ラブ鎧武!   作:グラニ

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同時デートといったら修羅場ですが、なるべくハラハラ系が苦手なのでドロドロとした展開を期待されていた方、ごめんなさい。




18話:ELEMENTS ~未来が終わる場所(バッドエンド的な意味で)~

アーマードライダー鎧武こと葛葉コウタは無計画な予定により、同日にA-RISEの綺羅ツバサ、μ'sの高坂穂乃果、園田海未、南ことりの4人とデートをしなければならなくなる。

 

4人の笑顔を穢すのか、という九紋カイトの煽……弄りによりコウタは4人とのデートを決意。

 

まず最初の会いては海未との山登りであり、サクラハリケーンで行く事に。

 

2人乗りというドキドキも無事に到着し、山登りを始めるコウタと海未。そこで海未の想いを知り、その愛らしさに心動かされる。

 

そんな空気を壊すかのようにイーグルインベスが人を攫い、喰らってしまう。

 

異常さを感じここで倒すと戦いを始めるコウタだったが敗北。ピンチを救ったのはアーマードライダーナックルと名乗る謎の青年だった。

 

謎を残して去っていく青年だが、コウタに構っている暇はない。

 

デートしなければならない相手は、あと3人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウタ、本当にいいのですか?」

 

「あぁ、悪いけど食べてる時間がねぇや」

 

戦闘後、海未と合流して朝陽を拝んだ2人は和田さんの車で東京まで戻って来れた。戦闘してからのバイク運転は危ない物があったので、コウタはぐっすりと爆睡して体力回復である。

 

新宿が職場だったらしく、そこからはサクラハリケーンで海未を家に送り届け、約束していた朝飯だが時間的にロックビークル講習会に間に合わなそうなのだ。インベスとの戦闘が余計な時間ロスだった。

 

「ですが、しっかり食べないと………」

 

「行きの途中でコーヒー飲んだから大丈夫だって」

 

コーヒーが朝飯代わりになるのか、と言われれば絶対にならないだろうが。

 

その時、門が開かれそこから妙齢の和服美人が現れた。紺色の髪と海未と似た顔付きという事は、初めて見るが母親だろう。

 

「お母様!?」

 

「おはようございます、海未。それと葛葉コウタさんですね、いつも娘の海未がお世話になってます」

 

深々とお辞儀をされ、コウタは慌てて頭を下げる。

 

「い、いえっ、海未……さんには俺の方が世話になってるというか…………」

 

「なんでさん付けなんですか………?」

 

「いや、ほら……親御さんの前で呼び捨ては何と言うかだな………」

 

そう言ってコウタはサクラハリケーンのディスプレイに表示されている時計を見て、いよいよ時間がない事に気付く。

 

「すみません、俺そろそろ行かないと………」

 

「でしたら」

 

コウタがヘルメットを被ると、海未の母親が小さな風呂敷を差し出してくる。

 

「朝ご飯の残りなんですが、握ったので出先で食べて下さい」

 

「えっ、そんな………悪いですよ!」

 

そもそも、海未に朝飯奢ってくれ、というのは適当にコンビニのパンでも奢ってくれ、という意味だったのだが、どうやらご馳走してくれ、という風に捉えたらしい。

 

罪悪感が募るコウタににこりと笑った母親は、強引に風呂敷を渡してくる。

 

「男の子なんだから、少し足りないかもしれないど………」

 

「い、いえ………じゃあ、ありがたく頂戴します」

 

そこまで言われて断るのも失礼な気がしてきたので受け取り、サクラハリケーンに入れていた肩掛け鞄に入れる。講習会前に食べれば穂乃果とのパンバイキングも余裕で入るだろう。

 

「あっ、あの………コウタ…………」

 

「ん?」

 

いよいよ出発しようとアクセルに手を掛けた時、海未が声をかけてくる。何か言いたいようだが、口にしようか迷っているようだ。

 

「言いたい事があるなら遠慮するなって」

 

「………いえ、気を付けて行ってらっしゃい」

 

「あぁ、行ってきます」

 

多分、海未が言いたかったのはそれとは違う言葉だったのだろうが、本人が飲み込んでしまった以上、コウタがそれを知る事は出来ない。

言いたくないのならば無理矢理聞き出す訳にはいかない。コウタは海未と母親に会釈してからサクラハリケーンを発進させる。

 

今までのような見ず知らずの道ではなくよく知る道なので気兼ねなく走る事が出来る。ふと、サイドミラーを見れば母親から何かを言われてぼんと顔を赤くしている海未が見える。

 

どうせ「行ってきます、行ってらっしゃい、なんて夫婦みたいね」などと言われたのだろう。

 

そして、コウタとしてはそれを言われて、仮に現実になったとして、悪い気はしないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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ロックビークル講習会は近くのユグドラシル支社で行われ、本社がある秋葉原では当然そこで行われる。

 

アーマードライダー鎧武として顔見知りなので慣れたように入館手続きをしたコウタは、始まるまでの時間を休憩室のような場所で過ごす事にした。せっかくなので海未の母親から受け取ったおにぎりを食べてみると、今まで食べた事がないほどに美味く驚く。

 

「うめぇ……具材は鮭に昆布に梅と在り来たりながら、なんて旨さなんだ………!」

 

「何1人で食レポしてんすか、コウタさん」

 

声を掛けられたのてわ振り向くと、そこには見知った顔が。

 

「アキト? お前も講習会に?」

 

そこに立っていた少年は啼臥アキト。μ'sメンバーの星空凛の彼氏ではなくただの幼馴染み(これ強調)で、何度か顔を合わせた中である。

 

彼の実家であるラーメン仁朗と言えば音乃木坂学院の生徒には定番の店となっており、通いつめている生徒は多いらしい。

 

アキトは当然、ミツザネや凛も同い年である1つ年下だが気さくな性格をしており、コウタであろうと敬語ではなく後輩のような言葉遣いを使う。それはミツザネにある距離感を感じさせないものなので、コウタとしては助かったりしているのだ。

 

「アキトは……相変わらず民族っぽい格好だな」

 

アキトの着ている服はアジアンスタイルの薄手の衣類だ。コウタの俄知識では最近流行し始めている紫色のサリエルパンツに蓮の柄が大きくプリントされたシャツに灰色のポンチョ。

 

それらは染物で派手な色合いではあるが、夏目前となったのと季節にはちょうどいいのかもしれない。

 

「知り合いに取り扱ってる呉服店があって売れ残りを安く買ってるんす。自営業の息子って財布事情も冷たいんすよ」

 

「の、割には凛にけっこう食わせてやってるみたいじゃんか」

 

「あれは猫に餌やってるんですって。まっ、あいつのおかげで客足伸びたのも確かなんで」

 

そう言い張るアキトにコウタは苦笑ふる。何ともまぁ、素直じゃない年下である。

 

「アキトって2つロックビークル持ってるんだっけか」

 

「バイクタイプなら。元々は親父のですけど」

 

アキトはサクラハリケーンとローズアタッカー2つ持っている。ロックビークルの原動力はロックビークルに内蔵されているエネルギーで、ロックシード同様に充電式だ。なので配達などにロックビークルを使う場合は、複数所持している店は多かった。

 

「………なぁ、アキトは凛とデートするとしたらどこに行ったりする?」

 

「何すか、薮から棒に」

 

「いいじゃんかよ、何となくだ」

 

