IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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原作をなぞりつつ、湊君達大人サイドは色々とやってます。一夏君達が青春してる傍ら、彼らは彼らで思う事があったりする訳です。


何故ならこの作品の大人たち、碌な青春送ってませんから。要するに、大人の遅れた青春ストーリーをふざけて書いてるのがこの作品だったりするのです。では、どうぞ~。


第二十五話

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんやかんやありまして、どういう訳か僕こと崩上湊に彼女が出来ました。

 

 

 

 

「おい篠ノ之。何を勝手に人のモノローグを代弁してんの。しかも嘘しか含まれて無いがな」

 

 

「……ちぇ。言わなきゃ既成事実をでっち上げられたのに……」

 

 

「いや知らないよそんな事。それに彼女って誰さ? 柳崎とかだだだだ!? な、何で今ぽかぽか殴られてるの!? あんま痛く無いんだけど動けないから地味に痛い!」

 

 

 

 改めまして崩上湊です。

 

 

 今は学園の施設にある病院の特別個室にて療養中な訳だけど、部屋には僕と篠ノ之の二人しかいない。

 

 

 

 柳崎は現在、あの時の事件の事でお嬢様に現場で見た私見を述べに赴いているのでここにはいない。

 

 

 それを知ってから知らずか、篠ノ之が一人でお見舞いに来てくれて今は暇そうに持ってきた雑誌に目を通しながら雑談に興じていた。

 

 

 イクスちゃんはたまの開発の大詰め、たまのナノマシンと新造した躯体との同期作業が忙しいのとちかねちゃんの新形態である“天尾羽張”から得られたデータを基に、出力の調整などをしているのだそうな。

 

 

 篠ノ之は手伝わなくていいのかとも思い尋ねてみたけど、曰く『気を効かせてもらったんだよ』との事。何のこっちゃ。

 

 

 

「何さ何さ~。こんな美女と密室に二人っきりで、みっちゃんは何も思わないわけ~?」

 

 

「子供の頃のトラウマを刺激されて、悪戯されるか心配にはなってるよ」

 

 

「そんな事もうしないもんっ! それにみっちゃんだって動けないんだし………あ、そだ。今何かしてほしい事とかある? 何か食べたいとか、服が気持ち悪いとか」

 

 

「大丈夫だよ。出てく前に柳崎にしてもらってるから」

 

 

「………むぅ」

 

 

 

 膨れた面でいじける篠ノ之に、僕はあまり何かを言おうとは思わなかった。分かりきってる地雷を態々踏みに行く度胸は無いので。

 

 

 

 ―――――しかしまぁ、この状況が色々と地雷要素満載である事は、篠ノ之の言うように思うところが無い訳じゃない。

 

 

 

 内面はその頭脳とは違いまるで幼いというか、仕草や言動が子供じみてる部分があってそこが見た目の大人っぽさと凄いギャップを感じさせる。何と言うか、僕はそういう外と内のギャップに弱い事がつい最近の柳崎との共同生活で思い知らされた。

 

 

 その理屈で言えば、外見大人っぽい篠ノ之の仕草とかはこちらに被害が及ばない限りはクるものがある訳で。

 

 

 実際、篠ノ之に何かと理由をつけて世話をやかせないようにしているのも、何かしら行動を許した場合に起き得るイレギュラーに僕が耐える自信がまるでないからだったりする。

 

 

 こちとら体が満足に動けないのだ。そんな時に不測の事態が起こっても反応できないし、それはそれで色々と拙い事を仕出かしてしまいそうで怖い。

 

 

 

「(何事も無く篠ノ之に出て行ってもらう……まで、どれくらいかかるんだろ……)」

 

 

 

 とりあえず、篠ノ之に何かをさせないように言われた事を全て柳崎が面倒をみてくれたと一部の嘘と八割以上の真実を混ぜた話で丸めこみながら、時間を雑談で潰す。

 

 

 どうも篠ノ之は看病っぽい事をしてみたかったそうだが、残念。余計なフラグを立てないのが大人のやり方である。

 

 

 

 …………そして、こんな事を考えることこそ、何よりフラグになるのだと知るのはすぐ後の事だった。

 

