ラブ鎧武!   作:グラニ

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ロックシード

異世界の住人、インベスを召喚するのに用いる南京錠型のアイテムであり、大企業ユグドラシルがすべての管理をしている。

ロックシード自体にランクがあり、高ランクほどアーマードライダーの性能や召喚するインベスが強力になるがその制御も厳しくなる。

ロックシード自体は一般販売されているが、危害を加えるインベスを召喚出来るエナジーロックシードを違法に売買する錠前ディーラーという闇の商人たちがいる。




3話:アーマードライダー ~凛の罪、龍の咆哮と侯爵の舞い~

前回までのラブ鎧武!は………

 

 

アーマードライダー鎧武、斬月の活躍によって音ノ木坂学園の危機は回避され、再び廃校阻止のために練習に励むμ'sのメンバーたち。

 

都議会議員の汚職もスクールアイドルを取り上げるダンスダンスホットラインによって発覚し、無事に解決された。

 

練習中、少し気になったチーム鎧武という言葉を検索すると、コウタ、ミツザネ、カイトの3人はそれなりにダンスで名の通った有名人だと知り、穂乃果は3人にコーチを頼み込む。

 

カイトにこうまでして廃校を阻止しようとする理由、踊る理由を聞かれ強くこの学校が好きだから、という穂乃果。

 

その強い覚悟にカイトは強者の影を見て、協力する前条件として1週間後のオープンキャンパスくらいは自分たちでどうにかしろと言うのだった。

 

μ'sのメンバーは目の前の事に集中するために、さらに闘志を燃やして練習に打ち込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

男子達が転入してきて3日が経った。女子校の生徒とはいえ意外にも順応は早く、今のところ問題なく日々は過ぎていった。

「はぁー、今日も疲れたにゃー」

 

練習の帰り、精一杯叫んだのはμ's1年生の星空凛だ。ショートカットのオレンジ色の髪が小刻みに揺れ、練習後だというのに活発そうな姿は彼女の性格をありのままに現していた。

 

その凛に苦笑を浮かべるのは幼い頃からの親友でもある小泉花陽だ。大人しそうな少女は眼鏡をした、一軒家したら文学少女に見える風貌だ。しかし、その中身は優れた歌唱力と卓越したアイドルオタクという個性を兼ね備えているのだ。

 

「アンタ、よくそんな元気残ってるわね」

 

対して疲労感を隠しもせずに項垂れているのは西木野真姫だ。μ'sの作曲を担当しており、つり目が特徴的な秀才である。

 

これがμ'sの1年生チーム。先輩後輩を無くそうとしても学年で行動するのは自然なものである。

 

「凄いですね。傍から見てても結構な練習量だったのに」

 

そして、転入してからはこのメンバーに呉島ミツザネが加わるのが定番になっていた。

 

中学生にも見えるミツザネは、元々チーム鎧武というダンスを踊る若者の集団、ビートライダーズの一員だった。それゆえにダンスという種目の練習のつらさは身に染みているのだが、凛の体力にはミツザネでさえ驚かされるほどだ。実際、今日の練習はミツザネも見ていたのだが、中でも凛の動きは郡を抜いて元気に溢れていた。

 

「でも、元気それ即ちパフォーマンスに繋がる訳じゃないですからね?」

 

「うぐっ!? ミッチ、手厳しいにゃー」

 

練習中にも言われた事を再び言われ、凛はよよよと泣き崩れるマネをする。

 

ミツザネが見る限り、確かに凛は元気有り余ったような動きをするがその他の繊細な動きが荒い。よく言えば天真爛漫。悪く言ってしまえば子供っぽい。それが凛の現段階の評価だ。

 

しかし、それらを含めてもμ'sのダンスの完成度は日々高くなっており、まさかミツザネとコウタが少しアドバイスをしただけでここまでになるとは。

 

もっとも、それを言うと付け上がる者が何名かいるので敢えて言わないが。

 

「あ、あのっ……!」

 

道路脇を歩いていた4人は声を掛けられて振り向く。

 

そこにいたのは同い年くらいの女子校生が2人が緊張した顔で立っていた。

 

音ノ木坂学院ではないが見た事ある制服なので、近隣の学校に通う生徒なのだろう。

 

「失礼ですが、μ'sの皆さんですよね?」

 

「え、えぇ」

 

真姫が頷くと、2人はぱぁっと顔を明るくさせた。

 

「わ、私達μ'sのファンなんです! よ、よかったらサイン下さい!」

 

「ヴェェェッ!?」

 

驚きのあまり変な声を上げる真姫。以前にも同じような事を体験した真姫は2度目があるとは思っていなかったようだ。

 

差し出された色紙に慣れない感じでサインしていく3人。

 

それを少し離れた所から見ているミツザネは、ふと顔を上げる。

 

どこかしらから視線を感じる。人の往来のある場所でサインを書いたりしてたら目立つのは当たり前だが、それとは異なったような気がしたのだ。

 

しかし、周りに人影はなく、もうその違和感もない。

 

何だろうと首を傾げるミツザネだが、どうしようもないので3人に目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、スクールアイドルのないライダー戦国時代の世界ならば仲間も裏切り敵になっていたかもしれないミツザネだが、これは綺麗なミツザネ君のお話でもある。

 

そんな綺麗なミツザネ君の勘は当たっており、ビルの非常階段から彼らを撮影している影があった。

 

ミツザネと同じくらいの年頃の少年である。制服ではなく普段着という格好で、首から緑と白が入り交じったようなスカーフを巻いて下げており、構えている青い二眼レフカメラを覗き込んでいる。

 

そして、その少年のベルトからレモンの意匠が施されたエナジーロックシードが吊り下げられていた。

 

 

 

 

 

 

##########

 

 

 

 

 

 

 

あまりファンなどに慣れていないのか、たった2人だけを相手しただけというのにμ'sの3人はぐったりとしていた。

 

「はぁ……まさかこんなサインを求められるようになるなんてね」

 

「有名になるとは、そういう事ですよ」

 

項垂れる真姫にそう言って、ミツザネは苦笑した。ミツザネもビートライダーズ時代には追っかけファンのようなものが出来て、それらを撒くために苦労したものだ。

 

