ラブ鎧武!   作:グラニ

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決して遠くても、

意思を託して放て、

矢は必ず飛ぶ




46話:ExA ~反撃の矢~

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音を立てて走り去って行ったトラックを視界の端で見届けながら、呉島タカトラは襲いかかってくるアーマードライダーグリドンの攻撃を避ける。射撃を邪魔されライフルを鈍器のように振り回してくるが、その挙動は素人丸出しであり、生身であっても簡単に避けれるものだった。

 

弟でもある呉島ミツザネも同様の意見だったのか軽々しくグリドンを弾き飛ばし、間合いが空いた所で頷き合うと戦極ドライバーを腰に装着した。

 

「予想外の出来事に対応しなければさもありなん、だな」

 

そう語った瀬賀長信は紅いロックシードを取り出す。ユグドラシルの知らない未知のロックシードはまるで怨念でも篭っているかのようの紅く、一目見ただけで普通のロックシードではないとタカトラの直感が告げてくる。

 

 

『ブラッドオレンジ!』

 

 

解錠するの長信の頭上にクラックが開き、アーマーパーツが召喚される。

 

それは形こそタカトラ達がよく知るオレンジアーマーパーツだが、その色は希望を照らしつける橙色ではない。まるで死を告げるブラッド(鮮血)のようであった。

 

 

『ロックオン』

 

 

「瀬賀先生……………!」

 

本当に瀬賀がアーマードライダーであり、黒の菩提樹の幹部だった。偽りだとは思っていなかったが、嘘であって欲しいと願っていたのも事実だ。しかし、突きつけられた現実は冷たく、その結果にタカトラは思わず呻いた。

 

「現実を見ろ、呉島タカトラ。出来ないというのならどけ……変身!」

 

瀬賀には一切の迷いが感じられない。怨念の籠った慟哭と共にその身を修羅へと変える。

 

 

『ソイヤッ! ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!!』

 

 

アーマードライダー武神鎧武。フォルムはよく知る鎧武と同じ姿だというのに発せられる禍々しい気配は、息苦しさを感じるほどに重たいものだった。

 

「っ…………!」

 

こちらも変身しようと構えるが、それよりも眼前に振り下ろされた大橙丸を避けるタカトラ。

 

「おぉっ!」

 

気合いの声を上げてミツザネが武神鎧武へと殴り掛かるが、タカトラよりも幼い少年の拳が届くはずもなく、腕を捕まれ振り回され飛ばされる。

 

「ミツザネ!」

 

弟を受け止めたタカトラは、はっと武神鎧武が無双セイバーを引き抜き、弾丸を装填しているのが見えた。

 

「変身!」

 

「変身!」

 

『メロン!』

 

 

『ブドウ!』

 

 

掛け声もなく兄弟が即座にロックシードを戦極ドライバーにセットし、スライドシャックルを押し込んでカッティングブレードを切り上げたのは同時だった。

 

 

『ロックオン。ソイヤッ!』

 

 

『ロックオン。ハイィーッ!』

 

 

ムソウマズルから弾丸が吐き出され、2人を爆炎が飲み込む。

 

だが。

 

 

『メロンアームズ! 天、下、御、免!!』

 

 

『ブドウアームズ! 龍砲、ハッ、ハッ、ハァッ!!』

 

 

燃え盛る炎を切り裂き、白麗の戦士と紫龍の射手が飛び出す。

 

アーマードライダー斬月。

 

そして、アーマードライダー龍玄。

 

それぞれの目的の為に、今鎧武者達が激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

##########

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無双セイバーと赤い大橙丸がぶつかり合い、火花を散らす。

 

武神鎧武の兵装は葛葉コウタが変身するコウタとまったく同じと言ってもいい。斬月と同じく無双セイバーを基本装備としてアームズウェポンでもある大橙丸という組み合わせは、攻撃的なスタンスだ。

 

数撃だけしか打ち合っていないが、その斬撃はまさしく苛烈の一言で斬月が今まで相対してきた敵の誰よりも鋭く重い。

 

いや。

 

強いだけではない。

 

武神鎧武は、瀬賀はタカトラにとって恩師だ。タカトラは今、その恩師に刃を向けている。

 

それがもしかしたら、腕を鈍らせているのかもしれなかった。

 

「脇ががら空きだぞ」

 

「くっ………!」

 

指摘と共に繰り出された斬撃をメロンディフェンダーで防ぐも衝撃は殺し切れず、斬月の身体が吹き飛ばされる。

 

