ラブ鎧武!   作:グラニ

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夢なんてのは、お前ら人間が欲望を都合よく言い換えただけだ。綺麗も汚いもあるか。


15話:マイザーズドリーム ~やりたい事と現実の間で~

新たなライブの作詞を秋葉原のメイド喫茶でバイトをしている南ことりに依頼し、そのヒント作りの為にメイド喫茶で働くμ'sと九紋カイト。

 

その最中にユグドラシル主任兼音乃木坂学院の非常勤講師でもある呉島タカトラがやって来て、事態は錠前ディーラーシドを巻き込んでの戦闘となる。

 

辛くも勝利を収めるアーマードライダーバロンと斬月だったが、今一歩という所でシドの仲間、アーマードライダーシャドウによる乱入が発生。

 

シドを逃してしまうが大きな被害もなく取引を潰せ、さらにはμ'sのライブも成功する。

 

そんな中でカイトは、メイド喫茶で見たタカトラのダンスにある思いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事よ、にこ!?」

 

ライブ成功からの後日。ラブライブ!を目指すスクールアイドルに休みなどなく、次のステップに向けて練習に励んでいたμ'sと指導係のチーム鎧武。

 

その練習中の最中、生徒会としての仕事を終わらせてから合流するはずだった会長の絢瀬絵里が、矢澤にこに1枚のプリントを突き付けている。それはもう、かなりの形相で。

 

片やスレンダーな体型であるのにも関わらず出る所は出ている絵里と、まったく揺れる事のない震源地のにこ。

 

この2人が並ぶと溜息が漏れるのは仕方ない事だろう。

 

「どうしたのです、コウタ?」

 

「いや、何でもない」

 

溜息が聞こえたのか尋ねてくる園田海未に返し、葛葉コウタは何事だと絵里に声を掛けた。

 

「どうしたんだよ、絵里?」

 

「これを見て」

 

そう言って絵里が差し出してきたのは、にこに突き付けていたプリントだ。

 

「これは………各部からの予算書?」

 

後ろから覗き込んできた海未の言う通り、生徒会で集計される部費をまとめた物だろう。

 

「そう、音乃木坂学院は生徒会業務は前期後期の2期制だから、これは夏休み過ぎくらいまでのね」

 

「もうじき一次締めの時期だからまとめてたんやけど……」

 

絵里の後ろで疲れたような顔をしている東條希。どこかその眼差しはにこを責めているようにも感じられた。

 

「………………あの」

 

海未の隣で同じように覗き込んでいた呉島ミツザネが、困ったような声を漏らす。

 

「アイドル研究部に予算が降りてないんですが…………」

 

「ハァ!?」

 

流石のコウタも事態を理解し、驚きの声を上げてしまう。

 

その声で少し離れた場所で小泉花陽のレッスンをしていたカイト、星空凛、西木野真姫が振り向いてくる。

 

「先程から喧しいぞ、にこ。何事だ」

 

「せっかくかよちんがバランス良く取ってたのに………にこちゃんのばかー」

 

「どうせにこちゃんが何かやらかしたんでしょ」

 

「何よそれ!?」

 

あまりの物言いに抗議の声を上げるが、4人は「はいはい、ワロスワロス」とでも言うかのように通常運転である。

 

「でも、予算が降りないってどういう事?」

 

「つまり、にこちゃんが年間の部費を申請しなかったって事?」

 

上手く事態を飲み込めていないのか、高坂穂乃果とことりはペースを崩さずに首を傾げる。

 

「だったら、生徒会の会長と副会長がいるんだから、ちょっと裏技で申請しちまえばいいだろ」

 

「それが出来たらやってるわよ」

 

コウタの言葉に絵里がうんざりしたように答える。

 

「そもそも、このままじゃ予算どこらか活動すら停止になるかもしれへんのよねぇ」

 

それは一大事過ぎる。流石の穂乃果達も驚く中、冷静にプリントを見つめてるミツザネがぽつりと。

 

「…………思ったんですけど、このアイドル研究部って顧問の先生はいないんですか?」

 

ぽつりとしたはずが、その言葉でにこの肩が大きく跳ねる。

 

それだけである程度察した一同だが、絵里が止めの言葉を突き刺す。

 

「そう、この部に顧問はいないわ。それを知ってしまった以上、生徒会として活動を看過する訳にはいきません!」

 

まるで雷鳴が走ったかのごとく、μ'sの面々に衝撃が走る。

 

「そんな………わ、私達の活躍がなければ学校は廃校になるのよ!?」

 

「おのれ矢澤にこ……お前のせいでμ'sは破壊されたしまった!」

 

「冗談を言っている場合ではありません! 早急にどうにかしないと………」

 

コウタのボケに海未が突っ込む。しかし、そう言うがコウタはにこを見やる。

 

「今までは誰が顧問してたんだ?」

 

「月島先生よ」

 

月島先生。はて、そんな先生いただろうか。

 

「月島先生は今産休で休職されてるの。だから、請け負っていた仕事は全部他の先生に受け継いだはずなんだけど……」

 

コウタの疑問に答えた絵里は、じとりとにこを睨み付ける。

 

「……………先生がいない方が色々と都合が良かったのよ。アイドルグッズとか持ち込むのにね」

 

「そもそも、アイドル研究部とμ'sは別じゃないの?」

 

アイドル研究部は部活であって、スクールアイドルはあくまでも生徒が自主的に行っている活動だ。

 

しかし、絵里は首を横に振る。

 

「他はどうかは知らないけど、音乃木坂学院の名前を背負っている以上、顧問の先生は必要だと思うの。その方が他の部活からも不満が出ないだうし」

 

学校存続の為に、と言っているがμ'sの活動はなかなか強引な所がある。例えばオープンキャンパスではわざわざライブ会場の場所を取ったり、釈明の為に講堂を貸し切ったりと。

 

それらを他の生徒から見れば我が儘を振り翳しているように見えても仕方ないだろう。

 

「絵里さんの言い分はわかりました。今後の事を考えても顧問は必要でしょう」

 

