ラブ鎧武!   作:グラニ

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ごくごく当たり前に存在しているヘルヘイムの森。

だが、その実態はあまり知られていない。



24話:Wonderful Rush ~森の住人~

夏本場に差し掛かり、上手く練習場所を確保出来なかったμ'sは合宿を思い付く。

 

ちょうどユグドラシルの事情でから海外での合宿を提案をされたμ'sは、それを受け入れる為にアイドル研究部として文化祭の発表準備をする事に。

 

そして、ついに一行は海外合宿へ行く事になったのだが…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南ことりは今までにないほど焦ってキャリーバッグを漁った。しかし、何度見てもソレは見つからず、表情は絶望に染まっていく。

 

昨晩、何度も忘れ物はないか確認したというのに、何故抜けてしまったのだろうか。

 

と、そこで思い出す。ソレはまだ使うから明日の朝、キャリーバッグに入れようとしたのだ。

 

ことりは腕時計を確認する。空港へ来るのに掛かった時間を計算すれば、飛行機の出発に間に合うか際どいかま、アレがなければこの海外合宿を乗り切るのは不可能であった。

 

仕方ない。意を決したことりは走り出した。

 

落ちそうになる帽子を抑えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

空港のロビーに男子の声が響き渡る。通行人達が何事かと目を向けてくるが、彼らには周りの目なと気にしていられないほど衝撃的であった。

 

「い、家に帰っちゃったのォ!?」

 

「何やってんだよ、ことり!?」

 

小泉花陽の悲痛な叫びに乗っかるように、ロビー内の時計を見比べながら葛葉コウタが叫ぶ。

 

今日は音乃木坂学院スクールアイドル、μ'sの海外合宿への出発の日である。

 

羽田空港で集合する事となり、μ'sとチーム鎧武にアイドル研究部顧問である呉島タカトラ。そして、雑用を引き受けたラーメン仁郎の息子である啼臥アキトが集まったのだが、そこに1人だけ欠けていた。

 

南ことり。音乃木坂学院理事長娘であり、μ'sの衣装係担当でもある少女だ。

 

真面目な彼女が寝坊した、とは考えにくく幼馴染みでμ'sリーダーである高坂穂乃果が連絡してみると、なんと1度は空港に来たのだが忘れ物をしたが為に引き戻ったのだという。

 

「飛行機出ちゃうわよ!?」

 

「一体何を忘れたんだ………」

 

「パスポート?」

 

矢澤にこ、九紋カイト、東條希の言葉にスピーカーモードになっている穂乃果の携帯電話からことりの返答が返ってくる。

 

『そうじゃないけど、あれが………あれがないとー!』

 

「あれって………?」

 

「生理用ナプキンですか?」

 

あれ、という言葉で絢瀬絵里が首を傾げるが、容赦ない呉島ミツザネの言葉に実家が病院を経営している西木野真姫が睨みつけてくる。

 

「ミッチ、黙ってなさい」

 

「デリカシーなさ過ぎだにゃ」

 

アキトの幼馴染みである星空輪はミツザネに言葉を棘を投げ付けてから、タカトラを見やった。

 

「……………仕方ない。なんとか次の便に変更出来ないか聞いてこよう」

 

そう告げてタカトラはカウンターへと向かっていく。大企業であるユグドラシルコーポレーションの主任である立場に就いているが、今のタカトラはあくまでも音乃木坂学院の教師と来ている。

 

ユグドラシルの力が使えない以上、こちらが折れるしかないだろう。

 

「どうしよう…………」

 

タカトラが離れた以上、少なくともメンバーは空港から離れる訳にはいかない。ことりが来なければ出発も出来ないのだから、ある意味で手持ち無沙汰になってしまった訳だ。

 

「………大丈夫なのかね」

 

穂乃果が電話を切るのと同時にあらぬ方向を見ていたアキトが呟く。決して他人事のように言った訳ではなく、その視線の先には周辺の交通機関に関する情報が表示されたモニターがあった。

 

そこには、あって欲しくない文字が。

 

京浜東北線:人身事故の為、運転見合わせ。

 

かちりと、誰もが固まった。京浜東北線は羽田空港へ辿り着くのには重要な路線で、この場にいるほとんどが使った電車だ。

 

「これ、詰んだかな………」

 

さすがのミツザネも絶句で思わず呟いてしまう。今現在、ことりの所在地はわからないが最悪は京浜東北線に乗っている最中で身動きが取れない事。よしんば神田に到着していたとしても、京浜東北線が止まっているのならばかなりおおまわりをする必要があるはずだ。それでは飛行機の発射時間には間に合いそうにない。

 

早くも前途多難な合宿に不安を覚える一同。

 

ふと、何か考え込んでいたコウタは携帯電話を取り出して何かしらの検索をし、鞄を置いた。

 

「海未、悪いけど荷物よろしく」

 

「コウタ?」

 

怪訝そうな顔をする園田海未にコウタはロックビークルを見せる。

 

「電車よりバイクで迎えに行った方が早いだろ。ちょっと行ってくるよ」

 

「間に合うの? 自家用車でも40分はかかるわよ。飛行機はあと30分ほどで出発してしまうし」

 

真姫の言葉にコウタはにやりと笑って見せた。

 

「そこはライダー専用の道を使わせて貰うんだよ」

 

にやりと笑ってコウタはロックビークルをお手玉のように弄ぶ。

 

「…………わかりました。兄さんにはそれとなく黙っておきます」

 

同じライダーとして通じ合えるらしい。息をつくミツザネに頷いて、コウタは空港の出入り口へと走って行った。

 

