IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
本当ならデジモン02ネタをやろうと思っていたのですが、近くの何処を探してもビデオどころDVDも置いてはおらず、ネットでも見れなかったので近かったからという理由だけでIFバレンタインネタでお茶を濁す事にしました。ネタを提供して下さったグラムサイト2様本当に申し訳ありません! 私に出来る範囲で何でも言うこと聞きますので許してください……!
という訳でカウントダウン番外編第一号。設定としては
エンディングを迎えた平和な学園。
結局学園に居着く事になった湊君と來蓮姐さん。
そして湊君は……
という感じです。書き方とか内容自体もだいぶおかしくなってるような気がしなくもありませんが、とりあえずどーぞ。
「みっ、ちゃ~ん♪ さぁ愛しの束さんにぎぶみぃちょっこれいっ!」
そんな言葉を満面の笑みでのたまったのは、兎耳のカチューシャがトレードマークの幼馴染。
朝っぱらから高いテンションは期待の表れか。ただ、今朝七時だということを分かってやってるのだろうか。学生だってまだ寝てるぞ。
「いやぁ、やっぱり誰よりも先にチョコもらいたいにゃぁと」
「…普通、立場が逆とか思わんのかね、君は。あとうっさい」
「へ? だってみっちゃん、私からのチョコ要らないって言ってたじゃない。その代わりに、私がみっちゃんから貰うんだよ?」
何言ってんのこの人と分からないように首を傾げるソイツの頭目がけ、僕はうっかり発剄をぶちかましたくなる衝動を理性を総動員して抑え込んだ。
確かに僕はチョコ要らないと言った。だがそれはコイツの渡そうとするものが問題だったから、それを抑えるために交換条件として、僕が丹精込めて作った手作りチョコを誰よりも先にこの阿呆に渡すと約束したのだ。
………チョココーティングされてリボンでラッピングとか、仮にも教育機関の施設でゆーな。
「ふっふーん、みっちゃんのチョコはなんじゃらほ~い~」
「テンション高いね君。まぁ出来てるからとりあえず中に入りなよ。まだラッピングとかはやってないからもうそのまま出すけど、先に朝食食べる?」
「たっべるー!」
「はいはい。最近まで二人で暮らしてたからさ、どうにも二人分作る癖が抜けなかったから丁度良いっちゃよかったよ。相変わらず微妙な時だけ空気読めるのな、お前って」
「ぶぅ、何気に苦言を呈されているよーな気がしますけどー?」
「それを読み取ってもらって何よりだよ」
「なんですとーっ!」
後ろで騒がしいうさ耳を今では住処と化した校外宿直室に招き入れる。最近まではもう一人いた筈の部屋だったせいか、こうして誰かを招くと妙に落ち着きを感じてしまう。
今現在、この部屋に住んでいるのは僕のみ。同棲していた柳崎は、今はいない。
柳崎は今職員寮で正式に部屋をもらい、学園の体育教師として働いている。それが理由という訳では無いけど、ここから出て行ったのは他の誰でも無い、彼女の意志だ。
『―――――まぁ、その、私だって空気は読むさ……そりゃ。今まで世話になったな』
……あの時は何と言うか、今までの自分の態度のせいで散々彼女を振り回した挙句、この選択をして後悔をした訳じゃなかったんだけど、もっと早くにと思わずにはいられなかった。
別れ際の親友の、泣くのを我慢するような声を聞いて自分が如何に彼女に想われていたのかを想い知って。
――――――だからこそ、そんな彼女の想いに応えられないと告げた瞬間の、親友が見せてくれた泣き崩れた姿を、僕は絶対に忘れたりしない。
それが、この選択をした僕が柳崎に出来る最後の誠意だと思うから。
「……ねぇ、みっちゃん」
「ん? 言っとくけど献立はもう変えられないよ?」
「そーじゃなくってっ。……えと」
「――――別にお前が気にするような事じゃない、とは思うんだけどねぇ」
「ふわっ、ちょっ、いきなり頭撫でないでよっ! 背伸びしなきゃ届かないくせにっ」
「そこまで低くないやいっ!」
心境でも悟られたのか、何か彼女らしくないもぞもぞとした態度に情けない思いを感じながら、何ともないと言うように自分より背の高い彼女の頭に手を置いた。
