IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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PCの調子が不調だという事とかネタ詰まりとか色々問題ありまして更新が遅れていますが、漸く投稿できました……またもや番外編ですが。



番外編~長らくお待たせしてすいませんでした

 

 

 

 

 

 

 

「やってキマシタワーな神姫ショップ! ここから、実琴君の神姫ロードが始まる……!」

 

 

「…何でそんなにお前がテンション高いんだよ」

 

 

「いや、何か一人の神姫ユーザーの誕生に立ち会えると思うとちょっと」

 

 

「んな大袈裟なもんかねぇ……」

 

 

 

 

 

 とはいえ、かく言う俺もテンションが吝かじゃなく上がっているのは否定できない。

 

 

 家から電車に揺られる事数十分。

 

 

 都心部にある、神姫バトルの公式戦も行われる規模のショップの前に俺と湊はやってきていた。

 

 

 やたらテンションが上がっている湊はともかく、俺もいよいよ神姫を手に入れるのだ。何だか体験した事の無い緊張感で煩い心臓を意識しないようにしながら、俺は人生で初めて神姫ショップの中に入った。

 

 

 

「…………ぅぉお、おぉぉ……」

 

 

「ふふっ。どう? 結構凄いものでしょ?」

 

 

「…正直、予想以上だわ、これ」

 

 

 

 入った瞬間、目に飛び込んできたのはエントランス中央部にあったスクリーン。

 

 

 そこでは今し方行われている神姫バトルの映像がリアルタイムで流れていて、テレビでしか見た事の無かった神姫同士の対戦が、今まさに目の前で繰り広げられていた。

 

 

 

「あそこに映されてるって事は、どちらも大会で名を上げた人達だから、試合自体もハイレベルで見ごたえはあるだろうね。見てく?」

 

 

「悪ぃ、これは最後まで見てたいわ」

 

 

 

 湊の厚意に素直に甘える。その際に一切湊の方に顔を向けられない程に、俺は画面に釘付けになっていた。

 

 

 戦っているのはどちらもケモテック社の神姫である『マオチャオ型』と『ハウリン型』の対戦で、激しい火花を散らしながら格闘戦を繰り広げていた。

 

 

 マオチャオ型がドリルで突っ込めばハウリン型は手に持ったロッドでそれをいなし、懐に潜り込もうとするもそれは片方のナックルで止められる。

 

 

 膠着したかと思えばすかさず距離を取り、それぞれが移動砲台であるビットに命令を下して何やら『にゃーん!』とか『わふー!』などと叫びながらビット達の射撃戦が行われている。

 

 

 

「うーん、やっぱりケモテック製のビットって可愛いなぁ」

 

 

「何つーか、お前が使ってるビットよりも個性的だとは思うけど……俺思うに、ケモテックってジョーク好きな奴多いよな。絶対」

 

 

「社長からしてあの両機のデザインでケモナー好き公言しちゃってるようなものだからねぇ。あっ、マオチャオがクリーンヒットされた」

 

 

「決まったかこりゃ。つか最後マオチャオこけたように見えたんだが……」

 

 

「素でドジっ娘属性なのかもね」

 

 

「そういう神姫もあるのか……」

 

 

 

 確かに基本的な性格設定は各製造会社やモデルなどで色々と異なってはいるけども。それはそれでいいのか?

 

 

 例えば今戦っていたケモテック社の二機はモデルとなっている犬と猫の性質を性格設定に大きき反映させているし、湊の來蓮ことジルリバーズ型や同期モデルのエストリル型神姫などはそのコンセプトからして速さを追い求める姿勢が強く残っている。

 

 

 そこに態々ドジっ娘属性を付与する理由はよく分からんが、まぁそういうのを所望する大きなお友達もいるのだろう。俺は嫌だが。

 

 

 

「そう? でも可愛いとも思うけど」

 

 

「婆ちゃんの面倒をみてもらうつもりだからな、いざドジられて取り返しのつかないのは御免だ」

 

 

「あはは、相変わらずお婆ちゃんっ子なんだから」

 

 

「やかましか。んじゃ、そろそろ選びに行ってもいいか?」

 

 

「もっち!」

 

 

 

 対戦も見終えた事だし、そろそろ本来の目的その一を果たすとしよう。

 

 

 

 いよいよ店頭に並ぶ神姫から自分の神姫を選ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 エントランスを抜けてエスカレーターを上がる事数回。“オフィシャルショップ”と銘打たれたフロアにはその名に恥じない、各神姫のパネルであったりパーツの宣伝などが書かれた横断幕もちらほら見られる。

 

 

 湊に案内されるまま、まず先に向かったのはカウンター。そこでまずはマスターとなるために個人情報登録がいるらしく、予め婆ちゃんの分も用意してきたのでそれも含めた二人分の書類にサインする。

 

 

 

