 

 

『うおっ!? な、何で……?』

 

 

『これは私達への挑戦状なのっ! それをみすみすみっちゃんに言われるがままハードルを下げさせるなんて私の矜持が許さないのっ! だから絶対にたまちゃんの鼻をあかしてやるのっ!!』

 

 

『おーい、篠ノ之さーん? なんか中身別人になってやしないかーい?』

 

 

『まぐまぐ。ごっくん。これが平常運転。Verハイテンション』

 

 

『……左様で』

 

 

 

 無茶な願いだと百も承知で、篠ノ之は布都御魂の注文を無駄にハッスルしながら頑張っていた。

 

 

 そこに口を挟むのも無粋というか、ぶっちゃけ僕が何を言っても聞き入れそうにも無かったので放置する事にした。決して逃げた訳じゃないので悪しからず。

 

 

 

『(……それにしても)』

 

 

 

 今でさえ不世出の天才という評価を欲しいままにする篠ノ之達をここまで困らせるだなんて、流石は世界最高のAIというべきか。様子だけを見れば母と子の奮闘記だなんてタイトルをつけられそうなものだけど、中身を知ったら一体世の研究者の皆さんはどんな顔をするだろう。一種の怖い物見たさを刺激されなくも無いけど、いらん火種を蒔く必要も無い。

 

 

 

『一応。どちらの武装を完成させる手っ取り早い手段はある。………御代わりある?』

 

 

『二枚も食べてまだ食べるの……? って、解決する手段あんの!?』

 

 

『おかわり』

 

 

『だからもう無い……分かった、また明日は五枚ぐらい焼いてくるから涙引っ込めて。そう、ゆっくりと涙腺を閉じるんだ』

 

 

 

 まさか食い意地の張った娘っ子だとは思わなかった。これで年上とかどんだけ……や、多分僕とか山田みたいな奴が言える台詞じゃないとは思うんだけどさ。年齢詐称組として。

 

 

 話が逸れたけど、要望に応える事が出来るならさっさと実行に移せばいいのに。そう言おうとして、それが出来ないから悩んでいるんじゃないかという考えに至る。

 

 

 そして案の定、イクスちゃんは僕の方……今は布都御魂の代わりに待機形態としてチョーカーとなっている打鉄ちゃんに目をやりながら、

 

 

 

『まぁでも』

 

 

『?』

 

 

『君のその変わった力と。その子の協力を仰げれば或いはそれも可能になるかもしれない』

 

 

『僕と打鉄ちゃんの?』

 

 

【ぼくがどうしたのー?】

 

 

『……うん。ちょっと待って。束に聞いてみる』

 

 

 

 何か名案でもあったのか。篠ノ之と二人で話し込みながら徐々に顔色が明るくなっていく。よほど良いアイディアらしいけど、それがどうして僕達を見ただけで閃いたのかまでは良く分からなかった。

 

 

 

 そしてその後、無事武装が完成する事になる訳だが結果的に、僕はIS学園に対して頭が上がらなくなる事態になってしまったのは、この時の僕には予想する事も出来なかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「カウント開始! 打鉄ちゃん、大丈夫?」

 

 

『モーマンタイ! アリーナシールドにエネルギーを供給するバイパスをハッキング、ジェネレーターからのエネルギーをこっちにもくるように設定完了!………するまで、あと一分半……うぅ、お姉ちゃんなら一瞬でハッキングできるのに、ごめんねみなとぅ……』

 

 

「しょうがないよ。アイツは今ラボの方だから頼むに頼めないし、篠ノ之達はシステム掌握に忙しいからむしろこれだけの事を二分で出来る打鉄ちゃんは凄いよ。だから、頑張ろ?」

 

 

『……うんっ!』

 

 

 

 

 作戦の要は、如何に一夏君が敵ISに一撃を見舞えるか。

 

 

 彼の唯一の武装“雪片弐型”の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)

 

 

 ISを最強の兵器たらしめる能力の一つにして、専用機ならではのただ一つ、世界にそのISしか持ち得ない異能とも呼べる力。

 

 

 一夏君のIS【白式】は現時点で動かせるISの中で唯一、それを所有しているIS。ならば彼を要に据える事は戦略的には有効であるのだが、それはあくまでIS基準の話。

 

 

 

 こと操縦者の実力で見れば鈴音ちゃんの方が上だし、この場にいてISを動かせる人間で言えば代表候補生である金髪ちゃんことセシリアちゃんでも良いのだ。

 

 

