IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか?   作:イイ日旅立ち

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えー、最近全然執筆が捗らずこの体たらく。誠に申し訳ありません。

ダンガンロンパで軽く鬱っていたり、続編のスーパーダンガンロンパ2の希望厨に絶望させられたりと色々忙しかったことは一切関係ありませんが、ネタ詰まりとスランプ脱却のために色々してそっちでも手詰まり感を感じるというデフレスパイラル。

まだ脱しきれていない感は丸出しかと思われますが、何とか書き上げた最新話。感想やご意見、或いは書いて欲しいネタなどあればコメントをお願いします。それでは。


第三十八話

 

 

 

 

 

 

 篠ノ乃博士から齎された情報は、ある意味私の推測通りのものだった。

 

 

 

「ちかちゃんから送られたみっちゃんの身体情報から、一応ああなった理由について大体の見当はついたよ」

 

「…ありがとうございます博士。それで、湊さんが変わった原因というのは…?」

 

「―――――ナノマシン、だよ。極めて悪質な使い方をされたものだけどね」

 

 

 そういって博士が取り出して見せたのはやけに大きい、家畜用の牛なんかに付けられる個体判別用のチョーカーのようにすら見える……けど、それは?

 

 

「これ? これが一応、みっちゃん専用のISの『布都御魂』だよ。この待機形態はこの子が自分で選んだものらしいけど」

 

「…えっと、つまり何時かはこれを湊さんが身につけるって事ですよね?」

 

 

 想像する。あの、湊さんの顔の下に映える鋼色の、あまりに不釣り合いな首輪を。

 

 それはきっと違和感に溢れていて、それ故に首輪と湊さんからは様々な思惑を想像出来て………

 

 

「うん。みっちゃんの小さな体に不釣り合いな、この厳つい首輪をね……」

 

「……ごくっ」

 

「ふふふ、分かってるね君。そう、たまちゃんを装備させるという大義名分の下に、みっちゃんを合法的にペット化出来るというこの何処かの孔明さんもビックリな策がほーかいっ!?」

 

「―――――ふたりとも、いまはまじめなじかんですよね?」

 

『『ひゃ、ひゃいぃっ!』』

 

 

 い、いけないところだった。涙目の湊さん+首輪の基本コンボからさらにエアリアルに繋げる犬耳まで想像したところで冷水のような、いや水なんかよりもよっぽど冷たい声に私と博士は舌を噛みながら正気を取り戻した。

 

 声の正体は山田先生。彼女も確か湊さんの幼馴染の一人だと聞いたけど、こんなに怖い人だったっけ? 聞いた話だと一組の先生は織斑先生はともかく、副担任はおっとりした人だって聞いていた筈なのに。この威圧感は一体何?

 

 

「もう、いまは湊君を変えたっていうナノマシンについての解説が先ですよ? それなのに、不埒なことをかんがえてちゃ………だめですよね?」

 

「もももも、勿論だよまーちゃん! わ、私が真面目じゃない訳無いじゃないっ! ねっ、そこの眼鏡二号ちゃん!?」

 

「簪です……ッ。あ、ああ後、これはシリアスになり過ぎちゃわないようにするための緩衝材というか思い詰めないようにワンクッションというか………あぅ」

 

「………あれ、山田先生ってあんなだっけ? 私や虚でも、あんな風な先生見たこと無いんだけど」

 

「やまやんの本性があれなのかなぁ~…? あ、あまり気にしない方が良いと思うかな~?」

 

 

 うん、本当は自分のもうそ……じゃなくてっ、想像力に負けてしまったけどっ。決してふざけたつもりはない。つまり、悪いのはこんな時でも破壊力がある湊さんの首輪涙目犬耳姿だと思うっ!