まぁ、未だに引き摺っているのは認める。こうして二人分の料理を作ってしまってる時点で僕が彼女との共同生活を忘れられてないって事だし、一人でいて寂しいと感じるようになったのは彼女がいなくなってから。
柳崎との想いに決着を付けて初めて、自分がどれだけ彼女に支えられていたのかを思い知らされた。
一緒にいるのが当たり前過ぎて、勘違いしそうになっていた。いや、というか勘違いしきっていたのだ、僕は。
何もせずとも、ただ平穏を望むのならば彼女が自分に傍にいるものだと。一緒にいるのが当たり前なのだと、彼女の好意に甘えてそんな最低なことを僕は彼女に押し付けて……挙句、彼女の想いに応えなかった。
……でもそれを言えば、多分と言わず僕は柳崎にぶっ飛ばされるだろうけど。
だって彼女は、本気で僕のことを好きだと、こんなにも情けなく女々しい僕を一番好きだと言ってくれたのだ。
だから僕の選んだ答えを柳崎は笑って応援してくれた。自分をフった分、僕にはこの選択を貫いてみせろと背中を押してくれた。
いつまで経っても僕はアイツに甘えてばかりで、だからこそ自分の意志で決めたこの選択を後悔しないよう、僕は初めて自分だけの意志でこの道を歩いている。
後悔なんてしない。今まで僕を支えてくれた柳崎に恥ずかしくないよう、僕はこの選択に胸を張っていこうと決めた。
「ったく………あのねぇ
「……噛んだね、今」
「うっさいなぁ! 自分だって顔紅くしてるくせに指摘できる口かっ」
「いっ、いきなり彼氏とか言うからでしょー!? 不意打ちは禁止だよ!」
「それが朝っぱら出会い頭で人にキスするような奴の言う言葉かーっ!」
……僕は、柳崎ではなく篠ノ乃の想いに応えると決めた。………いや、そうじゃないか。
僕が僕自身の意志で、柳崎よりも篠ノ乃が好きだと思ったから、彼女をこの身を捧げて支えていきたいと思えるほどに好きになってしまっていたから、僕は選択した。
告白は柳崎をフったその日に。柳崎の想いを知った上で、僕は決着を付ける為に彼女に篠ノ乃―――束に告白すると言ったんだった。うん、我ながら凄く何かイロイロと間違った気がするけど、こうでもしないと踏ん切りがつかなかった。柳崎には本当に悪いことをした気がしてならないが………うん、本当にゴメンなさいでした。
「未だにらいちゃん引き摺ってるくせにーっ!」
「それは今関係無いでしょ!?」
「うぅぅ……確かに最大の敵ではあったんだけど、死後もまだ私の前に立ちふさがるとは……!」
「勝手に殺して草葉の陰に置くんじゃねぇですよお前ってやつは!?」
本人に聞かれたら揃って拳骨を喰らいそうなことを口ぐちに零しながら、こうして僕と束のある意味初となるバレンタインの朝はグダグダな時間を過ごす羽目になった。うーん、世のカップルみたいにとは言わないけど、二十も越えたいい大人のやり取りとは言えねーよねぇ……はぅ。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「はい、バレンタインチョコ。これ柳崎の分で、こっちが山田……と、ついでだけど織斑にも渡しておいてもらえる? ただでオペラ食べられるって聞いたらしくて頼まれてたんだけど」
「……まぁ、お前がこういう奴だって分かってはいるんだけどな。普通フった相手にも渡すか?」
「習慣って怖いよねー」
「………計画性ゼロで作るからそうなるんだよ、馬鹿が」
「何ら慮ることない台詞ですね!?」
「もう必要も無いと思ってな。傷ついたら兎の胸にでも飛び込んで、み、たら……………………」
「自分で言いながら凹まないでもらえませんかねぇ?! 職員室の皆の視線がすげぇことになるんだけど!?」
備考だが、職員室の中で柳崎の人気は織斑に勝るとも劣らない。よーするに、大人気。
それをうっかり忘れ、長年の習慣から柳崎の分もバレンタイン用のチョコを作っていたのでついでに二人分を追加して持ってきたのだが、自爆発言で涙目の柳崎のせいで敵意の視線が半端無い。まぁ親友がそれだけ打ち解けられてると思えれば……
『―――――』
「ごめんそこ部分展開しないで!? しかも無言で殺気も飛ばされると……!?」
