IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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折角の連休という事で、活動報告で募集したネタの中で頂いた物の中から『境界線上のホライゾン』と『リトルバスターズ!』で試しに番外編を書いてみました。


これはあくまでも試し書きなので、設定とか導入部分とか勿論それ以外でヒロインこれがいいだとかこんなネタ良いんじゃね?的な意見があれば遠慮なくコメントくれると嬉しいです。あと、まだ本格的に書く訳じゃないのでキャラとか掴めてない部分があると思われますが、そこは目を瞑ってくれるとありがたいです。

それではまず一本目境ホラIn湊君ネタです。では。


番外編~新連載ネタそのいち~

 

 

 

 

 

 

 大体において人は“世界”というものを意識しない。

 

 

 

 

 それはそうだ。「世界」などという曖昧に巨大で確認も出来ない事なんかよりも、自分の明日や将来の事の方が気になる方が余程建設的であるし、直接自分に関わると分かっているから意識もしやすい。

 

 

 朝食のメニューでも、友人と話す話題の内容でも、人にとっては漠然とした世界を馳せるよりもよほど有意義だ。

 

 

 

 ………そしてそれは、世界が滅亡に危機に瀕しているこの世界でも変わらない。

 

 

 

 『末世』と呼ばれる時代。

 

 

 聖譜記述によって予言された世界の終末。確実に世界が滅ぶと言われた世界でも、人はやはり世界よりも我を思う。

 

 

 そう、不確かな滅亡よりもきっとくるであろう明日を。

 

 

 それさえも本当は不確かでいつ滅ぶかも分からない世界であったとしても、人は今日を生き明日を夢見る。

 

 

 それが普通。例え世界が黄昏時を迎えていたとしても、そう簡単に人の営みが変わる事は無いのだから。

 

 

 

 

 ―――――――だからまだ、本当の意味で人々が『世界』を意識するには足りない。その切欠は、まだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ========== ==========

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――朝。準バハムート級航空都市艦群『武蔵』の上。

 

 

 

 八つの都市艦が連なった世界に一つだけの『空飛ぶ国』であり、流れ着く者達の掃き溜めと揶揄される土地。

 

 

 そのうちの一つである中央後艦『奥多摩』にある“武蔵アリアダスト教導院”の正面に位置する橋の上で、僕達梅組は超武闘派必罰主義の担任ことオリオトライ・真喜子教諭の前に整列していた。

 

 

 

「(ふわぁぁぁ~………今日って朝から体育だったっけ? こんな事なら遅くまで奉納の舞するんじゃなかった……)」

 

 

 

 その列の後方、丁度前にはクラスというかこの武蔵の中でも人族として最大のペルソナ君がいてくれるお陰で欠伸がバレずに済む。ふわぁあ。

 

 

 昨日は術式の管理上どうしても舞を奉納しなければならなく、しかも神様からの要求によりぶっ通しで合計六時間。休み無しで舞ったせいで今日は眠くて仕方が無い。

 

 

 別に急いで術式を使えるようにする必要は無かった筈なのに、表示枠(サインフレーム)で再三の要求があったため仕方なく舞った。神様ってどうしてこう、氏子の事を考えてくれないんだろ。今度浅間に上申してみよう。うん。

 

 

 かといって眠気が覚める訳でも無く、何だかオリオトライ先生を追いかける的内容の話題が進んでいるようだがどうにも話に集中出来ない。

 

 

 

「(いかん……これはイカンですよ……このままじゃまた罰が……)」

 

 

 

 うちの担任は必罰主義がモットーで、クラスの生徒一人一人に罰を決めさせて何かしらやらかしてしまった場合、各自の罰を受けなければならなくなる。

 

 

 僕の受ける罰は日替わり女装コスプレ。常日頃童顔ネタでからかわれたため周囲に勝手に決められた罰則であり、態々とあるバカがカレンダーに日毎のコスプレ内容を書かれたものを用意している。こんな時だけ限定の行動力なんて溝にでも捨ててくれないだろうか? いやガチに。

 

 

 気合いを入れてフラつきそうになる体を立直させようとするも上手いこと真っ直ぐ体は立たず、一瞬こちらの制御を離れて体が大きく後ろに傾いてしまう。

 

 

 

「(うわ……これヤバ)」

 

 

 

 音をたてたら居眠り扱いは必至。そうなれば今日のコスプレは確か…………バニースタイルだったっけ、それは流石に嫌だ。こないだなんてスク水ニーソ付け猫耳で恥かいたばっかりだというのに!

