IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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本当に長らくお待たせしました! この話を書く以前にリアル事情やらネタ詰まりやら色々あったこともあり遅くなってしまった方のイイ日旅立ちです。

まるでISが関係無い上に趣味というかテンプレまっしぐら展開ですが、風呂敷を畳むまでは止められません。畳み切ります書くまでは!………いや意味分からんて自分。


第三十六話

 

 

 

 

 

 

 咄嗟に駆け出したのは二つの影。

 

 

 

「邪魔だ退けッ! 引かないなら死んでも文句は受け付けないと思えカスがぁッ!」

 

 

 一つは言うまでもなく、私。ちかねからの湊に危機が迫っているとの緊急通信が入り、店から数十メートル離れた位置で待機していた私は聞こえてきた制止の声を無視して吶喊した。

 

 待ち構えていたのは皇燐お抱えの黒服達。それぞれが銃刀法違反上等とでも言うように拳銃を構え、こちらに呼びかけを行っているようだが知ったこっちゃないしどうでもいい。

 

 今、湊に危機がある。そこに行かねばならないのにどうして鉛玉如きで足を止めなければならないというのだ。最終通告を出してきたのと同時に、一番近くに居た黒服に向かいアイツ程では無いがそれなりの出力を籠めた発剄を打ちこむ。私の素の膂力と相まってさながら“人間砲弾”と化した黒服は周囲の者を巻き込んで十メートル程転がっていった。

 

 

『チッ!? 店内にいる者も全員呼び出せ! 侵入者を許すなッ!』

 

「だぁれが貴様らの許可なんぞ取るか! 押し通る!」

 

 

 お嬢から借りてきた、IS用のブレードを初めてここで抜いてみせる。長さは二メートル程の、人には扱えない鉄塊だが私は違う。湊が活身剄で強化を行うことでちかねを生身で振り回せるように、私も多少の強化を行えばこれぐらい容易い。まぁ、素でも振り回すぐらいは余裕なのだが今は時間が惜しい。最初から全力で障害を消し飛ばす。

 

 

 一振りの度に人体の何処かが壊れる音と悲鳴、そして風が唸る音が場を支配しその中心たる私は剣を揮う度に前へと進む。銃弾を時に剣で防ぎ、或いは刀身の厚さを利用し直接迎撃しつつ当初いた三十名ほどを蹴散らす。

 

 門の前にいた連中を粗方片付け終えたところで、もう一方で奮闘していた影の方に視線を向ける。そこには木刀で既に数名を昏倒させていた、ここ最近ですっかり見慣れた少年の姿があった。

 

 

「……柳崎先生」

 

「ちっ、つけて来てたか。しかも……まぁぞろぞろと」

 

「來蓮さん……これ、どういう事かちゃんと説明してもらえるんですよね? 勿論、お姉ちゃんも交えて」

 

「悪いが説教はあっちに隠れてるお嬢にやってくれ。私は急がないといけないんだ」

 

 

 織斑一夏を先頭に、よりにもよって妹様と本音、そして以下一夏ラヴァーズとでも言うべき少女達。ISさえ使えれば頭数ぐらいにはいれられるが、生憎場所は店内で何より湊に何かが起こっている以上、ISのように規格外の武装はNGだ。

 

 

「先生! 俺も、俺も行きます! 先生がそれだけ慌ててるって事は、中で湊さんに何かあったんですよね?」

 

「……こういう時に目敏くなるなっつの。面倒な」

 

「俺には【白式】があります。部分展開でなら腕と雪片弐型だけを展開して壁ぐらいにはなれます、だからっ!」

 

「…私も。お姉ちゃんへは後でいくらでも文句を言うから、今は、お願い」

 

「……~~~~っ! あぁもうっ! 後でどうなっても責任はとらんし自分の身は自分で守れ! それが出来れば文句は無い! もう私は行くから後は勝手にしろ!」

 

 

 お守をしている暇は無い。今一番それが必要な奴はこの中である上、相手はどうやら若干気が振れているようでもある。AI娘達の慌て様から察するにここで紛糾している時間は無い。

 

 二人の立候補を消極的に受け入れ、私は先んじて店内に続く扉をブレードで吹き飛ばした。待機していた数名ごと清楚な内装を汚していくが、もう一度言う。知ったこっちゃない!

