IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
某・都内にある大型運動施設。もっと言えば、何とか技研とか言うところが所持しているIS専用アリーナ。
全国一斉で行われた“予選”を耐え抜いてきた選りすぐりの男子学生だったり成人していたりするが、この会場にはほぼ男しかいない。
「それはそうだろ。そもそもが男対象の検査なのだから」
「そうなんだけどさ、それにしても一杯いるなーと。予選の段階でも思ったけど、というか色々とツッコみどころあるんだけど一からツッコんでいいかな?」
「……いいんじゃないか?」
それじゃ、お言葉に甘えまして。コホン。
「――――そもそもだよ? どっかの子供がいくら男でIS動かせたからっていきなりこんな事してどうなるっつー話ですよ。そもそも予選自体意味のある行為とも思えないというかそもそもどういう条件下で男がIS動かせるのか分からないってのにその基準が正しいのかとか絶対二人目を作る気無いだろとか僕がどうしてパーカー+ワンピースの格好しなきゃいけないのかとかもう本当色々言いたい事は山のようにあるんだけど総括して言わせてもらうならもういい加減帰りたいです」
「本当に息継ぎ無しだったな!? まぁ、お前の言い分も分からなくも無いが…」
本当に、この場に至るまで正直無駄な事しかやってない気がしてならない。
そこには今更のように男がISを動かせるかもという期待と、そんなのが増えちゃ困るというどこぞの誰かさんの思惑両方をへの愚痴も含まれている。
未だその『世界初の男性IS操縦者』の詳しいプロフィールとかも出ていなくて写真ぐらいでしか知られていないだろうに、一体何を基準にして“予選”なんて物を開く必要があったのか分からない。
体力測定だったり学力試験だったり、一体どんな男ならISを動かせるのか。というか予選自体に意味があったのかも分かんない。
「あれじゃないか。人数減らすためとか」
「そんな事しなくたって、地方ごとにテキトーにISの実物触らせればいいんじゃないの?」
「バカ言え。そもそもISの数には限りがあるのに望み薄な事のために大事な機体を貸し出せる訳無いだろ。こうして都内に集められるだけの人数にするための、謂わば詭弁だろ」
「それは、ぶっちゃけ過ぎるよぅ……」
確かにそんな気がしなくもないけど、ズバリ言われるとなぁー。端から無かったやる気が余計に殺がれると申しましょうか。
まぁ今までの予選で見た国のお歴々を見た限りだとその可能性も無くは無いと思う。だって明らかに見下してたかんねー、きっと昨今有名な女性至上主義な方々だったんだろう。
うちの地方も学生を始めとして結構な人数がいた筈なのに、今や残っているのは僕一人という始末。
良かった事と言えば生徒の皆の授業を潰さずに済んだ事か。
僕は所詮臨時講師みたいなものだからいなくても支障は無いし、あってもメールで『先生がいないと寂しいです(><)』といった内容の帰ってきて催促がそろそろ五十を超える。
それに、本来の仕事をサボって柳崎まで付き添いとか言ってついてきてるし。仕事はいいのだろうか?