その時、ミツザネは今歩いている通りにラーメン屋がある事に気付いた。

 

「せっかくだし、ラーメン食べて行きませんか? 凛さん、ラーメン好きですよね?」

 

「そういえば、ミツザネ達が来て3日間毎日ラーメン屋寄ってたしね。いいんじゃないかしら」

 

ミツザネの提案に真姫は頷く。

 

この通りの先に見えるらーめんの暖簾がある店は、この3日間行った事のない店であり、排気口からラーメンのいい匂いが漂ってきた。

 

店前に立って看板をみあげると、らーめん仁郎という名がある。

 

「美味しそうじゃない。寄って行きましょ………」

 

真姫が凛を見やると、どういう訳か沈んだ表情をしていた。その隣にいる花陽もどこか俯き気である。

 

真姫とミツザネは思わず顔を見合わせる。まだ知り合って間もないミツザネにさえわかるほど、凛のラーメン好きは強烈だ。言う事かいて「ラーメン食べたいにゃー」と授業中にすら呟く姿は、もはやラーメン好きを通り越してラーメン中毒だ。

 

なのにこの落ち込みようは真姫も初めてなので、どう対応したらいいのかわからないようだった。

 

「どうしたの? らしくないじゃない」

 

「あんまり美味しくないないんですか?」

 

心配のあまり真姫とミツザネが尋ねるも、反応は薄い。

 

「ほぉ………ウチのラーメンがまずいだと?」

 

後ろから声を掛けられたため振り向くと、ミツザネと真姫の表情が引き攣った。

 

そこにいたのはラーメン屋の店主らしい男性が立っており、怒りの形相をしていたからだ。黒いTシャツにスウェット姿という若々しい外見とは裏腹に頑強な顔つきはそれなりにいった男性だ。自分の店前で店の悪口を言うというのは誰がどう見ても喧嘩を売っているとしか思えないものだ。

 

「い、いやそういう訳じゃ…………」

 

「上等じゃねぇか。おい、ちょっと面貸せ。まずいかどかその舌で……………」

 

「お、おじさん!」

 

ようやく俯いていた凛が顔を上げて仲裁に入ると、店主は驚いた顔をした。

 

「り、凛ちゃんじゃねぇか!? それにかよちんもか!」

 

「お、お久しぶりです」

 

凛と花陽がお辞儀をすると、怖い顔からうって変って柔和な顔になる。

 

「大きくなったなぁ! それに偉い別嬪さんになって…………おう、腹減ってんだろ。そこの坊主にもウチのラーメンの美味さを知らしめてやらなければならねぇからな。入った入った」

 

そう言ってミツザネを引き摺るようにして店主は4人を中に案内する。カウンターに座った4人はひとまずメニュー表を見やる。表記されている料理はどこにでもあるようなものばかりで、ミツザネと真姫はありきたりな醤油ラーメンを注文。

 

「凛ちゃんとかよちんはいつものでいいかな?」

 

「え、えぇ」

 

「は、はい。お願いしますにゃー」

 

やはり親しい関係らしく、店主は慣れた動きでラーメンを作り始める。

 

落ち着くために水を1飲みして、ミツザネは凛を見やった。

 

「あの、このお店のことは知ってたんですか?」

 

「えっと………その…………」

 

「私達が小さい時に遊んでた友達の実家なの。中学校は別々に進学して、しばらくは遊んだりしてたんだけど…………」

 

答えたのは凛ではなく、花陽だった。フォローしたというのにも驚きだが、ここまでうじうじしている凛が何気に衝撃的である。元気が売りといってもいい凛にまったく覇気がないのだ。

 

その時、ガラガラと入口が開かれ、1人の少年が入って来た。ミツザネ達と同じくらいの年で、頭に被っている緑と白が入り混じったバンダナを取り右手に持っていた出前箱を掲げた。

 

「行ってきたぞ、親父。あと、帰りに能村さん宅から醤油ラーメン2杯の出前頼まれた」

 

「おう、わかったぜアキト。けどな、今日は凛ちゃんとかよちんが来てくれてるぜ」

 

その言葉に少年は瞠目し、ギギギとロボットのような動きで顔を上げる。そして、凛と花陽の姿を認めて改めて驚いた顔をする。そして、次に真姫、ミツザネへと目を動かし、決意したように口を開いた。

 

「そこのアンタ…………」

 

「えっ、僕?」

 

自分を指さすミツザネに頷き、真剣な顔で言う。

 

「三股かけるにしてもかよちんはともかく凛はやめておけ。猫アレルギーのくせに猫のマネ事なんかする痛いまな板娘だz…………」

 

瞬間、テーブルにあったメニュー立てが投げられ、少年の顔面に命中。回避も取れなかった彼はそのまま後ろへと倒れこんだ。

 

投げた凛はというと、フーッフーッと猫のように息を荒くして顔を真っ赤にしていた。さきほどの落ち込みようが嘘のようであるが、それほどまでに怒っているというのも珍しいものであった。

 

「な、なんで凛がぺちゃぱいだってわかるにゃーっ!? 証拠あるの!? 証拠!」

 

起き上がった少年はくわりとメニュー立てを取り、テンションに任せて激昂した。

 

「んなモン傍から見りゃわかんだろ! どう考えたってそっちの子の方が大きいじゃねぇか!」

 

「にゃーっ!!」

 

立ち上がった凛は少年の頬を掴み引っ張り、少年も反撃する。

 

「にゃにゃにゃにゃにゃ…………!」

 

「わふぅーっ!」

 

まさしく猫と犬の抗争。そんな言葉を頭に思い浮かべながらミツザネは花陽を見やる。

 

「で、彼は?」

 

「えっと、ここの息子さんで私達の幼馴染の啼臥アキト君。ご覧の通り、凛ちゃんとは仲が悪いというか…………」

 

「悪い? なんかイイ感じに見えるけど…………そもそも、何であんなやり取り出来るのにここを見て沈んでた訳? 昔付き合ってたけど別れたとか?」

 