 

 後ろからついてくる気配は二つ。どうやら妹様と小僧だけがこちらに向かい、残りの面子は本音あたりお嬢と合流しに案内に向かったのだろう。全員で突撃するよりも、入れ違いで脱出されるのを防ぐためにも待機側のメンバーが多い方がいい。

 

 

 ……それに何より、湊を救うのは私だ。私がそうだと決めた事を、譲ってなどやるものか。

 

 

 逸る気を黒服を薙ぎ倒しながら発散させ、幾重にも続く襖を破りながら漸く私の視界には求めていた人の姿が。

 

 が、桜の着物を纏っている湊の方からの気配はどうにも希薄で、目を瞑っているのは恐らく薬でも使われたのだろう。ぐったりと倒れそうになっているところを銀髪の少女に抱き止められていた。

 

 その姿に、腸が煮え繰り返る烈火のような感情をそのままに私の口は開いた。

 

 

「湊―――――――――ッッッ!!!」

 

「柳崎先生ですか。今、この方はお休みになられているところなのです。お静かに願いませんか?」

 

「っ、何言ってんだよアンタは! どう考えても湊さんに何かしたの、アンタだろ! 湊さんからその手を離せ!」

 

「おや、織斑一夏さんですか。貴方も……本当に、魅力的な方ですのね。()は」

 

 

 ―――あぁ、今私の顔、盛大に引き攣っているか若しくは人様に見せられない形相になってるんだろうなぁ。

 

 ちょっとばかり自分でも抑えの利かない何かが芽生え始めている。名前を付けるなら「殺意」だったり「怒気」だったりするのだろうが、一個人にここまで熱を上げたのは湊以外……って何考えてんだ私は、アホか。そんな事はどうでもいいのだ、問題は………あの小娘が、今、誰の事を呼び捨てにしたかというその一点。

 

 

「……皇燐、沙桐…ッ」

 

「こんにちわ、更識頭首の妹君。立場ある身分である貴女が、末席とはいえ皇燐の者と接触してもよろしいのですか?」

 

「そんなの、どうだっていいっ。湊さんを離して……!」

 

「――――――何故?」

 

 

 心底分からない。お嬢やウサミミ、私の知る中でも五指に入るであろう美貌の顔に純粋な疑問だけが浮かんでいた。それが余計に腹立たしく私の神経を逆撫でする。

 

 かろうじて理性があるのは目の前に湊がいること。そして、通常よりも怒りによりかかっている負荷が大きすぎて未だ自分の中で整理しきれていないからだろう。明確な形を得ず胸中で暴れ狂う熱を吐き出すように、私は平静を装いながら呼びかけた。

 

 

「そこで不思議そうにする理由が分からないな。湊は、お前のものじゃない。そして今、お前は湊に危害を加えた。妹様の言う通り、お前が湊を離すのは道理だろ」

 

 

 いや理屈としては通っていないこの言葉であっても、コイツは明らかに常軌を逸した手段で湊を今手中に収めている。それは許される行為ではないし、元より許すつもりなど無い。

 

 ブレードの切っ先を突き付け、半ば脅すように湊の返却を要求する。既にあちらに戦力は無く、こちらは私にIS装備者が二人。火を見るより明らかな差があるにも関わらず、皇燐沙桐の顔に浮かんでいたのは………

 

 

「――――――では、わたくしからは一言だけ。皆様に言わせてもらいましょう」

 

 

 名家の娘としての振る舞い。どこまでも清楚で、極めてこの場に似合わない笑みのまま。両手を(・・・)重ねて(・・・)深々と頭を(・・・・・)下げた(・・・)

 

 

 その違和感に気付いたのはすぐだった。さっきまで奴が抱いていた眠っていた湊が、いない(・・・)

 

 

 

 

 

『―――――――らいれんお姉ちゃんっ!』

 

 

 

 

 

 聞こえた声はちかね。でも、この状況でどうして、そんな切羽詰まったような声を出す?

