その中で選択を1つでも間違えていたら、もしかしたらここにいないのかもしれないね。
ラブライブ!に向けて活動するμ'sとチーム鎧武。
そのメンバーの1人である九紋カイトは、その顔つきの悪さから未だに女子には怖がられ、町を歩けば特に理由のない暴力が襲ってくるのをぶっ飛ばし、生徒会長に怒られ副生徒会長の下ネタに顔を赤くして反論する日々。
しかし、そんな彼も学生である以上休みはあるわけで、
そんなカイトの夏休みはいったいどんな休みなのだろうか…………。
人々が寝静まった夜中。本来ならば大抵の人は活動していない時間帯に、2人の男女は走っていた。
男は10代後半。学生のようだが、その纏っている気配は柔和な学生の物ではなく、何か危険な事に身を投じているかのような緊張感に包まれている。
対して、男に手を引いて走っている少女は10代半ば。高校生ほどと言っても差し支えのない幼さだが、その容姿は整っており将来に期待が持てそうな美少女であった。
その場にいるのは2人だけではない、後方から黒ずくめの服を着込んだ男達が6人ほど、その手にはロックシードが普及している日本では考えられない拳銃が握られている。
「くっ………」
走りながら男は背後をちらりと見て、その手に握られている凶器に舌打ちをして少女に呼びかける。
「大丈夫!?」
「はっ、はい………でも!」
少女の言葉にはっとなって前を向いて、男は足を止めた。
2人の行く手を阻むかのように、キャリーケースを足元に置いたハット帽を被った男が立っていた。
その男の名を、手を引いていた男はよく知っている。
「シド………!」
「面倒な事してくれるなよ、ビックス。そのお嬢さんはお得意さんの所の大事な商品だ。それが組織の人間の手により連れ出された、なんてなったらウチの名前に傷が付いちまう」
冷静に軽やかに語りかけてくるが、腰に戦極ドライバーを装着している時点で敵に対する脅迫だ。
しかし、それは予想の範囲内。この男ないし、アーマードライダーが駆り出されるのは簡単に予想出来た事態だ。
「彼女は商品なんかじゃない!」
「人身売買で取引されたんだ。それはもう立派な物だよ」
商品、物。その言葉に恐怖を抱くように少女が強くビックスの手を握ってくる。
それを優しく宥めるように手を握り返し、身構える。
「やる気か? たかだか下っ端のお前さんにゃロックシードなど都合してるはずはない。なのに戦う気か?」
「戦うさ。戦わなければ生き残れないのなら!」
強く言い放ち、懐から盗んだ物を取り出す。
それを目にした瞬間、シドの表情が驚愕に変わる。
「テッ、テメェ! それを一体どこで…………!?」
シドの言葉を待たず、ビックスはソレを使う。
直後、翡翠色の閃光と侵略の植物が弾けてシドを吹き飛ばした。
愕然とする暇もなくシドが変身しようとすると、閃光が止まない内に中から少女を抱えた影が飛び上がり、闇夜へと消えていく。
記憶が正しければ、その方向には線路があり、この時間帯だと貨物列車が走っているはずだ。
「ちっ………追跡回せ。逃がすんじゃねぇぞ!」
舌打ちをしながら駆け寄ってくる部下に指示を投げて、深くハット帽を被る。
「ったく、この前の呉島といい………最近、月がねぇな」
そうぼやいてシドは夜空を見上げる。
そこには爛々とお月様が輝いているのになぁ、と溜息をつくシドであった。
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カイトの両親は蒸発した。工場を売って、その金すらも奪われて。
身寄りのない幼きカイトを引き取ったのは親戚達であったが、それらも目的はカイトの貯金であり、それがないとわかるやいなや、掌を返したように態度を変えた。
親しくしてもらっていた叔父や叔母は冷たく当たり散らかされ、無視されるならまだしもわざわざ嫌味ったらしく言葉を投げ付けられたりした。
だから、この年になって今更挨拶に行くという姉の心境が全く分からなかった。
カイトがいるのは宮城県仙台市の仙台駅である。親戚の集まりを物理的な意味でぶち壊したカイトは、そのまま適当な漫画喫茶で一夜を明かし、神田へ帰る途中である。
まだ陽が登りきっていない早朝。
自動販売機でコーヒーを買って飲んでいると、何度目かわからない携帯電話のバイブレーションが震える。
画面を見ずともわかるが、一応確認してみると姉の文字が。しかし、どうやら向こうも諦めたのか通話ではなくメールを送ったようだ。
が、内容もわかり切っている上に確認する気もないので、そのまま削除する。
本当に面倒だ。何故、今更あのような輩の顔色を窺わなければならないのか。確かに神田にいた所でμ'sのメンバーは帰省などの為に練習は少しの間休みなのでやる事はないが、あの空間にいるより遥かにマシであった。
ふと、コーヒーを飲もうとして中身が空っぽである事に気が付く。周りを見回しても近年のテロ対策なのがゴミ箱はなく、どうやら下のエリアまで足を運ばなくてはならないらしい。