真姫の発言に互いを掴み合っていた凛とアキトは真姫達を見て、次に相手を見てばっと離れた。

 

アキトはやれやれといった感じなのだが、凛は顔を赤くしつつも先程のテンションに逆戻りしたようだ。

 

そんな猫娘に、犬男は溜息を吐く。

 

「せっかく人が気を使って昔みたいにしてやったのに………やらかしたのは俺だけどな」

 

「……!」

 

俯きながらしまったと目を見開く凛の横を通り過ぎ、桜の花びらが型どられたロックシードをカウンターに置き、今度は薔薇のロックシードを手にする。

 

起動する事によりバイクになるロックビークルだ。これは免許がなくとも未成年であっても運転出来るが、ユグドラシルの適正試験と月1の講習を義務付けられているものだ。

 

「次の配達の準備出来るまで部屋にいるから」

 

「あっ、おい………」

 

店主の制止を無視してアキトは店奥へと引っ込んで姿を消してしまう。

 

それはまるで腫れ物を触るかのような感じで、事情が飲み込めないミツザネと真姫は何度目かわからない困った顔をしながら顔を見合わせる。

 

「ご、ごめんね。2人とも……」

 

「何で花陽が謝るの? 何と言うか問題があるのは凛とあの子であって、花陽がそこまで気にする必要はないと思うけど」

 

先程からはっきりとしない凛とフォローする花陽。珍しいといえば珍しいが、ほぼ置いてけぼりなこの状況が真姫には我慢ならなかった。

 

説明してくれてもいいんじゃない? という視線を真姫が送るが、花陽はどうしたらいいかわかないといった感じで視線を逸らす。

 

「………あれは、アキトとまだ10歳にならねぇくらいだったかな」

 

語り出したのは店主だった。凛の肩が一瞬だけ震えたが何も言わないということは、それを顕にする覚悟は出来ているようだ。

 

「あれはクリスマスだったか……偉く寒い日にな。お使いに出てたアキトが凛ちゃんとかよちんと一緒に子猫5匹と親猫を連れてきたんだ。寒さで弱っていたんだろうな、親猫は事切れてて、子猫のうち2匹は目が開かない状態だった」

 

その6匹の子猫を抱えて、3人はラーメン仁郎に駆け込んできた。一番近い所が2人の家より近くで、事情を聞いたアキトは急いで2人を連れてラーメン仁郎へ戻り、父親に子猫を助けてと懇願した。

 

着いた時点で子猫達は衰弱しており、親猫の亡骸を抱いて凛はわんわんと泣きながらアキトに頼み込んだのだ。

 

お願い。子猫ちゃん達を助けて……!

 

その懇願にアキトは絶対に助けると誓ったのだが、結局助けられたのはうち3匹。目の開かなかった2匹はすぐに死んでしまったのだという。

 

「………その3匹はかよちんの親戚の所で育てられる事になったんだ」

 

「何で……? 2人の家で………」

 

そこまで言いかけて、真姫は先程の言葉を思い出す。

 

「凛ちゃん、その一件で猫アレルギーだって発覚したの。まぁ、それは関係ないんだけど………」

 

「…………凛ね。猫さんが死んだつまて聞いた時、アキトに酷い事言っちゃったの」

 

 

 

どうして助けてくれなかったの!? 助けてくれるって言ったじゃない! 嘘つき……子猫さんじゃなくてアキトが死んじゃえばばよかったのに!!

 

 

 

吐き出された言葉は、凛から出たものとは思えないほどのものでミツザネも真姫もこれ以上にないくらい驚愕した。

凛はその時の事を思い出しているのか、目に一杯の涙を溜め込んでいた。

 

「酷いよね……アキトも、おじさんも子猫ちゃんを助けようと必死になってくれたのに……おじさん、あの時酷い事言ってごめんなさい………」

 

「いいって事よ。あの時、助けてやれなかったのは事実だからなぁ」

 

頭を下げる凛に笑いかけながら優しい手つきでラーメンを作り、店主はただなぁと遠い日を見るように顔を上げた。

 

「あれからアキトは笑わなくなっちまった。表面上は笑っていても、決して心は笑っていないんだ」

 

店主は凛を見やる。その瞳は、まるで我が子を見守る親のものだ。

 

「なぁ、凛ちゃん。厚かましいかもしれないんだがな、もしあいつを思ってくれるなら、また昔みたいにしてやってくれねぇか……そして、ずっと見守ってやって欲しいんだ。あいつが無茶をしないように、って」

 

完成したラーメンをカウンターに並べ、店主は笑う。

 

「さっ、冷めないうちに食べてくれや。辛気臭ぇのはここまでだ。食事の時間には天使が舞い降りるんだからな」

 

「いただきます」

 

差し出されたラーメンを貰い、真っ先に食べ始めたのはミツザネだ。続いて真姫、花陽も食べる。

 

そして、凛も受け取り食べ始めると、頬を涙が伝った。

 

「……かよちん」

 

涙を拭う事なく、凛は親友に言った。

 

「あの頃と変わらない、美味しいね」

 

「……うん」

 

「…………戻れるかな。あの頃に」

 

「戻れるよ。だって、たった今なれてたんだもん」

 

親友の言葉に頷く凛。

 

しばらく、ラーメンを啜る音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、お待たせ」

 

店前で待っていた3人は凛が戻ってきたのを見て歩き出した。

 

「話せた?」

 

「ううん。なんか寝ちゃってたから、止めといた。ミッチと真姫ちゃんもごめんね、変な事に付き合わせちゃって」

 

そう言って凛はミツザネと真姫に頭を下げる。

 

「気にしないで下さい。必要な事でしょうから」

 

「それにしても、凛のしおらしい場面なんて初めて見たわ」

真姫のおちょくるような言葉に、凛はむっとする。

 

「それじゃあ、普段の凛が女の子らしくないって事じゃないかにゃー」

 

「あら、そこにいるのは穂乃果の……」

 

今日は後ろから声を掛けられやすい日なのだろうか。4人が振り向くとそこにいたのは妙齢の女性だった。

 

主婦らしく自分と付き添いのインベスに買い物袋を持たせた女性は、柔和な笑みを浮かべている。しかも、それはどこかの誰かに似ているような気がする。

 