 

 

 

『―――――うぅ…、酷いよぅ、ご主人様ぁぁ……くぅぅん』

 

 

 

『『ぶふっ!?』』

 

「二人とも? いきなり噴き出したりして、どうかしましたか?」

 

『『い、いえ全然大丈夫ですっ!?』』

 

 

 しまったまた勝手に想像力が……いけない、この想像はちょっとの間封印しておかねば。あと、博士が何を考えて噴き出したのか、後で絶対聞き出そうと心に決めた。

 

 

「(勿論私の方もかんちゃんが何を考えたのか、ちゃんと教えてもらうからね……?)」

 

「(…等価交換ですね。分かりました)」

 

 

 この一時だけで志を共に出来たことは、今後にも良い影響がある筈なのでお願いだから、そんな呆れた目で見ないで本音……ッ。

 

 

 ――――閑話休題。

 

 

「こほん。それじゃ、みっちゃんが変わったカラクリを説明するね。アシはたまちゃん、お願いね?」

 

『…了解。ですが、後ほど簪女史との会合に同席を求めます。私でしたらお二人の妄想を映像化は勿論音声の再現も可能ですので』

 

『『是非ッ!!』』

 

「…ふーたーりーとーもー?」

 

 

 佇まいを正して、それでも山田先生に怒られて椅子に正座を強要された私と博士は置いておくとして、漸く湊さんの変貌の原因についての説明が始まった。

 

 

 布都御魂さんが空中にディスプレイを投影させ、そこには立方体に幾何学模様の溝が刻まれた物体が映し出され、その詳細データが文章として別枠で浮かんでいた。

 

 つまり、これが湊さんを変えたナノマシンなのだろう。

 

 ナノマシンというのはIS技術の発展とともに、ISとは関係しない科学技術の中で恐らく最も発達してきた物だ。

 

 極小サイズの機械の総称であり、主に医療分野で用いられている機材の一つ。分かり易いところで言えば、カプセルなどで飲み込む胃カメラもその一つに分類される。

 

 

『今表示されているのは、私に用いられているナノマシンの前身となっているプロトタイプです。これのデータは各国への技術提供から既に実用に至っている国もありますが、一般的に広まっているとは言い難いでしょう』

 

「…それじゃ、このナノマシン自体は入手が困難ということでしょうか?」

 

『一般的には、そう言っても過言ではありません………が、相手が国内有数の名家の令嬢であるなら、その限りでは無いでしょう』

 

「このナノマシンは元々たまちゃんの躯体の殆どを構成している物として開発されたもので、コアの自己進化を機体に最大限フィードバック出来るようにしているの。まぁ今たまちゃんに使われているものはこれのバージョンアップ版だけどね」

 

 

 大体のナノマシンはその用途が一辺倒だ。

 

 何故ならその小さすぎるサイズからあまり多くの機能は望めず、一つの単純な命令(プログラム)を起動させるのが精々だからだ。

 

 でも布都御魂さんに使用されているものはその常識を超えて、ISコアの高度な演算能力を最大限活用することによる、複数の機体の同期による多機能を実現しているらしい。

 

 どちらかと言えば技術畑の人間である私にとって魅力的な話であるが、興奮しかける頭を別の思考が冷静にと呼びかけてくる。

 

 そうだ、劣化版とはいえそのナノマシンが今、湊さんに使われているのだ。それはつまり……

 

 

「…ナノマシンによる、洗脳……」

 

『妹から送られてきた情報、通常の人体からはあり得ない電波の送受信が確認されているので、間違いないかと思われます』

 

 

 薬としても服用出来るのがナノマシンの利点の一つである。であるのなら、記録にも残っているあの時。

 

 

「(湊さんと握手したその時に、おそらく注射針か何かを掴んでいたんだ。それを……)」

 

 

 一瞬だけ湊さんの声に何かを耐えるような吐息が洩れていたのも、その針が刺さった時のものに違いない。

 

 

 ――――それにしても、洗脳……か。

 

 

 だとしたらあの変貌に納得できる所もある。あの湊さんが何の痛痒も感じずに來蓮さんと切り結べるとは思えないし、短時間で初対面の人間の、それも女性の名前を呼べる筈が無いのだ。

 

 忘れもしない。あの時湊さんは確かに『沙桐ちゃん』、そう呼んだ。

 

 

「(………私だって、下の名前で呼ばれたこと無いのにっ)」

 

 

 どうも異性を下の名前で呼ぶ事が恥ずかしい、小学生男子じみた感性を持つ湊さんが、初対面で警戒心を抱いていた筈の人間を気安く名前で呼べる筈が無い。そうに決まってるっ。

 

 

「かんちゃん、悔しいのは分かるけど。洗脳されてるだけだから、きっとみっちゃんは取り戻せるよっ!」

 

「あ、は、はい。そうですね…」

 

 