織斑はお姉様とか言われるタイプの偶像に近い人気なのに対し、柳崎のはより身近に感じられる分親近感や、普段の大雑把さからは考えられないぐらい繊細な部分でその実乙女チックなところが人気を博し、学園教師陣から妙な愛着を持たれている。
親友として嬉しい限りであるが、その好意からか妙に彼女への保護欲を掻き立てられる人も多いようで、こんな時はすこぶる困る。涙目になったぐらいで部分展開されかけるのだから、これでもしフったあの場にあの人達がいたら………僕の死は、免れなかっただろう。
「ま、まぁいいさ。私だって当然、お前のことは応援してるんだからな。だから別に、もう忘れたとか最近になって実家から学生時代の写真を送ってもらったりとか逆NTRものとか、そんなの全然興味無いんだからなっ!?」
「今何か盛大に聞き逃せない台詞があった気がしたんだけど。で、逆っていうかNTRって何かの略語?」
「お前の知らなくていい言葉だっ! そして今のは忘れろおおおおおおおおおおおお!!」
何だろう。こう、妙に背中にぞくぞくっとした悪寒が走ったのもつかの間、それを確かめる暇も無く僕は顔を赤熱化させた柳崎の全力全開の一撃により、IS学園の空へと散った。南無。
……そして余談だけど、山田に直接手渡さなかった事に意味などない。そう、意味など無いのだ。
「――――――――――あはっ」
――――――そして時間は昼休み。
「メリーバレンタイン! ……って言って大丈夫なのかな今日って」
「それは私には何とも……あっ、チョコケーキどうもです」
「どういたしまして。オペラって言うやつらしいんだけど、バレンタインの度にこれ作らされてたんだけど結構高級菓子だったんだってね、これ。簪ちゃんに聞くまで知らなかったよ」
「……作るの結構難しい筈なんですけど、これ」
「うん、マスターするまで何度も失敗作の山を築きあげたものだよ………お陰でその年はもう二度とチョコを食べなくていいぐらい食べたっけ」
学生の皆にもチョコを振る舞おうということで、食堂で知り合いになった子達皆に集まってもらった。
既に一夏君は袋いっぱいのチョコをもらっていて、ラヴァーズの皆はやきもきした表情を浮かべていたが、モテる彼に想いを寄せている以上越えるべき壁とかだろう。僕の場合常に渡す側の立場だったから分からない気持ちではあるんだけど。
「てか湊さんっ! 姉さんと付き合ってるんですよね!? なのに何でいち…だけじゃなくて私達にまでこんな、こんな明らかにレベルの違うものを出すんですか……ッ」
「へ? 大丈夫だって、一夏君好き好き~って感情の籠ったチョコが僕のより美味しい筈が無いんだし、一夏君だって箒ちゃん達から貰えて嬉しいでしょ?」
「それはまぁ、普段から世話になってますし嬉しくない訳が無いですけど………あの、湊さん。俺へのチョコは?」
「僕男にだけは絶対にチョコ渡さないようにしてるんだ。だから他の皆の心配も要らないよ」
『『『『………ほっ』』』』
「そんなあああああああああっ!? 俺今日と言う日をすっげぇ楽しみにしてたのにっ! 湊さんがチョコくれるって信じていたのにいいいいいいいいいいいっ!!」
いや、昔から男にだけは絶対にチョコ渡したくなかったんだよ。ただでさえこんな外見でコンプレックス塗れなのに、男に渡したら本物の女子認定を受けそうで嫌だったんです僕。
「…そんな事が」
「うん。それに僕らが学生の頃にはそこまで『友チョコ』って風習も無かったし、同性に渡すのはちょっとねー」
「男の人が作るのもどーかと。いや、嬉しいんですけど……あ、あと、これ私から」
「簪ちゃんのチョコ? うわありがとすっごく嬉しい!」
「………博士のものより、ですか?」
「………………………アイツからのは、ちょっと色々と口に出すのも憚れるんで、ノーコメントでお願いします」
まさか簪ちゃんのような純粋な子に束の穢れ切ったチョコの詳細を話す訳にはいかない。アイツが言っていたチョコは、コンビニの本棚の隅とか古本屋でも一角を異する空間にあるような雑誌でしかあり得ないようなものだし。簪ちゃんにそんな情報を知られる訳には何としてもいかない。
「……チョコフォンデュ」
「に゛ゃっ?!」
「? うがみー変な声出してどったのー?」