 

 

「……みっちゃんってさ」

 

 

「? 僕が、何?」

 

 

「みっちゃんて、らいちゃんには色々と許してるのに、私や真耶ちゃん達とは一線を引いてるっていうか、何か特別視してるよね」

 

 

「そ、そう思う?」

 

 

「『思う』じゃなくて、絶対にそうだよ。だってみっちゃん、私の前とらいちゃんの前じゃ全然笑顔が違うんだもん」

 

 

 

 笑顔が違う。それは如何に自然に微笑んでいるのか、それとも苦笑やどこか作り物っぽい笑みかという事。

 

 

 自分達に向けるそれは決して同年代に向けるようなそれではなく、どこか保護者や上から目線で見てるのに、あの女には違う。

 

 

 

「みっちゃんは………らいちゃんの事、好きなの?」

 

 

 

 俯きながらのその言葉に、僕は全く反応を返す事が出来なかった。

 

 

 当然だ。だって僕はその手の話題が出ないようにいつも気付かない(・・・・・)ようにしていたし、篠ノ之から言われたという事も動揺に拍車をかけていた。

 

 

 

「え、っと………それは………」

 

 

 

 上手く口が動いてくれない。いっそ快復し切るまでずっと眠りに就いていればこんな事態にもならなかったろうにと現実逃避しながら、やはり思考はついにその問題にぶち当たってしまっていた。

 

 

 篠ノ之の言う“好き”の意味をここで履き違える程、僕は子供では無いつもりだ。

 

 

 ならどうしてそれまでその話題を避けていたのか。その理由を、一言で言ってしまえば………

 

 

 

「―――――その、うん。柳崎の事は、好き……だよ。それが篠ノ之が言うような理由かどうかは、僕にも分からないんだけどさ」

 

 

 

 一瞬だけ雨に打たれた小犬のような視線を向けた篠ノ之であったけど、続く言葉に今度は見て分かる程の疑問の色を顔に浮かべた。

 

 

 分かりやすいなぁとやはり保護者のような、篠ノ之から指摘されたような感覚を得ながら僕は言葉を続けた。

 

 

 

「好意には色々あるよね? 家族愛だとか、友愛だとか恋愛だとか。他にも色々あるんだろうけど……ぶっちゃけ、僕にはその違いが分からないんだ」

 

 

「えっ……?」

 

 

「僕は母さんが大好きだし、同じくらい柳崎の事も大好きなんだ」

 

 

 

 父親はともかく、母さんはいつも僕を助けてくれたし柳崎もこの十年の間、何かと一緒にいたし交互に助けあう、家族以外なら一番深い付き合いのある相手だから。

 

 

 だから二人のうちどちらの方が好きかと言われても分からないし、そこに差があるとは思えない。

 

 

 

「それに本音ちゃんの事も簪ちゃんの事も好きだし、一夏君や箒ちゃんや鈴音ちゃんやセシリアちゃんも………それに、トラウマあってもお前や織斑や山田やイクスちゃんも。僕は皆、好きだって思える」

 

 

 

 差が無いという事は、言い換えれば僕は嫌いだと思える点が無い限りは基本大抵の人を好きになれる。そこには好意の深さによる多少の差があるのは否めないけど、皆平等に好きだと言える。

 

 

 でも、そこに態々“恋”愛と分けて考えた事が、僕は一度も無かった。

 

 

 

 ………いや、考えたく無かった、そう言うべきか。

 

 

 

「正直、僕は皆好きなままでいたい。仲良しのままでいたいし、そこから変わりたいと思った事も無いんだよ」

 

 

 

 だから、変化が嫌。変わる事が嫌。関係性が損なわれてしまう事が、何よりも怖いから。

 

 

 

「だから、ずっと友達なら関係は変わんないでしょ? 恋人とかさ、出来た事無いから分からないけど………もしも僕に友人とか家族とか、親友よりも大事な人が出来てしまったらって思うと、怖いんだよ」

 

 

 

 それで誰かを蔑ろにしてしまう事が怖い。

 

 