 

 もう場は詰んでいて、後は湊を取り返してそこの元凶に説教かましてそれで終わり。心配かけた湊には罰としてしばらくコキ使ってやろう。その未来はもうすぐそこにあるのに、どうして………?

 

 

「……みな、と?」

 

「―――――」

 

 

 剣戟が交差する。咄嗟に反応した体は正確に剣閃を捉えて受け止める。私の反応速度を超える事は無いまでも、ここで蹴散らしてきたどの黒服よりも速く、重たい一撃。

 

 だがそれは私を害するに値しない一撃だ。そして、それは当然の筈のことなんだ。

 

 だって、今まで何度も対戦して、その都度私が全勝してきた。私との間にあった絶対の差。それはアイツ自身も理解し、それでもと努力を続けた結果がアイツの得た剄操作技術。常人はおろか私の剄総量よりも多くの剄を完全に制御下に置く事で、私に比肩する実力をアイツは身に付けた。

 

 

「ち、ちょっと待ってくださいよ………何やってるんですか、なんで……?」

 

「……悪い冗談、だよ。ねぇ、何とか言ってよ……」

 

 

 ………そう、今、この場において私の動きを止められる存在がいるとしたら、それは一人しかいない。

 

 

 

「――――まず前提として、何故貴方達(・・・・・)の下に湊が(・・・・・)いる事を(・・・・)当然だと(・・・・)思っている(・・・・・)のですか(・・・・)?」

 

 

 

 滔々と詩を紡ぐような声が響く。聞きたくない、今はお前の話なんて聞きたくない。そんなことより目の前のこの事実を悪い夢だと言ってくれ。だって、だってこれは……っ。

 

 

「半信半疑という訳ではありませんが、やはり本人に試してみるまで不安が無かったと言えば嘘と言えます。お体の調子はどうですか――――――

 

 

 

 

 

        ――――――ねぇ、湊?

 

 

 

 

 恋人にでも語りかけるような甘い声。そんな声でコイツに話しかけないでくれ、そして………

 

 

 

 

 

 

「うん、全然平気! むしろ調子が良いぐらいなんだけど……あの、どうしていきない怖い人達に囲まれてる訳? 何か恨まれるような事でもしたの、沙桐ちゃん(・・・・・)

 

「あ、ぁあぁあああぁぁあ………!?」

 

 

 信じたくなかった。信じられる訳なんて無い。

 

 

 ………湊が、私に向かって斬りかかってきたなんてこと。

 

 

 でも今、湊は確かに私に本気の剣を打ちこみ、皇燐沙桐にまるで知己のように声をかけている。その軽く弾んだ声も、それでいて私への警戒を一切解いていない敵意も、何もかもが信じられない。何で、何でなんでどうしてお前が!

 

 まるで知らない(・・・・・・・)相手を見る(・・・・・)ような眼(・・・・)をこちらに向ける湊に、私は何かを言うべきなのに口が震えて動かない。頭も碌に動いてくれないのに、体の方は思考せずとも湊が放つ剣撃の全てに対応してしまう。戦いたくなんてないのに、湊の剣を受け止め体は勝手に反撃すら行い、その内一閃が湊の頬を浅く斬った瞬間、私の中で確かにソレは決壊した。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あぁぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ! あああぁああぁあああぁぁああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・

 

 ・・・・

 

 

 

 

「っ!? ちょっ、何この人どうしたの!? うぉぉっ!?」

 