ミツザネの言葉に一同は頷く。ライブ衣装を作るにしたってお金は必要なのだ。

 

「問題は顧問をしてくれる先生がいるか、ですが……」

 

目下の問題を海未が考え込む。音乃木坂学院は廃校になるかもしれない、という発表で春の時点で何人かの教師が辞めていったらしい。つまり、この学校には教師の数が少ないのだ。

 

部活をしていない先生がいるかどうかは、誰も把握していない。

 

「心当たりがある」

 

先が見えない不安で重い空気になりかけていた場を切り開いて発言したのはカイトだ。

 

「心当たりって………」

 

「決まっている」

 

そう告げて、カイトは首から下げていたタオルで汗を拭った。

 

「アイドルにそれなりに精通して、ダンスが出来る教師だ」

 

その言葉に一同は驚く。そのような教師がいればにこも花陽も飛び付いているような人物が、音乃木坂学院にいただろうか。

 

しかし、カイトの目は確信を持っている目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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所変わって職員室。カイトが指名した教師はテーブル上に大量の書類を広げており、渋面を作って睨み合っていた。

 

そこへμ'sとチーム鎧武の登場である。意外そうな顔をする教師に、用件を伝えた。

 

「…………と、言う訳なんです」

 

「なるほどな………顧問不在では活動の格好が付かないから顧問になって欲しい、と」

 

目的の教師、呉島タカトラは考え込むように頷いた。

 

「私とてユグドラシル社員でありアーマードライダーだ。君達スクールアイドルを手助けするのも仕事の内ではある」

 

「なら………!」

 

希望が見えたからか穂乃果が声を漏らすが、それを否定するようにタカトラは首を横に振った。

 

「悪いがご覧の通り、ユグドラシルと音乃木坂学院を往復している身だ。生徒にも満足に授業をしてわれていない状態でな………とてもじゃないが顧問をしている時間はほとんどない」

 

タカトラは多忙な身だ。赴任したとはいえユグドラシルからの出張扱いであり、主任という立場からそちらの仕事で忙殺されてしまっている。

 

おかげで受け持った授業は満足に出来ておらず、ほとんど他の教師に頼んでいるようなものだ。

 

「ミツザネ。お前とてそれはわかっているはずだろう?」

 

「あっ、いや………兄さんを指名したのは………」

 

ミツザネの発案であると思ったらしいが、一同の目線がカイトを示すとタカトラは驚いた顔をした。

 

「九紋が?」

 

「驚き、だよなぁ」

 

タカトラの反応に同意するようにコウタは頷く。

 

「でも、メイド喫茶で披露したダンスは凄かったですよ。皆にも好評でしたし」

 

メイド喫茶での出来事を思い出したのか、ことりが言う。錠前ディーラーの取引をつぶす為にタカトラはμ'sがいたメイド喫茶に来たのだが、その過程でゲームに参加。ダンスを踊る事になったのだ。

 

「兄さんが……ダンス?」

 

弟のミツザネですら初耳だったのか、驚く。

 

「ミツザネ。ここでは先生と呼べ」

 

「タカトラ先生。こう言ってはなんですが、お名前だけでも顧問になって下さらないでしょうか?」

 

立場上だけでも顧問になってくれれば予算も降りるし、他にもスクールアイドルの活動に堂々と参加出来る。

 

しかし、カイトはそれを否定した。

 

「いや、オレはタカトラにダンスを教わるべきだと考える」

 

そう言って携帯を取り出し、画面を一同に見せる。そこには動画が再生されており、青いパーカーを着た男女が楽しそうに踊っていた。

 

「これ………チーム鎧武のダンスですか?」

 

「どうやら結成当初のダンスみたいだな」

 

海未の言葉に頷くコウタ。

 

ふと、眺めているとある一点に絵里が気が付いた。

 

「この端で踊っている人、ミッチっぽくない?」

 

その言葉に全員が端で踊っている青年に注目する。帽子を被っているため表情までは見えないが、どこかミツザネを思わさる風貌だ。

 

「ホントだー」

 

「流石ミッチ。凄いダンスの丁寧さだにゃー」

 

「いやいや、僕が初代メンバーにいる訳ないじゃないですか」

 

素直に関心する穂乃果と凛に苦笑を浮かべて突っ込むミツザネ。

 

チーム鎧武はビートライダーズの中でもそれなりの歴史を持つ古株であり、当然初代メンバーとなれば年を重ねているはずだ。

 

常識的に考えて、この動画の人物がミツザネであるはずがない。

 

ならば、誰か。

 

「……………もしかして、タカトラ先生?」

 

眺めていた花陽が、ぽつりと漏らした。

 

その言葉にカイトを除いた全員に衝撃が走り、思わず動画と目の前のタカトラを見比べてしまう。

 

「……………」

 

タカトラはバツが悪そうに顔を逸らす。それは初代メンバーであったという事を認めるサインだ。

 

「兄さんが………初代!?」

 

ダンスをしていただけではなくダンスチームの先輩だったという事が相当衝撃だったのか、唖然となるミツザネ。

 

「…………よく気付いたな」

 

「メイド喫茶で踊ったあのダンス。あれはチーム鎧武がウォーミングアップでやるモノだったからな」

 

認めるタカトラに少しどや顔で言い放つカイト。

 

「そっか。ユグドラシル社員ならアイドルにそれなりに精通してるし、ダンスも上手ならアイドル研究部とμ'sの顧問にぴったしだよ!」

 

喜ぶ穂乃果。確かにタカトラが顧問になってくれればプラスずくしではある、が。

 

「残念だが、顧問にはなってやれん。猫の手も借りたいくらいのだからな」

 

タカトラは時計を一瞥して机上の書類をまとめて鞄に入れると、席を立つ。

 

「すまないが会議の時間でな、もう行かなければならない。それとミツザネ、今日は俺の分の夕飯は要らないから、好きにしてくれ」

 

「…………わかったよ、タカトラ先生」

 