「私は別に良いんだ。これも、ある意味私の職務の一つだからな」
「……そうなの?」
「ん、だからお前は気にしなくていい」
意味は分からないけど、やけに自信たっぷりと言われるとそうなのだと頷かざるを得ない。本人が言ってるんだから気にしなくてもいい……筈。
「(そもそも私の仕事自体、“
さてと、柳崎との会話もそこそこにいい加減検査は始まらないものだろうか。予選を勝ち抜いてきてる以上これ以上余計な事はしないで済みたいし、ISさわって白黒つける方が絶対手っ取り早い筈。
見たところ人数は百人ちょっと。これなら一人ずつISに触っても大きい病院の待ち合い時間程度で済むと思われる。
そんな事を考えていると施設に備え付けられているスピーカーから声が聞こえてきた。
『お集まりの皆さんに連絡します。これより、最終検査に入りますので管制室の向かいにあります画面に注目して下さい』
女性のアナウンスに従いアリーナ内の大型スクリーンを振りかえり、僕はそこに現れた人物を見て一瞬、全ての思考が吹き飛んだ。
「な……なななななななばかなこっ!?」
「湊? おい、そんなに慌ててどうした?」
柳崎の心配そうな声も耳に届いても頭での処理が追い付かず、僕の目はただただスクリーンに映し出された人物を映し出す。
女性……兎の耳のようにも見えるカチューシャにやや紫がかった黒髪。
薄い桃色のスーツから清楚さと大人の色香のどちらもが同じだけ感じられ真逆な筈のそれらは、見事なまでに“彼女”を美しく惹き立てている。
でも僕が驚いたのはスクリーンの女性が美人だから、では無い。
その姿に、顔に、面影に、どうしようもなくかつてのトラウマを刺激されたからに他ならない。
体が硬直しスクリーンから目が離せない。そんな僕の様子など画面越しの彼女が知る由も無く、僅かに口角を釣り上げて淡い笑みの形を作ると、見た目通りの楚々とした雰囲気のまま口を開いた。
『初めまして。IS開発者の一人の篠ノ之束です。最終検査の概要について、私の方から説明させていただきます。ではまず――――――』
………その光景に僕はどうしようもなく、逃げ出したくなる気持ちと同じくらい膨れ上がる別の気持ちを持て余し動けずにいた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「―――ふぅん。成程、お前の言っていた通りISに直接触って動かせるか見るようだな。まぁその方が手っ取り早いのは確かだろうし、当然の帰結だな」
「…うん」
「気になると言えばそのISがキナ臭いぐらいだが、動かせないのが念頭なら別にどうでもいいだろ」
「…うん」
「今日はカレーが食べたい気分だな。出来れば激辛」
「…うん」
「………私の奴隷になって一生尽くすか?」
「…うん」
「それは嬉しい返答なんだがな。いい加減正気に戻ってこいドアホ」
「うぴゃっ!?」
痛い。何か途轍もなく重たい衝撃が脳天を突き抜けて全身が痺れたような感覚がっ。
恐る恐る目を開けば仏頂面で佇む柳崎がそこにいて、いつの間にかアリーナの中に鎧武者然とした物体が鎮座していた。
どうやら僕の意識が飛んでいた間に事態はさっさと進行していたらしい。
それは別に良いんだけど、何も本気で拳骨落とさなくてもいいんじゃないかなぁ………おぉう痛い。
「フンっ。謝らんぞ、何度話しかけても無視したお前が悪い」
「そ、それは悪かったけどさぁ……お前の本気は幾らなんでもやめてよ。流石に痛いってばぁ」
「どーせさっき画面に映ってた女にでも見惚れてたんだろ、この変態」
「……………」
いや正確には見惚れていたというか竦んでいたと言うか、よく分からないんだけどお前が思っていたような意味で見つめてた訳じゃないんデスヨ?
そう言ってやりたいのは山々だったけど、射殺すような視線を受けてはそれも何だか言い訳じみてしまう気がして結局口を噤んでしまった。
「……お前、ああいう感じの女が好みなのか?」
「うえぇ? いやえっと、別に好みとかそういう訳じゃ……」
「だってあの、篠ノ之とか言ったか? アイツ見た瞬間、お前ずっと画面に釘付けだったから……」
視線のきつさこそ変わらないまでも、口調は勢いを失って何となくだけど不安げな声色でそんな質問が投げられ、兎にも角にも何かを言わなければと出自の分からない焦燥に駆られ何とか言葉を捻りだす。
「べ、別に好みがどうのこうのって話は今関係無くないかな?」
「話を逸らすな。ああいう、静かそうな奴がいいのか? ……私なんかとは違って、普通に綺麗だったものな」
「だ、だから違うんだってっ!」
衆目の目がこちらに集まっていて気恥ずかしさやら柳崎の仕草で妙に落ち着かない自分を自覚しながらも頭を回すも元々出来はそれほどでも無い頭は答えを教えてくれず、何となく勢いだけで口が動いてしまった。