 

 

 先生にバレないよう、内心で絶叫をあげる心持で踏ん張ろうとするも如何せん重心が傾き切った状態で足に力を入れてもしょうがない。

 

 

 南無三――――そう思った矢先、倒れかけた体が途中で勢いを失って止まった。

 

 

 

「…………あれ?」

 

 

「ハハハっ! 大丈夫かい崩上君? 何だかさっきからフラフラしてたみたいだけど?」

 

 

「あ、あぁうん。ごめんイトケン君、お陰で助かったよ……ふわっ」

 

 

「その様子だと寝不足みたいだね! 夜更かしは美貌の天敵だよ!」

 

 

「僕がそれを気にする必要性は無いんだけど?」

 

 

 

 僕を受け止めたのは全裸・禿げ・マッスルと三拍子揃ったインキュバスの伊藤・健児。通称“イトケン君”だった。

 

 

 インキュバスといえば大抵淫魔を想像する訳だけど、イトケン君はその種族に対するイメージとは真逆の爽やか男児。全裸だけど。

 

 

 凄く性格も快活であり、今だってこうして僕を方向性はともかく心配してくれている………全裸だけど。

 

 

 しかしそんな事を気にしてちゃこの武蔵で生きていく事は出来ない。何より、それを意識してしまうのは折角の彼の親切を無碍にしてしまう事になってしまうし、種族差別にもなってしまうからだ。

 

 

 それはいけない。ゲームの作戦とかだと『いのちをだいじに』というコマンドがあるのだそうだけど、僕もそれに見習ってモットーとして『ひとにはしんせつに』という心の掲げた目標がある。

 

 

 それに従ってきっちり助けてくれたお礼を述べつつ、余計な単語にはツッコミを入れておいた。そこは、男として譲る事の出来ない問題なので。

 

 

 

「はーいそれじゃ皆ー。これから先生逃げるから、皆は一発でも良いから先生の攻撃を“当てる”こと。もし出来たら出席点にプラス五点あげるから。……この意味が分かるわね?」

 

 

 

 イトケン君と会話してるうちに何やら皆の雰囲気が変わっていた。先生の声はよく聞こえなかったけど、その追いかけっこの途中で先生に攻撃をするのがアリだという事ぐらいまでしか分からなかった。

 

 

 話を聞こうにも既に戦闘系技能を持ってるクラスメイト達の目の色が変わっているため無理っぽいし、それ以外の比較的このクラスの中でも穏健派に入る人達もやる気を見せている。一体先生は何で皆を釣ったのだろう?

 

 

 

 そう一人思考に浸っていると一瞬で先生が大きな背面跳びを見せ、橋から身を投げた(・・・・・)

 

 

 

 パッと見投身自殺のようにも思える光景だけど、その実皆の隙を突いた一瞬の挙動。それであそこまで大きく動けるのだからあの人は相変わらず何か人としておかしい気がする。………ってそうじゃなくて!

 

 

 

「あぁっ!? もう皆行っちゃってる!? ……何か今日のやる気違うなぁ……」

 

 

 

 考えに没頭していたせいで皆より大幅に遅れたスタートになってしまった。慌てて追いかけるが、この調子じゃ最後尾に追いつけるかどうかも怪しい。

 

 

 首にはハードポイントを兼ねた鋼鉄の首輪と、顔以外の全身には術式が刻まれた包帯が巻かれている。これのお陰で僕の身体能力の八割は失われていると言っても過言ではない。

 

 

 

 封印術式具『封鞘』。それが今の僕を縛る忌々しい物の名前にして、僕がこの場所にいる事を許されている証でもある。何と言うか、僕にとっては言葉にしにくい感情を占めている道具である。