 どうしよう。多分博士や山田先生も名前で呼ばれたりはしてない筈だし、來蓮さんだってその筈だし、この話をしちゃいけない気がする。あの場にいた來蓮さんは知ってると思うけど、この場にはいないので追及のしようがない。

 

 

『方法としましては、遠隔操作で脳のいくつかの機能を麻痺させて認識や記憶そのものを改竄している可能性が一番高いと思われます』

 

「でも~、そんなこと簡単にできるものなの~? あまり時間はかかってなかったと思うし~」

 

『言い方が悪くなりますが、人間の記憶は酷く脆いものです。それに微弱とはいえ、人体を動かす命令を下しているのは電気です。このナノマシンの性能であればそこに干渉することは然程難しい問題ではありませんし、直接ナノマシンを使って神経を焼き切って記憶そのものを破壊することさえ………可能です』

 

「……ッ!?」

 

 

 一気に汴を差しこまれたような怖気が走る。あまり考えたくなかった可能性を直接突き付けられたようで、否応なく現実を見なければならなくなってしまう。

 

 それは考えられない可能性では無いのだ。

 

 皇燐沙桐は湊さんを欲しているが、そこに彼の記憶が必ずしも必要である可能性は、無い。

 

 洗脳という手段まで使っている相手が、自分に不都合な記憶をわざわざ残しておく必要は無いのだ。だから……湊さんの記憶を破壊できる手段があれば、彼女は………。

 

 

『――――ですが、消したくても消せない場合も、また存在します』

 

 

 出かけた弱音が思わず引っ込んで、私は縋るような気持ちで博士の手にあるチョーカーを見つめた。

 

 

「それはっ……どういう場合なら、湊さんの記憶は消えずに済むの?」

 

『私は先ほど、人間の記憶は脆いと言いました。ですが、それは一つ一つの記憶を細い糸のようなものとして捉えた場合です』

 

「えーと……ごめんたまちゃん、私にも説明してくれる?」

 

『人の人格形成に重要なのは、過去の経験です。環境や人との出会いによって培われた性格は過去の出来事によって大きく左右されるものですから……』

 

「成程……つまり、安易に記憶を消しちゃうと、彼女が好きになった湊君じゃなくなる可能性もあるということですね?」

 

『わ、私の出番を………うっ、ですが、山田女史の言う通りです。湊様の人格形成には大きく過去の経験が関与しています。つまり、その記憶を破壊してしまえば“今”の湊様を形成するファクターが失われてしまうということであり、皇燐沙桐(あんちくしょう)が曲がりなりにも好意を抱いた湊様の存在自体を脅かすことを行うとは考えにくいと思われます』

 

 

 言われて初めて気付かされたけど、山田先生の言葉でよりそう思えるようになった。

 

 

 人の今を形作っているのは過去であり、それはすなわち『記憶』である。

 

 それは私自身もそうだと思える事だ。姉へのコンプレックスを感じていた私が今、卑屈にならずに済んでいるのはやっぱり過去の経験があるからだ。

 

 湊さんが、來蓮さんが、本音が、下を向いていた私を前を向いて歩くことが出来るように立たせてくれた。

 

 その過去があるから今の私がいると確信を持って言えるし、もしも三人がいなかったら、きっと私は閉じ籠ってコンプレックスに潰されていた筈だから。

 

 今の言葉に思うところがあるのは私だけじゃないみたいで、博士や言った当人の山田先生も二人で頷きあって何かを確認し合っていた。それを何となくズルいと感じてしまったのは、その共通した経験にずっと昔の湊さんが絡んでいるからなんだろう。

 

 

 そうだ。湊さんが湊さんなのは、あの人の今までの人生があったからだ。いきなりあんな人間だった訳じゃなくて、元々あった性質が育まれて今の湊さんを形作った。

 

 

 その湊さんに好意を抱いたのであれば、安易に記憶を破壊することはしない……そう思いたい。

 

 

「…ま、まぁ今は湊君の記憶についてはあまり考えないようにしましょう。何だか深みに嵌っちゃいそうですからね、それよりも湊君を助ける方法を考えましょう。洗脳が機械による外部干渉のせいだというなら、そこに介入して洗脳をキャンセルすることは出来ないんでしょうか?」

 

『結論から言えば、その方法が一番現実的だと思われます。このタイプのナノマシンですと既に細胞と同化していて摘出には高度な外科手術が必要となりますから…………一度湊様の頭を開きたいのであれば、私を論破出来るだけの論拠を述べてから摘出案を提示して下さい』

