IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
前回のお話で一夏君にスレているように見えますが、作者的にはアレ別のフラグにするつもりだったんです。だって、うちの作品は前作を読んでた人なら知ってると思いますが、姉があんなんですからねぇ……つまり、そういうことです。決してシリアスフラグにはならないししません、させません。
『『はぁ!? 僕/湊がIS学園にぃぃ!?』』
『うん。………というか、息とリアクションと動きを同時にしないでくれない? 見てて何かイラっ☆てきたから』
『いや僕に言われても……ねぇ?』
『なぁ? そりゃ十年も一緒にいれば反応の一つや二つ、似てもしょうがないだろ?』
『ぐぬぬぬ……ッ』
柳崎に引っ張られ篠ノ之との三者面談にて、篠ノ之の爆弾発言に僕達は思わず仰け反りながら反応してしまった。
何でも篠ノ之曰く、彼女は現在IS学園の敷地に個人の研究所を持っているらしくそこで僕の首輪、【布都御魂】についての細かい検査をしたいという事で男である僕が本来なら近づくことの出来ないしその気も無かったIS学園の道が突如として開かれたら、そりゃ誰だって驚くってものだ。
首輪は外したいけど、だからって女だけの園に行くのはちょっと、いやかなり気が引ける。
『そうなの? でも、普通の男の子なら泣いて喜ぶと思うんだけどー?』
『そんじょそこらの男と湊を一緒に考えない方がいいぞ? 私が中学、大体Dカップぐらいだった頃でさえ一緒に風呂に入れたぐらいだしな』
『ぶふっ!? ちょっ、アレはお前が勝手に乱入してきたんでしょ!? さも僕が当たり前のようにお前と一緒に風呂を嗜んでいたかのように言わないでくれる! 精々が二三回でしょ!?』
『……へぇ、一緒に入った事は否定しないんだー? へぇ、ふぅん、へぇ~………まーちゃんにチクってやる』
『篠ノ之目が据わってる! そして何か最後の方不吉なこと言わなかった!? ウルトラ不吉な単語が聞こえた気がしたんですが!』
『にぱー★ 気のせいだヨ?』
『最後の片言が怖い!?』
……何故か三人で話していると柳崎が篠ノ之に突っかかってはその煽りを僕が受けてしまう流れが発生し、最終的に話に決着が着くのはそれから三時間を要した。
後日僕が個人的に学園に赴くことで決着して、柳崎は篠ノ之に恨みがましい視線を、篠ノ之は勝ち誇ったドヤ顔を曝しながらその場はお開きとなった。
学園には篠ノ之の他にもISのコアのAI関連のシステムを構築した篠ノ之並に頭の良い人もいるそうだし、その分なら何とかなりそうだ。
だから僕は一つだけ、篠ノ之の発言の中で気になっていたことを尋ねてみた。
『ねぇ篠ノ之』
『ん? 何みっちゃん、ちなみに私のスリーサイズはねー』
『そ、そんなことを聞いてるんじゃないから言わなくていいっ! そうじゃなくて、この首輪、じゃなくてISの名前のことなんだけど……』
『【布都御魂】のこと? ちなみにいーちゃんは“たま”って呼んでるけど、その子が何?』
『いや、その、これの名前って【櫻月】って言うのじゃないんだなぁって』
『違うよ~。でも…………ふむ』
何故かその言葉が強く残っていたのでてっきり【櫻月】が名前だと思っていたんだけど、どうやらこれは名前を指す単語じゃなかったようだ。でも、そもそも何でこの言葉を僕は知っていたんだろ? う~む、分からん。
でもその言葉を聞いて篠ノ之は少し考える素振りを見せると、すぐに誤魔化すように言葉を続けた。
『……あっ。そ、それじゃこっちの準備が出来次第そっちに連絡送るから、みっちゃんの連絡先を教えてくれる? その、携帯番号とかメールアドレスとかを……!』
『あー、ゴメン。僕携帯持ってないや』
『なにゅー!?』
『補足するとパソコンもだな。うちはド田舎だからそういった家電を持ってる奴は役所の連中かお偉いさんぐらいなんだよ』
『このご時世に携帯普及率どんだけ低いの!? そ、それじゃ連絡出来ないよぉ……』
『……携帯は無いけど、この首輪もISなら連絡手段みたいなのってあるんじゃないのか?』
『はっ! そうだったよ、ありがとう意地悪な赤毛ちゃん!』
『……私は柳崎來蓮だ。面倒だからどちらか呼び捨てで構w』
『それじゃみっちゃん、また近いうちに会おうね! 今度は【二人っきり】でいっぱいお話しようねっ!』
『そ、そうだねぇ……出来たら、いいねぇ……』
『………フンっ』
そのまま別れた僕達と篠ノ之だったけど、帰りの道中柳崎の不機嫌を治すためにめたんこ心労を強いられた挙句、一週間三食料理当番及び、仕事終わりのマッサージを約束させられてしまった。まぁこれぐらいで済んで良かったと思うべきか。
そして約束通り篠ノ之からの連絡が届いて、柳崎から散々に注意されながら学園に向かった僕が見つけたもの………というか、人。それはとても見覚えのある顔立ちをした男の子で、とても捨て置けるような雰囲気ではなかったので声をかけてみれば案の定だった。
………でも、僕はどうしてもその事に“違和感”を覚えずにはいられなかった。だって
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『出て行けゴラァ!!!』
『『すいまっせんしたー!?』』
とりあえず、頭から血を流した一夏君の処置をしてもらうべく探し出した保健室を無理矢理追い出され、走ること一分弱結局また校舎を飛びだしてしまった。しかも場所はさっきのところじゃないし、また迷子に逆戻りだ………はぁ。
「すいません、湊さん。まさか養護教諭が男性恐怖症だったなんて知らなくて」
「まぁここ、女子校だしねぇ。というかあれは恐怖症なの?」
「……単なる男嫌いの方ですかね?」
「だろうね」
しかも一見で僕が男とも見抜いていた素振りもあったし、余程の男嫌いと見た。何かあったんだろうか?