燻しがるような目線を向けてくるも、アキトは少し考えてから言う。

 

「別にこれと言ってないっすよ。あいつがどっかのラーメン食いに行きたいって言えば行くし、俺が公園行きたいって言えば公園行くし」

 

「公園?」

 

「写真撮影。見た事あるっしょ」

 

そういえば、とアキトはトイカメラの二眼レフカメラを常に持っている事を思い出した。今は首から下げていないが入館の際に受付に預けたのだろう。館内は機密事項の所が多いので、携帯電話やカメラなどは受付に預けるのが通例だ。

 

「意外と青春してるんだな」

 

「アンタが言うな。スクールアイドルに囲まれた生活してる癖に」

 

アキトが呆れた顔をしてくるが、コウタとしてはスクールアイドルと一緒というより仲間という感覚が強いので、役得のような気はない。もちろん、眼福はあるのだが。

 

「さて、そろそろ講習会の時間だ。行こうぜ」

 

「そうっすね」

 

最後のおにぎりをを食べ、コウタとアキトは講習会が行われる会場へ向かう。

 

大きな会議室を場と使っており、そこには多数の受講者の数がいた。

 

講習会と言っても内容は毎回変わらないもので、毎月やらなくてもと思わないでもないが未成年でも使用出来るのだから、贅沢は言えない。

 

なので朝早かったというのもあるが、かなり睡魔が襲いかかってくるのを気合いとアキトの援護(物理)のおかげで乗り越える事が出来た。

 

そして、終わってからトイレに行って戻ってきたコウタの前に広がっていたのはアキトとどこぞの男が対峙している風景だった。

 

「んだと、テメェ………!」

 

「はっ、碌でなしがさっさと暖簾を下ろしたほうがいいと言っているだけだ」

 

アキトは明らかに敵意を抱いており、相手もわざと煽るような言い方をしている。

 

まさしく一触即発な状態だが、こういう揉め事はよくある話しだ。しかし、社員は直接手を出さない限り介入する事はない。だが、そうなればロックビークル権限は剥奪だ。

 

「このっ…………!!」

 

「ちょちょちょ、待てって!」

 

飛び掛りそうになるアキトを抑えるように、コウタは間に飛び込んだ。

 

「落ち着けって、何があった?」

 

「邪魔しないでくれ、コウタさん! こいつは、こいつだけは………!」

 

「ふん、所詮は野蛮な輩か」

 

アキトを落ち着かせる為に離し、コウタは敵であろう男を睨み付ける。

 

「何なんだ、アンタは!?」

 

「僕は秋葉原に4店舗も構えるラーメン屋、ラーメン義楼の者さ」

 

なるほど、ラーメン仁郎のライバル店という事か。しかし、ラーメン義楼とはパクっているような気がするが。

「ぶさけんな、ウチの味をパクっといて………!」

 

「どういう事だ?」

 

仁郎ファンとして聞き逃せない言葉に、コウタの眉が釣り上がる。

 

「こいつ、元々ウチで働いていたんだけど、ウチの秘伝のレシピを流用しやがったんだ!」

 

「はっ、人聞きの悪い事を。培った経験を生かしているだけの事を盗人呼ばわりとはな。品性が落ちるぞ」

 

さらにアキトの敵意が膨れ上がり、コウタでさえ抑えきれそうにないほどになる。

 

このまま大事になればいい結果にはならない。そう感じたコウタは決意を持って告げた。

 

「だったら、ラーメン対決だ」

 

「…………何?」

 

コウタの提案に男が怪訝な顔をする。

 

「ラーメンで争ってるならラーメンで決着を付ける。インベスで争ってるならインベスで決着を付ける。単純だけど優劣を付けるにはそれしかねぇ!」

 

「………いいぜ、異論はない」

 

「…………僕もいいよ。当然、君が提案したんだから、審査員は君がしてくれるんだろうね?」

 

「………………………えっ」

 

言い出したコウタは固まる。この後、穂乃果とのパンバイキングが控えているのだが。

 

しかし、アキトもすでに火が着いたらしく言い放つ。

 

「いくら知り合いだからって、評価は公平で頼むっすよ」

 

「え………」

 

「案ずるな。ウチの味はすでに本家を超えている」

 

「ちょ………」

 

がしっ、と両腕を掴まれてコウタはアキトと男に引き摺られて行く。

 

かくして男と男の戦いに巻き込まれたコウタ。

 

ここからは彼らのステージ。

 

その結果は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、そんなに顔が死んでるの?」

 

パンを齧りながら穂乃果が尋ねると、肯定を意味するようにコウタがテーブルに伏せながら手を上げる。

 

約束の時間より少し遅れて合流してきたコウタは、どこか動くと苦しそうな声を呻いていた。

 

曰く、ロックビークル講習会で会ったアキトとライバル店のラーメン勝負に巻き込まれ、2杯のラーメンを平らげたという。

 

それは流石にお腹も満腹になるだろう。だからと言って当初の予定を変更するのも可笑しいという事で、ひとまずお店には入って穂乃果だけがパンを堪能しているのだ。

 

何と言うか、穂乃果としては少し残念な気持ちもあるが、仕方ないかと思う所もある。ぜひとも同じパンを食べないが、満腹状態で食べ物を入れるのは拷問意外の何物でもないからだ。

 

「大変だねぇ」

 

「他人事だと思って………けど、悪いな。せっかく誘って貰ったのに」

 

「ううん、そういうアクシデントがあるなら仕方ないよ。正直に言ってくれたから」

 

穂乃果の言葉にどういう訳2頬を引き攣るコウタ。それに気付かず穂乃果は焼き立てのパンを口に頬張る。

 

「…………なぁ、なんで俺を誘ってくれたんだ?」

 

「?」

 

コウタは大分落ち着いてきたのか、身体を起こして穂乃果に聞いてくる。

 

「いや、海未やことりとかいたから、誘うなら同じ女の子同士が良かったんじゃないかって………」

 

「うーん、雪穂からチケットを貰って真っ先に思い付いたのがコウタ君だったから誘ったんだけど………迷惑だった?」

 

「いや、全然。だけど、俺で良かったのかなって」

 

「日頃のお礼もしたかったんだ」

 

コウタに答えて、穂乃果は思い返す。

 

コウタだけではない。ミツザネやカイトも、アキトにもμ'sはお世話になりっぱなしだ。彼らがいなければ最悪チームは解散していたかもしれない。

 

廃校が決まり、最初は残念な気持ちはあったけがどこか仕方が無い。自分に出来る事など何もはい、そう思っていた。

 

しかし、その日の夜。音乃木坂学院のアルバムを広げる母親の悲しそうな背中を見て、嫌だなと思ったのだ。妹までもが音乃木坂学院に入学せず新たに出来た学校に入学すると聞いて、それも拍車を掛けたのかもしれない。

 

そして、新たに出来た学校、UTX高校に行って出会ったのだ。

 

スクールアイドルと。

 

最初は生徒会長の綾瀬絵里だけではなく親友の海未にすら無理だと言われた。無計画で荒唐無稽で、不可能だと。

 

確かにそうかもしれない。誰もが見ても廃校などとただの女子生徒がどうにか出来る問題ではない。

 

だけど、けれども。

 

だからと言って、諦め切れる物ではなかった。

 

その熱意に同意してくれて、海未とことりも協力してくれて、スクールアイドルμ'sは始動した。が、その最初の一歩は大コケと言っても過言ではないだろう。

 