ミツザネと真姫は初対面だったが、面識のある凛と花陽は挨拶を交わす。

 

「穂乃果ちゃんのお母さん!?」

 

「穂乃果さんの!?」

 

「お母さん!?」

 

「若っ!?」

 

凛の言葉にミツザネと真姫がコントよろしくの反応を見せると、穂乃果の母親は愉快そうに笑った。

 

「はい、穂乃果の母です。いつも娘がお世話になってます」

 

にっこりと笑うその表情は、確かに高坂穂乃果を沸騰させるもだった。

 

穂乃果の母親はふとミツザネを見やって何かを思い出したように言った。

 

「もしかして、君がコウタ君の言っていたミッチ君?」

 

「ミッチはあだ名で、呉島ミツザネです。コウタさんは前にいた所で先輩でした」

 

「そっかそっか。穂乃果だけでなく3人にも彼氏が出来たかー。良かったわねぇ」

 

勝手に自己完結して満足する穂乃果の母親に、ミツザネは苦笑を浮かべる。凛はどこか複雑そうな顔をし、花陽は顔を真っ赤にして「そんな事……」と照れて、真姫は呆れたように肩を竦める

 

「それはそうと、コウタ君の後輩ならミッチ君もアーマードライダーなんでしょう? 行かなくていいの?」

 

「どこにですか?」

 

ミツザネが首を傾げて尋ねると、母親は爆弾発言をした。

 

「街中でインベスが暴れているって海未ちゃんから連絡入って、コウタ君ったら穂乃果と一緒に出ていったわよ?」

 

ミツザネは即座に携帯を確認する。するとメールに電話着信履歴が何件も入っていた。手早く操作してメールを開いた。

 

表通りでインベスが暴れてるらしい。早く来てくれ。

 

走りながら打ったらしく脱字があったが、要約するとこんな感じである。

 

ミツザネは歯噛みして花陽へ振り向く。

 

「表通りってどこですか!?」

 

「え、えっと……」

 

「言葉で説明するより案内した方が早いにゃ! こっち!」

 

狼狽える花陽よりも先に、凛が駆け出した。そのスピードは流石μ's1の運動神経を持つだけはある、大した速さだ。

 

ミツザネは花陽に確認するよりも先に凛の後を追うように走る。後ろで穂乃果の母親が「頑張ってねー」と呑気な事を言って、花陽と真姫も遅れて駆け出したようだ。

 

凛は後ろを考えずに駆けているためかミツザネでさえ見失わないように走るのが精一杯だ。

 

やがて、悲鳴が上がる箇所を見つけて、そこへダッシュする。

 

やけに開けた場所に出て、そこでは逃げ回っている人々にインベスが襲い掛かり、アーマードライダー鎧武が大橙丸を振り回しているのが見えた。

 

しかし、インベスの中に空中を飛ぶ変異種がいたため、近接武器備えた鎧武は苦戦しているようだ。

 

「あっ、ミッチ!」

 

ミツザネ達の姿を発見した高坂穂乃果は、人々の避難誘導があらかた終わったからかこちらへと駆け付けてきた。

 

その後ろには幼馴染みの園田海未と南ことりの姿もある。恐怖こそ浮かんではいないが、焦りが目に見えて見えた。

 

「すみません、遅くなりました」

 

「ううん。それより、これ!」

 

そう言って穂乃果が差し出したのは、真新しい戦極ドライバーだった。

 

「直ったんですか!?」

 

「うん、ミッチが来たら渡してくれってコウタ君が」

 

「空を飛び回るインベスがことごとく避難先に回って邪魔してくるんです。鎧武の刀じゃ届かなくて……」

 

「ミツザネ君が来てくれればなんとかなるって、コウタ君が……」

 

穂乃果、海未、ことりの順で話す内容に、ドライバーを受け取りながらミツザネは苦笑した。

 

「それって、つまりは丸投げじゃないですか」

 

戦極ドライバーを腰に当てるとベルトが伸びて巻き付き、左側にライダーの横顔がプリントされる。その動作に迷いはなく、まるで待ち焦がれていたような感じだ。

 

「まっ、うようよと空飛んでる虫の害虫駆除なんて、僕みたいな屑にはぴったりですけどね」

 

誰にも聞かれないように口の中で呟き、愛用しているブドウロックシードを取り出しクロスするように構える。

 

まるで、これが本来の使い方であるかのように。

 

その時、空中を飛んでるインベス:コウモリインベスがミツザネ達に急降下していく。

 

しかし、それよりも先にミツザネが口にした。

 

「変身」

 

 

『ブドウ!』

 

 

開錠と共に頭上にクラックが出現し、凛達は咄嗟に少し離れた。

 

ミツザネは太極拳を思い浮かばせるように両手を回し、右手のロックシードを右斜めに突き出し、そして戦極ドライバーのドライブベイにセットし、スライドシャックルを押し込む。

 

 

『ロック・オン』

 

 

すると鎧武と同じように待機音が流れる。鎧武のような和を感じさせるものではなく、中華を感じさせるものだ。

 

眼前にコウモリインベスが迫った瞬間、ミツザネは狙ったかのようにカッティングブレードをスラッシュ()した。

 

 

 

『ハイィーッ! ブドウアームズ! 龍砲、ハッ、ハッ、ハァッ!!』

 

 

 

頭からブドウアーマーを被り、スーツがミツザネの身体を包み込む。

 

アーマーが展開され、そこにいたのは緑を基調とした戦士だ。中国の鎧をモチーフにしたようなデザインであり、右手にはブドウの意匠を象った銃:ブドウ龍砲が握られている。

 

迫ってくるコウモリインベスにブドウ龍砲を向け、引き金を引く。紫色のエネルギー弾が飛び、その大きさな羽根に穴をあけて、コウモリインベスが落下していく。

 

落下したコウモリインベスを見事一刀両断した鎧武は、その勢いでミツザネのところで着地した。

 

「アーマードライダー龍玄、復活だな」

 

「えぇ。行きましょう、いつもみたいに援護します」

 