 

 

 

 コイツのせいで僕は大凡の能力を剥奪され、けれどコイツがあるお陰で僕はこの武蔵で梅組の皆と一緒にいる事が出来る。

 

 

 まるで自分以外の体を中から動かしているかのような違和感は何時まで経っても慣れはしないが、それでも走らないと何を言われるか分からない。

 

 

 

 慌てて走る僕の足は、自覚しているもの以上に鈍く、それも今となっては少しだけ親しいと思える自分に少しだけ笑みが浮かんだ…………それが『喜』の感情であるのかは、僕にも分からなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく走っていると漸く最後尾を視界に捉える事が出来た。先頭は最早見る事すら叶わないが、相手はあの担任だ。

 

 

 

「(……全力でやれたら………って、こういう考えがダメなんだってば)」

 

 

 

 未練がましい。全身に纏わりつく鈍りのような術式を忌々しく思う気持ちを振り払いながら走ると、丁度戦闘で負傷し止まっていた人達と出くわした。

 

 

 

「あ、点蔵おーい! それにノリキにウルキアガー!」

 

 

「む? おぉ、湊殿で御座ったか。今日は珍しく最後尾で御座るか?」

 

 

「Jud.ちょっと出遅れちゃってさーあはは。で、この三人がこんなところで止まってるところを見る限り……返り討ち?」

 

 

「分かっているなら言わなくていい」

 

 

 

 最初に声を返してくれた顔を帽子と布で隠しているのは点蔵・クロスユナイト。どちらかと言えば僕寄りの人間と言える、この武蔵じゃ“弄られ役”が定着してしまっている忍者兼パシリ。

 

 

 その次に一見ムスッとしている表情ではあるが、それがデフォルトでこの武蔵における貴重な常識人枠がノリキ。

 

 

 どちらも近接武術師としての心得も技術も持ち合わせているが、それがここにいるという事はすなわち、そういう事なのだろう。

 

 

 

「相も変わらずあの担任……あれは本気で人間を止めてゴリラに進化しているのではないか?」

 

 

「そんな事言ってるとまたシバかれるんじゃない? 先生、割と地獄耳だったと思うんだけど」

 

 

「そんなバカな事…………あり得そうと思えるのは何故だ?」

 

 

「それだけ僕達の担任が凄いって事だよ。その意味の受け取りはそっちに任せるけど」

 

 

 

 担任の理不尽とも言える強さに愚痴を零しているのは、航空系半竜のキヨナリ・ウルキアガ。異端審問官志望のクラスメイトだ。

 

 

 三人共恐らくは連携を組んで先生に挑んだのだろうが、結果は聞くまでも無い。むしろ近接戦で少しでもあの人と渡り合うつもりがあるのならまずタイマンはあり得ない。やるなら絶対に数に物を言わせた物量波状攻撃ぐらいしなけりゃ色々と詰む。まぁこれでも勝てるかどうかは分かんないんだけども。

 

 

 

「でも止まってるって事は何処か怪我でもしてるの?」

 

 

「いや大丈夫で御座るよ。ただちょっと自分らサボってるだけで御座るし」

 

 

「ふぅん? まぁ、一応僕先に行くけど、“コレ”置いとくから治療して欲しかったら術式札代分はよろしく」

 

 

 

 ハードポイントが開きそこから転がり落ちるように小さな影が飛び出る。特に珍しくもない。主の術式を補佐する霊獣型デバイスで僕が所有している走狗(マウス)、通称“みにゃと”である。姿はデフォルメした僕が巫女装束と何故か付け耳付け尻尾。ちなみに今日の尻尾は猫、気分で変わるらしい。

 

 

 

「貴様クラスメイトから金を取るのか。どこぞの守銭奴じゃあるまいし」

 

 

「冗談だよ、あそこまで外道じゃないってば。それじゃ、御先ー」

 

 

「………行ったで御座るな」

 

 

「あそこで金ぐらい取るのが普通だと思っていたのだが、アイツはまだこちら側では無いのか……」

 

 