砂浜を転がり滑り、体勢を立て直して顔を上げた時、眼前に迫っていたのは武神鎧武が突き出してきた無双セイバーの切っ先だ。辛うじて顔を横に逸らして避けるも、次撃の斬撃には対応出来ずに胸部に受けてしまう。

 

苦悶の声を漏らしながら転がる斬月に、武神鎧武の剣が迫る。

 

「………っ!?」

 

「はぁっ!」

 

しかし、それを防いだのは死角から放たれた紫色の光弾だった。2人のアーマードライダーグリドンを瞬殺した龍玄がが肉薄し、武神鎧武と打撃を打ち合う。

 

武神鎧武の二刀流に対して龍玄の武器は片手のブドウ龍砲のみだが、巧みな体捌きにより互角に戦っていた。

 

斬撃は振るわれるより先に肘や手を使って弾いて防ぎ、打撃武器としたも有効なブドウ龍砲をトンファーのように持ち直して刃を受け止めて流す。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

イラつくぐらいにちまちまとした攻撃に、武神鎧武が一撃の名のもとに屠るべく両腕を振り上げる。

 

その大きな僅かな隙を龍玄が待っていたかのようにタックルで体勢を崩すと、がら空きとなった胸に向かってラッシュを打ち込んだ。

 

「たぁぁっ!」

止めにエネルギーの篭った拳を突き出し、火花を散らしながら武神鎧武が吹き飛んでいく。

 

「ミツザネ………!?」

 

斬月を圧倒した武神鎧武を容易に吹き飛ばした龍玄。弟の強さに斬月は思わず息を飲んだ。

 

ミツザネは確かに高校生ライダーの中では一番幼く、それ故にメンバーの中での実力は一番低い。もちろん、ユグドラシルの黒影部隊の顔ぶれ達と比べれば強さは段違いだが、それでも斬月よりかは劣っているのが現実である。

 

その弟が自分が苦戦した相手を圧倒されている。喜ばしい事であるはずなのに、釈然としない気持ちになるのは何故なのだろうか。

 

「大丈夫? 兄さん」

 

「ミツザネ、お前どうした………?」

 

兄の葛藤など知らないであろう、平然と気遣う弟に思わず尋ねると、返ってきたのは苦笑だった。

 

「どうしたって、言われても……なんだか、昨日までの疲れが吹き飛んだみたいに身体が軽いんだ」

 

龍玄の様子からも、どうしてかはわかっていないようだ。迷いが吹っ切ってやりたい事を見据えられたからなのか、それとも別の要因か。

 

「兄さん、頑張ろう」

 

激励するように斬月の腕を掴んで立ち上がらせると、まっすぐ見据えて言う。

 

「僕達で、μ'sのみんなを………この島の人達を救うんだ!」

 

「ミツザネ…………」

 

仮面の下で、タカトラは細く笑んだ。まさか、弟に激励される日が来るとは夢にも思わなかった。

 

幼い頃から後を追いかけてきて、いつの間にか後釜になる事を強要してしまい、傷つけてしまった背中はあまりにも小さく見えていた。

 

しかし、高校生とはいえ、今では立派に仲間を見つけて、居場所を護ろうと必死に立ち上がった戦士だ。

 

それが強く、誇らしくタカトラの胸奥を叩いた。

 

「そうだな」

 

頷いて無双セイバーを構え、砂埃の先を見据える。

 

例え恩師であろうとも、自らの道を阻む壁となるならば。

 

何よりも、世界を蝕む悪意であるならば、斬月は手を緩める道理はまったくない。

 

()()で、世界を救おう!」

 

斬月の叫びと共に煙が切り裂かれるように、斬撃が飛び出す。それを無双セイバーで叩き砕き、こちらへ距離を詰めてきた武神鎧武と切り結ぶ。二刀流と剣盾の攻防により火花が散り、その合間を縫って紫の弾丸が飛び交う。

 

「理想を語るのは結構だが、言葉程度で理想を現実に出来ると思うな!」

 

「理想を語る事の何が悪い!」

 

渾身の一撃同士がぶつかり合い、生じた衝撃波で斬月と武神鎧武の間合いが開く。しかし、それをカバーするように龍玄が肉薄し、ブドウ龍砲を叩き付ける。

 

「出来ると思っているのか!?」

 

「出来るかどうかじゃない! やるったらたる、それだけだ!」

 

