IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
そうと決まったからには早速執筆……と言うべきところなのですが、方針がいまいち定まらず大体の構想は立てられたのですが細かく設定していくのにもう少し時間がかかりそうなので、場を繋ぐ意味も兼ねて再びの番外編。というか、妄想一発ネタプロローグです。
別の前書きで出したあるゲームネタでふと思いついたネタです。割とマイナーかもしれませんが、これで興味をもたれた方は是非ググってみて下さい。そしてゲームネタで会話出来たら嬉しいです。それでは~。
――――――西暦2036年。
取り立てて大きな戦争も無ければ、別にお隣の国との諍いも無く、ましてや宇宙人も未来人も超能力バトルも………まぁ表立って起こってないから起きて無いと断言したっていいだろう。いいよね? そんな時代。
人々は当たり前の未来を生きて、その世界ではロボットが日常的に存在し様々な世界で活躍の場を広げていた。
【神姫】
全高15センチのフィギュア型ロボの総称。“心と感情”を持った人に最も近い
そして何時しかその神姫を用いるある競技が広まっていく事となる。
己の新規に思い思いの武器・装甲を装備させ、それぞれの掲げる目的のために戦わせる。
主のために武器を身に纏う神姫達を、何時しか人は『武装神姫』と呼ぶようになった。
……そして、2040年。
神姫バトルはヴァーチャルリアリティの技術の革新によって、大きな飛躍を遂げる事になる。
その名を“神姫ライドシステム”。
オーナーは疑似的に神姫と一体となり、意のままにコントロールしながら自ら神姫達の視界でのバトルを味わえるそのシステムは瞬く間に広まり、今や神姫を持つオーナーにとってバトルをする事は当たり前。神姫達も、バトルで貢献してこその己という矜持を何時しか抱くようになった。
これは、そんな世界の物語。
一人の少年と一人の神姫の出会いから始まる、そんな世界にありふれた“普通”の物語。
苦悩し、嘆き、喜び、怒り。そんな様々な当たり前な感情を抱き、それでも前に進む。
それは人間にとっても神姫にとっても変わらない。だからこれは、何の変哲も無い、人間と神姫の物語なのだ。
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――――――神姫。
このご時世では持ってない方が少ない、世界的にフューチャーされている一大人気ホビー。
一昔前なら大きなお友達認定を免れなかっただろうが、この時代においては誰もが当たり前のように神姫を所持している。
ある時は主従関係、またある時は家族のように親しげな間柄を築く事もあれば、悪友のような悪態を付き合いながらも一緒にいるような関係のペアもいる。
神姫には心があって、だからこそ人間との間で結ばれる関係は人間同士のそれと変わらず十人十色、千変万化なのだろう―――――
「――――そう、だから実琴君も一緒に神姫部に入ろうよ!」
「………は、はぁ」
「そのあからさまな溜息! そんなに嫌なの!?」
そして俺の目の前には桃色の三つ編みを忙しなく揺らしながら熱心に神姫の素晴らしさを説く友人が一人。
そんな奴の肩の上には、うんうんと頷く全長15センチ程の小さい人形が腕を組んでいる。割とシュールな光景かと思われるかもしれないが、この世界ではありふれた光景でしかない。
『おい湊。あまり無理強いするのもどうかと思うぞ? というか、実琴は神姫を所持していないだろう?』
「それなら一緒に買いに行けばいいじゃん! ねぇお願いだからさ、神姫部今僕しかいなくて困ってるんだよぅ」
「いや他にもいただろ、こないだ大会で勝った~って自慢してきたじゃねぇか」
「それは女子の先輩! 男子は僕しかいないんだって!」
「……男子?」
「その反応は喧嘩と見るよ? 買うよ? 買っちゃうよ?」
ぎりぎりと拳を握る友人をまぁまぁと宥めつつ、その肩にいる神姫と目が合う。ライダースーツのような素体スーツのジルリバーズ型神姫の『來蓮』。実質的な湊の保護者であり、湊の他の神姫達の元締めみたいな立ち位置にいる。
『湊も最近弄られで疲れててな。だからお前が入ってくれれば助かるし牽制になるというのは本音なんだが……』
「まー、コイツの外見じゃあなぁ。仕方無いわな」