「露口雪而さんと、露口実琴君だね? マスター登録は済んだから、いよいよお楽しみに神姫選びですだよっ!?」

 

 

「で、です…だよ?」

 

 

「あぁうん。気にしないで、こういう人だから」

 

 

 

 テンション高いのも気になったが、神姫素体を購入する人が最近いなかったから二つも売れて嬉しいらしい。商売人として表情に出やすいのはどうかと思うが、まぁいっか。

 

 

 

 まず選ぶのは俺の……ではなく、無論婆ちゃんのだ。俺はともかく、婆ちゃんの面倒をしっかりみてもらう予定なのでしっかりした性格設定の神姫が望ましい。

 

 

 

「あの、すいません。祖母の面倒をみてもらいたいと思っているので、そういった事に向いた神姫ってどれか教えてもらっていいですか?」

 

 

「お安いご用ですだね! お婆さんというと介護とかそういった事も出来た方がいいのかなね?」

 

 

「いえ、そこまで介助が必要という訳じゃないんですが。やっぱりこう情報化した社会じゃそういったツールを活用出来ないのは不便ですし、宅配サービスとかいざって時の連絡とかをしてくれたり、そういうのを期待したいんです」

 

 

「なら私的おススメはこれなのかな? 『イーアネイラ型神姫』!」

 

 

 

 語尾がところどころダブる店員さんが勧めてくれたのは確か、人魚がモデルとなった神姫だっけ? それにしても……これを作ろうと思った会社にはつくづく尊敬の念を送りたい。男子のロマン満載じゃないか。

 

 

 

「………実琴君?」

 

 

「いや、別に俺は何も思ってないぞ? 婆ちゃんの面倒をみてくれるってんならそれで全然構わないってだけだし」

 

 

「今、胸部装甲ばっかり見てたでしょー?」

 

 

「し、仕方ないだろ!? 俺だって男子高校生なんだぞ!?」

 

 

「やらしー。まぁでも、イーアネイラ型の性格は基本的に面倒見の良い姉タイプっていうのが相場だから、お婆ちゃんの面倒をみるのには最適かもね」

 

 

 

 湊にイーアネイラ型に注目されている事がバレたのは少し恥ずかしいが、その後の言葉で婆ちゃんにはイーアネイラ型が適していると判断するには十分だった。

 

 

 この場で起動させても肝心のマスターとなる婆ちゃんが不在のため、帰った後で湊に設定をしてもらう事になった。パソコンと繋げば少し慣れた者なら簡単に出来るらしいので、こういうのは湊に任せるとしよう。

 

 

 

「うーん、でも少年も実は家が一緒だから何時でも“これ”が見られるって期待感も無きにしもあらずんば?」

 

 

「………敢えて否定はしませんよ」

 

 

 

 すいません。神姫といえどもやっぱりあのマシュマロに目がいってしまう俺を許してください。思春期なんです……思春期、なんですっ……!

 

 

 

 店員さんの生温かい目、湊の冷めた目のメドローアに精神をガリガリ削られたが何とか耐え切り、次は俺が自分の神姫を選ぶ番だ。

 

 

 湊から散々カタログを見せてもらったのがつい先日だったのだが、あの時はまさかこんなに早く神姫を手に入れられる機会が巡ってくるとは思ってもみなかったから候補が全然選べなかった。

 

 

 だからこそ、並ぶ神姫を見てもどれがいいのかよく分からない。こう言う時こそ、経験者の言葉を聞くとしよう。

 

 

 

「という訳で、助けて湊ー」

 

 

「おまかせあれ! で、何が聞きたいのかな?」

 

 

「お前が來蓮を選んだ時ってさ、どういう基準で選んだのか参考までに聞かせてくれないか? どういう基準で選べばいいのかよく分かんなくてよ」

 

 

「そうだねぇ……例えば僕の時だったら、ジルリバーズ型のクルーザーに変形する機構に惹かれたっていうのが一番大きかったかな?」

 

 

 

 確かに変形はロマンだ。しかも普段クルーザーと聞くと船の方を彷彿しがちだろうが実はそうじゃなく。、ジルリバーズ型のクルーザーというのはアメリカンバイク、要するにハーレーに代表されるような公道を走る事を前提とされた大型自動二輪を指す。

 

 

 確かに一度だけ見せてもらったあの変形は魅力的だったと思うし、湊が惹かれたのも頷ける。成程、フィーリングも大切という訳か。

 

 

 

「ちなみに私的におススメは『プロキシマ型神姫』ですぽよ! 変形にロマンを感じるなら、やっぱりこれは外せないっしょーいちくん!」

 

 

「アンタいい加減語尾統一しろよな!?」

 

 

 

 語尾へのツッコミはともかく、店員さんが紹介してくれたのは何やら異形と呼ぶに相応しい装甲を纏った神姫であった。

 

 