「いや何を感慨深く語っておるのかは知らぬが、湊殿はあのままで良いと思うで御座るよ。ていうかああいうキャラが一人でもいないと自分この武蔵で今以上に扱いが悪くなる事確定してしまうで御座る」

 

 

「貴様の扱いと湊のは違うだろ」

 

 

「えぇっ!? だって同じ弄られ系のネタを持つ者同士……」

 

 

「お前はパシリだが、アイツがパシリにされたところを見た事は無い」

 

 

「あれぇノリキ殿まで同意見で御座るか!? じ、自分より湊殿の扱いの方が良いのはうっすら知っておったが、それを自覚するのは何か嫌でござるよ!?」

 

 

「安心するがいい。アイツはアイツで、同人誌ネタが異常に酷いからな……この間うちの同人屋が鬼畜凌辱系で何か書いていたしな」

 

 

「…………自分、今心底このポジで良かったと思ってしまったで御座る………済まぬ湊殿……っ」

 

 

 

 走狗に疲労を禊ぐ用の術式札を持たせて先に行く。本来主と走狗があまり距離が離れると術の管理や干渉が甘くなってしまうのだが、僕の持っている術式上この武蔵内部の広さぐらいならどこに居ても転送・召喚が可能なので然程問題じゃない。

 

 

 

 そのまま三人を後にして先を急ぐ。何だか不穏な気配を感じたけど、はて?

 

 

 

 またしばらく走っているうちに後方集団の姿を捉えた。

 

 

 先生を捕まえる気はあまりないのか、そもそも無理だと思っているのか。何に釣られたのかを未だに知らないので点蔵君達が先生に無謀と半ば思いつつ挑んだのも、多分そこにある筈だ。

 

 

 そして後方集団に丁度大きい図体の半裸を発見。まぁ人族でありながらその巨体のせいでサイズのあう制服が無かったというか、あれがきっとペルソナ君のスタイルなのだろう。うん。

 

 

 

「おーい! ペルソナくーん!」

 

 

「あっ。みな、と君。今日はい、つもより、遅かった、ね?」

 

 

「Jud.そんで鈴さんもやっほー、うん、ちょっと今日は寝不足気味だったから合図に気付けなくってさ」

 

 

 

 ペルソナ君がこちらを振り向き手を振り返す傍ら、その逞し過ぎる肩の上にちょこんという表現がピッタリマッチする格好で座っている少女の声にやや声音を落として返事をする。

 

 

 多分、梅組……いや、きっと武蔵の中で一番良い子。向井・鈴さん。彼女を知る者なら、というか梅組は全員が幼馴染みたいなものなので彼女の事を皆が知っている。

 

 

 鈴さんは生まれつき目が見えないため、人を音で判断している。だからこそ話しかける時は必ず手を持ったり、声音を落とすのは最早僕達にとって常識というか意識外の行動、つまり無意識でやっているようなものだ。

 

 

 

「ペルソナ君はいっつも元気そうだよね~。え? そうでもない? またまた~、いっつもすっごく大きいから僕なんて羨ましくてたまらないんだよ? ちっちゃいしコスプレさせられるし当たり前のように女扱いされるしさぁ……ペルソナ君だったらそんな事無いんだろうなぁ」

 

 

 

 ちなみに鈴さんとは異なり、ペルソナ君はまるで喋らない事で有名な人なので言わんとしている事を察するのには相応の慣れが要る。

 

 

 ただ、それは僕だけらしく他の人は基本ジェスチャーで読まなければならないのだとか。うぅん、解せぬ。普通に見てれば何となく会話出来るのに。あ、鈴さんは見えないから例外で。ちなみにペルソナ君の無口キャラは通神におけるチャットでも変わらない。

 

 

 

「でも、こな、いだ湊、君。身長伸び、たって」

 

 

「あ、Jud.そうなんだよ鈴さん! 僕やっと154の壁を、18で超えられたんだ……!」

 

 

「わぁ。お、おめで、とう」

 

 