「い、いやにゃにもっ?! にゃんでもにゃいけどっ!?」
簪ちゃんの発言に心臓を鷲掴みにされた。いや、鷲掴みというよりはスタンガンでも押し当てられたような感じか。
あまりに的を射たその言葉に恐る恐る簪ちゃんの方を振り向くと、彼女は僕が渡したケーキをぱくりと食べて幸せそうに顔をほころばせながら、僕の視線に気づくと首を傾げていた。うむ、可愛い。
そんな彼女がまさか束のアホ思考が分かる訳がない。うん、そうに違いないっ。
「かんちゃんかんちゃん、うがみーの顔色が青いんだけど何か言ったー?」
「ううん、何にも」
「そぉ~?」
「うん。ただ、そういうのもあるんだなって、切り札として覚えておこうかなって」
「簪様。何やらとても悪だくみをしている時のような顔をしていますけど、そ、それはもしや私への新しい弄り方などではっ!?」
「うん、沙桐は黙ってようか」
「あんっ♪ 笑顔で一刀両断! 簪様ありがとうございますっ!」
「……どうしてこうなったのかなぁ~、ね~かんちゃ~ん~?」
「…何でだろうね? というか、何でいるんだろうね、この先輩」
聞こえないったら聞こえない。僕の癒しである筈の二人の会話の内容なんて、僕には何にも聞こえないっ! というか約一名に関してはトラウマなので、このまま撤退させていただきます。
「うぅぅ……湊さんのチョコ、食いたかったぜ――――――ところでシャルよ」
「うん? 何かな一夏?」
「いやさ、もう湊さんいなくなったから、とりあえずそのとっつき引っ込めないか? 鈴にラウラもサンキュな、シャル止めてもらって」
「こ、これぐらい訳は無い……が、流石にあの人を前にしたシャルを抑えるのは、な」
「いい加減アンタその殺気じみた笑顔引っ込めなさい! てか生身に向かってバンカーなんてオーバーキルでしょうが!」
「えー、大丈夫だよぅ。うふ、うふふふ………僕の先生を泣かせた敵には、これぐらいで丁度良いんだヨ?」
「……シャルロットさんの湊さんへの敵愾心は相変わらずですわね」
「姉さんとくっついてくれたのは二重の意味で喜ばしいが、あの人の場合、どう転んでもトラブルしか生み出さないんだろうな。まさか柳崎先生クラスタになっていたとは……シャルロット、恐ろしい奴」
―――――何だろう、今凄い危機から脱出出来たよーな? ま、気のせいか。
「と、言う訳でほいケーキの配達にまいりやしたー」
「うむ。苦しゅうない」
スイーツ全般に関して彼女の胃はフードファイター並なので、オペラ以外にもカップケーキを山盛りで焼いて持ってきた。荷物が荷物だったので一旦部屋に戻り、風呂敷一杯のケーキをその場に広げると幼女のような彼女はその外見に相応しいキラキラとしたオーラを放ちながら早速頬張った。
「……ん。実にやみー」
「そりゃどうも。ところで、束の奴何処いるか知らない?
「まむまむ。束なら。あむあむ」
「…中にいるなら勝手に探しておくから、食べるのに集中しててください」
「(こくり)」
ついでに束に会って……まぁ、こちらがメインだと聞かれると困るんだけど、普段なら入ってくるなりロケットダッシュで飛びついてくる存在の不在がふと気になり訪ねようと思ったが、話しかけるのも気が引ける程食事に没頭しているイクスちゃんだったので、自分で探すことにした。
最早慣れたもので、SF小説の中の世界のような研究所の中を練り歩いていると、一つの扉から会話が聞こえてきた。二人しかいない筈のこの中ではあり得ない事だが、僕にはある心当たりがあった。
扉の横のスイッチを押しこみ、圧縮空気の独特の音が耳に残って扉が開き切る直前に、“それ”は僕の腹部目がけて飛んできた。
『みなとー!』
「おぐぅ!?」
さながら黒い弾丸。
姫カットの着物幼女。意匠としてはそんな感じの身長一メートル半程のロボットの突撃を受け、咄嗟に受け身をとったものの流石に機械。重さ×速さによる威力は受け流しきれなかった。
しかしそこで顔に出すのは
「ち、ちかねちゃん……そろそろ、離してくれないかな?」
『うんっ。それよりみなとっ、この
「似合ってるよ、うん、すっごく似合ってる」
某メダルで動くロボットのようだという感想はグッと飲み込み、未だお腹に抱きついている『打鉄』という名のISであった筈の相棒から目を逸らし部屋の中を見渡す。