ミツザネが頷いたのを見て、他の教師に会釈しながらタカトラは去っていく。

 

タカトラがいなくなるのなら職員室に用はない。

 

一同は職員室を出ると、思わず溜息を漏らした。

 

「…………どーするのよ?」

 

にこの言葉にカイトは不機嫌そうに顔を顰める。当てが外れた事が微妙に腹正しいようだ。

 

「やはり、ただでさえ人数が不足している今、顧問になってくれというのは無理があるのでしょうか……」

 

「もう、ダンスとか関係なしに名前だけの顧問になってもらった方がいいんじゃない?」

 

海未と真姫の言葉に、絵里はそれが一番かもしれないと思った。生徒会長として自ら所属する部活が校則を破る訳にはあかないが、個人としてはμ'sの活動は辞めたくないのだ。

 

だが、カイトは渋面を作って腕を組んだままだ。タカトラが顧問、という点では譲る気はないしい。

 

「いえ、タカトラ先生に顧問をしてもらいましょう」

 

そこに、ミツザネがカイトの提案に乗るように言った。

 

「ミッチ、タカトラ先生は多忙で………」

 

「えぇ、多忙過ぎてあの人碌に休みとってないんです。だから、音乃木坂学院での教師に専念してもらった方がいいんです」

 

何故か早口で捲し上げるミツザネは、議論の余地なしと言わんばかりに結論付けた。

 

それが妙にらしくないので、μ's達は目を丸くする。

 

その姿にコウタが苦笑した。

 

「ミッチ、タカトラさんが過労で倒れないか心配なんだろ? 兄さんが心配だ、って素直に言えばいいのによ」

 

「別にそんなんじゃないです。ただ、倒れたら音乃木坂の皆さんに申し訳ないじゃないですか」

 

誤魔化すようにそっぽを向くミツザネに、カイトはふんと鼻を鳴らした。

 

「ツンデレめ」

 

「はぁ? カイトが言う?」

 

「にこちゃんが言える事じゃないわね」

 

「真姫ちゃんにも言われたくないにゃー」

 

次々とコントのように言葉が積み重なれていき、代表的なツンデレ達はぐぅの音も出ないように唸る。

 

「けど、実際どうするん? ユグドラシルに直談判する?」

 

方向性はタカトラに顧問をやって貰うとして、それを現実にするのはかなりの至難の業だ。

 

そしてそれは希の指摘通り、タカトラが悩ませているのは社会現象になっているはずの事象であり、スクールアイドルとアーマードライダーであっても一介の学生にどうにか出来るものではない。

 

「机の上にあったのは錠前ディーラーに関しての報告書でした。おそらく手を焼いているのはそれでしょう」

 

さきほど盗み見たのか、ミツザネが言う。しかし、その案に渋った反応をしたのはカイトだ。

 

「錠前ディーラーなど腐るほどいるぞ。それに、それはあくまでもこちら側(ライダー)の領分だ。スクールアイドルを巻き込む気か?」

 

カイトの言葉に、絵里の肩が自然と震える。脳裏に蘇るのはこの前に人質にされた記憶。

 

ある程度の危険は覚悟していた。いや、しているつもりだった。

 

しかし、現実というのは想像の倍以上で襲いかかってくるものだ。例え身構えていたとしても、アレはこの先慣れそうにはない。

 

「まぁ、そうなんですよね」

 

カイトの指摘に否定する事なく、ミツザネは息をつく。

 

「皆さんを危険な目に合わせたら意味がないですから、取り敢えず別の方法を考えましょうか」

 

絵里がアーマードライダーシグルドに人質にされた、という話しはカイトから伝わっているのだろう。

 

錠前ディーラーもアーマードライダーも、今や世界で最も身近で危険な言葉だ。錠前ディーラーは都会ならば疎らにいる。それこそ麻薬売人のように。

 

そんな輩を相手にカイト達のようなアーマードライダーではなく只の学生が出来る事は何なのだろうか。

 

その答えはあまりにも難しく、絵里は心無しか溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主任、疲れてないか?」

 

音乃木坂学院からユグドラシル本社に移っても、タカトラのする事は変わらない。

 

専用の執務室にて書類と睨んでいたタカトラは声を掛けられ、顔を上げる。

 

そこにいたのは初老の男だ。タカトラが指揮するアーマードライダー部隊の中でも年長者で、かつてはタカトラの先輩だった男だ。タカトラだけでなくコウタやカイトといった若い者達にも信頼の厚い、豪快な男である。

 

若くしていくつものプロジェクトを兼任するほど立場が上になってしまったタカトラを「どれだけ偉くなろうが若造は若造」と言って主任と呼ぶものの、その眼差しは後輩を見るそれだ。

 

「仕事をしているのだ。疲れるのは当たり前だろう」

 

差し出してきたコーヒーを受け取り答え、タカトラは啜った。

 

「娘から聞いたぞ。お前、音乃木坂学院でまともな授業してやれてないってな」

 

男の言葉にタカトラはむっと口を噤む。確かにその通りではあるが、何故この男が知っているのだろうか。

 

そんな表情が出ていたのか、男は苦笑を浮かべて答えた。

 

「娘のクラスメートの姉が音乃木坂学院の生徒なんだとよ」

 

何とも遠い情報網である。

 

しかし、男は少し真面目な表情になり、コーヒーを一飲み。

 

「…………本来、スクールアイドルが生まれればアーマードライダーが警備の為に付く。しかし、教師になることはない。それでも小僧達に学生をやらしてやりたいというお前さんの希望の条件として、教師になる事を命じたんだったな」

 

本来、タカトラは教師ではなく警備員とした音乃木坂学院に付属するはずたった。しかし、タカトラの希望で教師として組み込まれたのだ。

 

「……………子供の頃からの夢だったんだ」

 

元々、タカトラはユグドラシルに入社するつもりはなかった。教師になるべく大学にも通っていた。が、免許と取得した所で横槍を入れてきたのが両親だ。

 