せっかく練習していざ望んだライブに観客は0人。

 

本当に挫折しそうだった。やはり世の中そんなに甘くはない。夢は夢でしかなく、所詮は荒唐無稽なお伽噺でしかなかった。

 

しかし、そこに希望が舞い降りた。ライブを見に来てくれた人が1人だけ、そこからもっと増えて後に知った事だが6人いてくれた。

 

そこにいたのは穂乃果達を含めて9人。つまりは現在のμ'sメンバーというのは可笑しいが、初ライブは失敗に終わった。

 

けれども、決して無駄ではなかった。そのライブは穂乃果達に踊る楽しさを、歌う楽しさを、何より自らがやりたいという強い想いを残してくれた。

 

それからμ'sは3人、1人、そして2人が新たに加わった。

 

 

決して楽な道程ではなかったし、激突や葛藤もあった。それでも思いをぶつけて、今に導く事に出来たのだ。

 

そして。

 

穂乃果はコーヒーを啜るコウタを見やる。

 

4人の鎧武者達がやって来た。それからの事は思い出さずとも脳裏に焼き付いてしまい、すぐに思い返せる。

 

「何だよ」

 

「別にー。ただ、コウタ君達が来てくれて、良かったなぁって」

 

コウタ達がいてくれたから、μ'sは大きく前に進めたのだ。

 

だから。

 

「コウタ君」

 

感極まって穂乃果はコウタの手を掴む。

 

「ありがとう!」

 

「…………………何言ってるんだよ」

 

コウタの顔がかぁぁっと赤くなり、目を逸らす。

 

「あー、照れてる」

 

「ばっ、違ぇよ! そんな事ねーし!」

 

振り解くように手を離し、コウタは腕を組む。その仕草が可愛くて、穂乃果は席から立ち上がるとコウタの背後に周り抱き着いた。

 

「素直にならないとこうだー!」

 

「は、離れろ! 周りの人とか店に迷惑だから!」

 

周囲を引き合いに出されては穂乃果としても場をわきまえるしかない。

 

ふと、周りを見ればこちらを見てはくすくすと笑っている男女や女性組など。今ので注目されてしまったらしく、途端に恥ずかしくなった穂乃果は顔を赤くして席に戻った。

 

「ったく、少しは海未みたいなお淑やかさってのを身につけろよな」

 

「………何でそこで海未ちゃんが出てくるのさ」

 

むっとした表情になり、穂乃果はジト目でコウタを睨み付ける。

 

確かに親友の海未は穂乃果と違いしっかり者で、その真面目な性格に今までも助けられたものだ。

 

しかし、何故か今その名を聞いて腑に落ちない自分がいる。その意味も原因もわからず内心首を傾げている穂乃果だが、その不機嫌さを引っ込める気にもならなかった。

 

「な、何だよ急に………」

 

「そりゃ、海未ちゃんは穂乃果よりお淑やかだし、勉強も出来るし、料理だって上手だけどさ……」

 

もはや自分でも何を言っているのか訳のわからない状態だが、穂乃果はむすっと頬を膨らませてドリンクバーで入れてきたオレンジソーダをストローでブクブクと泡立てる。

 

「…………え、怒ってる?」

 

「…………知らない」

 

穂乃果自身も何故怒ってるのかわからないが、取り敢えず矛を収める気はないのでツンとした態度を取る。

 

「な、何だかわからねぇけど悪かったって! 海未を引き合いに出したのはこういう公共の場で仮にもスクールアイドルが男と仲良くしてるってファンが知ったら幻滅するだろうし、つかそれ以前に引っ付いて来たのは穂乃果で俺はそれを注意しただけでな…………」

 

コウタはつらつらと正論を述べる。が、正論だからって納得出来るようなら乙女心というのは複雑には出来ていないのだ。

 

どれだけ言葉を並べても機嫌が直らない事に気付いたコウタは困ったように頭を下げて両手を合わせる。

 

「悪かったって! だから、機嫌直してくれって」

 

「…………チョコパフェ」

 

自然とその言葉が出た。コウタは「えっ?」と惚けた顔をするが、穂乃果は構わず続けて言った。

 

「アイスクリーム、4段」

 

「いや、あの………ここで食べ放題なのはパンであってデザートは別料金………」

 

「チョコパフェ! アイスクリーム4段!」

 

「………………はい」

 

コテッ、と肩を落としてコウタは店員さんを呼び止めて、穂乃果が述べた品を注文する。

 

頭を下げて注文を受けた定員が下がっていくのを見て、ふと携帯電話を見たコウタの表情が険しくなった。

 

「…………コウタ君?」

 

「悪い、ちょっとトイレ」

 

真剣な表情に不機嫌さは吹き飛んでしまい、穂乃果の言葉にも耳を傾けないでコウタは席を立つ。

 

只ならぬ様子に穂乃果は止める暇もなく、トイレへと消えて行ったコウタに伸ばした手を弄ぶ。

 

そして、今までの態度を思い返して、思わず頭を抱えてしまった。

 

何だ、あの態度は。コウタは予定があるかもしれないのに誘いに乗ってくれたのに、奢ってもらうなど。

 

しかし、ふつふつと沸き上がってきた感情も確かだ。その正体はわからないが、とにかく海未の名前が出た時、ちくりと胸が傷んだのだ。

 

「…………何なのかな、これ」

 

生まれて初めての感情に困惑していると、コウタが戻ってくる。

 

「悪い悪い」

 

「何かあったの?」

 

「穂乃果が気にするような事じゃないから、大丈夫だ」

 

そう言ってコウタは席に着くと不思議そうな顔をした。

 

「機嫌直った?」

 

「むっ……」

 

「はい、わかりました。スミマセン」

 

タイミングを見計らったように店員が注文したアイスクリームとチョコパフェをテーブルに並べて来る。

 

「ほら、溶けちまう前に………ん?」

 

コウタが言い終わる前に穂乃果はスプーンを2つ取り出すと、片方をコウタへと差し出した。

 

「一緒に食べよう?」

 

「…………あぁ」

 

笑顔で穂乃果が告げて、コウタは受け取り頷く。

 

一緒に食べるデザート。それは1人で食べるより甘く、とても幸せな気分になれる味だった。

 

その理由を穂乃果が知るには、もう少し時間が要る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあねー!」

 

「おう!」

 

秋葉原の駅へ消えて行く穂乃果を見届けて、コウタは振っていた手を下げる。

 

これで果たさなければならない約束は、ことりとツバサを残すのみだ。

 

駅の時計を確認するとことりとの待ち合わせ時間まで2時間ほどの余裕はある。家に戻る事は出来ないが、どこかの喫茶店かネットカフェなどで仮眠を取る事は出来そうだ。

 

余裕分ってはいるが、けっこう疲労感が蓄積している。主に睡魔が。早朝の戦闘がかなり響いているらしい。

 

もっとも、怪我をしなかったのは僥倖だった。怪我をしていれば遊ぶなどの話しでは済まなかっただろう。

 

「しっかし、まさか穂乃果からも夕方の予定を聞かれるなんてな」

 

先ほど、店を出た所で穂乃果から今日の夕方、暇かどうかを聞かれたのだ。それは海未からも同じ質問を帰り道の車内でされ、当然答えも同じく夕方からは別用があるから、と断った。

 