そこには今も調整を受けている“黒い甲冑のような意匠のロボット”と“白と橙のメイドエプロン型アーマーのロボット”、そして二体に繋がれたケーブルの先にはキーボードを打鍵している束がいた。
束がしているのは僕の相棒であるたま、ちかね、風子のある要望を叶えるためのもの。
以前、僕が拉致されたような事がもう二度と起こらないように、待機形態以外にも通称“ティンペット形態”として自立稼働できるようにたまが願い出て、他の二人もそれに倣うように元の機体を彷彿とさせるデザインのロボット形態を身につけるに至った。
姿形こそ小さく愛らしいが、戦闘力は本物のISに等しい。ぶっちゃけ個人を守るための戦力として考えるのであれば、魔改造ISであるちかねちゃん風子ちゃんは勿論、たまに至っては電子戦最強なので語るまでもない。
「あ? みっちゃん来てたんだ~ってこらっ。ちかちゃんまだ調整終わってないんだから勝手に離れちゃめっ、でしょ?」
『うぅ、ごめんなさいお母さん……』
「うんっ! 全然良いよ!」
「お前あっさり翻したな態度!?」
「ところでちかちゃん、私がお母さんなら、お父さんは?」
『ふぇ? お父さんはいないよ? だって私をつくってくれたの、お母さんだもん。たばねお母さんと、イクスお母さんっ!』
「……あー、成程」
束が何を言わせたかったのかを何となーく察せられたが、思い通りの言葉が聞けなかったせいかがっかりしつつもちかねちゃんの言葉を否定するのは気が引けたのか、曖昧に笑って誤魔化す束にこちらも苦笑を抑えられなかった。何と言うか、それだと僕は自分の娘を戦わせる鬼畜野郎になってしまうので素直に頷けない意図ではある。
……でもちかねちゃんが娘だったら……うん、人生幸せだね、僕。
『湊様。今日はどうか……はっ、そういえば今日はバレンタインディ! くぅ、折角動ける体を手に入れたのにロボではチョコが食べられない……っ』
『はうっ!? そ、そんなぁぁぁぁあ~! うぅ、ご主人様のチョコ食べたかったですぅ……』
「あ~、その、ごめん?」
『……い、いえ、湊様が謝るような事では。ですがその意図はばっちこいですので、今から是非私と一緒に空のランデブーデモ!』
『おねーちゃんずるいっ! 行くならぼくもー!』
『も、もちのロンで風子もお供しますですー!』
「はっはっは。……うん、確かに三人が娘だと嬉しいかもしらんね」
『『『それは嫌です』』』
「はうっ!?」
「みっちゃんが血を吐いた!?」
どうしよういきなりしにたくなってきた。まさか三人ともに拒否されるとは……鬱だ死のう。
「何てこと言うの三人ともっ! みっちゃんが今にも死にそうになっちゃったよ!?」
『…ですが、湊様の娘になってしまうと私の本願が遠のいてしまいますし。あっ、ですが親子同士というのも背徳感が出てそれはそれでジュルリな展開ですね!』
『ふ、風子としてはご主人様には何時までもご主人様にいて欲しいというか……ごにょごにょ』
『みなととけっこん出来ないからそれはやだー!』
「くぅっ!? 何で我が子達がライバル宣言されてるの束さんっ!? というかもう決着ついたレースにケチつけるつもり!?」
『え? 全然まだ大丈夫ですよ』
『というか、諦めてる人が本当にいるとでも?』
『お母さん。みないと、げんじつを』
「ちくせうっ! 否定できない自分がいるよぅみっちゃんっ!」
「いや何が!?」
急に話を振られても困る。今し方相棒達に存在否定されて死にたくなってる僕に、一体何を言えと?
「みっちゃんは私の彼氏でしょっ!? ほら、だったらヤることは一つ!」
「ぶふっ、お、お前馬鹿かっ!? いきなり服に手をかけるなしかも僕のに!」
あまりの展開に理解がついてこれないが、束がトチ狂っていることだけは分かった。流れが告白する前と後で変わりないのはどういう事かと思いながら、一時的にショックから立ち直った僕はそのまま束を宥めるのに小一時間を要した。
―――――結果。誰と付き合おうが、バレンタインであろうが、僕の日常はこんなものらしい。賑やかで困ることは無いんだけど、もう少しこう………いや、考えるのも空しくなるからやめとこ。