IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

30 / 51
最近また中古でゲームを購入したのですが、実に恐ろしいゲームに手を出してしまいました……!


その名も武装神姫。あれDLC商法の最たるものって感じがびしばしと感じられるのですが、それでも手を出しちゃう私はきっと愚か者という名の紳士なのでしょう。紳士なら浪費も仕方ありませんよね!? まだ二千円ぐらいだから大丈夫な筈っ……!


第二十六話

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙を見て、手を伸ばして、届かない事を知る度に私は自分が人間であると確認し、安堵していた。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 人では到底届く事の無い遥かなる輝きを見る度に、自分がまだ人間だと実感する。

 

 

 そして実感する度に、空しくなる。誰と比べるでもない、あんなものに頼らなければ自分の存在すら確かめられない自分に。

 

 

 

 小さい頃の私にとって、周囲の人間とは【自分とは違う生き物】としか見えなかった。

 

 

 私には当たり前のように理解出来る簡単な問題に躓き、私がどんどん先へ先へと進んでも周囲はまるで鈍亀のような歩みで進み、何時しかそんな周囲を自分と同じように思えなくなっていった。

 

 

 我ながら傲慢だと思う。人の歩みはそれぞれで、私がたまたま普通よりいささか出来の良い頭をしていたのであって、彼らが出来る事全てを私が出来る訳でも無い。私だって、完璧などでもなければ別に高みにいた訳でも無い。

 

 

 だというのに、私は恰も自分が天上にでもいるような感覚を当時周囲に対して抱いてしまい、それは倦怠となって私の心を蝕んだ。

 

 

 

 鈍い周囲を愚鈍と冷笑し、才能が見当たらない人間なんてつまらない。私と話が通じるのは、同じく一定以上の才能を有する者だけ。それ以外なんて、皆つまらないに決まっている。

 

 

 

 ……つくづく歪んだ思考だとは思う。

 

 

 でも言い訳をさせてもらうなら、あの時の私には拠り所、味方と呼べる存在が一人もいなかった。

 

 

 親でさえ私の頭脳に不気味さを覚え、増長していく私を見て見ぬフリを続けていたし、何よりそんな私に声をかけてくる者なんていない。

 

 

 何人か勇気を出して話しかけてくれたように思うけど、多分その時の私は身に付けた知識をひけらかすようにただ言葉を羅列して彼らを拒絶した。いまいち記憶に無いほど、当時の私は興味の無かった存在に対して酷く冷たく接していた。

 

 

 いや、あれを『接』っしているとは言えない。何だったら、異世界言語とでも言うべきか。

 

 

 理解出来る筈も無いと高を括って一方的に言葉だけを吐き続ける事をコミュニケーションとは言わない。ならば、あの時の私は、きっと誰とも繋がらずにいたんだろう。

 

 

 

 あの時の私のままなら、“今”の私はあり得ない。

 

 

 

 きっと今でも勝手に周囲に絶望して、自分の興味を満たすためだけの存在になっていたんだろう。そう思うと、今でも時々背筋が凍るような思いを私は抱いてしまう。

 

 

 だってそれは、人間の生き方じゃない。世界が自分を中心に回っていて、自分の思い通りになるしかない世界なんて、そんなの世界じゃない。

 

 

 自分が中心じゃなくったって、思い通りにならなくったって、世界は当たり前のように回る。

 

 

 仮に私が歴史に名を遺すような大天才だったとしても、それは変わらない。私がいくら足掻いても、時の歯車に噛み砕かれる砂でしかないのと同じように。

 

 

 

 でも、当時の私は本気で世界が自分の思う通りに動くと信じていた。

 

 

 

 煩わしいと思うものには蓋をして相手にせず、興味を抱いたものは片っ端から吸収して取り込み、それが終わるとまた新たな興味対象を見つけるべくそれまで興味対象“だった”ものを捨てて。

 

 

 私は、それで良いと思っていた。

 

 

 理解者なんて必要ないし、そもそもそんな存在が出来る筈も無い。事実、現在でも真に理解者と呼べる存在は、私にはいない。

 

 

 

 

 

 ――――――けれど、理解しようとしてくれた人は、手を差し伸べようとしてくれた人がいた。

 