「二人して酷くない!? 僕だって好きでこんな顔で生まれ育った訳じゃないんだよ!?」
「……下手な女子より女子らしくて可愛いし」
『家事能力は万能で勉強は×。典型的な世話焼きたがりなのに結局は面倒をみられる幼馴染体質』
「『うん。やっぱりお前、そのままでいいや』」
「二人なんて大っきらいだああああああああああああ!!」
ジルリバーズ型の神姫の特徴として、性格がキツイという傾向があると聞くが成程。こういう時はその事実を強く認識するというか、コイツと湊を弄る時の連帯感は不思議と心地よく感じたりする。
まぁそれは要するに、俺も來蓮も湊が好きだからこうしてからかって愛情表現をしているのだとドヤ顔で教えてくれたある神姫にはデコピンを食らわしておいたが、まぁ嫌いな奴じゃないのだけは認める。でなければそもそも友人になんてなるものか。
一頻り湊をからかったところで、俺は改めて机の上に並べられたカタログに目を通す事にした。
その全部の冊子には旧型の神姫から最新型の神姫の情報が記載されていて、ところどころ難解な専門用語にはご丁寧に湊印の注釈が書かれた付箋が張り付けられていた。こういうマメなところがますます嫁さん向けなのだが、これでこその湊。敢えてツッコむ事はしなかった。
湊がわざわざここまでしてカタログを持ってきた理由は先のやりとりから分かる通り、俺の神姫部への勧誘だ。
世界的に広まっている神姫。その中でも特に『神姫バトル』と呼ばれる神姫を武装させて戦わせる競技が一大ムーブメントとなっている現在、高校の部活としても神姫バトルに取り組む姿勢を見せる学校は決して少なくない。
今ではインターハイなど全国的に大会まで組まれる程、神姫バトルはそれまでの神姫達の在り方同様に深く、人々の常識として根付くようになった。
湊が所属している神姫部もそういった大会に出場するのが目的で設立された、校内でも新しい部活なのだが新設されたばかりだからこそ、人材不足という問題を抱えてもいる。
……まぁ実際少ない理由は主に目の前の友人にある訳だが。
「…?」
それを本人に言うと俺が総スカンを食らい社会的に葬られる可能性がグンバツなので絶対に口に出さない。絶対にだ。
まぁそれは置いとくとして、別に俺としても神姫部に入る事が嫌な訳でも無く、友人の頼みを何も好きで無碍にしようと思っている訳じゃない。ただ、一つ大きな問題がある。
「ねぇねぇ、頼むよぉ。実琴君が入ってくれれば男子二人でタッグバトルにも出られるから、君が頼りなんだよぅ」
「その語尾を伸ばす言い方前まではしてなかったよな? 誰の入れ知恵だ?」
「ふぇ? え、えーっと、な、何の事かな?」
「まぁ良いんだけどさ。ただあんましやると痛い目に遭うから止めとけな」
「大丈夫! やっても大丈夫な人だけにしておくようにって言われてるから、実琴君ぐらいの前じゃないとそもそもしないしね」
「……ハァ」
「あ、あれ? 僕今変な事言った?」
『なぁ湊。お前、いつも思うが生まれてくる性別を間違えてるぞ。今更の話だけどな』
「來蓮、君も大概酷いよね!? 僕が何したっていうのさー?!」
何もしてないと言えばそうだし、無意識にいつもしていると言えばそうだとも言える。要するに、お前がヤバくて俺の常識が崩れそうだという事だ。男の方が可愛いって、何それ怖い。
話を戻すが、こう熱心に勧誘されて悪い気なんて全然しないし、見目麗しく同性である事を除けば普通に役得なポジションとも言えるのだが、俺には素直に頷けないある理由が存在している。それは、
「……でもなぁ、神姫ってバカ高いんだよなぁ」
高校生ならではの切実な問題。
今でこそ普及し子供でも神姫を持つのが当たり前の時代であるが、そもそも神姫というのはその性能自体が生半可なパソコンよりも高度なため、その価格はノートパソコンが安く思えるというホビーとしては破格の値段だったりする。
湊の場合だと、四体の神姫を所持しているがそのうち実費で購入したのは今の來蓮だけであり、残りの三体はと言うと大会の商品だったりする。何気にコイツら、全国という視点からでも十分な強者コンビなのである。人は見かけによらないというが、湊の場合それがあまりにあんまり過ぎる気がしなくもない。