 

「自分で言ってて自分でキレちゃ駄目だってば、たまちゃん」

 

『……すいません。つい熱くなってしまいました、機械だけに』

 

「(忘れた頃に、メカネタを……!)」

 

 

 今更な気がしなくもないけど、少ししんみりした空気を払拭するためには一役買った発言だとは思う。ただ、布都御魂さんはどうしてもシリアスムードを長引かせたくないんだなぁという事は、何となく伝わってきた。

 

 

「…じゃ、じゃあ布都御魂さんなら、湊さんの洗脳を解けるってことですよね?」

 

『確率はともかく、私個人としては必ずを約束します。あんな輩に何時までもマスターと妹を預けたくはありませんから』

 

「(……気のせいかしら。あのISさっきからやけに特定個人への口撃をしている気が)」

 

「(お嬢様。それは恐らく、現実かと)」

 

「(…すご~くウガミー想いな子なんだね~)」

 

 

 使われているナノマシンが旧版なので、その上位互換である布都御魂さんならナノマシンに送られている電波さえ止めてしまえば、その機能を停止させ湊さんへの干渉を止める事が出来る。

 

 問題はナノマシンを制御している装置だけど、これはやっぱり洗脳している本人が所持しているとみて間違いは無いだろう。つまり、やる事は一つ。

 

 

「……それじゃ、まとめに入るよ。みっちゃんを操っているのはナノマシンで、それを制御しているのは皇燐沙桐」

 

『これは推測になりますが、おそらくナノマシンの制御にはISを用いていると思われます。元々私の規格で造られたものですので、同じ規格であるISでの制御が一番自然ですし、ISならば所持していても怪しまれることもありません』

 

「制御装置なんてそれこそ持っていることが不自然ですもんね。と言う事は、最低でも相手はISを一機所持しているということですか…………ふふっ、となれば、荒事は避けられませんよね? 戦力が、必要ですよね? この中で表立って動けるのは、簪さんを除けば私ぐらいですよね? うふふふふふふ」

 

「……え、えーと、姉さんや本音達は裏方をお願いしていいかな? 事をなるべく泡立てないようにしたいから、出来れば両本家の方への釈明と説得を頼みたいんだけど」

 

「うえぇっ!? ちょっ、それ結構な負担なんだけど簪ちゃん!?」

 

「お願い、お姉ちゃん」

 

「任せて(≧∇≦)b!」

 

「(……おいたわしや)」

 

「(お嬢様ちょろ過ぎだよ~)」

 

 

 これで憂いなく私も動ける。姉さんには下から潜り込むように見上げる上目遣いとお姉ちゃんの一言があれば、大概の無茶を通せることも判明したから今後何か有事の時また使わせてもらおう。うん。

 

 

 作戦決行は二日後。

 

 

 主に山田先生の機体の調節のためにある程度時間を置き、その間に姉さん達には二人の現在地の割り出しと両家に立つ言い訳を考えてもらう。そもそも発端は姉さんの迂闊さにもあるのだから、これぐらいはやってもらっても罰は当たらないと思う。

 

 無論、私だって実働部隊として全力を尽くす所存だし、帰ってきたら湊さんにも文句を言ってやらなくちゃならない。絶対に、成功させてみせるっ!

 

 

「うぅぅ~、私も現場がいいよぅ、颯爽とみっちゃんを助ける役割がいいよぅ、裏方は地味だよぅ」

 

「これも適材適所ですから、えぇ。仕方無いんですよ束ちゃん。ですので、湊君救出は私に任せてくださいっ!」

 

「……勿論、その言葉に裏は無いんだよね?」

 

「………………当然じゃないですか。幼馴染を助ける、ただそれだけですよ~」

 

「だったら私の目を見て言ってみろー!」

 

「きゃあ!? ちょっと、束ちゃんそんなくっつかないで~!?」

 

 

 

 …………あの、締めぐらい真面目にやらせてよ、二人とも……

 

 

『仕方ありません。それに気負い過ぎるぐらいよりも、これぐらいの方がかえってよろしいのでは?』

 

「…それが許されるのは、湊さんの不憫体質あってこそだと思う」

 

 

 あの人の存在って実は色んな意味で重要だったんじゃないか。あまり気付きたく無いところで気付いた私だった。

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