それを見届けてから穂乃果はふぅ、と息をつく。元から計画されていた事とはいえ、仲間内では穂乃果が言い出しっぺなのだ。突然の非常事態に何とかなりそうなので、思わず安堵してしまった。

 

「あれ、アキトどこ行くの?」

 

安心して額を拭うと、凛がアキトに呼び掛ける。

 

その言葉にアキトは着ているポンチョを翻しながら振り向く。

 

「トイレのついでに空港の写真撮ってくる。こんな機会、滅多にないからな」

 

そう言って掲げてみせるのは、普段から首に下げている青いトイカメラだ。凛に紹介された時からさげているそれは、今時珍しいフィルムカメラであり、アキトに言わせると尊敬したくないけど尊敬する先輩からのお下がりだとか。

 

「コウタさん達が戻ってきたら連絡してくれ」

 

「あ、凛も行く………」

 

「男子トイレのクソだけど」

 

「アキトもミッチもデリカシーがないにゃー!」

 

うがーっ、と顔を赤くす凛にアキトは愉快そうな笑い声を上げながら、その場を去って行った。

 

それを見届けて、穂乃果はぽつりと呟く。

 

「…………アキト君って不思議な子だよね」

 

「そうかにゃー。単なるラーメン馬鹿なだけな気がするけど………」

 

「お前が言うな……」

 

凛の言葉に呆れながらも突っ込むカイト。

 

しかし、言葉にしてみても穂乃果は思う。

 

啼臥アキト。ラーメン屋仁郎の1人息子であり、凛と花陽の幼馴染み。μ'sメンバーも2人を通して知り合い、放課後の練習では配達の合間に差し入れをくれるなどμ'sを応援してくれている優しい少年だ。

 

だが、穂乃果たち思えばアキトは音乃木坂学院の生徒はないのだから、コウタ達よりも一緒にいる時間は短い。

 

だから、穂乃果達はアキトを仲間と思っているが、それにしては彼の事を知らなさ過ぎる。

 

初めて会った時はオープンキャンパスの件でコウタ達とギクシャクしていた時で、アキトは真面目な風を装いながらも速攻で凛を弄り、物理的な制裁を受けるという破天荒な印象を付けている。

 

それからというものの、アキトは度々早朝や放課後の練習に顔を出してくれるのだが。

 

「アキト君、今回の合宿に参加してくれたのは嬉しいけど本当に良かったのかな………」

 

もしかしたら、他にやりたい事があったのかもしれないのに。という言葉は凛の言葉で遮られた。

 

「大丈夫にゃ」

 

「アキト君、この数日間ずっと合宿の為に色々勉強してくれたんだよ?」

 

「よっぽどμ'sの仲間、って言われたのが嬉しいみたいね」

 

「というか、その発言思いっ切り今更ですよね」

 

凛、花陽、真姫、ミツザネが笑いながら言う。

 

何でも合宿にサポートとしてついていく、という事になってから毎日のように料理の練習などをしてくれていたらしい。

 

今までは凛や花陽達だけに振る舞っていれば良かったのだが、今回はそうはいかない。μ's全員だけではなく、チーム鎧武のカイトを唸らせねばならないのだ。

 

「毎日のご飯が美味しいと練習も捗るからね」

 

「正直、タカトラ先生のメニューをこなした後にご飯の準備とか考えてくないわ………」

 

これからのご飯を期待してかうれしそうにする希と、げっそりとするにこ。どっちもどっちな反応に穂乃果は苦笑するが、言える確かな事は。

 

「この合宿で、アキト君ともっと仲良くなれたらいいね!」

 

「まぁ、その為にはことりさんが間に合わないと話しになりませんけどね」

 

にっこりと、それでいて毒を吐くミツザネに言い返せない穂乃果。その様子に一同は笑みを零し、そして出入り口を見やる。

 

コウタなら必ず間に合わせてくれる。

 

そう信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、だから昨日の夜の内に入れておきなさいって言ったのよ」

 

「だってだってだってぇー!」

 

母親の小言を受けながらもことりは目的の物をキャリーバッグに押し込むと、落ちないように帽子を抑えながら駆け出す。

 

「タカトラ先生には伝えとくから、気を付けて行きなさいね」

 

「うん! 行ってきまーす!」

 

再び家を飛び出すことり。南家には車はなく母親も免許を持っていない為、どうしても移動手段は電車などの公共機関に絞られてしまう。

 

だが、この調子ならば朝と同じように行けば間に合うだろう。日々の練習のおかげで体力は相当ついたから、走るのは問題ない。

 

「ことりー!」

 

その時、飛び込んでくるはずのない声にことりは足を止めて振り向く。

 

すると、道路を走っていたバイクがことりの横で止まり、ライダーはヘルメットのバイザーを上げた。

 

「いたいた、まだバスに乗ってなくて良かったぜ」

 

「こ、コウタ君!?」

 

それはサクラハリケーンに乗ったコウタだった。すでにμ'sの集合時間は過ぎている為、本来コウタがここにいるはずがなかった。

 

まさか、と思ってことりが尋ねる前にコウタがにっと笑う。

 

「迎えに来たぜ!」

 

「えぇっ!? で、でもバイクで行くより電車の方が早いって………」

 

一度、合宿に向けての事前ミーティングで羽田空港へは神田からなら車より電車の方が早い、という情報を真姫から得ていた一同。ことりもそれを覚えていたからこそ、ギリギリで間に合うと踏んでいたのだが。

 

「電車は人身事故で止まってるから迎えに来たんだよ。もし電車に乗ってたら確実に間に合わなくなるぜ」

 

「そ、そんな……!?」

 

キャリーバッグをサクラハリケーンに括りつけながら告げるコウタに、絶望の表情をすることり。

 