 でも代えが効かない以上、彼にはリスクを承知で相手の懐に飛び込んでもらわなければならない。

 

 

 

 飛び込んだ上で、彼の能力である“零落白夜”を叩き込む事。これが、今作戦の目標だ。

 

 

 

 零落白夜の能力とはエネルギー無効化能力。

 

 

 つまり、ISの防御を無視した一撃を放てるという反則に近い攻撃力を彼だけがこの場で有しているのだ。その能力を使えばアリーナのシールドをも切り裂く事を可能とするが、そのためにエネルギーを消費させてしまう訳にはいかないしそれでは万が一避難し遅れた生徒達を護る事も出来ない。

 

 

 だから彼と鈴音ちゃんには二分間、逃げに徹してもらう。

 

 

 その間に、僕と打鉄ちゃんで外部からの援護が出来る下地を整える事と最後の仕上げのための準備を行う。それこそが今打鉄ちゃんにしてもらっている、アリーナシールドに電力を供給しているバイパスのハッキングだった。

 

 

 

 僕には彼らを援護出来る力は無い。けれど、決して無力という訳でもない。

 

 

 今の僕には、打鉄ちゃんという今一番頼れる味方がついている。

 

 

 

「……………スゥ」

 

 

 

 呼吸と同時に体内で剄を充実させながら、細胞の一片に至るまで力を行き渡らせる。瞬時に体を最高のパフォーマンスが出来る状態へと移行させ、首のチョーカーに意識を向ける。

 

 

 本来であれば布都御魂を装着した状態を前提とした無茶を通そうというのだ、これでも心許無いがやる以外のことは考えない。今はただ、打鉄ちゃんの準備が終わるのを静かに待つ。

 

 

 

 余談になってしまうけど、布都御魂が最大の実力を発揮するのはその武装や機体能力ではなく、ISのコアをハッキングするだけではなく自らのナノマシンを介入させる事で自らの支配下に置く、その電算能力にある。

 

 

 今のところその影響を受けているのが打鉄ちゃんとラファールちゃんの二……人? この際カウント方式はあまり考えない事にするとして、あの電波バカに影響され自我を持ったこの二人こそが、アイツの注文を叶える最大の鍵であるのと同時に、

 

 

 

 

 ―――――――あのアホのお陰で、僕はより一層IS学園に逆らえない身分になってしまった。

 

 

 

「……って今はそんな事は考えない! ネガティブな事は考えねぇよ僕は!」

 

 

『うゆ? みなとどうしたの?』

 

 

「何でもないよ! ただちょっと罪悪感を思い出して泣きそうになっただけだからさ! はははっ!」

 

 

 

 今はアホな事を考えてる場合じゃない。無理矢理テンションを上げながら、気力を充実させていく。今なら多少の痛みは目をつぶっても耐える事が出来る。

 

 

 

 ………それこそ、手のひらが焼け爛れる事があっても痛みで行動に支障をきたすような事が無い程度には。

 

 

 

 今回僕の仕事はどこまでも間接的でしかない。何故なら、攻撃する訳でも援護に向かう訳でもなく、セシリアちゃんが援護できるようにする事と、一瞬だけあの無人機の注意を集める事ぐらいしか出来ないからだ。

 

 

 肝心な場面で子供達に頼ってしまう。そんな己の無力を恥じ言っている暇も無ければ、こちらの準備もそろそろ終わる。さてと、覚悟を決めろ崩上湊。

 

 

 

「(大丈夫。ちょっとぐらいの痛みなら小学時代でもう慣れた……!)」

 

 

 

 それもどうかと思うのだけど、別に苛められてた訳でも嫌われてた訳でも無いんだけどなぁ………と、信じたい。

 

 

 ならどうしてあんなに織斑からは竹刀で叩かれ山田はぶん投げ篠ノ之は不良発明品(と言う名の失敗作)を押し付けてきたのだろう。

 

 

 織斑に関してはブラコンで説明がつくからいいけど、あの二人は一体何であんなに………うん、今更だけどこれが終わって一段落したら聞いてみよう。その時の僕が健康なら。

 

 

 

『っ、みなと! ハッキング完了だよ!』

 

 

「よしきたっ。なら、そのままエネルギーをこっちに!」

 

 

『……う、うん。でも、みなとは……』

 

 

「大丈夫だって。こう見えて昔、全身打撲からでも復帰した事あるんだから」

 

 

『それはすごいけどなんかちがくないかな!? でもみなとがそう言うなら……いくよ、ぼく、展開っ!』

 