「…………面倒な」
だが、ここでポイ捨てなどをしてしまっては負けた気分に、つまりは屈した事になる。それだけはカイトの矜持が許さない。
ベンチから立ち上がるとカイトはエスカレーターを使い下の階層へ降りる。
流石に早朝だからか、人の姿はほとんどない。如何に大型のターミナルで夏休み真っ只中とはいえ、人が活動しそうな時間帯ではない。
だからか、恐らく駅員の数もこの時間は少ないのだろう。その分を日中から人を増員していくのか、カイトにはわからない。
ただわかっているのは、駅員の数がかなり少ないという事。
でなければ、カイトの目の前に広がっている光景。広いフロアで幼い子供に言い寄る大人、などという構図が出来るはずがないからだ。
カイト以外に人はおらず、その為声が響いて聞こえた。
「おいおいおい、嬢ちゃんよぉ。そっちの坊主がぶつかったからウチの連れの足が折れちまったしまゃねぁかよぉ!」
「いてぇっ、いてぇよ兄貴ぃ!」
「そ、そんな…………」
遠目で見ても阿呆な集団らしい。大人2人に子供2人だが、子供はかなり幼い。
そんな2人にまるで一昔の決まり文句のような絡み方をする男達に、カイトは冷ややかな目を向ける。
カイトはどこぞのオレンジ侍のごとく正義感に溢れた心を持ち合わせている訳ではないが、それでも常識と良心は多少なりとも兼ね備えている。
目の前で絡まれているのが大人同士ならまだしも、年端もいかない子供ならば話しは別だ。
あいつらのような善人ぶるつもりはない。が、良心を捨てた獣に成り下がる気もない。
これは人助けではない。ちょっと不快な雑音を止める為だ、と誰にしているかからない言い訳を胸に秘めてカイトは歩き出す。
「そんなに怒ってはダメです! 笑顔が一番ですよ? さぁ皆さん御一報に………」
ふと、幼女が大人達に何やら語りだし、
「にっこにっこにー♪」
それを聞いた瞬間、全力でカイトは回れ右をしようとした。が、すでに絡んでいる大人達のサーチ範囲内。
なんやワレェなどの暴言を吐いてくる輩はともかく、カイトは思う。
どうやら貧乏クジを引いてしまったらしい。
取り敢えず、目の前の輩を薙ぎ倒す事から始めようか。
それがカイトの中にある『ルール』なのだから。
矢澤にこは人生で初めて心臓が破裂するのではないか。そう思わざる得ない事態に、頭がパンクしそうになっていた。
普段はどんな事態も自分を失わずにキャラを保ち、強がってみせたにこもこれには打ちのめされてしまった。
にこには妹が2人と弟1人がいる。名前は順にココロ、ココア、虎太郎。
祖母の所へ家族で帰省した帰り。母も含めた5人は電車を待つまでに母とココアがトイレへ。
そして、にこは少しジュースを買う為に一番幼い虎太郎をココロに任せて5分ほど離れてホーム内にある売店で買い物をしたのだ。
そして戻ると、そこにココロと虎太郎の姿はなかった。
最初は少し離れた所で遊んでいるのだろうと思い、周りを見回す。いないのならホームの先端に行ったのだろう。幼い男の子である虎太郎にしてみれば、電車とは夢にまで見たスーパーマシンである。
だが、先端にも。そして最後尾にも2人の姿はなかった。
そこでようやく、にこは取り返しの付かない事態になった事に気付いた。
丁度、戻ってきた母に全てを話し、もしかしたら戻ってくるかもしれないという一抹の希望で残ってもらい、にこは駅内を駆け出した。
幸いにもこの駅は広いには広いが人を探せないほど入り組んではいない。
最悪、警察に届けるしかないが、それはにこが妹達の誘拐を認めるとい事になる。
これだけは、絶対に認めたくなかった。
しかし、30分ほど走り回っても妹達は見つからない。
攫われた。にこがちゃんと見ていなかったから。
そんな絶望がにこを覆った時だ。
ポケットの中に入っている携帯電話が震えた。それもメールではなく、通話の方である。
取り出して画面を見てみると、九紋カイトの名前が表示されていた。あのぶっきら棒男から連絡が来るというのは初めての事であるが、にこは今誰かに構っている余裕はない。
だからか、不機嫌さと焦りを隠さずに応答した。
「何!? 今忙しいの! 用件なら手短に話なさい!」
『お前に似た幼女とガキがにっこにっこにーとうるさい。お前の身内か?』
瞬間、突き抜けるような衝撃と共に希望が溢れ、にこは思わず携帯電話を両手で握ってしまう。
「ココロと虎太郎と一緒にいるの!?」
すぐには返答はなかったが、少しの間を置いてから耳に届いたのは妹の声だった。
『お姉さまですか?』
「っ、ココロ!」
にこは安堵した事により足腰から力が抜けてしまう。近くに壁がなければその場に座り込んでいただろう。
『お、お姉さま!? 大丈夫ですか!?』
「ココロ………どうしてあの場を離れたのよ!? 心配したじゃない………ばかぁ………」
『ご、ごめんなさい! ココロにも何がなんだか…………』
怒鳴りちらしてからしゅんとなったココロの声に、にこははっと我に帰る。