こうして連続して知人と行動して同じ質問をされると、どこか不安になってくる。

 

「とりあえず、ことりとの約束だけか」

 

「ことりがどうかした?」

 

「ぬおおおっ!?」

 

声を掛けられたコウタは、腰掛けていたサクラハリケーンごと倒れそうになるのを堪える。

 

振り向くとそこにはことりが立っており、きょとんとした顔をしていた。

 

「こ、ことり? いつの間に………」

 

「コウタ君との約束の前にお買い物しようと思って秋葉原に来たんだけど、駅を降りて電気街に出たらコウタ君の姿があったから」

 

秋葉原駅には多くの改札口があるが、主に使われるのはコウタ達がいる中央線改札と反対側にある電気街の改札だ。ことりはそこから出て、こちらに回ってきたらしい。

 

という事は穂乃果と鉢合わせにはなっていないだろうが、心臓に悪い。

 

「コウタ君はどうして?」

 

「あー、今日はロックビークルの講習会だったんだ。そこで仲良くなった人達と昼飯食べて、今さっき別れた所」

 

これは嘘ではない。バイクタイプの講習会とはつまり、バイク乗り達の集まりなのだ。そうなればそこで出会った人達とツーリングの約束する、などよくある話しだ。

 

しかし、そんな話しをバイクを知らないことりにした所で「そうなんだー」程度の反応しかない。コウタもそこまでバイクが好きという訳ではなく、移動に便利だからと使っているだけなのだから。

 

「じゃあ、コウタ君はフリーなんだ?」

 

「あぁ、時間まで適当に過ごそうって思ってたんだ。良かったら行こうか?」

 

ことりが指名している店は秋葉原駅周辺からバスで行く距離であり、歩くとなると時間が掛かるがサクラハリケーンを使えば10分ほどで辿り着くだろう。

 

「コウタ君はいいの?」

 

「暇潰そうとしてたしな。夕方まで少し寝たいし、早めに終わらせよう」

 

ことりにヘルメットを渡すと、彼女は首を傾げた。

 

「コウタ君、夕方から予定あるの?」

 

「ちょっな。何かあった?」

 

コウタの返答に、ことりはそっかと呟く。その表情は酷く悲しそうで、妙な罪悪感に囚われるコウタだ。

 

「それじゃあ、仕方が無いね………」

 

「あぁ、悪い。講習会で朝早かったから少し家で仮眠したいんだ 」

 

ここに計画を立てた城之内達がいればあーだのこーだとの言うかもしれないが、見張り番のドラゴンインベスは帰ってきていない。

 

何でも酔っ払い集団を追跡した先で大ダメージを受けたらしい。おそらく、あのイーグルインベスに襲われたのだろう。

 

なので、監視者はいないのでコウタは素直に撤退を選択したのだ。

 

「じゃあ、早めに終わらせないとね」

 

「そうだな。んじゃ、行くか」

 

サクラハリケーンに跨るコウタに習い、ことりも跨る。

 

しっかりと腕に抱き着いたのを確認して、アクセルを回してサクラハリケーンを発進させる。

 

「で、どう行けばいいんだ?」

 

「えっとねー」

 

おっとりとした声で店までのルートを指示することり。カーナビに声優を使った物があると聞いた事があるが、これは何と言うかほんわかとした気持ちになってしまい、運転に集中出来ない。

 

もちろん、事故がないように理性をフル回転させて運転に集中しようと意識を固める。と、ことりが抱き着いているので海未とは違い、はっにりとわかる柔らかい物2つが背中に押し付けられていた。

 

「ぐぉぉ………」

 

「コウタ君?」

 

「な、何でもない………」

 

今、より密着しているのだと気付いてしまい、変な声が漏れてしまった。

 

わざとではないだろう。天然な所があるので、おそらく不本意だろう。

 

役得ではあるので黙っている事にして、コウタはサクラハリケーンを走らせる。少し人のいない通りに入り、企業のオフィスが集まった区画らしい。

 

「あ、あそこだよ!」

 

「わかったから手離すな、危ないぞ」

 

ゆっくりと道端にサクラハリケーンを徐行させ、コウタは停車してから降りる。ことりも降りたのを確認してからシードモードに戻してポケットにしまう。

 

「ほえー、便利だねぇ」

 

「まぁその分、けっこうレアだし買うとなったら高いけどな」

 

コウタが実際に購入者しようとしで、確実に手が出ない値段だ。下手をしたら家を買えてしまうほどなのだ。

 

コウタや他のアーマードライダー達が所持しているのは、沢芽シティ時代に試作品として貰い、後に製品版と交換してもらったのである。

 

「で、取り敢えずどんな衣装にするんだ?」

 

「次は2曲連続で取るから、コウタ君には1つの方の衣装を見て欲しいの」

 

そう言ってことりは鞄からいつも使っているスケッチブックを取り出して、付箋がしてある部分を開く。

 

そこに広がっていたのは白を基調とした衣装だ。夏を意識しているのか青系のアクセサリーで爽やかさを出しており、ベレー帽も白で可愛さを引き立てていた。

 

「へぇ、可愛いじゃんか」

 

「本当に? 良かったー」

 

素直な感想を述べると、ことりは満面の笑顔で喜ぶ。蕩けそうな声に天使のような笑顔。これは脳が可笑しくなりそうである。

 

「でも、凄いよな。オープンキャンパスのライブ衣装とかことりが作ったんだろ?」

 

「仕上げはお店だけどね。元々、衣装作りには興味があってね、やってみたんだ」

 

やりたい事、か。コウタは熱く語ることりを見て、少し羨ましく思う。

 

ことりだけではない。μ'sというチームは、大々的な目的は廃校阻止ではあるが、皆がやりたいから、という理由でスクールアイドルをしている。

 

コウタとて戦うのは親友への罪滅ぼしであり、また戦う力があるのに見過ごす事が出来ないからだ。

 

もちろん、やりたいから戦っている。しかし、ことりや真姫のような具体的な夢はない。

 

もし、夢を持つ事が出来たのなら。

 

「コウタ君?」

 

「…………何でもない」

 

ことりの言葉で思考が引き戻され、コウタは見せの中に入ろうとする。

 

が、携帯電話が震えた為、足を止めてポケットから取り出す。

 

ディスプレイには城之内の名前が表示されており、コウタは目を細める。

 

「ことり、悪いけど中に入っててくれるか?」

 

「えっ? ……………うん、わかった」

 

真剣な雰囲気を察したのか、ことりは頷くと店内に入っていく。

 

コウタは少し店から離れてビルとビルの間に入り、通話ボタンを押す。

 

「城之内か」

 

『葛葉、取り敢えず簡単な状況方向な。予想通り、数体のインベスが東京や神奈川の街に散開したみたいだ』

 

「…………やっぱり」

 

先ほど、穂乃果とのデート中に掛かってきた電話はミツザネからであった。

 

早朝、居なくなった酔っ払い集団を追いかけたミツザネのドラゴンインベス。そこでやられた相手はイーグルインベスであり、それはアーマードライダーナックルが撃破した。

 

しかし、何故野良インベスが都合良く現れたのか。そして、酔っ払い集団はどこへ行ったのか。

 

それをミツザネ達に調べて貰ったのだが、結果はコウタが予想していたものだった。

 

つまり、酔っ払い集団が何らかでヘルヘイムの果実を食べてしまい、インベスとなってしまったようだ。

 

