IS<インフィニット・ストラトス> ~青年で男の娘はアリですか? 作:イイ日旅立ち
それが必ずしも文章力に直結しないのは悲しい限りというか私の不徳の致すところなんですが、付き合ってくださると嬉しいです。それでは。
基本的に僕は機械に弱い。
未だにテレビの録画も出来ないし、携帯みたいな文明の利器も使えないしそもそも持ってない。
精々が炊飯器やレンジぐらいなもので、後はてんでダメ。
そんな僕にISなんて最先端どころか現代文明の数十年先を行くような機械なんて、使いこなせる訳がない。というか、男の僕に使える訳が無い。
だというのに、そのISは僕の首に巻きついたまま離れないし、かといって僕が動かせる訳でも無ければ外部からの干渉も受け付けない引き籠りちゃんの困ったちゃんだ。
だからこそ、僕の手じゃどうしようもない事態を解決すべく小学校時代の知人である篠ノ之を頼りにIS学園に来た次第なんだけど………
「――――何も、僕は着せ替え人形にされに遠路遥々こんなところに来たんじゃないんだけど……?」
今現在、僕は篠ノ之が有する研究所の中にてワンマンコスプレショーをさせられていた。
「ふははははっ! 悦いよ悦いよー! みっちゃんなまらカワユスだよー! さぁ次の衣装は“小悪魔ナース服”だよっ!」
「待って下さい束さん! さっきも束さんチョイスの“妖精メイド服”だったじゃないですか! 次は俺チョイスのこれ! “カツラ付きホラ子コス”ですって!」
「何をー!?」
「いくら束さんが相手と言えど、こればっかりは譲れませんっ!」
『『ぐぎぎぎ……ッ!』』
僕の言葉はまるで届かず、やたらヒートアップした篠ノ之と一夏君が互いに研究所に常備されてあった衣装と己の意見をぶつけ合い火花を散らしている。てか、どうして研究所にコスプレ衣装があるのかお兄さんは凄く気になります。
そして僕が放置される中、パシャパシャとシャッターを切る音だけが部屋の中で響き渡る。
そちらに目をやれば、ダボダボでサイズの合わない白衣を引きずったまま熱心にシャッターを押し続ける少女が一人。
「……あのー、もう僕着替えていい?」
「ダメ。もっと笑顔の絵が欲しい。スマイルプリーズ」
「こ、こう?」
「…ん、まーべらす」
「それはどうも……」
素晴らしいと言われても、表情は一切変わらない無表情だからよくわかんないッス。
彼女が篠ノ之の言っていた“いーちゃん”であり、世間的にはISコアのシステムを手掛けた三人の天才の一人、イクス・アインシュタインらしい。一夏君曰く。
しかしその天才の外見が小学生とも見まごう小ささである事にも驚きだけど、年齢が僕より上だという事もまた驚いた理由の一つだ。
詳しい年齢は教えてもらっていないけど、篠ノ之曰くISを開発した当初から彼女の外見は変わっていないそうで、実年齢もよく分かっていないらしい。
ただ年上であると本人が公言しているのでそうだということにしているそうだけど、実際何歳なんだろ? や、流石に女性に年齢を聞かないぐらいのデリカシーは持ち合わせてるんだけどさ。
僕の内心の動揺など素知らぬ顔で再びシャッターを切り始め、いい加減作り笑顔も厳しくなってきたんだけど早く終わってくれないだろうか。僕の用事はコスプレ披露などでは断じて無いのだが。
「…じゃあ。何しに来たの?」
「ISだよあ・い・え・す! この首のISを外して欲しくて来てるんだよこっちは!」
「………そうなの?」
「そうだよ! 何が悲しくて着せ替え人形になるためにこんなところまで来なきゃなんないのさ!? それにさっきからメイドだのナースだのレースクイーンだのと……! 僕は、男であって女装趣味はそんなに無いッ!!」
力強く訴えるように動作までつけて断言したというのに、こてんと可愛らしく首を傾げただけでカメラを引っ込めてはくれない。それどころか、無表情のまま瞳だけが燃えているという高レベルなのにあんまり凄いと思えない表情を作りつつ、厳かに口を開いた。
「私はそれでも構わない」
「いや構えよ!? 成人男性の女装なんて痛いだけじゃん!」
「大丈夫。貴方も私と同じ。年齢と外見が釣り合ってないし。何より可愛いからもーまんたい」
「可愛いは正義かっ! そんな考え捨ててしまえっ!」
「マイジャスティスは譲らないっ」
「そこだけ力強く申されましても!?」
本題は何処行った!? そして篠ノ之と一夏君は戻ってこい! 僕だけじゃこの人へのツッコミは追いつかないんだよぉ!!