まぁそれは今は置いといて。治療をしてもらうにも保健室が利用出来ないとなるとどうしようもない。
一夏君は大したこと無いと言い張っているけど、頭の怪我をバカにしちゃいけない。せめて傷口をちゃんと消毒したかったんだけど……
「それならそこらの水道で洗いますから、心配し過ぎですよ」
「うー、そのあしらい方に子供扱いを感じるんだけど。僕、これでも24だよ?」
「……………ゑ?」
「その反応に傷ついたー! 心底意外って顔に僕のプライドはボドボドダー!」
まぁ慣れてるからそうでも無いんだけど、折角こうして女子校で見つけた唯一の同性。仲良くしておきたいという下心からいつもより少しテンション高めに言葉を選ぶと、一夏君は目に見えて焦りながら謝ってきた。それがあまりに必死だったからこっちが罪悪感を覚えてしまう程に。
「マジすいませんでした! その、俺のクラスの副担任も湊さんみたいに若くて大学生ぐらいにしか見えなかったんですけど、それに輪をかけて湊さんがその、若々しかったというか……」
「いいさいいさ。どうせ僕は天然若作りと言われたこともある童顔だよ。酷い時は子供料金で国営バスに乗れたこともあるさ……!」
「そ、そこまでッスカ……!?」
「うん。やっぱりあの時罰ゲームでゴスロリを着せられたのが童顔に拍車をかけたんだろうねぇ、アレはかなり屈辱だったよ」
「(見たかった! ゴスロリ湊さんマジ見たかった! 個人的には白ゴスがベスト!)」
話し込んでいるうちに分かったんだけど、最初見つけた時一夏君は凄く暗い雰囲気を纏っていたけどこうして話しているとそんな素振りはまるで見えず、少し臆病というか慎重な気があることを差し引けば十分好青年と呼ぶに値する爽やかさがある。
ここが女子校だから気後れしていたと言っていたけど、緊張を解せたようで何よりだ。
「ところでさ、ここどこだろ? 僕もそろそろ篠ノ之のとこに行かなきゃなんないし…」
「…篠ノ之って言うと、篠ノ之束博士の事ですか?」
「うん。この首輪を外してもらわなきゃなんないから、アイツの力を借りなきゃなんないのは割と嫌なんだけど背に腹は代えられないし……って、うん?」
篠ノ之の名前を聞いて怪訝な顔をした一夏君であったが、少しそれを気にしながらこちらの事情を簡単に説明すると今度は何故か驚かれた。僕そんなに変なこと言ってる?