 

 

 

 

 つまらない授業を抜け出して、何を考えるでもなくただ屋上で空を見つめていた時。

 

 

 その頃の私は既に空が青い理由も雲が発生するメカニズムも知っていて、子供のように無邪気に空を見て綺麗だなんて思えなかったけど、何故か空を見ている時だけは心の中の虚無感が薄れるような錯覚を覚えていた。

 

 

 私は空を知っているけど、それは知識でだけ。高くなればなるほど温度が低くなる事も、気圧により空気が薄くなっている事も知っているけど私はそれを自分の感覚で認識出来ない。

 

 

 空とは隔絶の象徴だ。どんなに近くに感じていても、人間はそこに辿りつく事は出来ない。

 

 

 航空機の登場は人を空に近づけたと言うけれど、私はそうは思わなかった。

 

 

 

 その辺は普通に居る科学者達と同じだ。実際に自分で見て観察し、様々な検証を行い事象を考察、結論としての理論を立てる。ただ理屈で分かるだけならそこらにいる連中にだって理解出来るのだから、自分はもっと違う視点からそれを行う。

 

 

 私がいつかこの身で空に赴き、この体で全ての事象をこの目で見るのだ。ハングライダーや熱気球のような自然や何処か他人任せのような方法には頼らず、自らの意志で空を征く方法で。

 

 

 

 空に思いを馳せている間は、あらゆるしがらみから解放され何処までも自由になれた。それは多分、空に自分を重ねていた事も要因の一つだと思う。

 

 

 空には誰も届かないように、誰も私には届かない。

 

 

 空は誰にでも見えるけど、その本質は誰にも掴めない。生みの親でさえ私を理解しようとはしない、誰も私の事なんて分からない。

 

 

 考えれば考える程、私と空は似ているような気がして、不思議と空を見ている時だけは冷笑ではなく自然と笑みを浮かべる事が出来た。

 

 

 それはきっと、自然でも無いんでも無いんだろうけど、私にとっては唯一、心を許せる存在が空しかなかった。

 

 

 

 そして時間は流れて夜へ。小学校の屋上は基本立ち入り禁止であり、警備員の巡回コースからも外れているため見つかる危険性も無い。

 

 

 

 私がこうして夜遅くまで屋上で時間を潰す事は暗黙の了解となっているため、両親も何も咎めようとはしなかった。見捨てられた、とは思わない。だって私の方が見限っていると思っていたから。

 

 

 昼間の空も好きだけど、夜となり宇宙を映し出す空も私は好きだった。

 

 

 星々の輝きが太陽光の反射でしかなく、実際は石くれだと理屈では分かっていても、そこから見渡せる星の海はそんな理屈抜きで素直に美しいと思えた。

 

 

 私にとってそれはあり得ない事で、既知な情報の筈なのに毎日見ても全然飽きるという事が無く、そんな感覚を抱いている時だけ自分が人間らしいだなんて、生意気な事に当時の私は本気で思っていた。

 

 

 

 あの時の私にとって、周囲の子供たちのように感情を素直に発露する事は何処か別世界の出来事のようにしか認識出来なかった。

 

 

 いくら考えても分からない理不尽の奔流。理屈や理論を並べても計算に合わない彼らの持つ“感情”は私にとって認める事の出来ないもので、多分無意識に抱いていた恐怖をひた隠すために私は自身と彼らを隔てていた。

 

 

 だからなのかもしれない。星を見て素直に感嘆できる自分はまだ人間だと確認していたのは、心の何処かで何かが悲鳴を上げていたから。

 

 

 

 …………そして。

 

 

 

 

 

『―――――――見つけたぁ!』

 

 

 

 

 

 ―――――――私にとっての王子様(ヒーロー)に、その声無き声はきっと届いていたのだ。だから、私はあの人が……

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、口を開けろ。久しぶりの固形物だぞー?」

 

 

「……いや、柳崎さん? その言い方は何だか誤解とか招きそうだから止めてくれない?」

 

 

「何を言う。内臓まで弱っていたから最近まで栄養剤の点滴と流動食しか食べられなかったんだから、別に間違ってないだろ?」

 

 

「そうなんだけどさぁ………あむっ。うん、美味しっ」

 