そして、その内の1体は山に残り、残りのインベスは街へと飛び立った。

 

『俺は埼玉に向かう。神奈川には初瀬ちゃんが行ってるから、他は九紋とミツザネが行ってるから………』

 

「俺も行くぜ!」

 

『馬鹿か』

 

素早く切り捨てて、城之内が言う。

 

『お前は南さん達と一緒にいろ。インベスが街に散開している、なんて言って不安がらせるな』

 

「けどよ…………!」

 

『強さが尋常じゃないってのは聞いた。だけど、こっちもユグドラシルの黒影部隊も一緒だし、何より俺達だぞ。お前はそこから離れるな』

 

有無を言わさず告げる城之内に、コウタは押黙る。それを肯定と取ったのか、城之内は言う。

 

『じゃ、しっかりとエスコートしろよな。男だろ』

 

「……………あぁ!」

 

強く頷き、コウタは携帯電話を切る。

 

コウタは携帯電話を閉まって空を見上げる。澄んだ青空の下、今この時間を鎧武者達は戦っているのだろう。

 

ならば、自分も自分の戦いから目を逸らさず立ち向かうべきではないのだろうか。

 

「………………よし!」

 

両頬を叩いて意識をはっきりさせて、覚悟を完了する。

 

店に入るとことりが生地の他に小さなアクセサリーを選んでいる所であり、コウタの姿を認めると近付いてきた。

 

「アクセサリーか?」

 

「うん、衣装にどんなの付けた方がいいかなって」

 

ことりの言葉にコウタは棚を眺める。ここは素材を取り扱っている店ねあるらしく、衣装の基盤を作る為の物はあってもアクセサリー自体はなく、あってもワッペンなどくらいのようだ。

 

「なら、この後アキバの街で探してみるか?」

 

「えっ、でもコウタ君夕方から………」

 

「それまでなら暇だからさ。せっかくアキバに来てるんだし、ことりとどこかぶらつきたいなーって思ったんだ。どうかな?」

 

もちろん、ことりが嫌なら却下だろう。しかし、彼女は目を輝かせて、よほど嬉しいのか頬を紅潮させた。

 

「本当に? 嬉しい! じゃあ、お会計して来るね!」

 

笑顔で告げてレジへ向かうことり。

 

その笑顔を見れば幸せな気分になり、コウタも自然と笑みが溢れる。

 

会計を終わらせたコウタとことりの2人は一度秋葉原駅周辺に戻ってから、衣類を見るなら原宿の方がいいのでは、という話しになったのでサクラハリケーンで原宿へ向かう事に。

 

コウタ自身、原宿へ行くのは初めてであり、聞けばことりも初めてらしい。

 

原宿に辿りついた2人は、人口の密度に思わず呆然となった。コウタは初めて秋葉原を目にした時に人の多さに驚愕したのを覚えているが、こちらはさらに道が狭い。そこに同じくらいの人が集まっているのだ。

 

「こ、ここが原宿………!」

 

「凄い人だねぇ………」

 

流石のことりも人の多さに圧倒されているようだ。

 

そんなことりを見て、コウタは手を握った。

 

「こ、コウタ君……?」

 

「はぐれたら大変だろ? 手繋いでた方が離れないだろうから、って思ったんだけど………嫌だった?」

 

コウタが尋ねると、ことりは顔を赤くして俯くがこくりと頷いた。

 

コウタがことりを引っ張るような形で原宿の街を歩き始める。同かなり濃い化粧をした同い年くらいの男女と比べればかなり浮いた存在だったが、そんな事にお構いなしに2人は買い物を楽しみ始めた。

 

それはまさしく夢のように楽しく、暖かい時間。本当に楽しそうなその姿に、ことりをナンパしようとしていた男達も空気に圧倒されて諦めたほどだ。

 

衣装に使うアクセサリーだけでなくことり自身の買い物も含めていたので、自然とコウタが評価する立ち回りに入る。

 

「どう、かな………?」

 

白いシャツに薄ピンク色のカーディガン。さらにはチェック柄のミニスカートという格好で試着室から現れることりに、コウタは満足げに頷く。

 

「やっぱことりにはほんわかとした格好が似合うな」

 

「本当? じゃあ買っちゃおうかな」

 

深く考えずに決めてしまうことりに、コウタは苦笑した。

 

「おいおい、もうちょい自分の意見をだな………」

 

「だって、せっかくコウタ君が褒めてくれたんだもん。買わなきゃ損だよ!」

 

とても嬉しそうに語ることりは、一度試着室へ引き戻る。

 

それを見てコウタは一度、店の外に出た。まもなくおやつ頃となった街には夜に向けて本格的な喧騒に包まれ始めていた。

 

こんな楽しげな街に、凶暴なインベスが近付いているのかもしれない。その情報を唯一知ってしまっている身としては、本当にこのまま呑気に買い物をしていていいのか、という罪悪感に囚われそうになる。

 

だが、ここでインベスの事を告げたとして、周りをパニックに陥らせるだけだ。城之内の言う通り、不安がらせる必要はないのだから。

 

「………本当。世の中ってのはままならねぇなぁ」

 

「おや、コウタではありませんか」

 

ぴしりと、投げられた言葉にコウタは固まってしまう。

 

ギギギ、とブリキの人形のように振り向くと、そこにいたのは今朝、一緒に登山した海未だった。

 

「う、海未!? どうしてここに!?」

 

「お母様と一緒に原宿へ来たので、せっかくなので洋服でも買いに来たのですが、まさかまたコウタに会えるなんて………」

 

そう言ってはにかむ海未は素直に可愛いと思えたが、今のコウタには焦りから来る非常事態宣言が頭で鳴り響く。

 

危惧していた事態。デート中に前のデート相手と遭遇。対処法はその時に城之内から伝授してもらう予定だったが、この状況で援護など来るはずもない。

 

「コウタは誰かと………?」

 

「い、いやいやいやいや! 1人、お1人様1名様なんだ!」

 

「でも、ここ女性向け………」

 

「そ、そうだ! せっかくだから海未、俺の服選んでくれよ! よし、そうと決まれば善は急げだ行くぞー!」

 

はやし立てるように早口で言ったコウタは、ひとまずことりに会う前にこの場を離れようと海未の手を引くコウタ。

 

ここで素直にことりと一緒にライブ衣装関係で来ていると正直に話せば穏便に済むのだろうが、まったくその点には気付かないコウタである。

 

「もう、強引なんですから……」

 

口ぶりでは呆れたような物言いではあるが、海未の表情はとても嬉しそうであった。

 

それを気配で察したコウタは心の中で喚く。

 

うわぁ、そんな笑顔を向けないでくれ。こっちは3人を騙してるっていう罪悪感で押しつぶされそうなんだから!

