IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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前回の前書きで武装神姫やってるナウと書いてしまったのですが、割と反響があってびっくりしました。近くにやってる人がいないのでコメントを貰った時は普通に嬉しく思いました。



さて、原作無視上等なうちの作品も時系列で言えばもう二巻。原作ヒロイン五人組は湊君とのフラグは立てないと書きましたけど、湊君以外で立ちそうなんですよねぇ………少し男前な性格にし過ぎたかもしれない。誰とは言いませんが。


第二十七話

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉん? へんほーへーがふもも」

 

 

「口の中の物を食ってから喋れ」

 

 

「んむんむ……んっ、と。転校生が二人も来たんだって?」

 

 

「あぁ。それでさっき私の受け持ちの授業の体育の時に顔を見たんだが……」

 

 

「(あっ、まだ教師役やってたんだ。案外お気に入り?)」

 

 

 

 

 漸く病院から出られたのは良いのだけど、体力的にもう三日は動き回れそうに無いため現在自宅というか自室療養中の僕なのだが、柳崎君、君仕事はいいのかい?

 

 

 

「体育教師なんて基本暇だ」

 

 

「世の中の体育教師皆に謝ってこい!」

 

 

 

 でも体育教官室に呼び出されるのって何か凄く怖かったりするよね? 皆鍛えてるからガッチガチの体格で怒られるのとかたまったものじゃない。

 

 

 とはいえここはIS学園。相手が女子のため男性教諭はそもそもいないし、体育教官室も柳崎曰く「あんなフローラルな職員室初めてだ」との事。まぁ大抵はファブリー○の匂いが強かったりするもんね。

 

 

 

 まだ両手の包帯が取れないため、最早諦めの境地に入った「あ~ん」で今日の昼食のタコスを噛み締める。IS学園、サイドメニューの豊富さも秀逸過ぎてクセになりそう。タコスウマウマ。

 

 

 

「……お前ってさ、料理作って食べさせる時もそうだけど食べる時も幸せそうな顔するよな」

 

 

「そりゃこんなに美味しいんだし、顔だって少しは弛んじゃうよ」

 

 

「(…写真にしたら実は着替えとかよりも食事中の方が売れてたらしいが、アイツらの気持ちが今なら何となく分かる気がするなぁ……あぁ可愛い)」

 

 

「あの、柳崎?」

 

 

「ん? どうした」

 

 

「……何で僕の頭撫でてんの?」

 

 

 

 しかも目が明らかに年下の子供をあやすような慈愛の籠った瞳でした。同い年! 僕達同い年! 身長差的に今まで姉弟ぐらいにしか思われた事無いんだけどさ! 柳崎は髪が赤で僕桃色だから特に関連性を匂わせてしまってるみたいだしぃ!

 

 

 とはいえ、ここ最近のスキンシップへの過剰反応は未だなりを潜めてはくれないのでなるべく素早く、それでいて不快に思わせないように手を払う。あちらは無意識だったらしくポカンとしながら自分の手と僕の頭を交互に見やって、

 

 

 

「……もう少し、ダメ?」

 

 

「可愛らしく言っても子供扱いへの屈辱は変わらないんだよ! ダメっ!」

 

 

「いいじゃんかケチ。別に減るものも無し」

 

 

「減るよ! 常識度とか理性とか諸々!」

 

 

「? 何で理性が減るんだ?」

 

 

 

 ……この人はそれをまさか天然で聞いてんのか……!?

 

 

 

「き、キレちゃうって事だよ! 僕だって何時までも大人しくされるがままだとは思わないように! 分かった!?」

 

 

「はいはい、分かりましたよお姫様」

 

 

「分かってねええええええええええええええええええ!」

 

 

 

 シャウトしながらもしかしと、柳崎の調子がいつもより可笑しい事に気付く。

 

 

 

 いつもの柳崎もそりゃ冗談を言ったりからかったりする時は一切の遠慮が無かったりするけど、言って笑うでも楽しむでも無く今日は何だか反応が薄いというか、弄り方が足りないというか。いや物足りないって訳じゃなくてね!?