子供が言う屁理屈のような事を口にしながら、射撃を織り交ぜて打撃を打ち込む。素早い攻撃に武神鎧武は対応しきれていないのか捌き切れずに、先ほどのように苦悶の声を漏らしていた。

 

「流石に不利か…………!」

 

武神鎧武の戦闘力は高い。しかし、同時に斬月と龍玄の2人を相手にするのは分が悪いと感じたのか逃げるように飛びのき、4つのヒマワリロックシードを取り出した。

 

クラックを開いて暴走インベスを召喚する気であると察した斬月は、咄嗟に懐から開発者から渡された物を取り出す。

 

「させるか!」

 

斬月が取り出したのはロックシードではなく、チューリップのようなロックビークルだ。解錠と同時に巨大化し、それは緑色の装甲を持った二足歩行のユニットだった。

 

チューリップホッパー。

 

表向きに作られた新型ロックビークル、ベゴニレックを隠れ蓑にして秘密裏に開発されていた新たなユグドラシル部隊の戦力だ。二足歩行による稼働は機敏であり、その両足を使った攻撃は苛烈であり大型のインベス相手でも十分に通用する威力を秘めている。

 

だが、チューリップホッパーにはそれ以外にも1つの機能が搭載されている。それが秘密裏に開発された理由だ。

 

武神鎧武がロックシードを解錠するのと同時にチューリップホッパーに乗り込んだ斬月は、その機能を解放する。

 

空間にクラックが開いた瞬間、チューリップホッパーから赤い閃光が放たれる。それを受けたクラックが振動し、まるでビデオを巻き戻すように閉じて消えた。

 

「何っ!?」

 

有り得ない事態に武神鎧武が驚きの声を上げ、龍玄も驚愕したように息を呑む。ついでと言わんばかりに握っていた4つのロックシードから火花が散り、壊れた事を示すように煙を吐き出した。

 

これがチューリップホッパーが持つ機能。二脚による機動性も破壊力もそのおまけに過ぎない。

 

対インベス用ではなく、()()()用に作られたロックビークル。放たれた赤い閃光にはこの世界とヘルヘイム間の通路、即ちクラックを不安定にして破壊する事が可能なのだ。

 

しかし、上層部からこれの開発を許可しなかったのは、実用性がないためだ。今のようにこれからインベスを召喚しようとしているのを前もって待ち伏せしておけば、クラックを潰せる。だが、これは潰すだけでクラック自体を操作する機能はまだなく、現場での活躍は期待出来そうになかった。

 

そのため、上層部から予算の許可は下りず、ベゴニレックを表に出して資金を出させたという訳である。

 

まさか、このような場面で使う事になるとは思ってなかったが、備えあれば憂いなしという事か。

 

チューリップホッパーを操り斬月は飛び上がると、身を捻らせながら武神鎧武に襲う掛かる。踊るかのように繰り出される一撃一撃は遅いが、そのすべてがアーマードライダー単体では出せない威力を秘めている。

 

武神鎧武は大橙丸と無双セイバーで防ごうとするが、受け止め切れずに吹き飛んでいく。

 

「おのれ…………!」

 

「兄さん、このまま!」

 

「あぁ!」

 

龍玄がブドウ龍砲の緑宝撃鉄を引いて単発から連射モードに変更したのを見て、斬月はチューリップホッパーの射撃を放つ。

 

弾幕が武神鎧武を襲い、砂浜を抉る様に衝撃が走った。

 

「くっ………そろそろ頃合いか…………」

 

咄嗟に避けて直撃は免れたようだが、余波からは逃げれずに吹き飛び倒れるも、不穏が言葉が斬月の耳を打つ。

 

武神鎧武は大橙丸を振るい衝撃で砂浜を弾く。それが斬月達の視界を妨げ、一瞬だけその姿を見失った。

 

そして、ロックビークルが変形する音と共に1つの影が舞い上がった。

 

ダンデライナー。昨日、錠前ディーラーシドが使っていた飛行型のロックビークルである。

 

「ダンデライナー!?」

 

それに跨るのはもちろん、武神鎧武。ダンデライナーを翻すと、逃げるように飛んで行った。

 

「逃がすか!」

 

「待て、ミツザネ!」

 

先ほどの言葉からも何かある、と警戒した斬月の制止を聞かず、龍玄はローズアタッカーを展開して乗り込むと追跡を始めてしまう。

 