 誰かがいなくちゃ寂しいと泣き喚く子供のような自分。だから大勢に良い顔しようとするし、いつの間にかそれが僕の無意識の行動にまで刷り込まれてしまっている。

 

 

 だから、誰かの“特別”になる気はさらさら無かった。

 

 

 

 ………きっとこの考えは臆病で、自己中心で誰かを踏み躙るような事を引き起こす最悪の考えなんだろう。

 

 

 でなければ話を聞いていた篠ノ之がこんな、こんなに泣きそうな顔をする筈が無い。

 

 

 

「(そっか………今の話で傷つくんだね、篠ノ之は……)」

 

 

 

 すなわち、篠ノ之には多かれ少なかれ、僕をそういった感情の対象として見ていたという事。

 

 

 少なからず好意を抱いている相手が、誰もそういう目で見ないと言ったのだ。篠ノ之が感じた衝撃は一体どれほどの物か。

 

 

 嫌われたかな……? そう後悔するように思ってしまう自分もいれば、当然と諦めきった自分もいる。

 

 

 

「……みっちゃん」

 

 

「ん、何?」

 

 

 

 さっきまでの何処か子供のような、声音から甘さが消えた平淡な声が僕の名を告げる。まるで聞いた事の無い声に内心少しだけ驚いてみせ、表面上は何とか平静を装う事が出来た。

 

 

 

 何を言われるのか、そう次の言葉を待った瞬間、僕の目の前に篠ノ之の顔がドアップで現れた。

 

 

 

「っ!? んっ、ん~~~~~!?」

 

 

「……んっ、動いちゃ、ダメ。私も参考資料でしか見た事無いんだから………っ、あむっ」

 

 

「~~~~~~~~~~~~~っ!!!」

 

 

 

 そして、ドアップだった顔がさらに近づき、今まで見た事の無いような真剣な顔の篠ノ之の目が閉じられたと思うのとほぼ同時、僕の唇の上に柔らかさと熱を持った何かが触れた。

 

 

 それは不慣れだとかそういう問題ではなく、何だったら歯と歯がぶつかったりもしてかなり痛かったりするのだが………これは、あの、紛う事無きアレですよね? Kから始まってSで終わる……!?

 

 

 

「んっ、れろっ………ちゅ……ん~、少しは慣れてきたかなぁ? みっちゃんはどうだった~?」

 

 

「…………」

 

 

「おーい、みっちゃーん? 呆けていないで、返事してよーう。むー、ならもう一度実力行使をば……! いっただきまー」

 

 

「さ・せ・る・かぁぁああああああああああああ!」

 

 

 

 二度目の突撃を何とか避ける。まぁ体が動かないので、とにかく口が合わないように首ごと横に倒した。枕の布が口の中に飛び込んでくるが、知ったことか。あとついでに三つ編みが妙に顔に巻きついてウザい。

 

 

 

「お、お、お前は、いいいいいい一体何を……!?」

 

 

「ん~、キスだね! ちなみに深いの! いやぁ、歯がぶつかった時はやっちまったZEって思ってしまったけど、うん。みっちゃんが意識を飛ばすほどの物が出来て余は満足ぞよ、おほほ~!」

 

 

「やかましいわファンシーウサミミマッドサイエンティスト! ていうか何すんのお前!?」

 

 

 

 僕は少なくとも、誰とも友達以上にはなる気は無いと先に言ったつもりだ。だから、いきなりき、ききき……と、とりあえず今みたいな事を許すような事も言った覚えは無い。

 

 

 だというのに、篠ノ之の顔は深刻そうな色は欠片ほども見当たらず、むしろ充足感や嬉しさといったものが満ち満ちているようにさえ見える。頬が紅潮しているのは、つまり今の行為が篠ノ之としても恥ずかしいという事で、そんな行為を強行したという事は、

 

 

 

「何するのって………だってみっちゃんはさ、誰とも友達以上にはなる気は無いって言ってたけど、“なれない”って言わなかったじゃん」

 

 

「それは、そうだけど」

 

 

「なら束さんは考えました。みっちゃんは皆大好きで、誰か一人を選んで他の人との関係が壊れちゃうのが嫌だから誰とも特別にはならないと。ならば!」

 