「ごめんね、ココロ。無事でよかった……虎太郎も一緒なのね?」
『はい! 変な大人の人達からこのお兄さまが守って下さったのです!』
お兄様、あのカイトが。そう呼ばれて渋い顔をしているだろうな、と思いつつにこは告げる。
「じゃあそのお兄様に変わってくれる?」
少ししてから、カイトの声が聞こえてきた。
『なんだ?』
「ありがとう………本当に、ありがとう……………」
『……………フン、さっさと合流するぞ。オレに子守なんぞ出来ん』
涙目で告げたからか、カイトは狼狽を隠す為に少し間を置いて言ってくる。
確かに、カイトが子供相手に愛想笑いなど出来るはずもない。
「わかったわ。今どこにいるの?」
可愛い妹達があの仏頂面に涙目になっているかもしれない。そして反応したくても表情を固めるカイト。
そんな図をイメージしながらにこは周りを見る。
『仙台駅の改札口だ』
「……………えっ」
思わずにこは大きく表示されている看板の文字を読み上げた。
「…………大和西大寺」
『何?』
「私がいるのは
電話の向こうでカイトが驚くのも無理はない。奈良県は関西、仙台を含む宮城県は東北。関東を飛ばして、30分という時間で移動出来るはずがない。
『…………奴の仕業か』
「何………?」
『何でもない』
そう言ってカイトは、次の言葉を言う。
『にこ、お前はタカトラと連絡を取って仙台に来い。絶対にライダーなしで来ようとするな』
「ど、どういう事よ!?」
呉島タカトラ。アーマードライダーやロックシードなどヘルヘイムの森関連の業務を担っている大企業、ユグドラシル・コーポレーションの若き主任であり、現在はにこが通う音乃木坂学院の非常勤講師だ。
少し前からスクールアイドル、μ'sの顧問兼コーチをしているタカトラの事だ。確かに事情を話せば何かしら対処はしてくれるだろう。
『そんな出鱈目な事を可能にするのはロックシードくらいだ。ならば、ライダーの力は必須になるだろう』
「………………ロックシードってそんな事も可能なの?」
『わからん。だが、常識では考えられない事態なのは確かだ』
常識ではない事態。それに妹達が巻き込まれたと思うと、顔を青くするにこ。
「ココロ………虎太郎…………」
『…………こいつらはオレに任せろ』
普段はツンとしている男だが、この時はとても頼もしく聞こえる。
いや、カイトはいざという時は必ず力を貸してくれる。こちらが理不尽などに屈しまいと、例えどれだけ不様であろうと諦めない限り手を伸ばしてくれる。
「頼んだわよ」
そう告げて通話を切り、にこは母親の元へと走る。
カイトの事は信頼しているが、それでも子守に適している性格ではない事は確かだ。
早く妹達に会いたくて、家族を安心させたくてにこは走る。
だからか、通路から出てきた高校生くらいの少年とぶつかってしまった。
「きゃっ……ご、ごめんなさい!」
突然の事に咄嗟に謝るにこ。
相手は少し顔色の悪そうな少年だ。にこをちらりと一瞥するよ興味なさそうに踵を返し、人混みへと流れて行く。
普段ならこんな美少女に、と言うものだが今は事情が事情だ。
気を取り直してにこは母親の元へ向かう。
この時、にこは普段のツインテールではなかった。特に理由はなく、本当にたまたま髪を下ろしていた。
だから、助かったのだ。
もし、ツインテールであったのなら、目も当てられないような惨劇に巻き込まれていたが、それはもはや訪れない事である。
「どこに行ったの…………ニコちゃん…………」
携帯電話をポケットに入れて、カイトはインベス相手ににっこにっこにー♪をしているココロとぼぅっとしている虎太郎を見やる。
厄介な事になったものだ。何故、奈良県にいたはずのこの2人が宮城県にいるのか。
ロックシード、つまる所ヘルヘイムの森関連の事柄と結論づけるのは簡単だが、本当にそうだとは断言出来ない。
カイト達3人がいるのは仙台駅内にある喫茶店である。子供を立たせておくのも気の毒だったので喫茶店に入ったのだが、その際に「人攫い!」「いや、違う!」といったひと悶着あったのは忘れよう。
コーヒーを一飲みしてカイトはこれからどうしたものか、と思案する。
仙台から東京へと出るべきなのだろうが、そうすると思い浮かべている『奴』の思う壺だ。当たり前の行動で出し抜けられる相手ではない。
「…………留まるべき、か」
「カイトさんはお姉様とお知り合いなんですか?」
これからの事を考えていると、ココロがマンゴージュースを飲みながら尋ねてくる。
「…………一応、な」
「凄い! スーパーアイドルのお姉さまとお知り合いなんて、なんて幸運な方なんでしょう!」
何故、スクールではなくスーパーが付いているのか。これはいつかにこを問い質す必要がありそうだ。
そう思いつつ、否定してあれやこれやと言われても面倒なので適当に濁しておく。
「それで、何故あの場所にいた?」
カイトが尋ねた所でちゃんとした返答が帰ってくるとは思えないが、尋ねてみると案の定ココロは困惑した顔をした。
「それが、わからないんです。気が付いたらあそこに………」