 

ひとまずことりにはお腹壊したかららトイレに行ってくるから待ってるようメールで伝え、道路を通り越して反対側の店へとやって来る。

 

そこは学生達にも御用達のチェーン店であり、そこそこの値段でいい服が手に入る店だった。

 

「コウタはいつもこういうお店で服を買っているのですか?」

 

「ま、まぁな………」

 

ドキドキと鼓動が高くなる。それは色々な感情と緊張からなるもので、コウタは頭がゴチャゴチャになってしまう。

 

しかし、何度か足を運んだ事のある店なので趣向的には可笑しくはないはずだ。

 

中に入ると年若い店員達の声が上がり、コウタは海未を引っ張るように中に入っていく。

 

「じゃ、頼むぜ海未」

 

「と、言われましても………殿方の服なんて選んだ事ありませんし………」

 

だろうな、と思う。大和撫子のような性格で厳格な雰囲気のある海未は、昔からまともに男子と遊んだ事があるのかさえ疑わしい。

 

「別に何だっていいんだよ。海未の自由にコーディネートしてみてくれ」

 

「………コウタは私がえらんで嬉しいんですか?」

 

不安そうに尋ねてくる海未に、コウタは強く頷いた。

 

「もちろん」

 

「………仕方ないですね。じゃあ、頑張ってみます」

 

言葉では呆れます風ではあるが、不思議と海未の表情は嬉しそうである。

 

取り敢えず片っ端から試着させる事にしたのか、いくつもの服をコウタに当ててくる。

 

その間にコウタは考える。もちろん、今道路を挟んで向こう側にいることりとどう合流し、この修羅場手前の状況を看破するか、という事だ。

 

そも、この時点で知られたとして別段、修羅場に突入するような関係ではないだろう、という考えにはコウタは至らないだろう。決して自惚れではなく、単に一直線なだけである。

 

しかし、こういう時に限って世界の悪意というのは畳み掛けてくる。

 

これでもない、いやこっちの方かな。と悪戦苦闘しながら棚と睨み合いをしている海未を後ろから眺めていたコウタは、ふと外を見やる。

 

丁度、そこを通りかかったオレンジ髪の少女と目が合った。

 

「あーっと、ミッチから電話だ何かあったのかなーちょっと外に出てるなー!」

 

「あっ、ちょっとコウタ………!?」

 

海未の返答も聞かずに飛び出したコウタは、何か言おうとしたオレンジ髪の少女の手を引くと、ばっとbillの路上を走る。

 

やがて、店から大分離れた所でコウタは足を止めた。

 

「ちょ、どうしたのコウタ君!?」

 

「な、何で原宿にいるんだよ。穂乃果………」

 

まさかつい先程別れた穂乃果と原宿で遭遇するとは、計算外過ぎる事にコウタの思考が体力と共に弾けそうになる。

 

しかし、穂乃果はそんなコウタの様子には気付かずに言った。

 

「あの後、せっかく起きたのに家でゴロゴロするのは勿体ないなーって思ってね。服も欲しかったから原宿に行こうって思ったんだけど………コウタ君にまた会えたのはラッキーだったかな」

 

「何か言った?」

 

「ううん、何でもない」

 

焦っていたからか半分くらい聞き逃したが、問題なかったようだ。

 

呼吸を整えたコウタは穂乃果を顧みて向き合う。

 

「そ、そっか………あんま、こういうトコには興味ないのかと思ったぜ」

 

「むっ、私だって女の子なんだよ?」

 

それはそうであるが、原宿といえば結構なブランドも揃っているのだから、穂乃果にこだわりがあるのは意外に感じられた。

 

ぷくぅ、と頬を膨らませて怒る穂乃果に悪い悪いと言って、コウタは少し考え込む。このままではどんどんことりや海未から離れていく事になる。腹痛やミツザネからの定期連絡を理由にしても限度があるだろう。

 

「んー、あっ………コウタ君、ちょっとゲーセン行こうよ」

 

「えっ?」

 

聞き返すよりも先に穂乃果に腕を掴まれ、今度はコウタが引っ張られるような形になる。

 

「ちょ、穂乃果!?」

 

「何か悩んでる時は、身体を動かせばスッキリするよ!」

 

そう言われてコウタが連れてこられたのは、近くのゲームセンターだ。秋葉原にも目にするチェーン店舗であり、コウタはよく穂乃果達と来ては遊んだりしていた。

 

さらに穂乃果が突き進んだのは、いつも遊んでいるダンスゲームだ。画面の譜面とタイミングを合わせて足元にあるスイッチを押すという単純な音楽ゲームである。

 

「この前バージョンアップされて、新しい曲が入ったんだって! やろうよ!」

 

「お、おう……」

 

意図した訳ではないが海未とことりから離れられたので、コウタはひとまず穂乃果に合わせて頷いた。どうも今日の穂乃果はどこかおかしきというか、また機嫌を損ねられたら面倒だ。

 

彼女達を笑顔にしたいなら、こんなに邪悪を背負っているのだから。

 

穂乃果が100円玉を入れたので、コウタもそれに習いコインを投入する。すると画面が変わり軽快な音楽からアップテンポな曲に変わり、様々な曲欄が出てくる。自社開発した曲からアーティストが手掛けた物。中には歌入りの物もある。

 

穂乃果は慣れたようにカーソルを足元のボタンで操作して、いつも踊っている曲を選択した。

 

「まずは肩慣らしだよ!」

 

「上等だ。また泣かしてやるぜ!」

 

穂乃果は肩を落として力を抜くスタイルに対して、コウタは背にあるポールに両手を乗せた状態で構える。

 

そして曲が始まる。最初は低調で遅いが、5個の譜面を踏んだ瞬間。

 

一度譜面が止まり、次の瞬間には弾かれたように曲調が速くなり譜面が動くスピードも加速される。

 

しかし、すでにフルコンボを叩き出せるほど、やり込んだコウタと穂乃果の前ではその程度の小細工は通用しない。

 

初見なら最後までたどり着けないであろう最後まで踊り、曲が終わる。激しい曲ではあったが、コウタも穂乃果も日頃からダンスをしているのだから、この程度で呼吸を乱す事はなかった。

 

「まっ、こんなもんだろ」

 

「むぅ………またコウタ君に負けた」

 

ミスはなかったものの、総合得点で穂乃果はコウタに勝つ事は少ない。そこは技術の差である。

 

気を取直して次の曲を選択する穂乃果。それは見た事のない曲であり、おそらく新たに追加された曲なのだろう。

 

「いきなしエクストリームはまずいよね」

 

「初耳で最高難易度はなぁ……無難にノーマルでやろうぜ」

 

譜面と曲調を覚えなければこの手のゲームはクリアは難しい。それが高難易度であるならば尚更だ。

穂乃果もコウタの意見に頷き、ノーマルランクで曲をスタートさせる。

 

結果だけを見れば、コウタは何とかクリアのレベルまで漕ぎ着けられたが、相方の穂乃果が脱落してしまった為に途中でゲームオーバーになって終了した。

 

しかし、それで引き下がる2人ではなく、再びコインを投入して、後ろに並んでいればそれに並んでを繰り返す。

 

音楽ゲームとはつまる所、リズム感と反復が物を言うゲームである。いかに譜面の順番とリズムを身体に叩き込めるかが、攻略の鍵だ。

 

そしてゲーム開始から1時間ほど。

 

その短時間だけで、コウタはフルコンボを叩き出せるようになり、穂乃果もひとまずクリア出来るようになった。

 

「っぷぁー! 疲れたー!」

 

「ったく、せっかくの休日に何で汗かいてんだか……」

 

思い出したように疲労感が襲いかかってきたので2人はベンチに腰を下ろした。

 

まだ動けるコウタが缶コーラを買って穂乃果に渡し、2人して飲み込む。同時に炭酸の刺激が喉を走り、2人はほぼ同時に「くぅぅー!」と、炭酸を楽しんだ。

 

それが可笑しくて、ついつい顔を見合わせて笑う。

 