それを見たからか、コウタはヘルメットを差し出しながら頼もしげに笑った。

 

「だから迎えに来たって言ったろ? 皆が待ってる」

 

「…………うん!」

 

その頼もしげな言葉に、ことりは頷く。

 

コウタは不思議な少年だ。どれほど絶望的な状況でもコウタがいてくれるならば、きっと乗り越えられる。

 

それはまるで、物語に出てくるヒーローように。

 

「うっし。ことり、ちょっと狭いかもしれないけど我慢してくれよ?」

 

何度かコウタのバイクの後ろに乗せてもらった事があるので、もはやヘルメットを被るのも慣れたものである。

 

キャリーバッグが括りつけられているのでことりの座席はかなり狭まっているが、コウタにみっちりとしがみつけば何とか走れそうだ。

 

その際、年の割には豊満なことりの胸がコウタの背中に密着する訳だが、それも安全の為に致し方のない事だろう。ふにょんと触れる度に強ばるコウタの背中に顔が赤くなることりだが、安全の為と言い聞かせている。

 

というか、やっぱりコウタ君も男の子だなぁ、などと思っているとコウタはこちらを肩越しに見やってくる。

 

「乗ったな?」

 

「うん!」

 

「じゃ、行くぜ」

 

ことりの頷きを確認すると、コウタはどういう訳かアクセルに手を伸ばすのではなく戦極ドライバーとオレンジロックシードを取り出す。

 

何故に戦極ドライバー、と怪訝に思うことりを他所にコウタは腰に装着してオレンジロックシードを解錠した。

 

「変身!」

 

 

『オレンジ!』

 

 

「ぴぃっ!?」

 

頭上にクラックが裂けてオレンジアーマーパーツが出現し、思わずコウタから手を離してしまうことり。

 

コウタへ普段のような大きな動きではなく、そのままオレンジロックシードを戦極ドライバーにセットしてカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

オレンジアーマーパーツがコウタの頭へと落下して、全身を青いライドウェアが包み込み、その姿を少年からアーマードライダーへと変えていく。

 

「っしゃぁ、行くぜことり!」

 

「わぁー、何だか凄い久々に変身したコウタ君を見た気がする………じゃなくて、どうして変身したの?」

 

アーマードライダー鎧武にしがみつきながら尋ねると、恐らく仮面の下でにっと笑顔を作っているであろう鎧武がサムズアップをしてくる。

 

「ライダー専用の道を使います」

 

「専用って、それって………」

 

「っと、まじで時間がやべぇな。行くぜ、ことり」

 

鎧武の声にことりは帽子を握り締めながら強くしがみつく。

 

それを確認した鎧武はようやくアクセルを回し、2人を乗せたサクラハリケーンは出発する。

 

しかし、大通りに出た途端、鎧武は法定速度など知った事かといわんばかりに加速を始めた。

 

「こ、コウタ君! スピード出し過ぎじゃ………」

 

「喋るな! 舌噛むぞ!」

 

忠告されて口を閉ざすことりは、やがてサクラハリケーンから警告音のようなものを聞き、不安な気持ちが広がる。

 

一体、これほどまでに加速度してコウタは何を考えているのだろう。

 

そう思っていた矢先、

 

車体が浮いた。

 

「ぴっ………」

 

加速したバイクが浮く、という事態にことりの頭はパンクしかけるが、そんな事を感がえる余裕もなく事態は進む。

 

やがて、何かに吸い込まれるような感覚がしてから、ほんの一瞬だけ意識が途絶えた。

 

知らないはずなのに知っている。そんな不思議な匂いが鼻腔をくすぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サクラハリケーンが停車したのを肌で感じたことりは、恐る恐る目を開けてみた。

 

「えっ………」

 

その風景を見た瞬間、ことりは呆然と呟いた。呟く事しか出来なかった。

 

そこに広がっていたのは、一面に生い茂る木々だ。植物が木々に巻き付いて、つい先ほどまで雨でも降っていたのか特有の臭いが充満している。

「えっと………ここ、どこ………?」

 

ことりが無意識に言葉を漏らすのも仕方がない。何せ先ほどまで神田の町並みを法定速度無視で走っていたのに、いつの間にか森林にいるのだから。

 

幼い頃から神田に住んでいるのだから、このような森林がないのはことりは理解している。だからこその動揺だ。

 

そして、バイクを運転していた鎧武は変身を解いて、ことりを見やった。

 

「これ、タカトラさんとかユグドラシルの人には絶対内緒な。俺達アーマードライダーならともかく、一般人は立ち入り禁止なんだから」

 

コウタの言葉にことりは眉をひそめる。あのタカトラやユグドラシルの人間には秘密で、アーマードライダーなら辛うじて許される場所。

 

そのワードに、ことりはふと視線を目の前の木へと向ける。

 

より正確には、その木にぶら下がっている果実。

 

それはロックシードの原型であり、本来ことりの世界には存在しないヘルヘイム(禁断)の果実。

 

「へ、ヘルヘイムの森!?」

 

地球に隣接し、インベスの住まう世界『ヘルヘイムの森』。その存在は公にされていながらも誰も実際に目にした事がない幻の森とも言われていた世界に、ことりが今いる。

 

その事に流石の天然娘も、今までのようなのほほんとした雰囲気ではいられずに焦りを出していた。

 

「ど、どうして…………!?」

 

「外を走るよりヘルヘイムの森を突っ切った方が早いからな。ちょっと足場悪いし、野良インベスに襲われるかもしれないからフルスロットルで走るからけっこう揺れるかもしれないから、しっかり捕まってろよ」

 