「へびー」
だろうな、とカイトは息を付く。最も、今カイトがするべきは原因の究明などではなく、無事に2人をにこの元へ届ける事だ。
仙台の何処で暇を潰そう。そも、高校生が小学生なのかすら怪しい幼女と子供を連れて入れる宿泊施設があるのだろうか。
ホテルは勿論のこと漫画喫茶なども論外であろう。となれば、事情をタカトラから連絡してもらい近場のユグドラシル関係の場所を利用するしかない。
ならば早速、タカトラに連絡すべかだろう。ユグドラシルの人間にココロと虎太郎を任せて1人だけ帰る、という案も浮かんだが、にこから任されたのはカイトだ。責任を放棄するような事はしたくない。
ともかくタカトラに連絡を、と再度携帯電話を手にした際、虎太郎がぶるりと震えたのが見えた。
冷房が効き過ぎて寒気がしたのか、と思ったがそこまで店内の気温は低くはない。
では何だ、と燻しがるカイトに、もしやと思ったのかインベスがある方向を指さす。
その先には喫茶店の壁。いや、その先にあるトイレを指しているようだ。
「トイレか?」
「それは大変! お姉ちゃんが付いていってあげますから、行きましょう!」
慌てて立ち上がろうとするココロに、カイトは怪訝な顔をする。
「1人でトイレに行けないのか?」
カイトは弟や妹はいない。虎太郎くらいの頃の記憶もないが、見たところ幼稚園には通っていそうだ。ならば、トイレくらい自立していそだが。
すると、とんでもないと言わんばかりにココロが振り向いた。
「虎太郎はまだ5歳です! お姉ちゃんの私が付いてなきゃダメなんです!」
その瞬間、カイトは確かに見た。本当にわずか、たかだか5歳時が言葉を理解するはずがない。
だが、それはけっして勘違いでない。
その反応を見たカイトは立ち上がると、虎太郎の脇に手を伸ばして荷物のように抱えた。
「オレが付いて行く。お前はここでインベスと戯れていろ」
「えっ? いえ、お姉さまのお知り合いの方に……」
「オレもトイレだ。いいか、絶対にここを動くなよ」
振りではなく何度も釘を刺したカイトは、インベスに「絶対に目を離すな」と強く命令し、虎太郎を連れてトイレへと向かう。
大型の駅なだけあって子供の高さに合わせた便器があり、カイトは虎太郎を降ろす。
すると、虎太郎はスタスタと自分で、便器まで歩きズボンを降ろして用を足し始めた。
やはり、出来るじゃないか。
ついでにカイトと隣で用を足し始める。
「……………何故、あの姉の成すがままにされている?」
問い掛けた所で、5歳児からまともな回答は帰ってくるはずがない。
が。
「よろそぶー」
「…………姉を立てる為、か」
返ってきた言葉は舌足らずなものだが、その意味は5歳児が考えるような事ではなかった。
虎太郎が自分を出さずにいれば、姉であるココロが喜ぶ。それがわかっているから、虎太郎は身を引いているのだろう。
「わからんな、オレなは」
虎太郎と同じ弟だが、性格がねじ曲がって捻くれているカイトにはわからない行動だ。姉を立てる意味も、自分を押し殺すような生き方はゴメンである。
用を足し終えたカイトは虎太郎を歩かせて店に戻ると、そこにココロとインベスの姿はなかった。
「………おい、店員」
「はい?」
カウンターで洗い物をしていた女性は顔を上げて首を傾げる。
「そこにいた連れの子供とインベスはどこに行った?」
「あぁ、お連れの子でしたら『お姉さまがいた!』って言って店の外に飛び出して行きましたよ?」
「………何だと?」
カイトは即座に虎太郎を抱えると店を飛び出し、改めて周囲を見回す。
昼時に近い為、流石に人の流れが出来てきている駅であの幼女を見つけ出すのは不可能だろう。
カイトは開錠したままのバナナロックシードを取り出すと、その状態で開錠スイッチを押し込む。するとキャストパットが展開され、薄い空間モニターが出現した。少しの間を置いてこの周辺の地図が表示された。
ロックシードに備えられている機能、インベスの場所を把握する為のシステムである。
インベスにはココロを見張るよう命じてある。ならば、死んでも離れないはずだ。
地図を見ればそれほど離れている訳ではない。それに従いカイトが駆けると、関係者立ち入り禁止の看板が掲げられた柵の向こう側を示している。
カイトは躊躇いなく柵を飛び越えて先に進むと、埃かぶったダンボール箱が積まれたエリアへと出た。すでに廃棄されたエリアなのか人の手が加えられた様子はなく、床には誰かが通ったらしい足跡が残っている。
それを頼りに進むと、曲がり角の先から声が聞こえてきた。
「お姉さま!」
「ですから、私は貴女のお姉さんではなくて………!」
片方はココロで間違いないが、もう1人の声はにこのように聞こえる。
「まさかな………」
にこがいるのは奈良県だ。身内の為に奈良県から宮城県まで瞬間移動出来るような手段を、あの自称スーパーアイドルにこが持っているはずがない。