「サラリーマンが仕事終わりに飲むビールってこんな感じなのかな」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

タカトラが度々ビールを飲んでは幸せそうな雰囲気をしているのは見た事あるが、それとこれは別なのだろう。

 

ふと、穂乃果は優しく笑って言った。

 

「やっと笑ってくれたね」

 

「…………えっ?」

 

「コウタ君。昼間会った時からずっと笑ってなかった。なんだか、無理してるようだった」

 

その言葉にコウタは押黙る。確かに、次はことりとのデートなどと集中出来ていなかったは確かだ。

 

「………誘いに乗ってくれたのは嬉しいよ? でも、コウタ君がたのしくないと私達も楽しくないよ」

 

「…………悪い」

 

穂乃果達を悲しませたくないた奔走していたが、それは逆効果だったようだ。

 

コウタは息を吐いて、そうだよなと毒づく。

 

穂乃果も海未とことりも。そして、きっとツバサも。

 

何故、正直に話さなかったのだろうか。決して恋人として付き合っている訳ではない。単なる友達との遊びに、何故隠し事をしなければならないのか。

 

カイトや城之内に踊らされてしまったが、これは自分で決めなければならない。その責任も、批難も。

 

「…………穂乃果」

 

「あ、ちょっと待って」

 

意を決して謝罪しようとした所に、穂乃果の携帯電話が震えたらしく鞄から取り出す。

 

そして、メールだったらしくそれを読んでいき、穂乃果の目が驚愕で見開かれる。

 

「どうした?」

 

「あ、うん………雪穂からなんだけど、今アキバでインベスが暴れ回っていて、立ち入り禁止区域になったほどだって……」

 

穂乃果とは秋葉原の店で食事をしていた。それ以降は別れたが、それを知らなければ秋葉原で遊んでいると思って心配になってメールを送ってきたのだろう。

 

しかし、やはり神奈川や埼玉のみならず東京にもやって来たか。

 

或いは、これを見越して留まるように言ったのかもしれないが。

 

「…………やっぱ、出来ねぇよな」

 

「コウタ君………?」

 

コーラを飲み干したコウタはベンチから立ち上がると伸びをして、頭の酸素を入れ替える。

 

そして、穂乃果に告げた。

 

「じゃ、行ってくるよ」

 

「コウタ君…………うん、気を付けてね」

 

それだけで言葉の意味を察し、止める事も出来ないと理解してくれたらしい。

 

優しく微笑む穂乃果に頷いて、コウタは駆け出す。

 

驚く周りの視線も気にせず外に出た所で、ロックビークルを取り出して開錠した。

 

「コウタ君!?」

 

そこへ、探していたのかことりが息を切らして駆け寄ってくる。

 

「悪い、ことり。途中で抜け出しちゃって」

 

「そ、それもあるけど………どこに行くの!?」

 

「アキバでインベスが暴れてるんだ。ちょっくら行ってくる」

 

サクラハリケーンに跨って告げ、ヘルメットを被る。ことりも秋葉原でのインベス事件は知っているようで、息を詰めるも悲しそうに笑った。

 

「気を付けてね………」

 

「あぁ、あとでメールするから落ち合おう」

 

ヘルメットのバイザーを下ろしたコウタはアクセルを回し、サクラハリケーンを発進させる。すぐに規制スピードを振り切るが、構わず戦極ドライバーを腰に巻き付ける。

 

「変身!」

 

 

『オレンジ!』

 

 

 

クラックが出現してアーマーパーツが召喚され、サクラハリケーンのスピードに合わせるように頭上で併走する。

 

あまりバイクでの変身は危険なのでやらないよう言われているが、今はそのような事を言っている場合ではない。

 

オレンジロックシードを戦極ドライバーのドライブベイにはめ込み、スライドシャックルを差し込んだ。

 

 

『ロック・オン』

 

 

待機音が鳴り響く中、コウタは器用にカッティングブレードをスラッシュしてロックシードのキャストパッドを展開する。

 

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

頭上のオレンジアーマーパーツが落下し、コウタの身体をライドウェアが包み込む。

 

アーマードライダー鎧武はさらにアクセルを回し、サクラハリケーンを加速かせる。

 

その最中、視界にこちらを見ている海未と母親が入る。

 

当然、会話をする暇はない。しかし、確実に海未の唇が動いた。

 

気を付けて下さいね。

 

2人を通り過ぎて、鎧武は前を見据える。

 

やがて、秋葉原の境界なのかアーマードライダー部隊のバリケードが目に入る。

 

そのうちの1人が鎧武に気付くと仲間に合図を送り、閉じられていたゲートが開いた。

 

そこを過ぎ去ると、時間を置かずにインベスが見える。

 

黒影を蹂躙するように振舞うその姿は、まさしくライオンインベスに相応しいものだ。

 

しかし、鎧武はサクラハリケーンを減速させずに、ライオンインベスに突撃する。

 

エンジン音で気付いたライオンインベスは掴んでいた黒影を放すと、鎧武を敵と認識したように吠える。

 

そして、加速してくる鎧武を突き飛ばそうと腕を伸ばしてくるが、それを寸前の所で飛んで避けて、無双セイバーを抜刀してブライトリガーを引く。

 

降り注がれた弾丸に怯んでいる隙に、鎧武は着地をすると大橙丸と無双セイバーを連結してライオンインベスに向かって構えた。

 

ここからは油断も容赦も出来ない。正真正銘の。

 

「ここからは俺のステージだ!」

 

吠えた鎧武はライオンインベスに突撃する。

 

たとえ百獣の王が相手だとしても、英知を振り絞って戦うのが人間という生き物なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インベスは倒した。これから向かうから、待っててくれ。

 

そのメールを受け取った反応は、三者三様だった。

 

穂乃果はひとまず安心した気持ちで、早く無事を確認したいから駆け足でコウタから指定された場所へ向かっていた。

 

海未はいつの間にかいなくなり、再びアーマードライダーとして戦地へ向かったコウタがひとまず無事らしいと確認して安堵したが、どこか怒りを隠せずずんずんとした足取りで指定された場所へ向かう。

 

そして、ことりは心配はしつつも、どこか大丈夫だろうという信頼からか軽い足取りで指定された場所へ赴く。

 

秋葉原の噴水のある公園。そこへ来るように言われた3人は、互いを知らずに歩く。

 

そして。

 

「ほぇ?」

 

「えっ?」

 

「ちゅん?」

 

3人はようやく、互いの姿を認めて目を丸くした。

 

否。別段、今日はμ'sは休みなのだから3人が外に出ていても可笑しくはないが、何の打ち合わせもなく同じ場所に集まるというのは偶然で片付けるのは些か無理があった。

 

「ほ、穂乃果にことり……どうして…………?」

 

「海未ちゃんこそ…………」

 

「ことりはコウタ君からここに来てくれってメール貰って………」

 

その言葉に全員が驚き、同じ内容のメールを貰った事と今日1日一緒に行動していた事を明かす3人。

いよいよ、どういう事だろうか。首を傾げる穂乃果とことりに、だいたいの察しが付いた海未。

 

その時、エンジン音が響いて目を向けると、サクラハリケーンに乗った鎧武が到着し、降りてからロックシードのキャストパッドを閉じて変身を解いた所だった。

 

コウタは3人の姿を見つけると、少しバツが悪そうにしながらもしっかりとこちらを見据えて駆け寄ってきた。

 