 

 

 デデンと一人で勝手にSEを演出しながら篠ノ之は舞台演者のように大仰な仕草で、

 

 

 

「―――――みっちゃん! 私を選べばいいのよさ!!」

 

 

「いや………いやなんでやねんッッ!」

 

 

 

 その微妙な語尾とは全く関係なく、何故か僕のツッコミまで変な言葉になってしまった。いや、関西出身でも無いのに“なんでやねん”を使うのって、何だかにわか臭というか、こう『自分にはまだ早い』って感じがしない? あぁ、しないんですかそうですか………ってそうじゃねぇ!

 

 

 

 あまりに脈絡の無い篠ノ之の台詞に全力でツッコんだせいか体が急に重たく感じ、息も上がる。体力の方はまるで回復してないと歯噛みしながらも、聞かずにはいられない。何なんだその帰結は。まるで意味が分からんぞと柳崎でも殴りにいくレベルだと思う。

 

 

 

「えー、これって実際方策だと思うんだけどにゃぁあ」

 

 

「ほぅ……自信満々じゃないか」

 

 

「だってねだってね! みっちゃんが関係が壊れるのが嫌なら、みっちゃんが誰かと仲良くしてもそれを赦せる相手なら誰も傷つかないで済むと思うの!」

 

 

「…え? いやそういう問題じゃ……あれ? そういう問題だったり、するのか、これ……?」

 

 

 

 どうなんだろ。自分で言ってて大変アレで恐縮なんだけど、確かに僕が誰かとそういう関係になっても、周りがそれを許してくれたり僕とそういう関係になってくれた人が僕がそれまでと変わらない事を許してくれるような人なら、確かに僕が懸念しているような事は起きないかもしれない。

 

 

 

「でしょでしょ!?」

 

 

「いやに喰いつくね君……」

 

 

「その点、私なら彼女にうってつけの物件だと思うんだよね! 顔良し、スタイル良し、さらには世界で五本の指に入る頭脳! そしてみっちゃんが私を一番に想ってくれるんなら、誰と仲良くしてても赦しちゃう! あっ、でもその後のフォローは大事だよ? さっきみたいなキスでも良いし、あっ! なんだったらその先もみっちゃんなら許してあげなくもないよ!?」

 

 

「落ち着けバカ兎! 色々と処理し切れない事言うの止めろー!?」

 

 

 

 一気に捲し立てる篠ノ之を見て、気付く。

 

 

 

「(コイツさっきの自分の行動を忘れるためにワザとテンション上げてる――――!?)」

 

 

 

 しかし、そうやってテンションを上げて多分本人も自覚して無いだろう言葉の羅列に含まれた本音を聞かされたこっちにもかなりダメージが。もしも篠ノ之が正気のままだったら、今の僕の表情を指摘されガンガン攻めてきていたに違いない。

 

 

 

「(助かったんだろうけど……はぁ)」

 

 

「でねでね! やっぱり付き合うなら最初のデートより先にしちゃうんじゃなくてデートの盛り上がった後のムードの余韻に浸りながらっていうのが束さん的グッドな―――――――」

 

 

「―――――グッドな、何だ?」

 

 

「グッドなアイディア………って、あ、あ、あぁ……!?」

 

 

 

 正直、タイミングがバッチリ過ぎて流石としか言い様が無い。

 

 

 

 篠ノ之に絶対零度の視線を向けながら、猫のように持ち上げる柳崎を見てつくづく思った。

 

 

 もしも早く来ていたら、さっきの篠ノ之の行為を見られていたかもしれない。

 

 

 遅くても、正気を取り戻し僕の状態に気付いた篠ノ之が今度はよりレベルの高い行為に及んでいたかもしれない。

 

 

 

 色んな意味で空気を読んだタイミングでの登場に胸を撫で下ろしながら、柳崎が篠ノ之を説教している傍らベッドに潜り込む事にした。

 

 

 

 

 

 

 ………今たまやちかねちゃんが居なくて良かったー。多分、首にも熱が伝わってるだろうし……はぁ、あっついなぁもう………篠ノ之の、アホめ。

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