ことりが尋ねたいのはどうやってヘルヘイムの森に入ったのか、なのだがコウタはこれからの事を呟く。その様子だとコウタはすでに何度もヘルヘイムの森には来た事があるようだが、人生初で完全に犯罪を現在進行形で犯していることりにとっては気が気ではない。

 

「ほら、行くぜ」

 

「う、うん…………」

 

今はヘルヘイムの森へどうやって来たのか、よりも飛行機の時間に間に合わせるのが先決である。

 

もう一度コウタにしがみつき、それを確認してからアクセルを回す。

 

2人を乗せたサクラハリケーンは進む。世界に隣接した同盟の森を。

 

 

 

 

 

 

 

それを冷めた瞳で見つめている少年がいた。

 

少年は無言でレモンエナジーロックシードを取り出し、開錠した。

 

 

『レモンエナジー』

 

 

頭上にレモンエナジーアーマーパーツが形成され、それを腰に装着してあるゲネシスドライバーへとはめ込みシーボルコンップレッサーを押し込む。

 

 

『ソーダ! レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイト!』

 

 

レモンエナジーアーマーパーツが頭上へと落下して、その身をアーマードライダーへと変身させる。

 

仮面に隠された冷たい瞳は2人を見すたまま、ゆっくりと手にしているソニックアローの狙いを定めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

それは本能による警鐘に近かった。

 

一瞬、コウタはブレーキをかけてサクラハリケーンを急停車させ、ことりの肩を抱くようにサクラハリケーンから飛び上がった。

 

ことりから驚きや批難、悲鳴、歓喜(歓喜?)の入りじまった声が飛び出すが、それもすべて爆音でかき消される。乗っていた愛車、サクラハリケーンが何かによって貫かれ破壊されたのだ。

 

雨でぬかるんだ地面に転がり、衣類が泥で汚れたりするがそれらに構っている暇はない。即座にコウタはことりの身体に手を回して強引に立ち上がらせると、さらにその場を離れるように走る。

 

まだ追撃は終わっていない。閃光が走り、確実に2人へと狙いを定めてきていた。

 

「っ、こっちだ!」

 

手を引くような形でことりと大きい木の裏に隠れて、閃光が飛んできた方向を見やる。続けざまに飛んでくる光は、矢だった。それも木に阻まれたのか攻撃が止む。

 

「い、一体何が…………」

 

突然の事で茫然とことりが呟く。アーマードライダーとして戦場にいたコウタならともかく、普通の女の子であることりがこの事態に思考が追いつけるはずもない。

 

ひとまず安心させようとことりの手を握り、コウタは木の影から僅かに顔を出して相手をうかがう。

 

その時、木を踏む音と共に声が響く。

 

「木に隠れても無駄だ。俺の矢は木ごと撃ち抜く」

 

「な…………っ!」

 

その声に、コウタはもちろんことりでさえ驚愕の表情を浮かべてしまう。

 

その声は戦いの最中で何度も聞き覚えがあり、とても頼りにしていた味方の声だったはずだ。

 

「なんで…………!」

 

「っ、コウタ君!」

 

ことりの制止を振り切り、コウタは木から飛び出す。

 

そこに立っていたのは、予想通りの戦士。マントを携え、本来なら存在しないはずのゲネシスドライバーを装着し、エナジーロックシードで変身をした侯爵。

 

「アーマードライダー………デューク!」

 

正体不明の正義の味方の姿に、コウタは低く呻く。襲ってきた矢も思えば何度も見た事があるソニックアローの矢ではないか。

 

「デューク、一体どういうつもりだよ!?」

 

「何故、ここに彼女がいる?」

 

コウタの問い掛けにデュークは答えず、木に隠れていることりに目を向けて言う。

 

その視線に言いようのない嫌な予感を覚えたコウタは、守るように立つ。

 

「お前には関係ないだろ」

 

「ここは一般人立ち入り禁止だ。アーマードライダーならともかく、彼女がここにいるのはかなりの問題がある」

 

指摘されたからことりがびくりと帯びてる気配がする。

 

デュークの狙いはことり。しかも、敵意に近い感情を向けている。それは今までにないくらい、コウタを焦らせた。

 

「ちょ、ちょっと訳ありなんだよ!」

 

「そういえば、今日からμ'sは合宿だったか。大方、寝坊か忘れ物かしたんだろう」

 

μ'sのホームページをチェックしてくれているのか。その事に嬉しさを覚えながらも図星の為に反論が出来ない。

 

その様子を見て、まるでわかっていたかのように嘆息する。

 

「図星か」

 

「し、仕方がないだろ! 早くしないと飛行機に乗り遅れちまうんだよ!」

 

「だったらちゃんとした公共機関か公道を使え。遅刻したその子が悪い」

 

正論過ぎて何も言えない。

 

ぐぬぬ、とコウタが唸っていると、ことりが観念したように木から出てくる。

 

「コウタ君、デュークさんの言う通りだよぉ………今からでも戻って電車で行こう?」

 

「ことり………」

 

「まぁ、それももう今さらだけどな」

 

言葉の瞬間、再びデュークがソニックアローを構える。その狙いは寸分の狂いもなくことりへと定めていた。

 

「っ、変身!」

 

 

『オレンジ!』

 

 

咄嗟にオレンジロックシードを取り出し、解錠して構えを取る暇もなく戦極ドライバーのドライブベイにセットしてスラッシュした。

 

 

『ロックオン。ソイヤッ!』

 

 

頭上にオレンジアーマーパーツが形成され、それを頭ではなく腕で掴み取ると、ほぼ同時に放たれたソニックアローの矢をそれで弾く。

 

身体がライドウェアに包まれて腕を伝っていくような形で頭に装着され、アーマーが展開した。

 

 

『オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

アーマーが展開し終わりアーマードライダー鎧武と再びなった瞬間、眼前に新たに放ったであろう矢が迫っていた。

 

それらを召喚した大橙丸で弾き飛ばし、視線をデュークから外さずにことりへ叫んだ。

 

「ことり、下がれ!」

 

「う、うん!」

 

ことりが頷いて離れていくのを気配で確認してから、鎧武はデュークと改めて敵意を持って対峙する。

 

理由はわからないがデュークの狙いがことりである以上、デュークを撃破してヘルヘイムの果実からロックビークルを引き当てて脱出するしかこの機を脱する方法しか思いつかなかった。

 

「っらぁ!」

 

気合いと共に大橙丸を振り抜きソニックアローと激突し、鎧武はデュークと肉薄する。

 

「何でことりを!?」

 

「普通の一般人ならいざ知らず、スクールアイドルである彼女がヘルヘイムの森に足を踏み入れるのは都合が悪いんだよ」

 

力任せにソニックアローではじかれ、鎧武の身体は吹き飛ぶ。それを追撃するような形でデュークは矢を放ち、迫ってくる攻撃は大橙丸と抜刀した無双セイバーで弾き落とす。

 

地面を滑るように着地した鎧武は、その隙にバレットスライドを引いて弾丸を装填。体勢を立て直したのと同時にデュークへムソウマズルを向け、ブライトリガーを引いた。

 

吐き出される弾丸に気付いたデュークは僅かに身を剃らして回避すると、駆け出してソニックアローを構えてノッキングドローワを引き絞る。

 

それに応じるかのように再びバレットスライドを引いて弾丸を再装填し、鎧武も同じく駆け出す。

 

走りながら矢と弾丸が飛び交い、互いの寸前を横切る。

 

激しい攻防。それを制したのは。

 

「っつぁ!?」

 

ソニックアローの矢が左肩に当たり、崩れる鎧武。

 

デュークはソニックアローを近接用に持ち替えて間合いを詰めようとしてくる。

 

痛みの中、それを確認した鎧武は即座に戦極ドライバーのロックシードを入れ替えた。

 

 

『パイン! ロックオン。ソイヤッ! パインアームズ! 粉砕デストロイ!!』

 

 

「パインパインにしてやるぜ!」

 

新たにパインアームズに換装した鎧武はパインアイアンを投擲する。不意打ちに近い形だったからかパインアイアンはデュークの胸部装甲に当たり、火花を散らす。

 

「っ、流石にやるな………だが」

 

パインアイアンを受けていたデュークはソニックアローで弾き、さらに蹴り飛ばす事で攻撃に利用してきた。

 

「マジかよ!?」

 

逆に不意打ちとなったパインアイアンを受けて、鎧武は火花を散らしながら吹き飛ぶ。

 

「っ、だったら………!」

 

 

『イチゴ!』

 

 

地面を転がりながら鎧武はイチゴロックシードを解錠し、パインアームズを果実モードにしてから間合いを詰めようと飛びかかってくるデュークに向けて飛ばした。

 

「がっ………!」

 

見事命中してデュークが倒れ込んでいる隙にイチゴロックシードを戦極ドライバーにはめ込んで立ち上がる。

 

 

『ロックオン』

 

 

「っつー………そのアームズの換装方法は卑怯だろ!」

 

「ゲネシスドライバーを使っているお前が言うな!」

 

 

『ソイヤッ!』

 

 

半チートコードを使っている相手に言われて頭に来たので反論しながらカッティングブレードをスラッシュする。ついでにと言わんばかりに一歩引いてわざとイチゴアームズを地面にバウンドさせると、いつかの時のようにデュークに向かって蹴り飛ばした。

 

「またかよっ!?」

 

ようやく立ち上がった所で再び似たような不規則な攻撃にデュークは倒れ込み、跳ね返ってきたイチゴアームズを被る。

 

 

『イチゴアームズ! シュシュっとスパーク!!』

 

 

イチゴアームズに換装した鎧武なイチゴクナイを両手に握り締め、よろよろと立ち上がったデュークへ投擲する。

 

その名のごとくイチゴをモチーフにしたクナイは、近接武器として以外にも爆弾としても機能するのだ。

 

直撃すれば有効なダメージとなる攻撃力だが、これはすでにオープンキャンパスの戦いでデュークには見せている。

 

案の定、投擲した2つのイチゴクナイはソニックアローの矢に貫かれて爆散した。

 

だが、それでいい。それだけでも目くらましの役目には充分だ。

 

「っらぁ!」

 

「何っ!?」

 

爆煙で視界を奪われていたのか、そのなかから現れた鎧武に対処出来ずイチゴクナイの連撃を受けるデューク。

 

以前、城之内がデュークを『対人戦をした事がない素人』と評した事があったが、なるほどそれは割と当たっているのかもしれない。

 

先ほどからデュークはこちらの不規則な攻撃には対処出来ていない。元々、戦い方も素人どころか喧嘩すらしたことが無いような感覚を見せており、最近になって多少は形にはなってきたようだが、やはり鎧武達以上に素人の域は出ていない。

 

ならば、単純なパワーで負けている鎧武に勝機があるとすれば、その点のみだ。

 

「オラァッ!」

 

「くそっ、厄介だなおい………!」

 

イチゴクナイの振り抜きをソニックアローで受け止めながら、2人のアーマードライダーが肉薄する。

 

「何でことりを狙うんだ! スクールアイドルって言ったってただの女の子だろうが!」

 

「そう、一般人であってもスクールアイドルでなければ問題なかった………スクールアイドル、特にμ'sのメンバーがヘルヘイムの森に足を踏み入れるのだけはダメなんだ」

 