「コウタ君!」

 

「大丈夫だった?」

 

「なんとかな。アキバのインベスは倒したから大丈夫だけど、交通機関は混乱してると思う」

 

心配の言葉をかける穂乃果とことりに返すコウタ。しかし、海未だけは肝心な事を切り出した。

 

「それで、説明してくれますよね?」

 

怒気が篭っていた訳ではないが、コウタは少し身を震わせると、やがてばっとその場で土下座をした。

 

「ちょっ………!?」

 

「申し訳ありませんでしたーっ!!」

 

流石に土下座されるとは思わなかったので海未が狼狽するが、コウタはそのまま釈明を始める。

 

要約すると、適当にホイホイ約束をしていたら、同じ日である事に気が付いたが、今更約束を断ってしまっては3人を悲しませてしまうという事で4股デートを決行した、という事だ。

 

何と言うか。

 

「馬鹿じゃないかな」

 

「馬鹿ですか」

 

「馬鹿なのかな」

 

三者三様の刺に、コウタはビシッと身を震わせる。

 

「私達がそんな小さな事で怒ると思いますか?」

 

「3人で一緒に回ればよかったのに。幼馴染みなんだから」

 

「むしろ3人と回った方が楽しめたかも?」

 

いつもはおっとりとしたことりでさえも辛辣な言葉を吐き、コウタは冷や汗を垂らす。

 

しかし、3人は顔を見合わせるとくすりと笑った。4股を掛けられて、結局は台無しになったが。

 

どうしようもなく、嬉しさが込み上げてきたのだ。互いに言葉にせずともその感情は容易に共有出来て、それも含めて笑みが溢れる。

 

「仕方ないなー。今度、μ'sの皆に内緒でケーキ奢ってね」

 

「私、扇子が欲しかったんですよ」

 

「ことりは今日見つけたワンピースがいいなー」

 

「はい。畏まりましたー!」

 

ハハァッ、と平伏すコウタに今度こそ笑いが上がり、それでコウタも許されたとわかったのかホッとした表情を見せる。

 

「それで、もう1人約束していたのですよね?」

 

「あぁ。っても、そいつと約束してた仮装パーティーもインベス騒ぎで中止になったらしいけど、どうするか電話もメールも連絡付かないんだよなー」

 

そう言いながら立ち上がったコウタは携帯電話を確認して、何かに気付く。そして、目を細めてそれを読み上げた。

 

「今日で最後にしましょう。もう会うことはない、さようなら」

 

「…………コウタ君、振られた?」

 

「いや、そもそも付き合ってねぇし」

 

穂乃果にそう返すも、コウタの表情は険しいものだ。

 

「どうかしたのですか?」

 

「なーんか腑に落ちねぇ……別に付き合ってるとかじゃねぇんだし、こんな凝った言い方しなくたって………」

 

「あれ、コウタ君ショック受けてる?」

 

「受けてねーし!」

 

わいわいと騒ぐ4人。その姿は楽しげで今を全力で生きている。そんな雰囲気があった。

 

だからこそ、その4人を羨ましげに見つめる少女の姿に誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これであの乙女座の子も近寄ろうなんてしないでしょう」

 

勝手に奪った携帯電話で勝手にメールを打ち、勝手に送信した身勝手さに怒りが溢れそうになる。しかし、彼のおかげでチームは頂点に立てたのだから反論は許されなかった。

 

ワゴン車の窓から楽しげに笑うコウタ達が遠巻きに見える。ツバサはその中に混じりたいと願いつつも、それは決して叶わぬ事だ。

 

何故なら、歩む道が違ってしまった。ツバサが求めていた世界は本来はアレであったが、それ。求めるには遅すぎた。

 

「ツバサ、貴女はスクールアイドルの頂点に立つA-RISE。そのリーダー………あんなふざけた、偽物なんかと一緒にいちゃダメよ」

 

「コウ………アーマードライダー鎧武は本当のアーマードライダーですよ?」

 

「戦争のせの字よ知らないような子供がアーマードライダーを名乗っている事が気に入らないわ。これはあそびではない、責任が伴う仕事なのよ」

 

言いたいことはわかる。仕事には成功と失敗があり、失敗にはそれをどう挽回するかという責任もある。

 

それを背負わなければならないのが大人であり、仕事というものだ。

 

ツバサは改めてコーチを見る。スキンヘッド頭に鍛えられた体躯とノースリーブのシャツは、一見すればダンスとは程遠そうな格好をしているがその実力はかなりのものだ。

 

他にもパティシエとしても優れており、以前コウタと行った店は弟子が開いたと聞いた時は驚いた。

 

「最初に言ったはずよ、ツバサ。何かを極めるという事は苦痛が伴うの。楽な事は少なく、苦難ばかり………だけど、極められたらその嬉しさは計り知れないものになる。貴女が選んだのはそうい道よ」

 

そうだ。この道を、痛く険しい道を選択したのは何より自分達だ。厳しさを承知で突き進んだのだ。

 

「だから、付き合う友達を選びなさい、とまでは言わないけど切り捨てる事も覚えなさい。人は全てを手に入れられるほど出来てはいないのだから」

 

それはいつでも辞めたければ辞めなさい、という意味が篭っていた。

 

わかっている。この男、凰蓮はコウタ達のような道を許さない、と言っているのではない。それも1つの道ではあるが、それでは極める事が出来ないと言っているのだ。

 

「さっ、レッスンよ。あんじゅも英玲奈も待ってるわ」

 

「……………はい」

 

返された携帯電話を握り締め、ツバサはもう一度憧れへと目を向ける。

 

本来、ツバサが憧れた場所はあそこだ。

 

しかし、もはやそれを叶えるには世界は違い過ぎた。そして、その世界を強く望んだのは他ならぬツバサだ。

 

「…………ごめんね」

 

短い言葉は凰蓮に聞かれる事なく霧散し、車は発進する。

 

まるで世界に別れを告げるかのように、コウタ達の姿はあっという間に見えなくなった。

 

 

 

 

 

葛葉コウタが所有するロックシード

 

 

・オレンジ

・パイン

・イチゴ

・マツボックリ

・サクラハリケーン

 

 

次回のラブ鎧武!は…………

 

 

 

 

突然、目を覚めた凛が目の前に広がった光景は、ヘルヘイムの森。

 

 

 

「……………なんでさ」

 

何故か凛に抱き付かれたまま泣かれている事に困惑するアキト。

 

 

 

「ところで、明日の夜って皆さん空いてます?」

 

ミツザネのお誘いに胸躍らせる一同。

 

 

 

「件の予言は外れない」

 

謎の男、沼尾が放つ言葉の意味とは。

 

 

 

 

次回、ラブ鎧武!

 

 

19話:ソプラノ~件の予言~

 

 

 

 

 




ラブコメもギャグも中途半端? うぅむ…………。

と、いう訳で18話です。

コウタのデート回、如何でしたか? と言っても、あまりデートデートしていなかったですが…………

途中途中、穂乃果達の想いに変化が生じています。むろん、これはソレという感情に違いはないのですが、けっこうこの先のストーリーに影響(?)してきたりしなかったり。

お次は再びアキト凛回という名の謎蔓延回その前にのんたんの誕生日回を挟んでいきたいと思います。

とりあえず、誕生日までに投稿出来たらなーと。

感想なよろしくお願いします!


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