カイトが曲がり角から顔を覗くと、そこには白いドレスのような服を着た黒髪ツインテールの女性の手を引っ張るココロの図があった。
その後ろ姿は、確かににこに見えなくはない。
「馬鹿な………」
咄嗟に驚いてしまい、じゃりっと足音を立ててしまう。
その音に気付いて女性がこちらを振り向く。
その姿は紛れもない、カイトのシルスクールアイドル、μ'sの矢澤にこであった。
「にこ………?」
「あの、貴方は…………?」
カイトの姿を見て、にこ似の女性が困惑した顔を見せる。その青い瞳を向けられ、これは別人だと確信した。
カイトの知るにこは赤い瞳をしている。当たり前だが、にこがここにいるはずがない。
「オレは九紋カイト……そいつらのお目付け役だ」
「カイトさん! やっぱりお姉さまが来て下さいました!」
「ですから、私はニコ=メンツェルという名前であって…………!」
姿、声だけでなく名前まで似ているとは。世界には似たような人間が3人はいる、と聞いた事はあるがあながち都市伝説という訳ではないらしい。
カイトは虎太郎を降ろしてココロに近寄ると、ガンと拳骨を落とした。
「ふみゃおっ!?」
それなりに手加減をしたつもりだが、小学生には痛かったのだろう。ココロは涙目になりながらカイトを見上げてくる。
「な、何を………!?」
「オレは店で待っていろ、と言ったはずだ」
正確には戯れていろ、だが意味合いは同じだ。ここにいろ、という言葉をココロは破った。
故の鉄拳制裁。なにも間違ってはいない。
「それを破ったのはお前だ。何故、あの場から離れた?」
「だ、だってお姉さまが………」
「にこはこの近くにはいないと言った。そして、それをお前はわかったと言っただろう」
「め、目の前に…………」
と、そこまで言いかけてココロは目に溜まった涙を拭って俯きながら言った。
「……………ごめんなさい」
「よし」
よく出来ました、といわんばかりにカイトはココロの頭に手を乗せる。
「オレはにこからお前達を任されている。勝手な行動をするな。にこを悲しませる事になるぞ」
「………はい」
しゅんとなるココロの頭から手を離し、カイトはニコ=メンツェルという女性を見やる。
「迷惑をかけた」
「い、いえ………」
女性はどう言うべきかわからないようで、はにかんで答える。
しかし、見れば見るほどにこにそっくりである。ぱっと見ただけではカイトですら見間違えてしまうのだから、幼いココロが見間違えるのも仕方ないと言えよう。
ともかく、ココロは回収した。この場を離れてにこと合流するまでどう時間を潰したものか、と思案する。
その時。
突然、クラックが出現してインベスが4体現れた。
「インベス……!?」
突然の事態に女性は身構え、ココロは本能的に虎太郎を守ろうと抱きしめる。
そしてカイトは、つまらなそうにインベス達を睥睨する。
「野良インベスが偶然、4体も集まるはずはない。厄介事に巻き込まれたか」
そう告げて戦極ドライバーを取り出して腰に装着し、バナナロックシードを取り出した。
「戦極ドライバー…………!?」
「丁度いい、退屈凌ぎに遊んでやる。変身」
『バナナ!』
開錠すると頭上にクラックが出現し、ココロの肩に乗っていたインベスが戻るのと入れ替わるようにバナナアーマーパーツが現れる。
「な、何ですかアレ!?」
「バナナー」
「っ、まさか彼が………!」
三者三様の反応もお構いなしに、カイトはバナナロックシードを指先で回してから戦極ドライバーのドライブベイに嵌め込む。
『ロック・オン』
即座にカッティングブレードをスラッシュし、カイトは走り出した。
『カモンッ! バナナアームズ! ナイトオブスピアー!!』
駆けるカイトにアーマーパーツが装着され、その身をアーマードライダーバロンへと変身させる。
召喚されたバナスピアーを握り、擦れ違い様にインベスを斬りつけていく。
「メンツェルと言ったな!」
「ニコです!」
「ココロと虎太郎を連れて離れていろ!」
バロンの言葉にメンツェルは戸惑う様子を見せたが、従うように2人を抱き上げるとダンボール箱の物陰に隠れる。
それを見届けたカイトはインベスの攻撃を掻い潜り、バナスピアーで着実にダメージを入れていく。
もはや初級インベス程度では相手にならず、いとも容易くインベスを撃破した。
戦闘が終わった事に安堵したのか、メンツェルが出てくる。
「あ、あの………!」
「いたぞ、あそこだ!」
変身を解いた所で、少し遠くの方から男が数人駆けてくるのが見えた。その手に握られている銃を目にしたカイトな、さも面倒そうに息をつく。
「おい、ココロを運べ」
「へっ?」
返答を待たずカイトは虎太郎を抱え込むと走り出す。
慌ててそれに合わせるようにメンツェルも走り出し、銃声が響く。
面倒事だが、どうやら退屈せずに済みそうだ。
自嘲気味に笑うカイトは、さらに奥地へと走った。
呉島ミツザネは音乃木坂学院の校門にて、サクラハリケーンに腰かけながら待っていた。
夏休みなので学校にいるのは体育系の部活動に所属している生徒くらいで、まさかミツザネがいるとは思わなかったのかずぼらな格好を見られて悲鳴を上げる生徒がちらほら。