好機を見出したからか、心に余裕が生まれた鎧武が斬撃と共に疑問をぶつける。しかし、デュークはそれを風のごとく受け流すと、間合いを取る為に後方へと飛び退いた。

 

「意味がわかんねぇよ!」

 

「理解なんかしなくていい。わかればいいのは………」

 

デュークは左手で鼻にあたる部分を擦り告げた。

 

「これからの彼女の運命(さだめ)は俺が決める」

 

瞬間。

 

鎧武の。否、コウタの思考が冷える。

 

友達の、仲間の、大切な人の未来を誰かに決められる。

 

「…………けんな」

 

小さく、感情が燃え上がる。冷えて止まっていたエンジンのごとく、”それ”留めを知らずにこみ上げてくる。

 

「ふざけんな………!」

 

がさり、と背後で音がする。心配になってきたのか結局、戦いが気になってしまってやって来てしまったことりだ。

 

それに構わず鎧武は叫んだ。

 

「ことりはただの普通の女の子だ。なんの特別でも、泣いて笑って………ただの女の子だ!」

 

いや、ことりだけではない。

 

穂乃果に海未。真姫、凛、花陽、にこ、希、絵里。

 

そして、ツバサ。

 

確かにみんな魅力的で、輝かしい光を放つ少女達だが。

 

決して特別ではない、ただの女の子だ。日々、努力を重ねてその対価としての輝きである事を知っているからこそ、特別扱いをするデュークが気に食わなかった。

 

いや、それ以前に。

 

「誰かの未来は、そいつが決めるもんだ………それをお前が決めるなんて…………」

 

ぎりりっ、と拳を強く握りしめる。

 

「絶対に許さねぇ!!」

 

森に、世界に言葉が響く。

 

それを受けたデュークは、一瞬だけ敵意を緩めた。

 

「………………アンタもやっぱ、『鎧武』だよな」

 

その言葉には優しさが込められており、鎧武は思わず困惑してしまう。

 

「何っ……………!?」

 

「気にするな。アンタが知る必要はない…………」

 

デュークが告げる。

 

模造品(レプリカ)であるアンタはな」

 

その言葉は、無双セイバーを引き抜いた鎧武の思考が止まり、激痛が走る。

 

「な………ん……」

 

それは、聞いてはならない言葉だった。変身しているコウタの額に冷や汗が浮かび上がり、呼吸が苦しくなる。まるで知ってはならない禁断の真実を突き付けられたかのような感覚を覚える。

 

再び戦う姿勢を見せる鎧武だが、そこに先ほどのような余裕は残っていなかった。

 

「んじゃ、第二ラウンドと行きますか」

 

逆に余裕が出てきたデュークの軽口を合図に、鎧武はデュークへと斬りかかる。

 

ソニックアローと無双セイバーがぶつかり火花が散った。しかし、その度に苦悶の声を漏らすのはデュークではなく鎧武だ。

 

「っあ!」

 

「甘い甘い」

 

大振りとなった鎧武の斬撃を避けてデュークはソニックアローを鎧武に突き付けて、ほぼ0距離から矢を放った。

 

「がぁぁぁっ!」

 

「コウタ君!」

 

今まで以上に火花が散り、鎧武の身体がことりの元まで吹き飛んでしまう。

 

ことりの悲痛な叫びが轟いて駆け寄ってくるが、それに構わずデュークはレモンエナジーロックシードをゲネシスドライバーから外してソニックアローにセットする。

 

 

『ロックオン』

 

 

「っ、やめろ………!」

 

「悪いけど、これが俺の役めでね」

 

待機音が響きエネルギーが集まるソニックアローをことりへ向ける。

 

しかし、ことりは逃げるどころか鎧武を守ろうと覆いかぶさった。

 

そして、

 

 

『レモンエナジー!』

 

 

無情にも閃光は放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまでもやって来ない痛みにことりは顔を上げて、息を呑む。

 

 

「っ、あぁ………」

 

「コウタ………君………………?」

 

庇っていたはずの鎧武がことりを守るように立ちふさがり、両手を広げていた。背中で矢を受けたのかアーマー部分が火花を散らしており、ことりがみた事のないほどのダメージを受けているのは一目瞭然だった。

 

「こと……逃げ……」

 

 

『レモンエナジー!』

 

 

再度響く、無情の声。

 

そして、鎧武の向こう側に見えるデュークが再び、一寸の躊躇いもなくソニックアローから矢を放つ。

 

「っ……!」

 

それを気配で察したのか鎧武はことりを押して吹き飛ばす。

 

「コウタ君!!」

 

ことりの絶叫は爆音によってかき消された。鎧武の姿が爆煙に飲まれ、火炎が舞う。

 

そして、ついに鎧武は事切れた人形のよつに膝を着き、変身が解けながら倒れ込んだ。

 

「コウタ……君………」

 

絶望に支配されていく中、ことりは膝を着きながらも倒れたコウタへと手を伸ばす。信じられない、という現実逃避よりも守らなくては、という想いが先に動いた。

 

「残念だけど、これが貴女の運命 (さだめ)だ」

 

 

『クトゥ#*О☆』

 

 

壊れたラジオのような機械音声の後、デュークがソニックアローをかまえるのが見える。

 

だが、見えた所でことりにはどうする事も出来ない。茫然自失の状態で、少女を守るものは何も無い。

 

そして、ソレは放たれた。

 

痛みは感じない。自分の身体を何かが貫いた感覚もない。

 

ただ、自分の中の大切な何かが吸い取られるような気がした。

 

世界が暗闇に沈む。大好きで大切な少年の笑顔がヒビ割れて砕けていく。

 

そして、南ことりの輝きは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れるコウタとことりを睥睨しながら、アキトは右手に握る宝石に目を落とした。