 

 

 そして一度気付いてしまうとやはりというか、柳崎の視線がこちらではなく別のところを向いて何か想いを馳せているというか、考え込んでいるように見えた。

 

 

 

「(……?)ねぇ、柳崎」

 

 

「何だ? 悪いがタコスはもう品切れだからやれんぞ」

 

 

「流石に六つも食べれば八分目ぐらいまでは溜まるから。そうじゃなくて、何か考えごと?」

 

 

「……どうしてそう思った」

 

 

「だって何だかいつもよりからかいにキレが足りなかったというか、今だって何だか複雑そうな顔してるよ? 僕で良かったら話ぐらいは聞くからさ、幼馴染の誼でって事で話してくんない?」

 

 

 

 ちょっと差し出がましかったかな? こちらを見ながら長く深い溜息を吐いた柳崎を見ながら、少しお節介だったかと不安に思ったが次に顔を上げた時の柳崎は、しょうがないといった苦笑だった。

 

 

 

「お前は……気付いてほしい事にはまるで気付かないクセに、こういう時だけは無駄に鋭いんだよないつも」

 

 

「な、何の話さ?」

 

 

「大事な話さ。まっ、何時か時期を見てお前にも話せる度胸が付いたら私の方から嫌でも聞いてもらうから覚悟しておけよ?」

 

 

「う、うっす」

 

 

 

 何その意味深な発言。細められた目に猛禽類の鋭さを感じ取り思わず背筋が張り詰める感覚を覚えながら、柳崎は一度お茶で喉を潤しながら話し始めた。

 

 

 

「さっきも言ったと思うが、転校生が二人来たって言ったな? その二人とも、中々に厄介そうな連中でな……」

 

 

 

 珍しい。大抵の事はパパッと片付ける印象のある柳崎が、ここまで渋面になる事なんて滅多に無い事だ。あるとしても地元の不良グループから『姐さん!』と危うくレディースの頂点に担ぎ上げられそうになった時ぐらいだったっけ? まぁともあれ、

 

 

 

「フランスとドイツの代表候補生で、しかもフランスのに限って言えば身分詐称も良いところなんだよ」

 

 

「身分詐称って……この学園はお嬢様、っていうか更識が裏事情を取り仕切ってるんだよね? それなのにそんな分かり易そうな事が罷り通るなんてあり得る?」

 

 

「私に聞くなよ。あっちは完璧かと思ってるかもしれないが、あんな男装お前を見慣れたせいですぐに分かったぞ」

 

 

「男、装? え、それってまさか……!?」

 

 

「そういう事だ。フランス代表候補生、一応世間的には“二人目の男性IS操縦者”でさらに代表候補生なんてラベルが付いてはいるが、あれは間違いなく女だ」

 

 

 

 そもそも僕は転校生の一人が男である事も知らなかった訳だけど、それが男装した女の子であるというのはさらに驚くべきものだった。

 

 

 シャルル・デュノアさんというらしいその子を一目見た時から女だと見抜いたらしい柳崎は、その場で問い詰めようかとも思ったそうだけど事情込みの可能性を考慮して放置という事にしたという。

 

 

 実際にお嬢様にも確認を取ってみたところ、その子の所属になっているフランスのデュノア社というのはユーロ圏のIS会社の中でも今落ち目のところらしく、各国が連携して行われているプロジェクトからも除名され後が無い状態なんだという。

 

 

 さらにそこの会社の社長、ディビット・デュノア社長には何かと黒い噂がついて回っているらしく、裏事情に精通している更識でも社長本人が行っている不正の数々の情報はいくつか握っているという。

 

 

 

「そんな怪しさ満点の所から来てるんなら、何かしらアクションがあってもいいんじゃ……」

 

 

「私もそう思ったんだが、どうやらその社長さんは狡い事なら頭が回るようでな、確固たる証拠を掴ませず敢えて匂わせる程度の情報と嘘の情報をバラまく事で限り無く黒に近いグレーゾーンを築いているらしい。だから更識でも情報の真偽は定かじゃないそうだし、やはり外国のトップシェアだからな。尻尾を掴むまではどうしようも無いそうだ」

 

 

「そんな……じゃ、じゃあそのシャルルって子はスパイって事!?」

 

 

 

 男装する理由が会社のアピールなんて事はあるまい。その話を信じるならば、男装するメリットは今思いつく限りでも二つ。

 

 

 

 まず一つ。周囲の女子しかいない状況下において、一夏君が同じ境遇にある相手に親近感を抱くのは容易に想像がつく事であり、彼という本物の男性のIS操縦者、及びその専用機のデータに手っ取り早く近づけるという事。

 

 

 もう一つが、ハニートラップの可能性。こちらは特定の女性を陥落させて何かしらの情報を引き出したり、或いはその陥落させた女性に何かを行う事を目的とする場合だけど……うぅむ。

 

 

 

「目下お嬢からも手を出さないように言われてるから、事態を静観するようにとしか言われてないんだが……」

 

 

「……だが?」

 

 

 