 

 

 零落白夜という反則技を用いない方法でアリーナレベルのシールドを抜く方法は、実はそんなに難しい話じゃない。

 

 

 

 アニメや漫画でもよくある通り、シールドの強度を超える攻撃力を叩き込みさえすればいいのだ。現にあの無人機のレーザーにはそれが出来るだけの破壊力が備わっていて、IS程度のシールドなら受けるだけでも致命傷レベルの攻撃力を誇る。つまりそれほどの攻撃力が無ければ、アリーナのシールドは抜けないという事になる。

 

 

 じゃあ僕と打鉄ちゃんがシールドを抜くためにはどうすればいいのか。

 

 

 布都御魂というデバイスが無い以上、本来のスペックで武装を発動させる事は出来ないので攻撃力ではどうしてもシールドを越えられない。でも、シールド自体に負荷をかけ続けることは可能だ。

 

 

 シールドを維持しているのはアリーナの地下にある装置だ。そこから電力を供給してシールドを維持し続けており、現在アリーナの管制システムが完全に掌握・切断状態にあるため篠ノ之達が復旧に苦闘している訳だが、シールドが消えていないという事はそこに通じるバイパスはそのまま残っているという事に他ならない。

 

 

 

 なら、そこからエネルギーを掠め取り供給する分の電力を減らす事が出来れば?

 

 

 その上、本来のスペックが活かせないシールド発生装置に過負荷をかけ続ければ?

 

 

 

 その答えを現実にするため、今必死で頑張っている人達に頑張りを無駄にしないために、僕達がこのシールドをぶち壊す!

 

 

 

 一旦打鉄を身に纏い、空中に浮かぶディスプレイの一つにでかでかと書かれた『第二変形(セカンドレイド)』の表示枠を、

 

 

 

「……これさ、態々叩き割らないといけない訳?」

 

 

『そっちの方が気分もでるしね! あとあと、かけごえは“アームド!”をすいしょーするよ!』

 

 

「僕にあんな異次元サッカーをしろと? 化身は無理だけど他ならなんとか……って、あと恥ずかしいから叫ぶのは無しの方向で」

 

 

『むぅー』

 

 

 

 いや不満げな声を出されましても。

 

 

 いまいち締まらない変形を終え、打鉄ちゃんはその姿を従来のISとは全く異なる姿へと変貌を遂げる。

 

 

 

 それはISでの使用を前提に置いても尚巨大な鉄塊。いや、かろうじて剣だと分かる長方形とそこから伸びる柄の部分で判断出来る程度で、それでもやはりこれを“剣”と言い張るのは些か難しいと言わざるを得ない。

 

 

 

 布都御魂が二人の天才に注文した「絶対に壊れない大剣」は、ISそのもの(・・・・・・)を武器とする(・・・・・・)事で何とか三人が満足のいく結果として今ここに、僕の手に収まっている。

 

 

 

「うおっ……お、重い……」

 

 

『おとめに向かって重たいとはなんだー! ひどいよみなとー!』

 

 

「や、それはごめん……っ」

 

 

 

 んな事言われても、たった一人でISの自重を支えなければならないのは普通にきついってば打鉄ちゃん。今は全力で剄を強化に回してるから生身でも振り回せるけど、強化に一分の溜めが要るからやっぱり生身で持つ武器じゃない。

 

 

 しかしこれで準備は整った。本来であれば布都御魂からのエネルギー供給を経て全力で振り回す武器だけど、今は発電施設と直接直結させているのとほぼ同じ状態のため、従来以上のエネルギーが大剣へと注がれている。

 

 

 

『エネルギー充填百パーセント! いけるよ、みなと!』

 

 

「バイパス解放……っ、そんでぇ、コード【天尾羽張】発動……!」

 

 

 

 大剣形態の打鉄ちゃんのもう一つの名前にして、鉄塊の真の姿。

 

 

 刃を構築する鋼のフレームが展開し、そこから漏れ出るのは本来シールドエネルギーに転化される筈の電子の光刃。

 

 

 疑似的に零落白夜の破壊力を再現するために、ISまるまる一つのコアをそのまま武装用のジェネレーターに使用したその刃は鉄塊の大きさをより巨大なシルエットに変えているのだ。

 

 

 巨大化した剣身を支えるように柄が伸長し、シールドを切り裂くため肩越しに構える。

 

 

 