チューリップホッパーはその場での機敏な動きに優れているが、直線的な速さではバイクには劣る。チューリップホッパーをシードモードに戻し、斬月もサクラハリケーンを出して追いかけた。

 

砂浜の岩を足場にして塗装された道に移り、龍玄の後を追う。武神鎧武の姿もはっきりと捉えられており、まるでわざと追跡出来るように速度を合わせているように感じられた。

 

嫌な汗が、仮面下で頬を垂れる。

 

「ミツ…………!」

 

先行しているミツザネの名前を叫ぼうとした時、殺気を感じて車体を横にずらした。すると、脇道から飛び出してきたライオンインベスの攻撃が地面を抉った。

 

目標を仕留められなかったからか、咆哮を上げて斬月を追いかけてくる。

 

「こちらに狙いを定めている…………!?」

 

暴走インベスに知性はなく、ただ本能に従って暴れるのみだ。そこに標的を定める、というものはなく今のように真っ直ぐ斬月を狙う事など出来ないはずだ。

 

考え付くのは、アネモネのインベスを操る能力が上がっている。インベスを暴走させるだけでなく、支配下に置けるようになった、という事だ。

 

「そこまでレベルが…………!?」

 

そこで、斬月は気付く。いつの間にか武神鎧武を追って龍玄と斬月は山中に入り込んだ事。今だ2人の姿は目視で確認出来る距離にいるが、都心部からはだいぶ離れてしまった。

 

それが差す意味は、μ'sの乗るトラックから引き離された事。

 

「しまった……………!」

 

毒づいた斬月は無双セイバーを抜刀し、バレットスライドを引いて弾丸を装填する。飛び掛かって来たライオンインベスを斬り飛ばしてから空を走る武神鎧武へ向けてムソウマズルを向け、ブライトリガーを引いた。

 

吐き出された弾丸は武神鎧武に当たる事はなかったものの、ダンデライナーを掠めスラスターから煙幕を吐き出して高度を下げていく。

 

それを見た龍玄がローズアタッカーを傾けて、ダンデライナーが墜落した森林の中へと突撃する。

 

それを追いかけるような形で斬月も森林へ向かおうとしたが、それをライオンインベスが放った炎弾に吹き飛ばされる。サクラハリケーンが滑りながら転倒し、火花を散らす。

 

斬月はそのまま受け身を取って立ち上がり、メロンディフェンダーを召喚すると襲い掛かって来たライオンインベスの攻撃を弾き、無双セイバーで切り伏せる。

 

火花を散らしながら転がるライオンインベスを睥睨しながら、すぐ近くで聞こえる爆発音にドリアンロックシードを取り出す。

 

「悪いが、手間取っている時間はないのでな!」

 

 

『ソイヤッ! ドリアンアームズ! ミスター・デンジャラス!!』

 

 

普段から使っているメロンアームズはバランスが取れていて安定しているのだが、ライオンインベスを相手にすると猛攻を防ぐために防御重視になってしまい、撃破するのに時間が掛かってしまう。

 

攻撃的なドリアンアームズならば、こちらへのダメージも出るが時間を掛けずに倒す事が出来る。

 

両手に握ったドリノコを構え、斬月がライオンインベスへと接近する。振り上げられた両爪を片方で弾き、空いた方のドリノコでライオンインベスを切り裂く。初日に相手した特殊個体とは違い、普段相手にしている通常個体らしく、その動きに恐れるべき点はなかった。

 

猛攻を繰り出し、抉る様にライオンインベスの皮膚を切り裂く。

 

 

『ソイヤッ! ドリアン・スカッシュ!!』

 

 

倒れ込むライオンインベスに無情に死刑宣告が下される。

 

エネルギーが刀身に伝わる、翡翠色の輝きを放つ。

 

「はぁっ!」

 

気合いと共に振るわれた斬撃は赤い体躯に翡翠色の剣閃となり、その存在を爆炎の中へと押し込んだ。

 

ライオンインベスを撃破した事を確認した斬月は倒れているサクラハリケーンを起こして跨り、森林の中を突き進んだ。木々が惜しげっているがライドウェアで保護されている身体に痛みはなく、大きな木や地割れが起きていない限りバイクでも十分進めそうだった。

 

そして、すぐにその音は大きくなり、開けた所に龍玄と武神鎧武は対峙していた。

 

どちらも組み付くような距離での連撃を放ち、火花と衝撃が散る。

 