苦笑とも微笑とも付かない笑みを浮かべるミツザネだが、その内心は穏やかではいられなかった。
やがて、待っているミツザネの前にサクラハリケーンがやって来る。
「待たせたな、ミッチ」
バイザーを上げる葛葉コウタに頷いて、ミツザネはサクラハリケーンに跨る。
「穂乃果さん達には?」
「上手く誤魔化しいたあら大丈夫だ」
コウタは今日と明日で2年生組と宿題をする予定だったのだが、緊急で呼び出したのだ。
問題なく来てくれた事に安堵して、ミツザネはヘルメットを被る。
「状況はメールでお伝えした通りです」
「にこが事件に巻き込まれたってマジなのかよ………」
低く呻くコウタにミツザネは重々しく頷く。
明日、いつものメンバーで蓮を見に行こうという話しをした後、兄であるタカトラから連絡が来たのだ。
奈良県にいるにこの妹と弟が、何故か宮城県にいる。カイトが保護したといのだ。
問題はにこが妹達を見失って数十分後に、宮城県にいるカイトに保護されたという事。
まるで神隠しのような現象だが、それを可能に出来そうな人物をミツザネ達には心当たりがあった。
「またサガラの仕業か」
「十中八九そうでしょうね」
DJサガラ。ビートライダーズとスクールアイドルに関するネットラジオ番組を放送している男。
沢芽シティ時代から関わっているが、その存在はほとんどが謎に包まれている。実際に相対した事はあるも、その全てが神出鬼没。どこから現れたかと思えば、いつの間にかいなくなっている。
サガラは人間ではないのではないか、と仲間内で噂になったくらいだ。
「でも、何でカイトなんだ」
「偶然でしょうか……ともかく、急ぎましょう。ユグドラシル本社から車出してくれるそうです。大阪でにこさんと合流です」
「おう!」
コウタは頷いてアクセルを踏み込む。
行き先は仲間の元。
これ以上、あの得体の知れない男の好きにはさせない。
追手を撒くように走っていたカイト達は、何時の間にか地下水道にやって来ていた。どこをどう走ったらここに出るのかわからないが、 少なくとも先ほどの輩が追ってくるような気配はない。
足を止めたカイトは虎太郎を降ろして、後ろで着いてきたメンツェルを顧みる。
一見、お上品なにこのように思えたが意外にも体力があるようで、困憊しているようだがしっかりと離れず着いてきていた。
「……………アレはお前のか?」
「…………すみません、巻き込んでしまったようです」
「いや、そうでもない」
申し訳なさそうに顔を伏せるメンツェルに、カイトは手を振って答える。
「奴らとはオレにも浅図らぬ因縁があるみたいだ」
カイトがちらりとあの男達を見た時、目に入ったのだ。
スーツの胸に付けられたマーク。
ロックシードを売買する錠前ディーラーの組織、『ニトクリス』。
先日、戦闘したシドが所属している組織だ。
このメンツェルは奴らに追われている。という事は、少なくともニトクリスと繋がっている。
ならば、奴らの情報を手に入れる事が出来るかもしれない絶好のチャンスという訳だ。
「奴らとはどんな関係………」
「うぅー」
問いかけようとした所で、虎太郎が呻き始めた。
「ど、どうしたの虎太郎!?」
「くさいー」
ココロが駆け寄ると、虎太郎は鼻を抑える。
確かに地下水道は下水も流れているらしく、カイトは気にならない程度ではあるが異臭が充満していた。
「まずは移動するか。お前も来い」
「えっ………」
虎太郎の手を掴んで立たせながら言うと、メンツェルは驚いた顔をする。
「わ、私がいたら皆さんに………」
「どの道、オレ達は顔を見られた。すでに巻き込まれている………それに、ニトクリスについて聞きたい事がある」
そう告げてカイトは歩き出す。水道の流れている方向に歩けば一先ず仙台駅からは離れられるだろう。後は適当な場所でマンホールを抜ければいい。
しばらく歩いてからマンホールを開けると、差し込んでくる陽射しにカイトは思わず目を細める。
仙台市のどの辺りに出たのかは不明だが、一先ず陽を浴びた事によって安心感は得られた。
「さて、ここがどこだか………」
「か、カイトさん………」
携帯電話を取り出して地図アプリを起動させた時、おずおずとココロが手を上げた。
「何だ?」
「その、臭いが身体に付いてしまって………」
「おふろー」
ココロと虎太郎の言葉にカイトは思わず険しい顔をしてしまう。
時間は昼前なのだから銭湯くらい探せばあるだろうが、今は追われている身だ。自ら袋小路のような銭湯に行くなど愚の骨頂でしかない。
だが、メンツェルも同意見なのかココロの頭を撫でながら告げた。
「あの、巻き込んだ私が言うのもアレですが、人混みの中でこの臭いをまき散らすのは怪しいです、と自己主張しているような物ではないでしょうか? 今ならそれほど包囲されていないでしょうから、今のうちに臭いを落としておくのも…………」