ともあれ、四体も神姫を所持している湊は異常の部類に入るとはいえ、それでもやはり最初は購入という形から神姫に関わっている。
そもそも神姫はいくつかのメーカーが製造・販売を手掛けてはいるが、粗悪品やコピー品が流出しないようその規制はかなり厳しく専門の神姫ショップでも無ければ神姫を手に入れる事など不可能に近い。
そして専門店だからこそ、中古なんて扱う訳も無く『新品が高いなら中古を待てばいいじゃない』のようなマリー=アントワネット的考えもあり得ない。その辺はゲームソフトとは違うのだ。
だからこそ、一高校生であり貯蓄もしていない放蕩学生な俺にとって神姫とは遠い存在なのだ。
「実琴君はお婆ちゃんと暮らしてるんだっけ? なら確かに無理強いは出来ないよねぇ……」
「まぁ雪而婆ちゃんの友達が最近神姫を買ったって聞いたから、婆ちゃんも興味ねぇ訳じゃねぇんだけどさ」
如何せん、まともな扶養者がいない我が家にとって神姫はいささか出費が堪える代物。俺だってむしろ神姫は欲しいと思うぐらいなのだが、婆ちゃんを蔑ろにする訳にもいかない。
「……お前の誘いは嬉しいんだけどな。やっぱ金無ぇし」
「そっか……そう、だよね……」
『あーあ、湊泣ーかしたー。いーけないんだいけないんだー、せーんせーにちくったろー』
「やかましい!?」
確かに俯かせて罪悪感がパねぇけどッ! 泣かしてはいない! そんな事したらファンクラブにぬっ殺される事請け合い。てか確定するがな。
「で、でも! 部に顔を出してくれるだけでもいいからっ、部室に僕以外の男性がいればきっと先輩達だって……!」
自重してくれる筈っ……! そう強く願望を吐露する湊であるが。
「(それはねーわー。あの湊フリークというか湊クラスタ連中が湊を弄らないなんて、ねーわ)」
残念ながら、その程度で収まるぐらいならコイツは今頃制服を学則で女子の物に変更などされていない筈だから。現実を見て欲しいが、現実としてブレザーにチェック柄のミニスカートが似合いすぎる男子高校生を前に、俺はかけるべき言葉が見つから無かった。
湊があまりに不憫だったので、一応頭数を揃える意味も兼ねて入部届けを出す事を約束して笑顔で自分のクラスに戻る湊を見送り、一息。
神姫バトルに興味が無い訳じゃない。神姫だって、昔から欲しいと思わなかった訳じゃない。
でも、物心付く前から両親を無くして婆ちゃんに育てられている以上、我儘を言うのは気が引ける。俺の我儘に我が家の家計を切迫する訳にもいかないし、そこまで神姫が欲しいとも思っていない。ただ、
「……俺も神姫がいれば、アイツみたいに楽しそうにしてたのかねぇ」
湊と來蓮のやりとりを見て、羨ましくない。とは言えない自分がいる。
自分もあんな風に、気心置けないような間柄を築けるパートナーがいたら……ガキの頃から神姫を持った友人に自慢され、寂しく思わなかった事は無かった。弱みを見せるようで絶対に表には出さなかったが。
神姫を持つのが当たり前の時代。だからこそ、神姫を持っていない俺に対し無自覚な子供故に無遠慮な発言というのは、その頃の俺にとっては聞きたくないものばかりだった。
親がいない事も周囲の偏見を生み、湊と今のような関係を築く以前の俺なら教室で一人たそがれる以外の選択肢が無かった事だろう。
その点湊には感謝しているし、湊やその周囲の神姫を間近で見てきたからこそ、自分も神姫が欲しいのだと思い知らされて、その度に思い直してきた。
うちじゃ神姫は買えない。金も無いし。そう何度も言い訳を呟いて、俺は自分に蓋をした。
大丈夫。神姫が無くったって別に困る事がある訳じゃない。同年代の話題についていけないというのは確かにあるけど、そもそも友人と呼べる存在なんて湊ぐらいなので今更の話だ。
「(…って、こんな考えしてる時点で全然諦めきれてないんだけどさ、結局のところ)」
そんな自分に苦笑しながら、教壇に立って『リルビエート型神姫とヴェルヴィエッタ型神姫のどちらがより萌妹か』という討論議題を立てた教師に思わず筆箱を投げつけた。綺麗なジャイロ回転だった。
そして何よりも、その議題でまるまる一時間クラスメイト達があわや掴み合いに発展しかねない討議になった事に、俺は溜息を禁じ得なかった。やっぱ神姫が無いとダメなのかねぇ……はぁ。
……オリジナル話のネタや意見などもあれば是非寄せて下さい。色々とネタを集めて考えたいので。