結局、その後ナースもホラ子コスもジェノサイド巫女も神魂合体の露出パイロットスーツも着せられた僕は心身ともに多大なダメージを被る事になったのである。この恨みは忘れない。絶対にだ。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「やはー、ごみんごみん」
「反省はしている。けど後悔は無い。キリッ」
「すいません、まさか湊さんが男だとは思わなくて………思わなくて………ッ」
「とりあえず全員謝る気ねーだろコラ。殴るよ?」
『『『すいませんでした』』』
深々と頭を下げさせたことで少しだけ溜飲を下げ、何故か血涙を流す一夏君に困惑しつつも話を本題に戻すべく会話の舵を取る事にした。
「ならもう巫山戯るのは止めてよ? あと一夏君、紛らわしい格好でゴメンね? 僕こんな外見だから男物の服は全然似合わないし、かといって女物オンリーは精神的に厳しいからユニセックスな服装になるんだよ、どうしても」
「そう、なんですか…………はぁ」
「え、えと、騙してたつもりは無かったんだけど、本当にゴメンなさい」
「全く、みっちゃんの少年殺しには困ったものだよねいーちゃん!」
「構わない。それもまた魅力の一つ」
「そこのバ科学者共は黙っててね? 本気でシバいちゃうゾ?」
本気で凹む一夏君に投げる言葉も見つからず、仕方ないので今はこちらの用事を先に終わらせるとしよう。
笑顔で黙らせた二人に向き直りさっさとやることやれやと無言で訴える。声に出さなくても伝わったのか、ブンブンと大きく首を振るといそいそと準備をし始めたのでこっちはまぁ大丈夫だろう。
「(一夏君には悪いけど、さっさと首輪外……っ)」
「ん? みっちゃん、今その子から反応があったんだけど何か変化は自覚できる?」
「さ、さぁ? よくわかんないけど、今コイツから電流がががががががが」
「…進行形で痺れてる」
「言ってる場合ですか!? 湊さん大丈ぶぶぶぶぶぶぶべべべべべべべb」
「いっくん無防備過ぎだってばぁ!?」
何てことはなく、僕がこの首輪を外そうとアクションを起こす度にいつも電流は流れるんだけど今のは今までの比じゃ無かった。経験上、打撃とか衝撃には耐性がついたんだけど電流とかは流石にちょっと厳しい。
電流が止んで体の痺れがとれたから良かったものの、これもうちょい強かったら洒落にならないっての。何考えてんだかコイツは。
でもその反抗期もその一回だけで、後は何事も無くケーブルに繋がれ一蓮托生状態の僕までロボットがメンテナンスを受けるような気分を味わいながら、ISの検査が始まった。
『それじゃ私からたまの説明を始める』
「たまって……あぁ、この首輪の名前か」
『ん。その子のAIは私が最初に手掛けた。他のISのコアの元になるように念入りに成長させたんだけど……我儘な子になった。シュン』
我儘なんてレベルじゃねーよ。そうツッコもうとして話がまだ続いていたので何とか言葉を飲みこんで耳を傾ける。
『次は機体説明。たま、【布都御魂】は他のISとはAIも違うけど機体そのものも本質から違う』
「はぁ」
『その子の持つ演算能力をフルスペックで活かす為に動力部以外の躯体全部がナノマシンを内蔵した私特製。ナノマシン全部を連結させてニューロを形成。人と同じ思考を有するのと同時に高度な量子演算も可能にしたどんな乗り手にも適応出来るようにした筈なんだけど』
つまり、本来であればこの首輪はどんな相手も乗せられるように器量良しな大和撫子的な機体になる予定だったけど、人間じみた思考を獲得した結果我儘になってしまったと。つまり、
「………欠陥きききぃっ!?」
『私の子供に悪口を言うのは許さない』
「だからってケーブル通じて電流流すなぁ! 首輪にもダメージがいくんじゃないの!?」
『…ふっ。大丈夫。私の子は打たれ強い』
「そういう問題かぁー!」
機械なんだから電流はダメでしょうが。え、ナノマシンには自己修復機能もあるって? 何でもありかこの首輪。
しかしこうして話し込んでる間でも手だけは休めずむしろ尋常ならざる速度で頭脳共々働かせているのだろう、篠ノ之が黙って仕事に励んでいるのだし僕も少し大人しく……
「ぶつぶつ………いーちゃんとみっちゃんがあんなに親しげに……みっちゃんの変わり者ホイホイスキルにますます磨きがかかってるよぅ。うぅぅ、こないだの意地悪な人もそうだけど、みっちゃんの周りはどうなってるんだろ……今度衛星ハッキングして見張らないと………ぶつぶつ」
やっぱり訂正。犯罪を犯さないうちにツッコんでおかないと後が怖い。主に僕のプライバシーが無視される的な意味で。
本来の用事の真っ最中だというのにまるでさっきまでとポジションが変わってない事実に膝を突きたくなる気持ちに駆られつつも数分後検査は終わり、後は得たデータの精査を二人が行う事になり、僕と一夏君は用事が終わったので研究所を出て校舎に戻ることになった……てか、僕まで?