 

 リミッターを超えた発剄。全身から放たれたそれは血と衝撃を周囲にバラまき湊さんを体ごと突き放した。その事実に、來蓮さんが壊れかけている事実に漸く我に返った。

 

 自らの血を発剄とともに撒き散らしながら、慟哭が響き渡る。

 

 

「私は、約束した……湊を守るって。他ならぬ自分に、あの日確かにそう誓った。強くて弱いこの馬鹿を守ってやるのは自分なんだって、十年前から決めていた………なのに、嗚呼なのになのになのになのにっ! 私はっ! 今、この手で湊を斬った! 湊が私を斬ろうとして、私が……、あ、あぁぁぁああぁああ………!」

 

 

 ―――このままじゃ、拙い。

 

 今この場で冷静に動けるのは私だけ。それでも完全に冷静だなんていられないし、湊さんの変貌の理由だって分からない。彼がどうして皇燐のあの人を守る立場にいるのか、まるで知らない何かを見るようにこちらを見る事も。

 

 でもだからこそ、ここは引かなくちゃいけない。今の來蓮さんをこのままにしておく事は出来ない。

 

 

「――――織斑君っ! 來蓮さんをつれて逃げてっ!」

 

「でもっ!」

 

「いいからっ! 今は、湊さんの事は………っ」

 

 

 織斑君が言いたい事は痛いほど分かる。私だって出来ることならそうしたい、湊さんを取り戻したい。だけど……!

 

 

「お前はいいのかよっ!? 湊さんがあんなになっちまってるってのに!」

 

「…いいわけないでしょ!? でも、今逃げなきゃ來蓮さんが壊れちゃう! それを本当の湊さんが望むの?!」

 

「―――――ッ、くそ、くそっ、畜生がッ! テメェ、湊さんに何しやがった!?」

 

「それを言う必要を感じませんね。ただ、事実は湊を見れば分かるでしょう? それが全てです」

 

「……皇燐沙桐。貴女は、絶対にしちゃいけない事をした…………更識なんて関係ない。貴女は、私の敵……!」

 

 

 吐き捨てるように、血を吐きながら血の涙を流し続ける來蓮さんを抱いて持ってきていた【打鉄・改】を展開させ、戸を突き破ってその場を離脱した。織斑君が後についてきている事を確認し、速度を上げて本音に連絡を入れて学園に帰還する。

 

 離脱の際に湊さんの所有物らしき巾着袋を回収し、その中に待機形態で入っていたラファールが激しく点滅を繰り返していた。恐らくは何か連絡を取り合っているのだろう。

 

 

「(……全く、お姉ちゃんを怒ってる場合じゃないよね、これ)」

 

 

 腕の中で泣き疲れて眠りに就いた來蓮さんの弱り切った姿を見て、このままでは終わらせないと強く決意した。湊さん、次に会う時には思いっきり引っ叩いて目を覚まさせてあげますから、待っていてください……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――

 

 

「……ふぅ、疲れたぁ。っと、大丈夫だった、沙桐ちゃん?」

 

「はい。湊が守って下さったお陰です」

 

「そっか。なら良かったけど……どーしよこれ、えらく散らかっちゃったね」

 

「構いません。皇燐の力でどうにでもなりますから。それより……」

 

「あ、うん。別にこれぐらいの傷なら大丈夫だよ」

 

「いえ……頬の傷ではなく、涙が……」

 

「……え? 本当だ、何でだろ?」

 

「――――大丈夫ですわ。多分、目にゴミが入っただけでしょうから」

 

「うーん、何かまだ止まりそうにないし、とりあえず顔洗ってくるねー」

 

「はい…………まだ不完全、ですが十分に効果は発揮されているようですね。流石はあの、ISを開発した三人の一人が提供してくれた薬だけはありました。けど、もう少し量を増やしてみましょうかしら? くふ、ふふふふふふふふふふふ………」

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