ミツザネことアーマードライダー龍玄はブドウ龍砲を構えると、上空に大きいクラックが出現し、大量のインベスが羽根を生やして飛び出してきた。

 

「な、なんて数!?」

 

「大丈夫だ。この程度の数、俺達なら!」

 

「あっ、待ってコウタ!」

 

駆け出そうとした鎧武を止めた真姫は、ポケットからあるロックシードを取り出す。

 

それはイチゴの意匠を象ったイチゴロックシードだった。

 

「それは!?」

 

「さっき、μ'sのファンって子から貰ったの。使えない?」

 

ミツザネはそれを見て思い出す。一瞬、奇妙な視線で外した時に渡されたようだ。

 

イチゴロックシードは前の戦いでも使っていたもので、そのアームズはこの状況に最適とも言えるものだった。

 

「ナイスだ、真姫!」

 

真姫からイチゴロックシードを受け取った鎧武は今セットしているオレンジロックシードを外し、イチゴロックシードを開錠した。

 

 

『イチゴ!』

 

 

すると鎧武が装着しているオレンジアームズが消え去り、頭上に新たなイチゴアームズが出現する。

 

イチゴロックシードをドライブベイにセットし、スライドシャックルを射し込む。

 

法螺貝の待機音が鳴り響き、その音で1匹のインベスが鎧武へ突撃してきた。

 

「コウタ!」

 

海未の言葉に反応するように龍玄がブドウ龍砲からエネルギー弾を放ち、鎧武もカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ソイヤッ! イチゴアームズ! シュシュっとスパーク!!』

 

 

攻撃を避けた鎧武がいた場所にイチゴアームズが着弾に、跳ね返るように鎧武の頭に装着されて鎧が展開される。

 

「そんな装着ありなの!?」

 

「ありなんです」

 

驚きのあまり言う穂乃果に告げて、鎧武イチゴアームズは専用武器でもあるイチゴクナイを両手に構えた。

 

「よっしゃぁっ、ここからは俺の戦い(ステージ)だ!」

 

「何言ってるんですか、コウタさん。僕達の闘い(ミュージック)です!」

 

そう言い放ち2人のアーマードライダーは駆け出し、インベスに攻撃を開始する。

 

通常ならば大事件に繋がるほどの物量差ではあるが、驚く事に鎧武と龍玄は持ち前の戦闘力で物量差を梅尽くしたのだ。

 

時にはイチゴクナイを投げ、斬り付け、無双セイバーで斬る。龍玄もブドウ龍砲のトリガー:緑宝撃鉄を引き何百発というエネルギー弾を放つ。

 

鎧武も龍玄も、かなりの戦闘を積んできた猛者である。数々の戦いを乗り越えてきた2人にとって、この程度は危機ですらなかった。

 

瞬く間に数を減らしていくこの戦いは、もはや殲滅戦といってもいいよのだった。

 

「これで、終わりだ!」

 

 

『ロック・オン! 壱、十、百……イチゴ・チャージ!!』

 

 

無双セイバーのドライブランチにイチゴロックシードを装着し、無双セイバーを構え、振り抜く鎧武。

 

「こちらも!」

 

龍玄は左手でカッティングブレードを1回スラッシュして、ブドウ龍砲の緑宝撃鉄を引く。

 

 

『ハイィーッ! ブドウ・スカッシュ!!』

 

 

それぞれの音が響き、必殺技が放たれる。

 

赤いクナイ型の斬撃と大量のエネルギー弾が飛び、大量のインベスを貫く。

 

一網打尽とはこのことで、それを最後に全てのインベスは倒しきったようだ。

 

遠巻きに見ていた人々の歓声が戦の終わりを告げる鬨の声のように聞こえ、鎧武と龍玄は思わず気を緩めてしまう。

 

それが、決定的な油断を生んだ。

 

「きゃぁっ!」

 

「り、凛ちゃん!!」

 

悲鳴に振り返ると、そこには凛に掴みかかっているコウモリインベスの姿があった。

 

「しまった! 撃ち漏らしがあった!?」

 

「なろっ!」

 

それぞれが銃口を向けるが、放つ事は出来なかった。インベスと凛の距離が近すぎて撃てば凛にも当たってしまうかもしれないからだ。

 

「っ、ミッチ! 何して……早く撃って!」

 

自分のせいで撃てないと気付いた凛は、離れようともがくが相手は化物だ。力の差は歴然で、インベスを召喚しようにも両腕もがっちりとホールドされているためロックシードを取り出す事が出来ない。

 

「凛ちゃんを離して!」

 

穂乃果達がロックシードを開錠し、インベスを召喚してコウモリインベスに飛び掛らせる。

 

しかし、それよりも早くコウモリインベスが羽ばたき宙へ上がった。

 

「凛ちゃん!!」

 

悲鳴にも近い花陽の声も虚しく、コウモリインベスは空高く舞う。

 

「どこへ行くつもり!?」

 

「まさか……高い所から落とすつもりじゃ……!」

 

海未の言葉にさぁっと顔から血の気が引いていく。もはや高さはビルの屋上並に達しており、落とされたら怪我では済まない事は容易に想像出来る。

 

「落ちてきた所をキャッチする! それしかねぇ!!」

 

無双セイバーを投げ捨てて構える鎧武だったが、後ろから現れたインベスに攻撃され吹き飛ぶ。

 

「うわっ!? 邪魔すんじゃねぇ!」

 

唯一の武器である無双セイバーを投げ捨てたため、素手で反撃する鎧武。龍玄もインベスに襲われており、一瞬だけ身動きが取れなくなる。

 

一瞬。本当に一瞬。

 

インベスにとってはそれだけで十分だった。

 

凛を掴んでいたインベスが、彼女を離した。

 

「りっ………!!」

 

凛の身体が宙へ投げ出される。

 

その瞬間、インベスを力任せに殴りつけて鎧武は後悔した。インベスを倒すより先に皆を避難させるべきだった。

 

その瞬間、インベス達を押し退けよとする龍玄は自らに怒りを覚えた。彼女達との距離を考慮して立ち回るべきだったのに、それを怠ってしまった。

 