 

「っ、そ、そうか。食堂で買ってきたサンドイッチなんだが、手作りの方が良かったか……?」

 

 

「柳崎の? ははっ、毒殺するつもりかいぜるふぁるべ!?」

 

 

「このアホっ! ボケっ!」

 

 

 

 

 ただ素直に料理の腕前について言っただけなのに、怪我人にフリッカージャブとはどういう了見だこの野郎。

 

 

 

 一週間で退院できると思っていたのだが、手の回復に思っていた以上に剄が割かれていたらしく体力や内臓器官の回復に手間取り今日で一週間目なのだが、まだもう少し入院が長引く事になった。

 

 

 とはいえ、そこそこ回復はしているので今日からは普通にご飯が食べられる。流動食とか味気ないものばかりだったので、久しぶりに食べるサンドイッチが凄く美味しく感じられる。

 

 

 

「あぁもうっ、ダメだったららいちゃん! みっちゃんの顔を殴っちゃ!」

 

 

「手加減はしている。それに、今のはコイツが悪いっ」

 

 

「それは認めてあげるけど……大丈夫みっちゃん? 何処か痛くない?」

 

 

 

 いつもなら子供っぽく拗ねるのは篠ノ之の方だと思うんだけど、今日は珍しく立場が逆だ。何と言うか、あの日以来篠ノ之がやけに大人びて見えるというか………いかんいかん。意識し過ぎだぞ、僕。

 

 

 

「…殴られたところがちょっとヒリヒリする程度だし、別に心配は要らなッ!?」

 

 

 

 これは不整脈か何かだろうか。篠ノ之の手が叩かれた頬に触れた瞬間、一気に心臓が跳ねた。

 

 

 

「う~んと、触診した結果腫れも無さそうなので大丈夫っぽいけど、どったの? 顔真っ赤だよ?」

 

 

「風邪気味なんじゃないかな!? 剄を怪我の回復に当ててるから抗体とかが少し弱くなってのかも!?」

 

 

「何だそのテンションは」

 

 

「はっはっはー! 僕にもよく分からないんだぜ!」

 

 

 

 本当によく分からない。分からないと言うよりは、あまり分かりたくないが正しいか。

 

 

 

 あの日………篠ノ之にキスされて以来、どうにもアイツを見る度に妙になってしまう自分がいる。

 

 

 隠しようも無くこれは、僕が篠ノ之を意識しているという事なんだろうけど、何故か僕はこの感覚をよく知って(・・・・・)いた(・・)

 

 

 

「まぁお前の事だし余計な心配は要らないとは思うが……」

 

 

「(’&?‘+L{*P`!?」

 

 

「せめて人語を介したコミュニケーションを図ろうな。さて、言う程熱は無いようだが一応念の為だ、ちゃんと寝ておけ。どうせ暇なんだからさっさと回復に努めろ」

 

 

 

 コイツ本当に何なの。額と額を合わせての熱を測るやつなんて漫画の世界だけだと思っていたのに、あれって思ってる以上に顔が近くて自分の熱というよりむしろ相手の体温が直に触れてくるからその分熱が上がってしまうというか吐息がかかって妙にドキドキするというか何よりそれをしている相手が相手というかもう何言ってるんだろうね僕誰か冷えピタか氷嚢持ってこい!

 

 

 

 内心の動揺を悟られないようにしながら、二人から隠れるようにベッドに潜り込む。

 

 

 

「(おかしい! 何かがおかしい! 何がおかしいのかあんまり自覚したくないような気がしなくもないけど、何かがおかしい気がする!)」

 

 

 

 何で僕の方がこんなにドキドキしなければいけないのか。普通看病されるのがヒロインで、男の方がお見舞いに来るのが普通じゃないのか少女漫画。立場逆転とか誰得だよオイ。

 

 

 いや別に誰がヒロインとかそういうのではなく、男女の立場の違いというかがね? 男としてこうも情けない姿を見せてばかりな事が凹むというかね? 別にやたら意識してしまう事とか柳崎に感じていた何かに近い何かを篠ノ之にも感じるようになったとかそういうオカルトでも無くてね?