しかし、その終わりは意外にも早く訪れた。武神鎧武が咄嗟に屈んで足払いを放ったのだ。攻撃を捌く事に集中していた龍玄は転倒してしまい、大橙丸が振り上げられる。

 

「ミツザネ!」

 

振り下ろされた大橙丸を、斬月はドリノコで防ぐ。刀身から火花が散り、ようやく駆けつけた斬月に龍玄も武神鎧武も驚きの声を漏らす。

 

生じた隙に武神鎧武を蹴り飛ばしてから、斬月は龍玄の前に立って告げる。

 

「ミツザネ、お前は戻れ! これは罠だ!」

 

「えっ…………!?」

 

「アネモネが瀬賀の傍にいない。それはつまり、今頃μ'sの元に…………!」

 

気付いたように龍玄が息を呑む。

 

常に瀬賀と共にいたアネモネがいない。さらにトラックで慌てて飛び出したμ'sを見ても、何もしようとしない。

 

その時点でおかしいと気付くべきだったのだ。主人が従者の傍を離れる時は、命令が下された時以外にありはしないのだから。

 

「まさか、アネモネさんがみんなを!?」

 

「今更気付いても遅い!」

 

呻く龍玄に、武神鎧武が斬りかかるがそれを斬月が受け止める。力と力がぶつかり合い、拮抗した状態で何とか龍玄を見やった。

 

「ここは俺に任せろ!」

 

「っ、けど………!」

 

武神鎧武の強さは苛烈であり、2人では圧倒していたが、タイマンの戦闘ではどうなるかはわからない。アーマードライダーバロンを圧倒したという話しを聞けば、1対1の状態ではかなり勝率は下がってしまうかもしれない。

 

それでも、龍玄にはいかなければならない理由があり、斬月にも1人でこの修羅の相手をしなければならない理由があった。

 

「言ったはずだぞ、ミツザネ。瀬賀の相手は、俺がする!」

 

「…………わかった」

 

斬月の覚悟を認めた龍玄が立ち上がり、この場を離れる為に数歩走るが、すぐに止まる。

 

「……………死なないで、タカトラ兄さん………」

 

それはか細くて、今にも泣いてしまいそうで、消え入りそうな声だった。

 

龍玄はその返答を聞かずに走り去ってしまうが、斬月は思わず笑みをこぼす。

 

タカトラ兄さん、と呼ばれたのはいつ以来だっただろうか。昔は純粋に、どこにでもいる兄弟のように遊んで、ミツザネが転んだりすれば手を伸ばす兄として、普通の関係だった。

 

その時くらいだろうか、そう呼ばれたのは。

 

「まったく…………」

 

息をつきながら、拮抗していた力を崩して武神鎧武を押し返し、斬月は力強く構える。

 

「そんな声で言われたら、死んでも死ぬ訳にはいかなくなるだろうが!」

 

追撃してくる武神鎧武に斬りかかり、斬月は2対の野太刀と2対の刀がぶつかり合い、衝撃と共に森林が恐れるように震え上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タカトラに急かされ、再びローズアタッカーに跨ったミツザネはヘルメットも装着せずに走り出した。変身を解いたのはなるべく体力の消耗を抑えたかったからだが、それは悪手であると早くも後悔している。

 

発進したミツザネを羽根を生やした初級インベスの軍団が襲った。

 

雨のように降り注ぐエネルギー弾を右往左往とハンドルを切りながら避けるも、その余波は確実にミツザネの精神力や体力を確実に削っていく。

 

「くそっ、このままじゃ…………!」

 

攻撃を受け続ければ、いずれ直撃を受けるだろう。ならば再び変身して迎撃し、それから向かうのも手だ。

 

しかし、μ'sをアネモネが狙っているとわかっている以上、時間を割いてはいられない。向こうに同行しているアーマードライダーは1人だけであり、狗道クガイも襲撃する可能性があるのだ。

 

圧倒的にこちらの戦力が足りていない。量を質で補えるのは同じ戦場にいた場合のみで、距離が離れていれば数がモノを言う。

 

走りながら思案していると、鼻を磯の香りが擽った。山の中を走っていたはずだが、いつの間にか貸別荘のある舗装道路へ戻って来たらしい。

 

苛烈さが増す攻撃を避けつつ前を見た時、

 

生まれて初めて、目玉が飛び出るのではないかと思うくらいの驚愕に襲われた。

 