「どうかしたの? そんな驚かれるようなことした覚え、無いんだけど……」
「あ、いやそうじゃなくて! ただ、このご時世で博士にそんな風な事を言う人がいたんだなぁって」
「……僕にとってアイツはトラウマみたいなものだからね」
「……穏やかな話じゃないぽいですね」
僕の精神衛生的には穏やかでいられる自信は無いけど、一夏君に気を使わせてしまうのも悪いしこの話題はさっさと切り上げて目的を果たしてしまおう。
そんなことを話し込んでいる内にも足を動かしていたお陰か、校舎と思しき建物以外の少し小さめな建物を発見。特に立て看板などは見当たらないけど、この際だから中に入って確認してみよう。
「(束さんの話題が出た時は驚いたけど、あの人の知り合いってことは…………アイツとも知り合い、なのかな、湊さん。でも……!)」
「んー、誰かいませんかー? 篠ノ之ー、返事してくれたらお土産のレモンパイでも一緒に食べよー」
「いやいやいや。湊さん、幾らなんでもその呼びかけはどうかと」
まぁ確かに。これで釣れるのも人として問題な気はするんだけど、研究者って頭を使うじゃない? 糖分はきっと欲しいと思うんだ。
そんな僕の目論見を『ないない』と首と手を態々同じ方向で横に振る一夏君。それにムッとしながらも呼びかけを止めようとして、僕の危機察知センサーがパターン:青、つまり敵性反応を察知した。
素早く肩にかけてうたクーラーボックスを一夏君にパスして、来るべき衝撃に備え、そして………
「みっちゃあああああああああああああああああああああああああああああああん!」
「このバカ突っ込んでくるのにブースターなんぞ使うんじゃ>*=&&$%(!?」
「湊さーん!?」
噴射口から吐き出される火炎が赤い線を残す程のスピードで、やたら嬉しそうな顔の篠ノ之が飛びこんできた。いや、これを“飛びこむ”なんて優しい言い方をしていいものか、僕と知り合い数人じゃなかったら内臓破裂して死んでたんじゃなかろうかこれ。
よくよく見てみれば背中にバックパックのような物から人参のようなスラスターが三本露出していて、ご丁寧にバランス調整用の翼まで装備されていた。こんなギャグアイテムに無駄な技術を使うなと強く言いたい。
そしてそれを開発したであろう本人はというと、先ほどから抱きついたままの体勢で僕のお腹に頬ずりしていた。僕より背が高いクセに、やってることはまるで子供だ。
「うにゃ~。生みっちゃんパートツゥ~だよ~。すりすり」
「……あのさぁ、それより僕に何か言うことがあるんじゃないのかな?」
「にゃ~……へぅ? えっと、こんにちわ?」
「挨拶よりもこの惨状を謝ってくれないか?」
思わず固い声が出たというのに、篠ノ之は本当に分かっていないと言うように首を傾げると、そのまま頬ずりを再開し出した。どうしてくれようこのアホ兎。以前とはまた別ベクトルで厄介になってるんだけど。
離そうと思えば出来なくも無いんだけど、乱暴にするのも気が引けるし、こうなったら一夏君に助けを!
「一夏君、悪いんだけどこのバカを引き剥がすの手伝ってくれない?」
「………………」
「……一夏君?」
「……あ、はいっ。えーと、その人って篠ノ之束博士、ですよね…?」
「そうだよ。というか、多分知り合いだよね、一夏君とコイツ」
何気なく出た言葉にしまったとすぐに後悔した。
見るからに顔を険しく歪め、苦しそうな表情を見せられ自分の迂闊さを呪った。
「ふにゃ~……♪ って、おや? いっくん今授業中じゃないの? どしてここに?」
「(ナイス篠ノ之! 今はその空気の読めなさに感謝します!)」
互いに何も言えずにいると、篠ノ之が正気に戻り体勢はそのままだったけど首だけを持ち上げて一夏君にそんな質問をしてくれた。
質問に我に返った一夏君はハッと硬直から解かれると、何かを後悔するような表情を一瞬だけ浮かべるとすぐにそれを消して苦笑いを浮かべた。
「まー、その、ちょっと抜けだしたって言うか……その時に湊さんと会って、ここまでついてきたんです」
「…そっか、ならしょうがないね。それに、いっくんにも見せたい物があったから丁度良かったよ、うん」
「は、はぁ……ところで」
「なにー?」
「――――何時まで湊さんを押し倒してるんスカ。いい加減離したらどうです?」
「ん? …………まだ堪能したいんだけど、ダメ?」
「ダメですよ」
「ちぇー、いっくんのケチー」
「そもそも僕は解放しろと言ってただろうが……っ」
僕が何を言ってもきかなかったクセに一夏君には従うのかこんちくしょうめ。泣くぞバカ野郎。
しかし上に圧し掛かる重みが取れて一安心。さっさと要件を終わらせて帰りたいし、篠ノ之が暴走しないうちに話を進めないと。
そのまま談笑しそうな二人に割って入り、僕がここに来た要件を伝えると思い出したように篠ノ之は両手を打ち合わせて。今まで忘れていたのかとジト目で睨めば露骨に目を逸らされ、本気で僕がここに来た理由を覚えていなかったのが事実だと判明する。
「……ヲイ」
「うっ、だ、だってしょうがないでしょ! しばらくぶりにみっちゃんと会えるってなったらこうなっちゃうよ! すっごく楽しみだったんだからね!?」
「その期待は嬉しいけど、僕はとっととこれ外したいんだから忘れないでよ……」
「(……こんな束さん見るの初めてだ。てか、束さんてまさか……?)」
「もうっ、みっちゃんは細かいんだからー。それじゃ、案内するからいーちゃんの待ってる奥の部屋に行こ?」
「はいはい。元々僕はそのために来たんですよーっと」
「あ、ちょっと! 俺も行きますってば!」
こうして、世界で唯一ISを動かせる男とISを開発した科学者の一人という現時点でおそらく最も希少価値のある二人に囲まれ、僕は首輪の正体を知るべく研究所の奥へと足を向けた。
「――――あの、湊さん。博士ってあんな感じなんですか……?」
「僕も十年ぶりだからいつもかどうかは知らないけど、いい加減落ち着けって話だよねぇ。困るのはいつも僕なんだから………はぁ」
「(苦労、してきたのかなぁ………ん? 十年前? んっ、んんー?)」