花陽達は絶句し、襲いかかってくる悲しみから目を空してしまう。

 

そして、凛は不思議な事に恐怖を感じなかった。宙に浮かんで落下しているというのに、景色が高速で過ぎ去っていくのに、死を感じる事が出来ない。

 

それは満足したからなのだろうか。ここに至る直前に、昔なじみとほんの一瞬だけでも昔に戻れたからかもしれない。さらには変わらない寝顔も見れたのだから、十分だった。

 

「あぁ、でも………」

 

やっぱり、ちゃんとしたお話したかったにゃ………。

 

落下していく中でそう感じた凛の耳に、確かに聞こえた。

 

 

 

「おいおい。諦め早すぎやしないか、猫娘」

 

 

 

 

 

 

『レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイト!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛とインベスのさらに上空で、ラップ調の機会音と共に踊り出る影があった。

 

頭上に出現したアーマーパーツを被り変身した影は手にした弓でコウモリインベスを斬り飛ばし、凛へと手を伸ばす。

 

凛を抱きとめたソレは、ビルの壁を蹴って威力を殺すと上手く地面に着地した。

 

ゆっくりと立ち上がり凛を離して、それは踵を返した。

 

「あ、貴方は………」

 

凛はその存在を知っている。コウタ達が来る前からこの街で戦い、何度も助けてくれたヒーロー。

 

「凛ちゃん!」

 

凛がはっとなって振り向くと、そこには泣き顔で顔を腫らせた花陽が抱き着いてきた。

 

「か、かよちん……」

 

「よかった、よかったよぉぉ……」

 

「凛!」

 

次々と近付いてくるメンバー達に、凛は思わず頬を緩める。

 

「みんな……」

 

「すまねぇ。俺達がしっかり戦っていれば……」

 

鎧武の姿で頭を下げるというのはいささかシュールであるが、それよりもまだ戦いは終わっていない。

 

顔を助けてくれたヒーローに向けると、彼は斬りつけた弓で残党のインベスへゆっくり歩く。

 

青と黄を基調とし、その佇まいは公爵(デューク)のように高貴なものだ。

 

なにより目を引いたのは、戦極ドライバーとは異なった赤いドライバーに、そこにセットされているレモンエナジーロックシードである。

 

「あれが、まさか……」

 

「コウタ君達より前から、この街で戦っていたアーマードライダー……」

 

龍玄の呟きに答えるように、ことりが言う。

 

「アーマードライダー……デューク」

 

凛の呟きと同時にアーマードライダーデュークは駆け出し、インベスに向かって弓を振り下ろす。両端にあるのは刃らしく、それがインベスを斬りつける度にインベスにダメージが加わる。

 

ものの数瞬で初級インベス達は撃破され、旗色を悪く感じたのか最後のコウモリインベスは飛んで逃げようとする。

 

しかし、それをさせまいとデュークは斬りつけていた弓の本来の持ち方をした。

 

トリガーを引くとレーザーポインターが逃げるコウモリインベスにロックされ、エネルギーで構成された矢が放たれる。

 

その狙いは外れる事なくコウモリインベスを貫き、空中で爆発した。

爆発はインベスのものだけでなくデュークの矢の分まで含まれていたエネルギーの余波が周囲を襲う。

 

「っ、なんてエネルギー……」

 

「これが、エナジーロックシードの……」

 

威力に呆然となる鎧武と龍玄。

 

わぁぁっ、と勝利を称える声に本当に戦いが終わったのだと安堵した鎧武と龍玄だが、その視線はデュークへ向けられている。

 

鎧武は「頼もしいやつだなー」程度に思っているのだろうが、龍玄はそういう楽観視できるものではない。

 

兄にユグドラシルの社員を持つ彼からしたら、未確認のアーマードライダーは不審に思わざる得なかった。それが戦極ドライバーではなく、ゲネシスドライバーという設計段階で実在しないベルトを使用しているのならなおさらである。

 

デュークは一瞬だけ凛達を顧みるが、すぐにこの場から離れようと足を出した。

 

その瞬間、龍玄はブドウ龍砲を足元に向けて発射した。足元で火花が散ったデュークは、当然足を止める。

 

「お、おいミッチ!?」

 

「助けてくれた事には感謝します。ですが、本来なら存在しないゲネシスドライバーを使用しているのを見て、みすみす見逃すのは、バカかコウタさんくらいです」

 

「…………おい、それって俺がバカって事か!?」

 

鎧武の喚きを無視して、龍玄は続ける。

 

「僕らを助けてくれた貴方を敵とは思いたくない。お願いですから、変身を解いて正体を現してください」

 

その言葉に、周囲がざわめく。アーマードライダーデュークの正体は本人の希望で謎であり、何度も解き明かそうとマスコミも足を運んだくらいなのだ。

 

大の大人達が解き明かせなかった謎を、高校生の1年坊が大衆の前で明らかにしようというのだ。やり方は褒められた手段ではないが、その正体がわかるかもしれないという事に、誰もが注目していた。

 

「み、ミッチ! 助けてくれた恩人にそれはあんまりにゃ!」

 

はっとなった凛が止めるために龍玄へ言い放つが、その意思が揺らぐ事はなかった。

 

「凛さんの言う事はもっともです。僕は責められるべき悪でしょう……ですが、デュークは設計段階のゲネシスドライバーを現実にしている。それだけの技術を……ユグドラシル以上の技術力を持った組織と通じているかもしれないんです。彼が純粋にこの街を守りたいために力を振るうならいいですが、もし敵に回ったらこれ以上の凶悪はありません」

 

だから、と区切って龍玄は告げる。

 

「新参者で無礼者ですが、貴方が僕達の敵ではないとうのなら正体を示して下さい。貴方は、何者なんですか?」

 

沈黙は許さない。そのために銃口が向けられている。

 

そう言わんばかりの威圧を放つ龍玄に、鎧武は言っている事は一理あると納得したのか同じように無双セイバーを構える。つまりバカの得意技、思考放棄である。

 

そして、デュークはというと呆れたように肩を竦めふりかえり、

 

躊躇いなく矢を放った。

 