「僕はもう帰るつもり満々だったんだけども」
「いやその、俺教室抜け出してきたんで、出来れば湊さんについて来てほしいなーって」
「いやいや。何で僕が。あんまり目立ちたく無いんだけど……」
「(それ手遅れだと思うけどなー。研究所に行くまでの間でも既に目立ってたのに、本人気付いてないけど)」
しかもだ、篠ノ之から聞いた話じゃ一夏君のクラスの担任は“あの”織斑千冬だというし、当時の虐めっ子代表格みたいな奴との再会は出来るだけ避けたい。
ましてやそこにはもう一人、僕が未だに最も恐れている存在がいるというのだ。誰が頼まれたって行きたいだなんて思うでしょうか、いや思うまい。
でも一夏君に縋る様な目をされるとどうしても断ることが悪いというか、断っちゃいけない気分になるんだけどどうしよう。これが弟パワーか……! あぁ弟か妹が欲しかった! その願望は今は良いんだって。
「頼みます! じゃなきゃ俺…………このさっき現像した湊さんの女装写真集をネットで売っちゃいますよ!?」
「ごふっ」
まさかの脅しで喉から変な声が出た。そして一夏君が懐から取り出したキワドイ写真の数々……ってぇ!
「あのチビなんて写真をおおおおおおおおお!?」
「いやぁ、湊さんが男だって知った時はショックで正直人間不信になりそうな気がしたんですけど、もう可愛ければいっかなって。俺、湊さんのファンになります!」
「そんな宣言いらねええええええええええええ!? 一夏君、今ならまだ間に合うから正道に戻ってええええええええええ!」
「ほら、この踊り子コスとか良い出来じゃないですか? 恥じらいながら大胆なポーズがまた魅力をそそる!みたいな!」
「止めてよぉ! これ以上僕のライフは減らないよぉ!」
おのれ篠ノ之おのれ電波チビ。お前たちのせいで一夏君が破壊されてしまった! 元からだとかそんな言葉は受け付けない。
元の価値観に戻って欲しい。その僕の切なる願いも一夏君には届いてくれず、写真を再びポケットにしまうと出会った時とは裏腹の弾けた笑顔で僕の手を引っ張って教室へと向かう。
「離してって! 僕織斑とかアイツには会いたくないんだってばぁ!」
「まぁまぁ。いいじゃないですか。(それに、束さんに聞いた話が本当なら……あの人に一言言ってやんなきゃ気が済まないしな。湊さんが一緒なら勇気百倍をリアルで実践出来そうだし)」
「一夏君のぶぁかああああああああああああああああ!!」
「(……泣く姿も可愛いなぁ。どうしてこれで男なんだろこの人……神様マジ指つめろよ全部。こんなニアミスしてんじゃねぇよこの野郎……俺の淡い恋心を返してくれってんだ。
―――――――――――まっ、湊さんがいれば何でもいいがなっ!)」
……一夏くーん、何だか笑顔にやけっぱちな色が見えるんだけど君に一体何があったのー!? ていうか引っ張らないで~……!