 その子がスパイだとしても、一組には織斑や山田がいるのだから直接的な暴力にならまず屈しないとは思う。そう思えば直接的な危害に繋がるとは思いにくいのだけど柳崎は未だに顔を顰めたまま。

 

 

 

「だって、もしそいつにお前の事が知られたら? 今お前は兎や電波に秘匿された状態と女装があるから何も音沙汰が無い状態とはいえ、お前の事がバレたらどうなる?」

 

 

「………あっ」

 

 

「自分という存在の価値が今、あの小僧と同等以上にやばい位置にある事を自覚しろ。お前がそんなんだから、私が苦労するんだ……ったく」

 

 

 

 なるほど、確かにスパイなら僕の事もバレちゃ拙いよね。むしろ余計に事が大きくなってえらいことになる。

 

 

 

 

 ―――――でも………そっか、柳崎はそういう理由で眉間に皺を寄せて考えてくれてた訳か。僕の事を。

 

 

 

「………」

 

 

「何がおかしいんだ? お前は、今、碌に戦えもしなければ全快とも言えない状態なんだぞ? 本調子でもISを直に相手取るのは厳しいってのに、何笑ってんだコラ」

 

 

「あひゃひゃひゃいっ!? は、はなしてぇ~!?」

 

 

 

 よく思うんだけど、度たび引っ張られる頬は次第に伸びてきてる気がするんだけど。弛んだらどうしてくれる。

 

 

 

「うぅ、ちょっと手加減というものをお前は知った方が良い……」

 

 

「やかましいわ。で、何笑ってたんだよお前は」

 

 

「え゛っ。や、その………言わないという選択肢は?」

 

 

「次は両方だ」

 

 

「OK分かった。言います、言うから凄むの禁止で………まぁ、その、うん。ちょっと嬉しかったっていうかね? 僕の事で真剣に悩んでくれてその………不謹慎なの承知で言うけど、凄く嬉しい」

 

 

 

 うっわっ何言ってんだろうね僕。自意識過剰もここに極まれりと言いましょうか、迷惑をかけている筈なのに誰かが自分の事を考えてくれてるっていうのは、思いの外嬉しい。

 

 

 しかもその相手が………っていうのも、多かれ少なかれ確実にある。

 

 

 

「は、はは……ごめん、変な事言ったね今。僕もう寝るから、お前は仕事行けよいいね!? んじゃ、おやすみなさいっ!」

 

 

 

 自分の台詞に耐え切れず、布団に潜り込み毛布を頭まで被る。何だかこれじゃ病院に居た時と変わらなくて、というか日増しに自分の中でぐるぐるとした感情に制御が効かなくなりつつある。このままでは何れヤバい事になるかもしれない。何がヤバいのかは分からないけど。

 

 

 

 結局、昼休みのチャイムが鳴って職員会議の教員呼び出しで漸く柳崎が出て行くまで、宿直室には何とも言えない空気が停滞してしまった。うん、最近僕の口が僕のじゃ無いみたいだ。どうにかしないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 ……柳崎が帰ってこない。

 

 

 

 

 職員会議に呼び出されてからというもの、そろそろ学校自体も終業のベルが鳴っていたので終わっている筈なんだけどどういう訳か帰ってこない。

 

 

 あれか、僕があんな事を言ったから帰ってこないのか。これは謝るべき? 土下座とか五体投地とかするレベル?

 

 

 

「はぁぁぁあぁぁああぁあぁああぁぁあ………」

 

 

 

 家事も何も出来ない状態なのでとにかく暇を持て余すし、手が使えないので暇つぶしも出来なければご飯だって満足に食べられない。

 

 

 そしてそれ以上に、あの時の言葉を聞いた柳崎の一切の表情が抜け落ちたようなポカンとした顔が忘れられない。

 

 

 あれは呆れていたのか、それともあんまりに予想外過ぎてフリーズしていたのか。もう少し見ていたら何か分かる事があったかもしれないけど、それは僕の方がギブアップ宣言したので無理な話。

 

 

 

「ヘタレ、チキン、意気地なし………どうしてこう、僕は……」

 

 

 

 今まではこんな事無かった筈なのに。十年も一緒に居てこんな事は初めてだ。

 

 

 しかも、篠ノ之との一件以来どうも僕の調子は狂いっ放しな気がしてならない。篠ノ之が僕に好意を抱いているという事実に、想像以上に動揺している自分がいる。

 

 

 しかも動揺するだけ。その気持ちとどう向かい合うかも決まらないし、柳崎に対して今感じている気持ちも全然整理がつかない。

 

 

 