 プロキシマ型は装甲の外見こそバイザーなどを見るだけでも異形そのものだが、性格設定は男勝りで清々しいと、従来の神姫とは趣の異なる仕様で有名だ。

 

 

 その姐御肌とも言うべき性格は女性のユーザーを多く獲得しており、今昇り調子の神姫なのだそうだ。

 

 

 

「しかも僕っ娘ですだぜ!? これが私のおススメでっす……ますっ」

 

 

「ネタ切れしたなら無理してまで言わんでも……」

 

 

 

 でも確かに性格での相性は選択基準として考えなければならない項目だ。自分に合わせてくれるというか、どちらかが歩み寄るのではなく互いが同じ場所にいても苦にならない、そういう関係の方が何かと気を揉まずに済むだろうし。

 

 

 となれば、ここで性格設定にクセの強いのを選ぶのはNG。まず俺が人付き合いをそこまで得意としていないため、いきなりハイレベルな神姫のパートナーになれるとは思えない。ここは安全牌でいくべきだろう。

 

 

 

「でも実琴君。神姫部に入るなら当然バトルもするんでしょ?」

 

 

「そりゃまぁ、そうだわな。部活もするって決めた以上は大会にも出たいとは思うし、やっぱ神姫ライドもやってみたいしな」

 

 

「なら大人しいってだけで選んじゃったら、その子がバトルを苦手に思ってたりするかもしれないでしょ? だからそれだけで選んでもしょうがないから、少しあくが強くても場馴れする意味も兼ねて僕はこの子をおススメするかな」

 

 

 

 俺の思考を読んだかのようなタイミングで、それでいて何気に俺の考えを訂正しながら湊が俺に勧めてきたのは『ストラーフMk.2型神姫』。

 

 

 店員もその湊のチョイスに異論は無いらしくしきりに首を縦に振っている。うぅん、確かストラーフって言えば悪魔をモチーフにした神姫……だったか?

 

 

 

「うん。でも性格はストイックって感じでクールだから、結構実琴君と相性良いと思うな」

 

 

「クールで俺と相性が? 俺お前にどんな風に見られてんの……」

 

 

「まぁまぁ。でもフロントライン社のベストセラーモデルってぐらいだから、初心者マスターにもお勧め出来る神姫だよ」

 

 

「そうか……まぁ、確かにズバズバ物を言うようなのが相棒の方がいいよな。溜めこまれても俺が気付けないだろうし」

 

 

 

 思ってる事をすぐに言ってくれる相手であれば、それほど高くない俺の社交性でも意志疎通を重ねるのは難しく無い。むしろ湊がそういう開けっ広げな性格だからこそ、こうして友人になれている訳だし。

 

 

 

 ………うん、そうだな。俺も、これ以上長考しても良案が浮かびそうに無いし、これに決めた。

 

 

 

「…それじゃあ、俺はこのストラーフでお願いします」

 

 

「お買い上げありがとやっしたー! ではこちらの神姫はもうそのまま起動させますか?」

 

 

「あ、あぁはい。お願いします」

 

 

「緊張してるんだー」

 

 

「やかましい」

 

 

「あだぁっ!? げ、拳骨は痛いよ……」

 

 

 

 店員がストラーフを台座のような物の上に乗せて、キーボードに何やら忙しなく打ちこんでいる。俺も覚えた方がいいスキルなのだろうか。見ててもよく分からないし、帰ったら湊に尋ねてみるとしよう。

 

 

 

「さてと実琴君。こうして無事神姫が決まった訳だけど、名前はちゃんと決めてある?」

 

 

「……………………ん?」

 

 

「だから、な・ま・え。パートナーになるのに、名前が無くっちゃ味気ないでしょ? まさかとは思うけど、考えてない訳じゃないよね?」

 

 

「い、一応考えてはいる! 考えてはいるが……」

 

 

 

 それをこうして人に見られて、しかも名づけるところを目撃されるというのは何故か妙に恥ずかしい。自分の神姫との初対面というのも手伝って緊張がさらに高まっていく。

 

 

 やがてキーボードに必要な事を打ち込み終えたのだろう、店員がこちらに振り向き画面上ではデータをロードしている事を示すゲージが100%を示し、そして――――――

 

 

 

「―――――起動。FL107 悪魔型MMSストラーフMk.2、起動開始します」

 

 

『『お、おおぉぉぉ……!』』

 

 

「っておいこら! 何で俺よりお前らのが前のめりなんだよ!?」

 

 

「………? あの、一体誰が私のマスターなんだ?」

 

 

「俺! 俺だから! とりあえず湊と語尾バグ店員そこ退け!」

 

 

 

 初対面がまさかのツッコミ落ちという、締まらないにも程がある出会いを果たしたのだった。記念すべき一瞬を、まさかの友人その他に掠め取られた気分はなんというか………非常に複雑だったとだけ言っておこう。

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