「ありがとう鈴さん! でも、梅組だと女子も合わせてカーストだからなぁまだ。今だって鈴さんと同じぐらいの背だから話しかける時は楽なんだけど、男としてこう、もうちょい身長欲しいんだよ。うん、ペルソナ君ちょっと30センチぐらい身長分けてよ」

 

 

「!?」

 

 

「にゃはは、嘘うそ。それぐらい羨ましいって話だよ」

 

 

「うちの牛乳、飲む? 湯屋だ、から、一杯置いてる、よ?」

 

 

 

 三人で駄弁りながら、まぁ約一名はリアクションオンリーとはいえ一応僕には言いたい事が理解出来ているので三人で駄弁っているという事で。

 

 

 ペルソナ君もわざわざ僕のペースに合わせて走ってくれてる辺り、何気に武蔵内での紳士レベルは高い。

 

 

 だが何故かこうして三人で並走していると、偶に見かける品川の人達やクラスメイトの面々の視線が、何故か生温かい気がする。こう、子供を見つめる目というか、縁側でお茶を飲みながら余生をエンジョイする老頭児(ロートル)というか。

 

 

 

「(………うん?)」

 

 

 

 例えばそれが鈴さんだけなら、武蔵梅組の良心にしてストッパーでもありアクセルでもある彼女を見つめているファンクラブの人だと分かるのだけど、どうも視線は鈴さんだけじゃなく僕やペルソナ君にまで注がれている。

 

 

 それがまさか『武蔵癒しトリオ』などと言われているが故の事態だとはまるで気付かない僕達は視線を気にしながらも、とりとめの無い話題に華を咲かせながら先生が仁王立ちしている何処かの事務所っぽい場所の前に立ち止まった。

 

 

 

 その理由も既にペルソナ君から教えてもらっているが、何でもセクハラ紛いの事をされて暴れた挙句店をぶっ壊したその弁償をさせられた事への八つ当たりとしてここのヤクザをぶっ飛ばすのだとか。

 

 

 

「(………先生ぇ)」

 

 

「アンタ達遅いわよーって、何よ湊、そのコイツダメだみたいな目は」

 

 

「いえっ、先生は何時の増して若々しく素晴らしいなと湊心のメモ帳に書き記していただけであります故罰ゲームは何卒! 何卒――――――!」

 

 

「……アンタ、私に対する印象が何だか随分と物騒過ぎじゃ無い?」

 

 

 

 いやいや、ここに来るまでに倒れていた人を見ていたらこれが妥当かと。しかも今からヤクザに喧嘩を売りに行くのだから、物騒認識に何ら間違いは無い。

 

 

 僅かに身を引き、というかペルソナ君の後ろに隠れていると先生は諦めたように息を吐きながら剣帯から鞘に収めたままの長剣を取り出して素振りを始めた。………その風圧だけで一体どれほどの人が殺せるのか、考えるに恐ろしい。僕の封印は先生にこそつけるべきなんじゃないのか。

 

 

 

『あのー、先生ー。何か素振りに気合い入り過ぎじゃないですかー』

 

 

『具体的には総長とかの罰の時以上に怖いでーす』

 

 

「いやー、あそこまで湊の外見みたいなのに怯えられちゃうとさー………こう、何かブッ殺してでもストレス発散しないと。ほら、ストレスって体に悪いじゃない」

 

 

『『ぶっ殺される側はストレスどころじゃないですけど!?』』

 

 

 

 笑顔で殺戮宣言をした先生をクラスメイトが宥めている様子を見ながら、そういえばときょろきょろと辺りを見渡してみて何人か居ない人に気付く。こうした騒ぎがあれば何よりも先に出てくるであろう、あの人が。

 

 

 

「(そーいやトーリ君、どこにいるんだろ……? まぁどうせ)」

 

 

 

 エロゲの行列にでも並んでいるのだろう、彼はそういう人だから。

 

 

 

 そして始まる鬼人族と人間の皮を被った先生との、戦いと呼ぶにはあまりにあんまりな一方的なタコ殴りを横目に僕は人知れず溜息を零した。

 

 

 

 ………何故か聞こえたシャッター音やネームを書いてる音には、気付かないフリを通した。

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