 揮うのは一度。それ以上は、逆流する電子の奔流で焼かれる手が耐えられない。意地とかそういうのではなく、物理的に焼き落ちかねない。

 

 

 

「(ぐっ、うぅぅぅぅぅううううう!?)」

 

 

 

 洩れそうな悲鳴をかみ殺す。こうなる事を承知でこの役割を買って出たのだ。弱みを見せて打鉄ちゃんを不安がらせる訳にはいかないし、痛み程度で役割を放置する訳にもいかない。

 

 

 

『っ! 今だよ、みなと!』

 

 

「ぶっ……壊れろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 横一閃。目に移るモノその悉くを両断するかの如く迸る雷光の刃。

 

 

 獣じみた咆哮をあげながら、手に持つ刃は確かな破壊力を以って、出力不全のシールドを掻き消した。

 

 

 

 そしてシールドの消失と、急激に発生した高度のエネルギーに無人ISのセンサーが確かにこちらへと注がれた。

 

 

 

「(鈴音ちゃん一夏君!)」

 

 

 

 声をかけず祈るように二人の名を呼ぶ。その声無き祈りが通じたように、アリーナの二人は既に行動に移っていた。

 

 

 

 

 ………あのさ、俺が教えてもらった技の中に瞬時加速(イグニッションブースト)ってのがあるんだけどさ。

 

 

 

 

 スラスターに供給させるシールドエネルギーをスラスター内部に取り込み爆発させ、一瞬だけの超加速を得る高等技術。

 

 

 それは取り込むエネルギーさえ確保できれば、外部からの(・・・・・)エネルギーでも(・・・・・・・)構わない(・・・・)

 

 

 

「しくじるなよ、鈴!」

 

 

「ナマ言ってんじゃないわよこのバカ。アンタこそ、気絶なんか承知しないわよ一夏ァ!」

 

 

 

 一夏君の直進の真後ろに鈴音ちゃんが付き、先の試合では用いなかった【甲龍】本来の主武装である武装を起動させる。

 

 

 その名を“龍砲”。空気を圧縮した衝撃砲を放つ、さながら龍の咆哮。

 

 

 それを背に受け、白の騎士は衝撃で機体を激しく揺らしながらも確かにその一撃に籠められた力と想いを受け取った。

 

 

 

「テメェなんかに、何も奪わせてたまるかよぉぉぉぉおおおおおおッッ!!」

 

 

 

 裂帛の気合で振り抜かれた純白の剣は確かに無人機を中心から切り裂いた。

 

 

 全てのエネルギーを費やした白式がその装甲を維持できずに光へと変換されていく中、僕は確かに見た。

 

 

 

「(う……そ……ッ!? まだ動けるなんて……ッ)」

 

 

 

 無人機の砲口が、今なお輝きを失っていない事を。その悪寒の矛先が、ISを解除した一夏君に向いていた事を。

 

 

 

 ここからじゃ間に合わない。既に気付いた鈴音ちゃんが悲鳴じみた声を上げながら動くもあちらも満足なエネルギーは残されておらず、このままでは間に合わない。

 

 

 だから、僕は叫んだ。それは絶望でも後悔でも無くて、

 

 

 

「―――――――セシリアちゃんッッ!!」

 

 

『分かってますわ! 一夏さんは……やらせませんっ!』

 

 

 

 ――――――もう一人の要。一夏君がトドメを刺しきれなかった時の援護要員として上空で待機していたセシリアちゃんの長距離射撃が、黒の異形を残骸へと変えた。

 

 

 

 僕がシールドを壊した最大のメリットこそが、彼女の援護を可能な状態にすること。この場における最大戦力が彼女である以上、彼女が活躍できる場を整える事はこの作戦であの無人機の隙を作る事と同じく最優先事項だった。

 

 

 無事自分の役割をこなし、無人機も撃墜出来た。

 

 

 天尾羽張も通常の打鉄ちゃんの姿に戻り、体を覆ってくれた事で疲労と手のひらの痛みで倒れる事をかろうじて防いでくれた。

 

 

 

「…………あ゛ぁ~、ちかれた。あと、お疲れ様、打鉄ちゃん」

 

 

『そんなことより! 今からいむしつに行くの! みなと、てがボロボロ!』

 

 

「あ、うん。それじゃ、後はお願い……」

 

 

 

 剄を全力で使った反動が疲労と激しい眠気として襲い掛かる。そろそろ意識を保つのも限界なので、後は打鉄ちゃんの判断に任せよう。悪いけど、後は、任せ………た、がくり。8

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