結局、タカトラの夢は両親によって砕かれ、こうしてユグドラシルの主任としている。もっとも、今ではその生き方も悪くないと思えるようにはなってきたのだが。

 

だからといって、刹那であっても夢が叶う瞬間を見逃す事は出来なかった。

 

だが、現実には困難を極めている。タカトラは教師として生徒には何もしてやれていないのだから。

 

「なぁ、タカトラよ。だったらまず、ユグドラシル社員としてのプロジェクトは他の誰かに引き継いだらどうだ」

 

「私が立ち上げたプロジェクトだ。他の人間に任せてどうする」

 

「きかん坊め」

 

かれこれ何回したかわからない問答だが、男の表情を見る限り諦める気はないようだ。

 

「そのうち、大きなミスをするぞ」

 

それこそ取り返しの付かなくなるような、な。

 

そう言って退室していく男の背中に、タカトラは小さく呟く。

 

「重々、わかっているさ」

 

わかっている。後後負担になり、大きな失敗をする事も。

 

しかし、これは他の人間には任せられないのだ。

 

タカトラは目線をテーブルの書類へと落とす。

 

『ラブライブ!における警備計画』

 

『スクールアイドルの防衛手段としての戦極ドライバーの一般化』

 

『エナジーロックシードと同等の性能を持ったロックビークルの開発』

 

それらは全て、タカトラが立案したものだ。そのいずれもが歴史に激動を齎すであろう案件だ。

 

タカトラは野望人ではないが、それが世界にとって平和に近付く一歩であると確信している。

 

「…………世界をこんな風にしてしまった責任は、必ず果たさなければならない」

 

そう語るタカトラの目はどこか虚ろで、まるで深淵を見ているような目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習が終わってから、コウタは1、2年生組と帰路に付いていた。その途中で凛がお腹空いたとの訴えがあった為、いつも立ち寄っているファーストフード店でハンバーグにありつく事にした。

 

「はぁぁ…………疲れたー」

 

テーブルに着くなり息を吐く穂乃果に苦笑して、コウタはその正面に陣取ってポテトを食べる。

 

「カイトの奴、けっこう苛立ってたな」

 

「やはり、タカトラ先生に顧問を断られたからでしょうか」

 

穂乃果の隣に座った海未の言う通り、荒々しい練習指示は半ば八つ当たりであったのをコウタは気付いている。

 

しかし、その練習はμ'sにとって確実にプラスとなるので敢えて黙っていた。甘やかして応援するだけでは次のステージへは進めないのだ。

 

「しっかし、タカトラさんがチーム鎧武の創設メンバーだったなんたなぁ 」

 

「コウタ君も知らなかったの?」

 

一番外側の席から花陽が首を傾げてくる。

 

「同郷だって言ったって、タカトラさんとは元々敵同士だったし、今の俺達だってダンスやインベスゲームをするだけの仲。私生活の事なんてほとんど知らなかったしな」

 

そう、コウタは今ではチーム鎧武としてカイトやミツザネと共に音乃木坂学院に通っているが、沢芽シティではほとんど私的な交流はなかった。

 

弟分のミツザネでさえ、練習後に飯を食べに行ったりしたものの、学校ではどんな生活をしていたのか。家族とはどんな感じなのかさえ、知らなかったのだ。

 

タカトラがミツザネの兄貴であると知ったのもアーマードライダーになってからで、その他の事も知ろうとはしなかった。

 

無関心だったのではない。ただ、ダンスをするだけの仲にそこまでの情報は必要なかっただけだ。踊る熱意と共有出来る想いがある。それだけでビートライダーズとしては充分だった。

 

「カイトがかなり料理が出来るとか、音乃木坂学院に来てから知ったしな」

 

「えっ、カイトさん料理出来るの!?」

 

コウタの呟きに驚くことり。他のメンバーも同じように驚いており、まぁそうなるよな、と苦笑する。

 

「こと、洋菓子に関しては店を出せるんじゃないかってレベルだぜ?」

 

「ひ、人は見かけにはよらないとはこの事ですね………」

 

何気に酷い事を言う海未だが、その通りなのでコウタは何も言わない。

 

ふと、そこで穂乃果が突っ伏していた身体を起こしてぼやく。

 

「それにしても、錠前ディーラーさんってどこにいるんだろうね」

 

「……………穂乃果。まさかとは思うけど、本気で錠前ディーラーを探す気か?」

 

コウタの問い掛けにきょとんとした後、穂乃果はこくりと頷いた。

 

「だって、錠前ディーラーさんが見つかればタカトラ先生も楽になるでしょ?」

 

当たり前だよ、と言わんばかりの穂乃果にコウタは目を細める。

 

「この前、シドに会ったならわかるだろ。あいつらは犯罪者、普通は出会いたいとか願うような輩じゃないって」

 

「それはそうだけど………」

 

「そもそも、それは俺達アーマードライダー………ユグドラシルの仕事だ。素人が無闇に首を突っ込むもんじゃねぇよ」

 

コウタの言っている事は正論だ。穂乃果達はスクールアイドルという肩書きがある以上、一般人より危険に見舞われやすい。さらにアーマードライダーが知り合いなのだから、インベスの問題に巻き込まれるのも同じだ。

 

「俺達に協力しようとしてくれるのは嬉しいよ。けど、自分なら危険な目に突っ込もうとしないでくれ。この件に関しては、カイトやミッチも口を出そうとはしないだろうから」

 

いや、カイトはわからないか。

 

コウタの強い説得からか、穂乃果は勢いを殺がれたように押黙る。協力してくれる事は本当に嬉しいが、やはり住み分けは必要だ。

 

もちろん、言葉通りコウタもμ's達に言っておいて自ら錠前ディーラーを探そうなどとは思っていない。

 

「……………ところで、疑問に思ってたんだけど」

 

この空気を脱したいのか、真姫が言う。

 

「錠前ディーラーはどうやってロックシードを手に入れてるのよ。あれってヘルヘイムの果実を戦極ドライバーを装着した状態で手にする事によって変化するんでしょ?」

 