……その事を後悔したのは、また別の話である。
「僕はどちらかと言えば軽いM体質というか今まで受け体質って言われてるような奴だから大人し目な人よりは強気な人の方が好みと言いましょうか! いやいぢめて欲しい訳じゃないんだけどね!?」
「……っ、それは、その………どういう」
「~~~っ、だからっ、敢えて選ぶなら僕は柳崎みたいな感じの人にも魅力を感じるからそんな凹まないで欲しいというか!」
言って気付く。この言い方じゃまるで『柳崎の事も好きだから僕の事好きでもいいぜ?』って感じにならない? 考え過ぎ? そうだといいなぁ……
しかし言って柳崎のポカンとした顔を見る限り、何やら嫌な予感が頭を過ぎるもこうなっては後の祭り。
………というか何でこんな事になってるの? 子供の頃のトラウマを彷彿とさせる人物と思しき姿に茫然としてただけなのに、それがどうなってこんな羞恥告白に繋がる訳? わけがわからないよ。
「(このままだと拙い……何が拙いのかよく分かって無いんだけど何か致命的に拙い気がする……っ! 学生時代全般において培われてきた僕のセブンセンシズがそう告げている! 気がする!)」
小学校の頃の、それこそトラウマを植えつけられた時期から女装ネタで弄られ続けた今までの人生経験上、このまま柳崎を放置しておくのは多大な波乱を生み出す気がしてならないのだが、嗚呼、現実とは非情である。
『次の方ー、●●地区の崩上湊さんー』
「(今呼ばなくてもよかろうにぃぃぃぃい! 今の柳崎を放置してたら絶対拙いのに、拙いのにぃぃぃぃいいいいい!?)」
少しぐらい待たせてみようと思うも呼び出しにきた係員に見つかるや否や、嬉々とした表情で『じゃあぼく、お姉さんと一緒に行こうね?』などと笑顔で言われ強制的に手を引かれてそれも叶わず。
「ちょっ、離して! 今ちょっとフォローしなくちゃえらい事に……!」
『はいはい、大丈夫ですよー。後でお姉さんのところにちゃんと返してあげますから~♪』
「そういう事を言ってるんじゃないんだよっ。そして子供扱いすんなぁ!」
どんなに言っても係員のお姉さんは引く手を離してくれず、結局棒立ちのままの柳崎を残して僕は検査を行うべく鎧然としたISの前まで引っ張られてしまった。
そこには当然、“彼女”がいるものとばかり思っていたけどそこに姿は見えず、不思議に思い係員に話しかけてみると仕方ないなぁとでも言うように破顔した顔で答えてくれた。どうやら完璧に僕を子供と思っているらしい。こんな時に160弱しかない身長が恨めしい。
『篠ノ之博士なら別室でデータの観測をしているから、ここじゃなくて管制室の方にいるのよ』
「は、はぁ。そうなんですか」
『そうなの。だから君は落ち着いて、このISに触ればいいからね?』
「……はい」
子供扱いに異を唱えようと思うも、正直色々と疲れていたのでツッコむのを止めた。いいもん、どうせ僕は大人に見えないし未だに飲酒したら怒られるさしかも同級生に……!
悲しい事実に今更凹む訳にもいかず、気を取り直して鎮座している無人状態のISの前まで歩み寄る。
全体的な色調は黒に血管のように紅いラインが走っていて、武者のようなデザインながら何処か悪魔的な印象を見る者に与える威圧感。
あくまでも検査のために持ちだされているからだろう、武器などは見当たらないけど何となく、このISには剣……いや、より細かく言えば刀のような武器が似合うような、そんな気がする。
「(か、格好良い……!)」
刀=格好良いと結びつけるのは、僕の感性が子供のままだからなのかもしれない。所謂「厨二病」と片付けるのは簡単だけど、見れば見る程このISに惹かれる自分を否応なしに突き付けられる。
これを自分が動かせたなら………子供じみた空想が頭に浮かぶも、今のところ誰も動かせていない事からそれが所詮絵空事でしか無いのだと切り捨てる。
そりゃ動かせたら動かしてみたけど、そう簡単に第二第三の男性IS操縦者が見つかったら苦労はしない。僕ではなく研究者達がだけど。
だから早く終わらせてしまおうという気持ちと、もっとじっくりこのISを見ていたい気持ちの両方に戸惑いながら僕は黒いボディに手を添え、
――――――――――キュピーン。来た、キタキタキタキタ来ましたよこれはー!
「(……は、ぃ?)」
―――――そんなハイテンションな声が頭に響いたと思った瞬間、僕の見る世界が一変した。
それこそ、僕の人生を大きく変える事になる
……以前のサイトをご覧になった方がいればひょっとしたら分かるかもしれませんが、若干あのお方の性格は変わる予定です。あの手のキャラをもっと書きたかった事もあるため、足して二で割った感じになる………かもしれません。
具体的に誰とは申しませんが、原作キャラ勢は基本的な性格を前作から引き継ぐので違う。かも、しれません。