「っ!?」

 

まさか本気の反撃を予想していなかった龍玄の反応が遅れ、ブドウ龍砲で反撃する間もなく矢を受けてしまい、吹き飛んだ。

 

「ミッチ!」

 

鎧武が叫んでくるが、倒れて体勢を立て直そうとする龍玄にそこまでの余力はない。ロックシードに何かしらのアクションをしないでの攻撃ということは、これはデュークにとっての通常攻撃だ。

 

ただの攻撃が直撃しただけで、胸が焼けるような衝撃。

 

「………こんなものが量産されたら」

 

息絶え絶えになりながらも呟くほど、その事態は地獄と言っていい。その力をコウタのような誰かのために使うと誓った人間が使えばいいが、世界は圧倒的に悪人の方が多いのだ。

 

鎧武の攻撃を弓でいなしたデュークは龍玄に向かって接近する。

 

龍玄は武器が銃であるため近接戦闘は苦手と思われがちだが、格闘能力は極めて高い。

 

のだが、デュークの繰り出す攻撃は凄まじく、防御しようとするもその合間を縫って斬りつけてくる。

 

「うわっ!?」

 

デュークが斬りあげるようにして弓を振るい、龍玄が吹き飛ぶ。

 

 

『レモンエナジー・スカッシュ!!』

 

 

デュークがベルトの右側にあるパーツを押し込むと機械音が鳴り、エネルギーが弓の刃に集まっていく。

 

これを受けたらまずい。その思いに反して身体は言う事を聞かずに動かない。

 

振られた斬撃を受けた龍玄は吹き飛び、変身が強制解除されてしまった。

 

「ミッチ! なろっ……!」

 

鎧武はもう1度無双セイバーにイチゴロックシードをセットし、デュークもレモンエナジーロックシードを弓にセットした。

 

 

『ロック・オン』

 

 

異なる声色の音声が響き、それぞれの武器にエネルギーが集まっていく。

 

 

『壱、十、百……イチゴ・チャージ!!』

 

「セイハァーッ!!」

 

無双セイバーを振るうとイチゴクナイ型の刃が無数に飛ぶ。

 

 

『レモンエナジー!』

 

 

デュークの矢も巨大化し、エネルギーを纏った矢が放たれる。

 

斬撃と矢がぶつかり、拮抗したのはほんの一瞬。

 

鎧武が放った斬撃は矢によって砕かれ、その身体に直撃を受けてしまう。

 

「ガァァァッ!?」

 

鎧武の身体から火花が散り、龍玄同様に変身が強制解除されてしまう。

 

「コウタ君!」

 

「ミッチ!」

 

穂乃果と海未が2人に駆け寄り、信じられないといった風にデュークを見上げた。2人が従えるインベスが主を守るように構えるが、鎧武と龍玄が勝てなかった相手に太刀打ち出来るとは思えない。

 

しかし、戦闘を続行するかと思われていたデュークは弓を下げ、エナジーロックシードをベルトへ戻した。

 

「…………俺はこの街が嫌いじゃない」

 

初めて言葉を発するデュークの声は、年若いものだった。アーマードライダー特有の拡張器を使ったような声なので年齢まではわからないが、若いというだけはわかる。

 

デュークは後ろの角にあるラーメン屋を指し、

 

「あそこのラーメン屋はなかなか美味い。ラーメン激戦区の中でも知られていない名店だ」

 

「何………?」

 

「カードショップは豊富にあるが、開店時間に行かなければフリースペースが取れないというのは厄介だがな」

 

デュークは秋葉原の良い点を上げて言った。

 

「俺はこの街が嫌いじゃない。だから、そこで誰かが傷付くなら戦うし、同じようにこの街を守りたいというのなら手を組んで一緒に戦いたい」

 

だがな、とデュークは一旦言葉を区切った。

 

「俺のプライバシーまで明かすつもりはない」

 

デュークはそう言い残し、踵を返して跳躍した。彼を止める術のない一同は消えていくのを見届けるしかなく、ようやく戦いが終わった事に安堵した。

 

「ミッチ、無理し過ぎだぜ」

 

「すみません。でも、やはり野放しというのは危険過ぎます……コウタさんのお兄さんはゲネシスドライバーの事、知っているんでしょうか?」

 

コウタの注意に謝りつつも、ミツザネはデュークを危険視せざる得なかった。自惚れではなく鎧武と龍玄はユグドラシルのアーマードライダー部隊と同等以上の力を持っているのに、まったく歯が立たなかったのだ。

 

彼は味方でも、その技術が悪人。それも錠前ディーラーに渡ったりしたら。

 

「さぁな……一応メールは飛ばしたけど」

 

コウタはそう言って振り返り、穂乃果達に言った。

 

「なぁ、デュークの正体って本当に謎なのか?」

 

「うん。一体誰が変身してるのかも……」

 

ミツザネは唸るように考えるが、凛に背中を叩かれ前につんのめった。

 

「まぁまぁ、そんな難しい事考えても仕方ないにゃー」

 

死にそうな目に会ったというのに、もう忘れたかのように脳天気に笑う凛。

 

そんな彼女に、ミツザネは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すみませんでした、凛さん。僕がもっと注意していれば……」

 

「もう、ミッチは気にしすぎだにゃー。ちょっとスリリングなアトラクションをやったと思えば、ある意味だと楽しかったよ」

 

そう笑う凛。本人に言われてしまってはこれ以上話題を伸ばす訳にはいかず、ミツザネは仕方ないと笑う。

 

「あっ、急用思い出したから、凛は先帰るね」

 

「あ、凛ちゃん?」

 

そう言って去っていく親友に、花陽は首を傾げる。

「………とりあえず、俺達も行こうぜ。いつまでもここにいたら面倒な事になりそうだ」

 

コウタの言葉に頷き、一同は移動を始める。

 

しかし、その中でもミツザネはアーマードライダーにという力に、畏怖と疑念を絶やさずに、どうしたらいいかと思案しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配達から帰ったアキトが店に戻ると、そこに親父の姿はなかった。いつものようなは夜の部に向けて材料の買い足しに行ったのだろう。

 