それは以前、目の前でやってみせたから周知の事実である。

 

ならば、答えは簡単。

 

「ヘルヘイムの森へ行って収集してるんだろうさ。戦極ドライバー自体には量産型だろうがなんだろうがロックシードに変質する機能は必ず備わってるし、ドライバー自体も多くの組織に行き渡っているし」

 

「なんでそんな事を………全部のドライバーに機能なんか付けなければ、錠前ディーラーが商売をするなんて事にならなかったのに」

 

そりゃ、そうしないとドライバー本来の使い方が出来ないしな。

 

などとは言えず、ベルト開発者の弟は適当に濁しながらポテトを齧る。

 

「まぁ、とりあえず今どうするべきは顧問の問題だよな。絵里の言い方からしたらマジでラブライブ!辞退もありえるぜ?」

 

「それは困るよ!」

落ち込みはしたものの、思わず立ち上がって穂乃果が言う。もちろん、それはサポートしているこちらとしても由々しき事態だ。

 

「もう、にこちゃんも顧問をしっかり付けとけばよかったのに………」

 

「愚痴っても仕方ねぇよ、真姫。他の先生に頼もうにも空いてる先生はいなかったんだから、残された手はタカトラさんに顧問になってもらう、だ」

 

結局、行動は変わらない。それは目的がはっきりしており、目処がない訳ではない。

 

「俺達ともそれなりの付き合いだし、ミッチもいる。顧問の件は俺達で説得するから、皆は練習に集中して………」

 

「ダメだよ、コウタ君」

 

コウタの言葉を遮ったのは、穂乃果だ。そこには先程とは違った強さを秘めた眼差しがあった。

 

「μ'sの顧問になってもらうって事はタカトラ先生の貴重な時間を使うって事だから、コウタ君達からじゃなくて私達がお願いしなきゃいけないと思うんだ」

 

「穂乃果ちゃん………」

 

強い言葉に、コウタは自然と笑う。

 

これこそがμ'sの武器たも言える。高坂穂乃果という少女の強い意思こそが結成して間もないμ'sがスクールアイドル界で頭角を見せている最大の要員だ。

 

スクールアイドルにとって人を惹き付けるのに必要な条件が揃っているこのチームを、穂乃果がまとめているのだ。

 

それが、コウタが感じるμ'sの強さである。

 

「だから、皆でお願いしよう! 私達、13人で!」

 

「穂乃果……そうですね」

 

親友に頷く海未。ことりや1年生組も笑う。肝心な所でちゃんとした正論で締められるのはリーダーには必要な気質だ。

 

それを穂乃果は持っている。行動力もあるので、元々リーダーといった役職に向いているのだろう。

 

「よし、じゃあ明日になったらもう一度タカトラ先生の所にお願いしに行こう!」

 

そう言うと、穂乃果のお腹から空腹を知らせる音が響く。

 

「なんだかお腹空いちゃった。さぁて、お楽しみの照り焼きバーガーは…………」

 

恥ずかしそうに座った穂乃果は、買ったハンバーガーに手を伸ばし、

 

「…………あれ?」

 

そこに買ったはずのハンバーガーがない事に気付く。

 

「コウタ君、私の照り焼きバーガー食べた?」

 

「いや?」

 

「じゃあ、海未ちゃん?」

 

「違います!」

 

「ことりちゃん?」

 

「ち、違うよぉ!」

 

穂乃果の周りに座っている3人でなければ、誰がハンバーガーを食べてしまったというのだろうか。

 

「大方、喋りながら食べたんじゃねぇの?」

 

「穂乃果はそこまで食い意地張ってないよ!」

 

からからと笑いながらコウタも自分のポテトに手を伸ばし、その手は空を切った。

 

「………俺のポテトがない!?」

 

「あれっ、こんな事が前にも…………」

 

心当たりがあるのか花陽がぼやくと、ふと目線が止まる。

 

その視線をコウタ達が追いかけると、そこには海未のポテトを取ろうと小人サイズのインベスが持ち上げようとしていた。

 

コウタ達な見つかったからか、インベスはびくっと震えてポテトを落とし、人だったのならばだらだらと汗をかいている事だろう。

 

しばらくの硬直の後、ばっとインベスが反対側への席へと飛んだ。

 

「バレた!?」

 

反対側で声を上げ、焦ったように客が立つ。

 

年は中年くらいであり、夏間近とはいえ派手なアロハシャツを着てサングラスにチューリップハットという季節感もテーマも下手っくれもない怪しさ満点の男だ。

 

「逃がすか!」

 

コウタは反射的に立ち上がって飛び出し、男へと組み付く。

 

周りの客達が何事かと振り向くが、コウタの姿を認めると「また鎧武か」と慣れたように席を立っていく。

 

このままだとμ'sとチーム鎧武は出禁になってしまいそうである。

 

「は、放しやがれ! それが大人にやる事か!」

 

「ガキのハンバーガーをネコババするのが大人のやる事かよ!」

 

しかし、被は完全にこの男にある為コウタは引かない。

 

「小腹が空いてたんだ。仕方ないだろう」

 

「仕方なくねぇよ!? 何当たり前みたいに言ってんだ、アンタは!」

 

見ず知らずの非常識な大人に吠える高校生。

 

その反動でコウタは思わず男を離してしまうが、男に逃げる気はなく怪しげに肩を揺らして笑った。

 

「ふっふっふ………おーけーだ、小僧。ならばお前たちが望む物と交換しよじゃないか」

 

「………望む物?」

 

反対側に座っていたのだからこの男が話しを聞いていたのはわかる。しかし、コウタ達が望む物とは。

 

「ロックシード。入用なら都合してやるぜ?」

 

穂乃果達の驚愕する顔にどういう訳かどや顔を披露する男だが、コウタは警戒の瞳を向ける。

 

「錠前ディーラー、さん?」

 

「おうともよ。欲しいんだろ、ロックシード。この中から選びな」

 