と、メンツェルがくどくど提案しているが、その顔には「臭いですお風呂入りましょう女の子にこの臭いは無理です」と浮かんでいた。
「……………仕方ない」
早速、このメンバーに不満を覚えだカイトだが、あれだこれだ言ってもココロは聞かない気がする。何せあのにこの妹である。
場所の把握ついでに調べてみると五ツ橋通の近くに喜代の湯という銭湯があるらしい。現在地からそれほど離れていないので、行くとしたらベストであろう。
3階建ての少し古めかしいビルの中にあるらしく、喫茶店とランドリーと合併しているようだ。
中に入ると昼間だからか薄暗く、人もいない貸切状態であった。受付を済ましてココロをメンツェルに任せ、カイトは虎太郎と共に男湯へと入る。
更衣所などが2階で風呂場は実質3階にあるらしい。コインロッカーとコーヒー牛乳の自動販売機程度の質素な形だ。
コインロッカーに少ない荷物を入れ、服を軽く畳んで盗まれないよう鍵を掛ける。
その際、ロックシードでインベスを召喚しておき、もしニトクリスの人間が現れたのならば荷物を持ってくるよう指示するのも忘れない。風呂に来ているものの、今は追われている身なのだから。
ふと、虎太郎を見やれば服をくしゃくしゃに脱ぎ散らかすようにして入れているので、思わず言葉が出た。
「虎太郎、皺になるなからちゃんと畳め」
「しわー」
何が、とでも言うように首を傾げる虎太郎にカイトは溜息をついて見本を見せるように上着を畳んでみせる。
虎太郎はそれを見て下着とズボンを折り畳み、ロッカーの中へと入れた。
よし、と頷くとカイトはレンタルタオルを肩に掛けると、いよいよ入浴場へと足を踏み入れた。
リーズナブルな値段とはいえ、やはり風呂の匂いというのは日本人を安心させるらしい。
普段は仏頂面のカイトでさえ、頬が緩んでいくのがらわかる。
「待て、虎太郎」
早速、湯船へと駆けようとしていた虎太郎を声で制す。
「床が滑りやすくなっているから走るな、転ぶぞ。銭湯に来た事ないのか?」
「おとこゆはじめてー」
つまり、今まではにこ達と同じ女湯に入っていたという事か。別段、にこの幼児体型に興奮を覚えるような趣味はないが、羨ましいと思ってしまうのは性なのだろうか。
くだらん、と今自分で思った事を振り払って風呂椅子と黄色いプラスチック製の桶を2人分持って置く。
「まずは身体を洗ってから湯船に入れ。それが銭湯でのルールだ」
「るーるー」
どこぞのモビルスーツパイロットを沸騰させるような言葉はひとまずスルーし、カイトは桶にお湯を溜め始める。
虎太郎はそれをぼーっと見ていたが、やがて真似るように桶にお湯を溜め始める。
「男湯は初めてと言っていたな。いつもはどうしている」
「ねーちゃんー」
またココロか。よほど虎太郎の事が気になるらしい。
カイトの姉はそれほど気にかけてくれた事はなかった気がする。朧げな記憶の中では、カイトは気付けば全てを自分で行っていた。
「………取り敢えず適当に洗ってみろ」
「あたま、めいたいー」
「目を瞑れ」
見てろよ、とカイトはそそくさと頭を洗い始める。髪にシャワーのお湯を駆けて手探りでシャンプーを探して出して、一気に髪を洗う。そして、ばっとお湯でシャンプーを洗い流して顔を軽く拭って。
「これが男の洗い方だ。やってみろ」
そう告げると、虎太郎はしばらくシャワーを見ていたが、意を決したようにお湯を出す。
そして髪を濡らすもシャンプーまで手が届かず、探る仕草をする。
思わず失笑したカイトはシャンプーを出して頭に付けてやる。すると、虎太郎は自分で髪を洗い始めるが、洗えていない所がある。
カイトは残りの所をわしわしと洗ってやり、それが終わると虎太郎は自分で洗い流す。洗えていない所はカイトも手を貸してやることで、ようやく洗えたり
ばしゃりと顔を拭った虎太郎は、どうだと言わんばかりにカイトを見やってくる。
「…………悪くないものだろう。自分で風呂に入るというのも」
カイトの言葉に虎太郎はしばらく考え込むように間を置いてから、ニカッと笑った。
もし、カイトに弟がいればこんな感じなのだろうか。
そんな風に考えながら、悪戯に虎太郎の顔へシャワーを向けて掛けてやった。
ココロと虎太郎が宮城県で発見された翌日。
大阪で一晩を過ごしたにこは、大阪駅の一般車が入れるターミナルで仲間の到着を今か今かと待ちわびていた。
その隣には母親と眠そうに目を擦っている三女のココアがいる。
やがて、予定時間から3分遅れた頃だ。
ユグドラシルのマークを付けたワゴン車がターミナルに入ってきて、にこ達の前に停車した。
「にこ!」
「っ、コウタ! ミッチ!」
泣きそうになりながらにこが近寄ると、葛葉コウタと呉島ミツザネが飛び出すように出てくる。
普段はツンとしてプライドも高い態度をしているにこが泣きそうになっているからか、2人は驚いた顔をするがすぐに真剣味を帯びた表情になる。事の重大さを改めて感じてくれたようだ。
「ごめん、私がココロ達から目を離さなければ………」
「オレ達の事は気にすんなって」