店の看板を準備中にして、台所の片付けなどを始める。これもアキトの役目だからだ。

 

だいたいが片付け終わり、アキトはラーメルの残りで賄い飯を作ろうとした時。

 

ガラガラと入口が開けられ、そちらに目を向ける。

 

「…………昔からそうだ。準備中って看板あるのに平然と入ってくるよな、お前は」

 

「にゃははー。お腹空いちゃって………」

 

照れたように後ろ髪を掻く凛に、アキトは呆れたように息を吐き調理を始める。

 

凛は慣れたようにセルフサービスの水を注ぐと、アキトの真正面のカウンター席に腰を下ろした。

 

「さっきラーメン食べてなかったか?」

 

「凛は燃費悪いからすぐにお腹が減るの」

 

「太るぞ……って、お前は動けば勝手に痩せれる素敵体質だったな。だからまな板なんじゃねーの」

 

「なっ、だからいつまでも昔感覚で言うのは止めるにゃ! これでも見ない間にちゃんと成長してるんだからね!」

 

「はいはい。寝言を言うには目を見開き過ぎてるぜ」

 

「辛辣過ぎる!?」

 

アキトは苦笑を浮かべる。

 

「何だよ。昔みたいに戻れたじゃん」

 

「……………うん」

 

嬉しそうに笑い、頷く凛。その間にも適当に具材を刻んでご飯に乗せて、2人分の茶碗をカウンターに出した。

 

「おぉっ、前まではごはんに海苔を乗せた粗末なモノだったのにこんな立派な料理が!」

 

「ふっふーん。お前と違って目の見えるトコで成長してんだよ、俺は」

 

エプロンを外してカウンターに移ったアキトは、凛の隣に座って箸を出す。

 

「じゃ、頂きますにゃ!」

 

「おう」

 

2人できちんと礼をして、チャーシュー飯を食べ始める。

 

「おぉっ、美味しい!」

 

「当たり前だ。ウチのチャーシュー飯は俺が作ってるからな」

 

フフンと得意気に笑ったアキトは、ふと顔を沈める。

 

「………凛」

 

「うん?」

 

「……………子猫を助けてやれなくて、ごめん」

 

瞬間、凛の瞳が揺れる。咥えていた箸を置き、表情を啼きそうにしながら 首を横に振った。

 

「……違うよ。謝らなきゃいけないのは、凛の方だよ。あの時、酷い事言ったのは凛だから………」

 

「……………助けられるって思ってた。凛が俺を信じてくれるなら、絶対に」

しかし、少年の思いに反して子猫の身体は冷えていき、やがて生きる事を止めてしまった。

 

人は無力だ。如何に知識を得ようとも、ソレを活用するには短命だ。

 

人は脆弱だ。インベスといった力の前では簡単に塵と化す。世界に名を轟かせることなく骸となるのが当たり前なのだ。

 

人に意味はない。その全てが、人の領域であるが故に。

 

人では何も救えない。人に比べて豆粒のような小さな命でさえ救えなかった。

 

その小さな命すら救えないような人に、人たる意味などないのではないか。

 

幼い時、凛の無情な言葉の刃に触れ、アキトは変わってしまった。否、変わらざる得なかったのだ。

 

幼い誓いを、今度こそ違えないがために。

 

「あの頃、凛もアキトも子供で……何でも出来るって思ってた。でも、違う。違ったんだ」

 

凛はそっと、頬を濡らしながらアキトの肩に顔を埋めた。

 

「…………相変わらず、泣きぐせは変わってないんだな」

 

「それもあるけど……ついさっき、怖い思いしたから……………」

 

先程、凛は高い所から叩き落とされて死にかけた。友達の前では心配させまいと笑ってみせたが、高校1年生の女の子が笑うなど、ただの強がりでしかなかった。

 

アキトは凛の頭に手を回して、そっと撫でた。まるで猫をあやすような感じだが、彼女がそれで落ち着くならいい。

 

その姿は、花陽が言っていたような昔の姿だ。

 

花陽の言った通り、数時間と置かずにアキトと凛は昔のようになれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉島ミツザネが所有するロックシード

 

 

・ブドウ

 

・ヒマワリ

 

・サクラハリケーン

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、ラブ鎧武!は………

 

 

 

「私達ね、これらはμ'sを快く思っていない生徒の仕業だと思ってるの」

 

校内の物品破損の事件を生徒会と調べることに。泊まり込みで。

 

 

 

 

「まさか、μ'sが関わったモノ全て壊す気!?」

 

「葛葉、貴様は講堂へ行け。屋上へはオレが行く」

 

「まさか生身で戦う気!? 危険過ぎるわ!」

 

インベス相手に生身で戦おうとするカイト。

 

 

 

 

「えぇっ!? 歩くのめっちゃシュール………てか、バナナ!? バナッ!? バナナァッ!?」

 

「バロンだっ!!」

 

『バナナアームズ! ナイトオブスピアー!!』

 

やはり果実を被ったまま歩くカイト。

 

 

 

「さぁて、ぶっ潰すぜ!」

 

『パインアームズ! 粉砕デストロイ!!』

 

新たな力、パインアームズ!

 

 

 

次回、ラブ鎧武!

 

4話:アーマードライダー ~アンチμ'sの洗礼、男爵の黄槍~

 

 




アーマードライダーデューク………イッタイナニモノナンダ…………

ミッチこと龍玄とデュークの変身回でした!
テレビではバロンの方が先だったので、こちらでは先にミッチを変身させました。

今回登場した啼臥アキトは完全にオリジナルキャラです。自分が凛ちゃん推しなので、彼女のみのヒーローになる予定です。

2つの作品の上オリキャラなんて、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分としてはどちらの作品にも属さないで自由に動かせるキャラがいると便利なので使っています。
なのでご了承していただくしかありません。


この世界でインベスは日常的に暴れまわっています。日常の一部と化しているのでケンカなどでも使われたりしているので、暴れまわっても住民は慣れたように避難して慣れたようにスポーツ感覚で観戦するという物騒な輩もいたりします。

次回はバロン変身回の予定です。ぜひ読んで感想お願いします!
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