戸惑うことりを押し込めるようにしてパンフレット(手書き)を広げる自称錠前ディーラー。

 

それを見て真姫は思わずコウタに耳打ちした。

 

「本当に錠前ディーラー………?」

 

「まぁ、本人がそういう言う奈良そうなんだろうけど……俺を知らないって事は相当三流(もぐり)だな」

 

アーマードライダーと錠前ディーラーは敵対関係にある。法律を侵す者と取り締まる者なのだから、それは当たり前だ。

 

しかし、ならば有名なアーマードライダーの顔くらいは覚えておくものだ。ここ最近の出来事でもはやコウタの顔は知れ渡っており、知らないという事は錠前ディーラーとしての情報のなさを露見しているようなものである。

 

「さぁさぁ、どれがいい?」

 

「い、いや私達は………」

 

「遠慮すんなって。確かにハンバーガーと比べれば高価だが、高ランクのロックシードを安く手に入るチャンスだぞ?」

 

ずいずい、と穂乃果へと詰め寄る自称錠前ディーラーの前に立ち、庇うように敵意の目で睨む。

 

「な、何だお前……」

 

「悪いが、俺が欲しいのは高ランクのロックシードじゃない。アンタら錠前ディーラーを豚箱へぶち込む事だよ」

 

そう告げてコウタが戦極ドライバーを取り出すと、自称錠前ディーラーは驚愕する。

 

「なっ、テメェみたいなガキがアーマードライダーだと!?」

 

「情報力の酷さが透けて見えてるぜ、おっさん!」

 

ドライバーを腰に装着したのを見て、自称錠前ディーラーは3つのロックシードを取り出す。

 

「ふ、ふん………確かに貴様を知らなかったのは俺のミスだが、でかい口が叩けるかな!?」

 

3つのロックシードが開錠され、それぞれクラックからイーグルインベス、シカインベス、セイリュウインベスが現れる。

 

そのいずれもがインベスゲームでもないのに関わらず実体化しており、人間大の大きさであった。

 

「インベスゲームでもないのに!?」

 

「こいつ、リミッターを………!?」

 

3体のインベスは敵意を漲らせ、コウタ達へと近寄る。

 

それをコウタは、当然下がるのではなく前へ出る。

 

「みんなは……」

 

「わかってる。周りの人達を避難させるよ!」

 

コウタが言い終わる前に穂乃果は行動を開始した。穂乃果とことりが避難誘導し、花陽は店員へ事情を説明。真姫は携帯電話でユグドラシルへと通報し、海未はいつでもインベスを召喚出来るようにロックシードを握り締めている。

 

何も言っていないのに自然と動くその流れに、コウタは力を貸してくれているような感じがして頬を緩めた。

 

「海未、無理するなよ」

 

「コウタこそ。怪我しないでくださいね!」

 

振り向かずに言葉を交わし、コウタはオレンジロックシードを取り出し、いつもの構えを取る。

 

「変身!」

 

 

『オレンジ!』

 

 

開錠するとコウタの頭上にクラックが出現し、オレンジアーマーパーツが召喚される。

 

素早く身を捻ってロックシードを天高く掲げ、勢い良く戦極ドライバーのドライブベイにセットし、掛け金を左拳で押し込む。

 

 

『ロック・オン』

 

 

機会音声と共に法螺貝が鳴り響き、強くカッティングブレードをスラッシュして駆け出す。

 

 

『ソイヤッ!』

 

 

落下してきらオレンジアーマーパーツを蹴り飛ばしシカインベスに当てると、跳ね返ってきたアーマーパーツを被る。青い素体(ライドウェア)がコウタの身を包み込んで、両手でコウモリインベスとセイリュウインベスを掴んで窓から外へと飛び出す。

 

せっかくユグドラシルが弁償して直して貰った店舗は再び破壊され、アーマードライダーは降り立った。

 

 

『オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

果実モードだったアーマーパーツが展開され、アーマードライダー鎧武は確かに見る。

 

穂乃果達が避難させてくれた市民がインベスフィールドの外で、穂乃果と海未、ことりの3人がロックシードを握り締めている。

 

吹き飛ばされたインベスは、3人が召喚したインベスに振り向き威嚇する。

 

鎧武はそれらの前まで跳躍すると守るように構える。

 

「俺はもう決めたんだ。皆の前では絶対に負けないって」

 

鎧武が敗北すれば、穂乃果達は悲しむ。彼女達スクールアイドルは笑うべきであり、悲しむなどもっての他だ。

 

「ここからは俺のステージだ!」

 

自分に喝を入れるべき言葉を発すると、周囲から応援のように感性が上がった。

 

それが合図になり、シカインベスとセイリュウインベスは鎧武へと突撃し、コウモリインベスは飛翔する。

 

飛び掛ってくるシカインベスを大橙丸で斬り伏せ、刀が通りにくいセイリュウインベスは蹴りで転倒させる。

 

さらに無双セイバーを抜刀してシカインベスを斬りつけると、バレットスライドを引いて弾を装填。

 

宙へ舞い上がったコウモリインベスにムソウマズルを向けると、ブライトリガーを引く。

 

弾幕を放とうとしていたコウモリインベスよりも先に鎧武がエネルギー弾を放ち、コウモリインベスに命中する。

 

その猛攻に堪らずコウモリインベスは墜落し、その間に体勢を整えたセイリュウインベスが鎧武へと爪を振り上げる。

 

振り下ろされた爪を避けながらバレットスライドを再度引いて、攻撃の合間を縫ってシカインベスを撃ち抜き、セイリュウインベスにも放つ。

 

衝撃により3体のインベスは尻込み、その隙に鎧武はカッティングブレードを2回スラッシュする。

 

 

『ソイヤッ! オレンジ・オーレ!!』

 

 

オレンジロックシードからエネルギーが開放され、大橙丸と無双セイバーへ注がれる。

 

狙うは刀が通りやすいシカインベスだ。

 

一気に距離を縮めて大橙丸を振り下ろし、左手に握る無双セイバーで横一文字に斬り抜く。

 