 

灰色のハートの形をした宝石は、暗い色ながらも強い輝きを放っている。まるで生きているかのように。

 

ぱきり、と背後で枝を踏む音がする。それはコウタとことりがヘルヘイムの森に入ってきてからずっと興味深そうに観察していた性悪な住人であった。

 

「……………相変わらず素敵な趣味だな。覗きなんてな」

 

振り向かずに声を掛けると、ぐくもった声が響いた。

 

「アゴアゴ、『アウ』ション『シェデョシェ』カジュビリェジシャボリャビリェブリョジャロ……」

 

吐き出されたのは人類が使う言語のいずれにも属さないものだった。

 

しかし、それを聞いてもアキトは気にした様子もなく喋り続ける。

 

「それは面倒な誤解を生むからやめれ」

 

そう告げてアキトは右手を強く握り締め、宝石を砕いた。それを少量、倒れているコウタとことりに振り与える。すると、コウタのボロホロだった怪我が癒えて衣類も元通りとなる。ことりも動揺で泥まみれだった可愛らしい服は、元の清潔さを取り戻していた。

 

それを確認したアキトは、今度は破壊したコウタのサクラハリケーンとことりの荷物の元まで歩き、同じ量ひどのの宝石を振りまく。

 

すると、炎上していたサクラハリケーンとことりの荷物が光を放ち、光が収まると元通りになっているサクラハリケーンと荷物があった。

 

「ディショジュシュファ『ボリャグルンショデュジャーム』カジャショデェジデェミョジュジガショジュジョファショエ…………?」

 

「仕方ないだろ。今回の事態は本当に予想外だったんだ……2人に合宿を抜けられても困るし、かと言って森も鎮めなきゃならない。管理人なんて損な仕事だ」

 

「ショムベリャフォフォンデェジエフォエシュディフェ……」

 

「喧しい」

 

カラカラと笑いに似た声を吐き出す主に思わずアキトは批難の目を向けた。

 

人に近い人ではない何か、人間型のインベス。言葉にするとしたらそれだ。

 

全身を緑の体躯に包み、セイリュウインベスに似た紋様の軽鎧を装着している。それは長い戦斧から垂れ下げている6つのヘルヘイムの果実は、錫杖のつもりなのだろうか。もっとも、その事について言及した所で明確な答えは返ってこないだろうし、アキト自身もそれほど興味もない。

 

アキトは手に残った宝石を乱雑にばら撒き、手に残っている粉状の宝石も叩き落として溜息をついてその場にしゃがみ込んだ。

 

「だぁー………もう余計な手間増やさないでくれよなぁ。μ'sを森に入れるとかさぁ………」

 

「デェショジョオブリョミョエ。ショビリェロダビリェカデェボリャフォエファファンショボリャ」

 

そうだけどさぁ、とアキトが若干不貞腐れたように口と尖らせると、ソレはさっとヘルヘイムの果実を差し出してくる。まるで「まぁ、食え」とでも言っているようであるが、当然食べれば結果どうなるかなど火を見るよりも明らかなので食べはしない。

 

「というかさ、あの人強過ぎ! いや確かに俺が弱いってのもあるけどさ、何あの強さ! コウタさんの戦極ドライバーって研究用のにカッティングブレードを無理やりつけた粗悪品だろ!? 本来なら戦闘用じゃないはずなんだけど!」

 

「ダビリェション『ショミムボリャエファンー』ジャエウダムデュオンエファン」

 

「ライダー怖ぇぇ…………」

 

ふぅ、とアキトはもう一度溜息をついてから立ち上がる。ぶつくさと文句を垂れている場合ではない。飛行機の出発時間まで残り時間は少ないのだから。

 

「とりあえず、手を貸せ。見物料だ」

 

「ゴビリェゴビリェ、レジャフンショエファオボリャエゴジュファン」

 

人じゃねぇだろ、という突っ込みを無視してソレは楽しげに戦斧でぬかるんだ地面を叩いた。

 

それは錫杖のように、シャンと音を立てて森に広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………さん、コウタさん!」

 

「……………っ!」

 

コウタが目を開けると、そこにいたのは呆れた顔をしたミツザネであった。

 

ぼんやりとした思考で周りを見回すと、カイトやタカトラが同じく呆れたように息を吐いているのが見える。

 

「ミッチ………?」

 

「寝ぼけてるんですか? 早くしないと飛行機出ちゃいますよ」

 

ミツザネの事にコウタは目を擦りながら伸びをして思い出す。

 

ことりが何かを忘れたらしく、家に取りに戻った矢先、電車が人身事故で運転見合わせとなったのだ。このまでは確実に飛行機の出発の時間に間に合わなくなると踏んでサクラハリケーンでことりを迎えに行き、なんとか飛行機出発ギリギリの時間に滑り込んだ2人をまっていたのは、計器不調による出発延期という結果であった。

 

結果的に飛行機に乗り遅れる、という事態は避けれたのだから安堵するべきなのだが、ならばあの警察に補導されないか一歩手前のスピードで駆けたドキドキは何だったのか、と毒づきたいコウタであるが、結果オーライなのだからこれ以上は何も言わなかった。

 

そして、運転の疲れもあったのか飛行機の出発が決まるまで椅子でぼぅっとしめいたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。

 

「ふぁぁー………」

 

「わぁ、大きな欠伸 」

 

「これから合宿に行くというのに、昨日寝てないんですか?」

 

コウタの眠たげな表情を見て、穂乃果と海未が物珍しそうに覗き込んでくる。

 

別段、昨日寝てない分ではない。むしろ遅刻しまいと早めにベッドに入り熟睡出来たほどだ。

 