「事情は聞いてます。ともかく、詳しい話しはワゴン車の中で。お姉さんと妹さんも御一緒に!」
ミツザネがそう言うと、当然と言うべきか母親はにこっと嬉しそうに笑った。
「あら、お世辞が上手ね。おばさん嬉しくなっちゃう」
「…………………は?」
思わずコウタとミツザネが固まる。
その様子ににこは昨日ぶりに苦笑して、2人を紹介した。
「紹介するわ。私のママと妹のココアよ」
「はーい、にこのママでーす。にっこにっこにー♪」
「にっこにっこにー♪」
母親に合わせてココアも振りをしてくれる。
それを聞いたコウタとミツザネは口をあんぐりと開けて、互いを見やる。
そして。
「アイエエエエエエエエエエッ!?」
驚きのあまり2人はずささっと下がってしまう。
「嘘だろ、あぁりえなぁい………!」
「にこさんのお母さんがこなにナイスバディな訳………!」
「という事は、いずれにこにも可能性が微レ存…………」
と、2人はにこのある部分を見る、
「………………いや、ないな」
「ないですね」
「喧嘩売ってるのかしら…………?」
わなわなとにこが拳を震わせると、ワゴン車からクラクションが鳴り響く。
助手席のウィンドウが下がり、運転席から中年の男性が顔を覗かせている。名前は知らないがタカトラの部下で、コウタ達も慕っている人物だ。
「コントしてる場合じゃねぇだろ。さっさと乗れ」
促されるように助手席にミツザネが乗り込み、続いて母親とにこ、最後にコウタが乗り込む。
「娘の為にありがとうございます」
「気にしないでくだせぇ。礼ならタカトラ主任とそこの坊主どもに」
母親が中年男に礼を言うと、苦笑してミラー越しにコウタを見やる。
「仲間が大変なんだ。助けるのは当たり前だって」
「ともかく、仙台へ向かいましょう」
ミツザネの言葉に頷いてワゴン車を発進させる中年男。
「というか、何であいつは仙台から移動していない訳?」
「空間跳躍とでも言うかのような今回の事件。普通のインベス事件とは異なりますから、下手に動かない方がいいって判断したんだと思います」
早く妹達の無事を確認したくて逸る気持ちが抑えられないにこだが、ミツザネの言葉に冷静を取り戻す。
「仙台のどこで落ち合うか、決めてるのか?」
「一応、夕方頃に仙台駅で、と」
「アバウトだな……」
中年男に同意であるが、どこかカイトらしいと思うのは何故だろう。
アバウトだが、それを約束したのならば破られない。
相手が九紋カイトであるならば。
にこを乗せたワゴン車は走る。
妹達が待つ仙台へと。
それを見ていた2つの眼があった事を知らずに。
「……………………ニコ、ちゃん」
それら見やる。地図を理解していた訳ではない。
だが、偶然か必然か。
ソレが向いた方向には、仙台があった。
九紋カイトが所有するロックシード
・バナナ
・マンゴー
・ローズアタッカー
次回のラブ鎧武!は……
ーーーーーー泣いていいんだ。たとえそれが俺の弱さだったとしても拒まない。俺は、泣きながら進む!
ーーーーーーお前は本当に強い
ーーーーーー俺は何物にも屈しない………俺を滅ぼす運命にさえ!
懐かしい匂いと共に脳裏を揺さぶられる、その意味とは…………
「僕は確かに今まで罪を積み重ねてきた。それを懺悔する気も後悔する気もない。血塗れたこの手をニコちゃんは受け入れてくれた………だから!」
「ならば証明してみせろ」
カイトが認める少年の強さとは。
「人間、人生を使い切るのにはおおよそ25億秒とされているらしい。僕はきっと24億秒くらい使ったかもしれないから、残りどれだけかはわからない。決して褒められない犯罪まみれの24億秒だったけど、その中で1つでも選択肢を間違えていたら、ニコちゃんに出会う事はなかったかもしれない」
それは有り触れた話し。決して特別などではなく、普通の話し。
そして、2人の強者が戦った結末は……………
それを見届けた幼い少年の瞳に指す未来は………………
次回、ラブ鎧武!
22話:25億秒の使い方 ~虎太郎の旅立ち~
入場特典が初回以外全部とれないグラニです。いや、だって初日がことごとく仕事なんですもの。
ということで、今回はバロンことカイトさんのお話です。カイトさんって人情に熱いから子供に対しては優しい気がするんですよ。
虎太郎も虎太郎で周りが女性ばかりだから男らしさってなんやねん状態で育ちそうですよね。やっぱ男の子は日本男児たれじゃないけど、男らしく育ってほしいものです。グラニは男らしくないですけど。
このお話は基本的に2日間くらいの話しなので、かなり駆け足で進んでいます。特に次回なんてやばいです、最後ら辺までいくのに1時間くらいしか経ってないかもしれません。
あ、次回の最後の方でアレ的なものを思わせる描写があります。
うーん、不評かもしれません……………書いといてアレですけど……………
レベル的には(自分の中では)R-15ですが……………
ともかく、次回でカイトの保父物語は終わります。短い間、子供と触れ合った彼に訪れる変化とは……………