「………いかんいかんいかん。思考が迷宮入りしそうだ」

 

 

 

 ずっと寝てばかりなせいか少しも前向きな思考が湧いてこない。ここは多少無理をしてでも、ちょっとぐらいは体を動かして気分転換をした方がきっと体調的にも良い筈。

 

 

 適当な理由をでっち上げて外に出る理由を作る。こうでもしなきゃ本気でどうにかなりそうで、それでも今のままよりもずっと良いと心の中で言い訳を終えるとかなりゆっくりではあるが宿直室を出た。

 

 

 

「……うっ」

 

 

 

 ものの数歩で体力が尽きそうになる。いつもの反動だけならこうもならなかったんだろうけど、それ以上にも発剄での防御や傷の回復にも剄を回したせいでいつも以上の消耗を体に強いてしまった。要訓練だなぁこりゃ。

 

 

 

『みなとー、だいじょうぶなの? くるしそうだよ?』

 

 

「大丈夫……じゃないけど、寝てるよりは大丈夫だよ」

 

 

『むちゃしたヤだよ? ぼくがダメだって思ったらきょーせーてんかいしてむりやりにだってつれもどすからね!』

 

 

「……ありがと、ちかねちゃん」

 

 

 

 誰もいない時でも無茶をしないようにと篠ノ之から渡されたちかねちゃんの言葉が耳に痛い。心配させていると分かった上で、僕はこうして外に出ているのだから。

 

 

 しかしやっぱり体力の無さはどうしようもなく、倒れそうになる体を木陰の傍になんとか寄せて一息つく。

 

 

 やはり、部屋の中にいるよりも無理をしてでも外出した甲斐はあってさっきまでよりも幾分か思考がクリアになった気がする。

 

 

 

「気がするだけってのが問題なんだけどね……」

 

 

『みなとは何かなやんでるの?』

 

 

「まぁねぇ。その、恥ずかしながらこの歳になって今更、恋に恋する少女達の悩みが分かったというか」

 

 

『! みなとは誰か好きになったの!? ねぇだれだれ!?』

 

 

「……あぁ、そこはちかねちゃんも女の子なんだねぇ」

 

 

 

 予想外の食いつきにビックリだ。ただ微笑ましいとは思うけど、それを口にしようとすればさっきまでの自分ならもう少し悩んでいるだろうけど今なら何とか言えそうだ。

 

 

 

 

「多分……てか、あのね、僕――――――――――――――」

 

 

 

 

 言うだけで、少しだけ楽になれた。問題は全然解決して無いんだけど、問題を問題と捉えられるようになっただけでもだいぶ違うものだ。

 

 

 しかし気分的には楽になれたけど、体力の方はそうはいかない。距離的には百メートルも離れて無い筈の道のりが、まるで登山道の入り口のように思えるのだから不思議なものだ。いや不思議とか他人事じゃないんだが。

 

 

 

『ぼくがてつだったげようか?』

 

 

「それなんだけどさ、今にして思えば学園の敷地内でISを展開するのってダメらしいんだよね。反応が割れちゃうから、その時点で僕の事バレたら詰むし」

 

 

『むぅ……』

 

 

「あはは……ま、まぁ何とか頑張――――っ」

 

 

 

 そう立ち上がろうとして、不意の眩暈に体が大きく傾く。

 

 

 あぁ、これは頭ぶつけるコースだな……。そう冷静に考える余裕があるのは、既に体が動かないからか。

 

 

 痛みに耐えるように目を閉じて、

 

 

 

 

「おっと。あらあら♪ 折角時間が取れたからお見舞いに来たっていうのに、随分アグレッシブなお出迎えね? 湊」

 

 

 

 

 ………むにゅっとした感触に顔が埋まったと認識した瞬間、頭の上から降ってきた声にやけに柔らかく温かい感触から抜け出―――

 

 

 

「あっと」

 

 

「ふむんっ!?」

 

 

「折角だから、ちょっと恥ずかしいけどこのままこのまま♪ それにしても『女子高生の胸の中で眠るアラサー』って書くと、何だか途端に犯罪っぽいわね」

 

 

「ふもふがむごっ」

 

 

「暴れないの。全然力も入ってないみたいだし、ちょっとお姫様抱っこで運ぶわね」

 

 

「ぶはっ……そ、それだけはどうかご勘弁を!?」

 

 

「だ~めっ」

 

 

 

 僕を抱き止めた少女は、玩具を見つけた猫のように目を細めて微笑んだ。とりあえず、今の僕にはそれが悪魔のように見えてしまったのは、一応悪意では無いとだけ言い訳させて下さい。

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