凄まじい斬撃によりシカインベスは爆散し、今度はコウモリインベスに狙いを定める。

 

狙われたと気付いたコウモリインベスは慌てて羽根を羽ばたかせるが、鎧武はオレンジロックシードを外してイチゴロックシードを開錠した。

 

 

『イチゴ!』

 

 

ドライブベイにイチゴロックシードを嵌めて、即座にカッティングブレードをスラッシュする。

 

 

『ロック・オン。ソイヤッ! イチゴアームズ! シュシュっとスパーク!!』

 

 

オレンジアーマーパーツの代わりにイチゴアーマーパーツを被り、オレンジ色からイチゴの赤へと変わる鎧武。

 

両手に握ったイチゴクナイをコウモリインベスに向かって投擲するも、機敏に動かれて当たらず。

 

「なろっ………って、うぉ!?」

 

コウモリインベスに集中し過ぎたせいで、セイリュウインベスに攻撃を受けるが鎧武はイチゴクナイで受け流す。

 

その見事な動きに周りから歓声が上がる。

 

セイリュウインベスが振り上げてきた爪を避け、鎧武はセイリュウインベスの肩を踏み台にするようにして高く跳躍した。

 

そして、宙に浮かんでいる間に無双セイバーを抜刀し、イチゴロックシードをセットする。

 

そして、逃げようと羽ばたくコウモリインベスへと振り抜いた。

 

 

『 ロック・オン! 壱、十、百、千、万……イチゴ・チャージ!!』

 

 

「そらよっ!」

 

無双セイバーから無数のクナイと化したエネルギーが放たれ、それはコウモリインベスを飲み込む奔流となって撃破する。

 

「ば、馬鹿なっ! たかが1人のアーマードライダーに何故上位インベスが容易くやられる!?」

 

「ただの、じゃないよ!」

 

手駒を次々と破られた自称錠前ディーラーが呻き、それに穂乃果が叫び返す。

 

「アーマードライダー鎧武は私達と、そして自分の為に戦ってるんだもん!」

 

「貴方のような我欲に塗れた悪に負けるはずがありません!」

 

「私達の希望だから!」

 

穂乃果、海未、ことり。3人の激励に答えるがごとく、落下しながらパインロックシードを開錠する。

 

 

『パイン!』

 

 

着地と共にドライブベイにパインロックシードをセットし、カッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ロック・オン。ソイヤッ! パインアームズ! 粉砕デストロイ!!』

 

 

イチゴアームズからパインアームズへとチェンジした鎧武の手には、パインアイアンが握られている。

 

「パインパインにしてやるぜっ!」

 

ブンブンとパインアイアンを振り回し、セイリュウインベスへ投擲する。

 

遠心力を利用してパインアイアンを叩きつけ、セイリュウインベスは吹き飛ぶ。斬撃の通らない硬い装甲であっても、衝撃だけは防げないようだ。

 

パインアイアンが叩きつけられる度にセイリュウインベスの装甲は罅割れていき、やがて耐えきれなくなったのか皮膚が爆発した。

 

「よし、トドメ…………!」

 

「そうは行くかよぉ!」

 

カッティングブレードに手を伸ばした時、自称錠前ディーラーがセイリュウインベスに向かってロックシードを投げる。

 

それを見たセイリュウインベスはボロボロの身体になりつつもロックシードを飲み込む。

 

「あっ…………!」

 

その光景に、かつてのオープンキャンパスを思い出したのか声を上げる真姫。

 

そして、その予想に反せずセイリュウインベスの身体が変質していく。翡翠色の光を放ち、その姿をまさしく神話に出てくるような龍の姿となった。

 

「食い散らかせ!」

 

自称錠前ディーラーの命令を聞く訳ではないだろうが、セイリュウインベスは咆哮と共に長い尻尾を鎧武へと薙いでくる。

 

「うぉっ!?」

 

避け切れずに受けた鎧武の身体はボールのように吹き飛び、ビルのオフィスに突っ込んだ。

 

書類が花弁のように舞う中で立ち上がった鎧武は、セイリュウインベスが穂乃果達のインベスに狙いを定めるのを見た。

 

表情が強ばる穂乃果達。しかし、彼女達に手を出す事は鎧武が許さない。

 

「そらよぉっ!」

 

気合いと共にパインアイアンを投げつけ、セイリュウインベスの首に巻き付けると力任せに引っ張った。

 

本来、人間が引っ張るなどという芸当が出来る大きさではないが、セイリュウインベスは体勢を崩して地面に頭を叩きつける。

 

跳躍してセイリュウインベスの頭に乗ると、鎧武は無双セイバーで何度も斬りつける。

 

元々ダメージの入っていたセイリュウインベスの皮膚はさらなる猛攻には耐えきれるものではなく、火花を散らしながら苦痛の叫びを上げた。

 

「今度こそトドメだ!」

 

鎧武は左手でカッティングブレードを3回スラッシュして、パインアイアンの無双セイバーを連結させてから高く飛び上がる。

 

 

『ソイヤッ! パイン・スパーキング!!』

 

 

一度に解放出来る最大限のエネルギーが無双セイバーの刀身へと集まっていき、兜割りの要領で振り下ろした。

 

「セイハァァァァァァァッ!!」

 

セイリュウインベスを両断するように剣閃が走り、絶叫を上げながらセイリュウインベスが爆発する。

 

そしてその爆発の中から鎧武が飛び出し、着地すると周りか歓声が沸き起こった。

 

まるで勝鬨の声のごとく、勝利のファンファーレのごとく。

 

鎧武はロックシードのキャストパッドを閉じて変身を解くと、インベスフィールドが消滅してμ'sの6人が駆け寄ってきた。

 

「コウタ君、怪我してない!?」

 

さっそく心配の言葉を投げてくる穂乃果に苦笑を浮かべて、コウタは包み隠さず左肩を右手で指す。

 

「さっき吹き飛ばされた時に擦ったくらい。後で薬塗ってくれ」

 