 

 

 

 いや拙い。何が拙いってそりゃ、

 

 

 

「うにゃ? みっちゃんもう寝込んじゃった?」

 

 

「……お前何かしたか?」

 

 

「失敬なっ。いつも私が元凶だなんて思わないでほしいものですなっ。むしろらいちゃんがジャブしたのが悪いんじゃないの?」

 

 

「あれぐらいいつもの事だ。私達の間では、な」

 

 

「何そのドヤ顔! ふ、フンっだ、暴力を揮うのが当たり前だなんて殺伐としてるね! 私とみっちゃんなんてご近所からもそれはもう評判の仲良しさんと言われていた事もあってね!」

 

 

「あからさま過ぎる嘘は却ってどうかと思うぞ? それに、似たような事なら私も散々言われてきたし………ま、まぁうん、お似合いとか、いい加減くっつけみたいな冷やかしをだな」

 

 

「ぐぎぎぎっ……!」

 

 

「……やる気か?」

 

 

 

 

 毛布越しにも既に二人が険悪モードに入っている事が分かるが、今の僕に二人を止められるかと問われると何度だって首を横に振る。

 

 

 別に二人に他意があって言ってる訳じゃないと思うけど、今の僕にとって二人の言葉は爆弾に等しい。

 

 

 肉体的にも無理なら、精神的にも今の二人に詰め寄られて平静を保てる自信がまるで無い。何だか自分でもわけのわからない事を言ってしまいそうなのが怖くて堪らない。恐怖というか、やっちまった的展開を避けるために。

 

 

 

「(誰かあああああああああ! 誰でもいいから、あの空間に亀裂を! XNディメンジョンを早くぅぅぅううううううう!!)」

 

 

 

 そんな願いが神様にでも届いてくれたのか、僕の耳には廊下からこの病室に近づく二つの足音を聞きとった。よしきたこれで勝つる!

 

 

 

「へ、へぇ……更識さんと湊君は昔からの付き合いが………お、お兄さんと妹的な関係ですよね!?」

 

 

「は、はい。その、湊さんはすっごく優しくて、それにえっと、その……」

 

 

「(……大丈夫ですよね? まさか九つも下の子にフラグは流石にありませんよね? うぅぅ、何だか最近束ちゃんも様子が変わってますし、ここらで私も挽回しないと……!) ふむっ!」

 

 

「せ、先生?」

 

 

「ハッ!? な、何でもありませんよーう? ほ、ほらっ! さっきも話しましたけどうちのクラスの転校生が二人も来たって話! そう! 二人がちゃんと馴染めるように副担任として頑張るぞー的な気合いを入れただけですよっ!」

 

 

「……っ!(コクコクコク)」

 

 

 

 

 あり? 二人分の足音だからてっきりあの二人かと一瞬後光が廊下からでも見えたと思ったのに、声的に判断するに凄く珍しい取り合わせというか、いまいち接点の分からない二人が近づいているらしい。

 

 

 扉が開かれてやってきた人物を見てその疑問が一気に確信に変わるが、それでもあの二人の論争を一時的にも止めてくれたのでとにかく助かった。

 

 

 

「(……さっさと退院したい。退院したらとりあえず、リハビリで久しぶりに本気で修業しよう、うん絶対)」

 

 

 

 そしてこのモヤモヤした感覚を一刻でも早く忘れよう。そうでもしなけりゃ日常にも支障をきたしかねない。

 

 

 とりあえず起きているとまた面倒に巻き込まれてもいけないので、二人には悪いけど寝たフリを通させてもらおう。ゴメンね簪ちゃん、そして山田。今初めて僕は君に感謝してる気がするよ……二人を止めてくれた的な意味で。

 

 

 

「湊さん、調子はどうですか…?」

 

 

「……ぐぅぐぅ」

 

 

「あちゃ、眠っちゃってるみたいですね。なら……毛布をこのぐらい剥がしてと」

 

 

「……先生?」

 

 

「あ、いえ。ただ貴重な寝顔なので写真に収めようかなーって。別に他意は無いんですよーう? 本当ですよーう?」

 

 

「……わ、私にもその、一枚下さい」

 

 

「……口止め料という訳ですか。分かりました、それで手を打ちましょう」

 

 

 

 

 ………選択ミスったかもしんない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。