この疲労感はアーマードライダーに変身した時のように似ているが、変身した覚えはない。

 

「ごめんね、コウタ君。私が忘れ物をしなければ………」

 

「いや、別に間に合ったからそれはいいんだけど………」

 

「そう言えば、ことりちゃんと忘れ物って?」

 

花陽が思い出したようにことりに尋ねると、にこっと笑ってそれを取り出した。

 

「これ!」

 

「………………枕?」

 

掲げた物の名称をぽつりと呟いたにこに、うんと頷いて枕を抱き締めることり。

 

「枕が変わっちゃうとことり、寝れなくて………あれ?」

 

そこでようやく、周りの温度……主に男性陣が無表情になっている事に気付いたらしく言葉を止める。

 

「……………ことり」

 

最初に口を開いたのはカイトであった。

 

「向こうについたらその鶏冠を引っこ抜く」

 

「ぴぃっ!?」

 

「ことりさん、この合宿が終わったら兄さんから5倍の課題をプレゼントするように言っておきます。夏休みが終わるまでに終わらせておいてくださいね」

 

「ぴぃぃぃっ」

 

「ことり、流石にそれは認められないわ………」

 

「え、絵里ちゃんまで!? ほ、穂乃果ちゃぁん…………」

 

「ごめんね、ことりちゃん。流石にフォロー出来ないよ…………」

 

ことりを一斉に責めているのを眺めていると、隣のベンチで同じように座っているアキトがぽつりと呟いた。

 

「まっ、可愛いが正義って言っても限度があるって事だな」

 

「アキト、何だか疲れてるにゃ」

 

相変わらず場所も弁えずにイチャコラをする2人などを見て、ミツザネが苦笑する。

 

「さて、皆さん。そろそろ出発の時間です、兄さんも待っているでしょうし行きましょう」

 

パンパンと手を叩きて注目させて、ミツザネは絵里を見やる。それだけで察したのか微笑むと、生徒会長は一同に言い聞かせるように言った。

 

「はい、ではこれからμ'sの夏合宿に向かいます。海外という事もあって不慣れな事や想定外の事態の事が起きるでしょう。だから、絶対に個人行動は慎んで、必ず集団行動を心がけること。いいわね?」

 

「はい!」

 

絵里の言葉に元気よく返事をするμ's。流石は生徒会長、生徒の見本となるべく存在である。

 

ふと、そこで絵里は悪戯を思いついたような顔をして、にこを見やった。

 

「では、ここで部長の矢澤さんから一言」

 

「えぇっ!?」

 

突然の振りだったからかにこが驚きの声を上げる。一同がにやにやと注目する中、にこは数瞬悩んだのちに元気よく腕を掲げた。

 

「しゅ、しゅっぱーつ!」

 

……………………………………。

 

何とも言えない空気が漂い、凛がぽつり。

 

「普通過ぎるにゃ」

 

「考えてなかったのよ! というか、重要な事はほとんど絵里が言っちゃったじゃない!」

 

わーわーと再び騒ぎ出す9人の女神を見て、普段馬鹿キャラであるコウタは思う。

 

この合宿、大丈夫なのかなぁ。

 

それはきっと、誰にも答えられない問答だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛葉コウタが所有するロックシード

 

 

・オレンジ

・パイン

・イチゴ

・マツボックリ

・サクラハリケーン

 

 

次回のラブ鎧武!は…………

 

 

 

「所詮、不可能なのだ。人類とインベスが共存するなんてな」

 

研究施設を破壊する緋いアーマードライダー。その目的とは………

 

 

 

「お前………それ、お姉さんの……」

 

「あいつらには黙っていろ」

 

カイトの姉の存在。μ'sと出くわしたら大変なことに…………?

 

 

 

「他人の恋路を邪魔した俺に、自分の恋路を進む資格なんかねぇよ………」

 

1人の少女の想いを、未来を破壊した者が背負わなければならない罪。

 

 

 

 

浜辺に立つ少女。

 

茜色に染まる世界で、彼女の瞳に映る『赤』とは。

 

 

 

次回、ラブ鎧武!

 

25話:緋の鬼人 ~茜色に染まる~

 

 

 

 

 




さぁ、受けて立とうじゃないか!(オールライダーキックを受け止める体勢)

どうも、こんにちわ。グラニです。

劇場上映が終わる所も出てきて、一旦の落ち着きを見せてきましたね。BD発売情報も発表さらて、ついに大きな翼となった小鳥達旅立っていきました。

それでもラブ鎧武!達のステージはまだまだこれからだ!



さて、前々から予告していた鎧武VSデューク。その勝敗は見ての通り、デュークの勝利でした。元々の性能差に加えて心理フェイズでの揺さぶりが勝因だったと思います。

これでもし、ジンバーだったらデュークに勝ち目はなかったでしょう。それほどアキトは弱いのです。

そしてことりに牙を剥くデューク。えぇ、遠慮なく撃ち抜きましたなぁ………一体彼女から何を抜き取ったというのか。

ついに登場した森の住人。もはやこれが何なのか………鎧武好きなら説明は不要でしょう。言語に関しては翻訳されても問題ないレベルの内容でしたが、こちらで意訳を乗せるのも味気ないと思ってあえて言語だけにしました。
翻訳サイトがありますので、どうぞそちらを使用してください。

さてさて、次回は海外! しかし、ちょっと特別な海外合宿に…………?

と、その前にことりたその誕生日回を挟みます。やっぱりなかなか更新出来ない本編ー。


感想、評価随時受け付けておりますのでよろしくお願いします!

Twitterやってます
話しのネタバレなどやってるかもしれませんので、良ければどうぞ!

https://twitter.com/seedhack1231?s=09

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