「そっか………よかった、無事で」

 

ほっと胸をなで下ろす海未にそっちもな、と返してコウタは解散するように散り散りになっていく群衆を見つめる。

 

「あの三流錠前ディーラーは…………」

 

「ごめん、見失ったみたい」

 

そう言って真姫の肩にしょぼーんとなった小人インベスが佇んでいる。

 

「仕方ねぇよ。あの人だかりだったし、それは皆の役目じゃない」

 

無理して追跡し、本当に取り返しのつかない事になってしまう方が怖い。

 

コウタの言葉に頷き、真姫はそっと小人インベスの頭を撫でてヘルヘイムの森へと還した。

 

「それにしても、どうしてインベスゲームでもないのにインベスが実体化していたのかな」

 

花陽の疑問はもっともだ。インベスゲームでもなければインベスが人間大の大きさで現れる事はまずないというのに、あの男は実体化で召喚していた。

 

それに対する答えを、コウタは持っている。

 

「実はな、ロックシードにはリミッターってのがあってな。それを解除するとインベスゲームでなくとも実体化で喚べるんだ」

 

違法改造だけどな、とコウタは毒づく。それを知っているのは沢芽シティ出身者のビートライダーズか錠前ディーラー、もしくはユグドラシル社員くらいである。

 

ふと、そこで周りを見回してコウタ

首を傾げた。

 

穂乃果。海未。ことり。真姫。花陽。おかしい、1人足りない。

 

「なぁ、腹減ったって言い出した凛の姿が見えねぇんだけど、どこ行った?」

 

「……………………あ」

 

言われて全員が言葉を漏らし、半壊したハンバーガーショップへ戻る。

 

そこには満腹になったらしい凛が可愛らしい寝息を立ててテーブルに突っ伏していたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛葉コウタが所有するロックシード

 

 

・オレンジ

・パイン

・イチゴ

・マツボックリ

・サクラハリケーン

 

 

次回のラブ鎧武!は…………

 

 

 

「スクールアイドルの影響力って凄いのね……」

 

「当然よねー。この宇宙ナンバーワンアイドルにこちゃんにかかればこんなもんよ!」

 

「カイトとミッチがおるのに、何で声掛けて来るんやろ………?」

 

「あの、3人とも自分がアイドルが出来るくらい美少女だって自覚あります?」

 

無自覚な3人に呆れてしまうミツザネ。

 

 

 

「お前達のよーなひよっこをぉ………ライダーとして認めるわけにはーいかん!」

 

突然現れた、謎の老人。

 

 

 

「あぁ、そうだ。ミツザネ、悪いんだけどタカトラ先生を引き取ってくれよ」

 

居酒屋前で会った担任からの言葉に嫌な予感を覚える5人。

 

 

 

 

「ピーマン嫌いなん? 食べなアカンよ、ピーマンマンが来るよ」

 

「何だ、それは」

 

台所に立つカイトと希。その姿はまるで…………

 

 

 

 

「久しぶりだな。丁度貴様に会いたかった所だ」

 

「えぇ、今の僕達にはピッタリですよね」

 

 

 

 

『キウイ!』

 

 

『マンゴー!』

 

 

 

次回、ラブ鎧武!

 

16話:マイザーズドリーム ~成すべき事と理想の狭間で~

 

 

 




もう4月に突入、春ですねー。学生の皆さんは新学期が始まり、新社会人の皆さんはついに社会デビュー。

対して自分は何の変わり映えのない毎日ですよ、っと。


さてさて、ここまで読んでくださってありがとうございます。グラニです。

今回はずっと気になっていたこと、ずばり顧問について掘り下げてみました。

アニメでもμ'sではなくアイドル研究部として活動している以上、顧問がいたはずです。いくら高校生で達観しているとはいえ合宿についても部としていくなら顧問の随伴は当たり前でしょうし(もちろん、プライベートとして行ったのでしょうけど)。

ことりの母親が理事長なのだから、いくら友達と旅行に行くんだーと言っても遠くに女子9人だけで行かせるでしょうか、常識的に考えて。少なくとも自分が高校生時代は行けたとしても新宿とかでしたし、いや俺が単にいかなかっただけか…………?ww

とまぁ、ちょい現実も織り交ぜてみて顧問は必要だろう、という結論に至って、それに加えてこのままだとタカトラがまったくμ'sと関わらずに進んでしまうので顧問に指名しました。

鎧武初期メンバーというのもその為の後付設定ではありますが、ありえるかなーなんて。ミッチと同じく迷走していたところでビートライダーズと出会い、そして鎧武を結成。そうすればこの兄にして弟あり、と繋がりも作れたので。

リミッターはテレビでもやっていた技術です。ただし、これを知っているのは沢芽シティ出身のビートライダーズと錠前ディーラー、もしくはユグドラシル社員のみとなります。

ちなみにタイトルのマイザーズドリームはマイラブリーエンジェル伊藤かな恵のシングルから、副タイもその中の歌詞からとりました。直訳すると「欲張りな夢」。タカトラの教師がしたい、ユグドラシルの計画もしたい、ミツザネともっと触れ合いたい、などの欲望が重なる今回にぴったりかと。


活動報告にある誕生日回についてなのですが、本筋とは別のパラレルとして書くことにしました。ヒロインとヒーローの組み合わせはユニットで考えていたのですが、学年別にすることにしました。やはり今までのストーリーでも学年で行動していることが多いので。

アンケートに答えてくださった方々、ありがとうございました。


あと、それ以外でもこんな話しを書いてほしい、など要望ありましたらぜひください。更新はかなりの亀進行とかもはやエンジンブレードを持った子供並(あれ、実質止まってね?)の速度になるとは思いますが、書いてみたいと思いますので、ぜひとも感想などにでもよろしくお願いします!


さて、今回はこんな感じで。

次回はミッチとカイトたちのお話ですが、真姫ちゃん誕生日回の執筆のため遅れるかもしれません。
なんとか誕生日前までには投稿したいなー。
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