まだ遠くに見える貸別荘。

 

その前の道路の所で、2つの人影があった。

 

遠目であっても、それがどんな表情をしているかなど想像するに容易い。1人は活発そうながら今は真剣な趣で待ち構えており、もう1人は不機嫌そうに眉を潜めているので優しい表情を見れた日には良い事あるかもしれないというご利益が付きまとってしまった不憫な強者。

 

葛葉コウタと九紋カイト。

 

まだ意識不明になっているはずの2人の兄貴分が、そこにいた。

 

ミツザネは嬉しさ半分、込み上げてきたのは罪悪感だった。コウタを昏倒させたのは、ほかならぬミツザネなのだから。

 

しかし、コウタは知っているのか知らずなのかわからないが、口を開いた。

 

ここは俺達に任せろ。

 

それだけで目を見開き、カイトに目を向けると静かに目を伏せるだけだ。それは「オレからは何も言うつもりはない」という意味である事を、よく知っている。

 

コウタが強く頷くのを見て、ミツザネは目頭が熱くなるのを感じた。しかし、それを堪えてアクセルを回してさらに加速。

 

そして、コウタとカイトの間を突っ切る様にして、先に進んだ。

 

直後、背後で激しい戦闘音が響いて来る。あれだけ降り注いでいた弾幕は止み、ミツザネは口元を緩めると真っ直ぐ突き進む。

 

何の憂いもなく歩く事が、これほどまでに心を軽くするとは。

 

身体が風を切る。鬱陶し気に感じていたそれらも、今ではすがすがしいほどに気分を高揚させてくれる。

 

だから、ミツザネは振り返る必要もなく前を見据える。

 

仲間達を助ける為に、龍は島を走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『以上が、今この島で起きている現状とμ'sのみなさんがやろうとしている事です』

 

『……………俺達が眠っている間に、そんな事になってるなんてな』

 

『どうされます?』

 

『………………オレ達のやる事など、最初から決まっている』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走インベスの大軍が迫りつつある中、コウタは隣でふんぞり返っているカイトを一瞥する。

 

「カイト、わかってるだろうけど…………」

 

「皆までで言うな。今回、オレ達は黒子だ」

 

返って来た言葉に満足そうに頷くと、コウタは前を見据える。

 

未だかつてない絶望的な状況。そこで見つけた光明をつかみ取る為、μ'sは動き始めた。本来ならば、コウタもカイトもそれに付き添い、助力すべきなのだが。

 

ミツザネの想いを知った以上、2人は容易に手を出す事をやめた。

 

これは、手を出してはならないものであると。

 

だから、コウタ達は裏方に回ると決めた。寝起きの状態で万全でもないのだから、瀬賀の相手は酷だという事もあるが。

 

目の前からローズアタッカーが走ってくる。それに頷き返すと、さらに加速してあっという間に走り去って行く。

 

コウタ達の目的は、それを追いかけてきていたインベスの大軍。

 

「おぉっと!」

 

わざと仰々しく両手を上げて、コウタは告げる。

 

「ここから先はμ'sのライブステージだ。チケットをお持ちでない方はお引き取り願おうか!」

 

「インベスどもに言ったところでわかるはずもない」

 

「言ってみたかっただけだよ」

 

芝居掛かった動きをしながら戦極ドライバーを装着するコウタに突っ込みを入れたカイトは、同じように戦極ドライバーを腰に装着する。

 

そして互いに愛用しているロックシードを構え、迫りくる敵を見据える。

 

「ここからはミッチとμ'sのステージだ。邪魔はさせない。変身!」

 

「普段ならともかく、今の貴様らが見ていいようなものはない。変身」

 

 

『オレンジ!』

 

 

『バナナ!』

 

 

互いにいつも取っているポーズで戦極ドライバーにロックシードをセットし、スライドシャックルとカッティングブレードの動作を即座に行った。

 

 

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

『カモンッ! バナナアームズ! ナイトオブスピアー!!』

 

 

それぞれにアーマーパーツが落下し、その身をただの高校生からアーマードライダーへと変えていく。

 

アーマードライダー鎧武。

 

アーマードライダーバロン。

 

それぞれは武器を携え、インベスの大軍を相手にするべく走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市街地に差し掛かった時、遠くの方から爆発音が聞こえた。

 

「みんな!?」

 

もしかしたら、もうすでにμ'sが襲われているのかもしれない。

 

そちらへローズアタッカーを向け、砂埃を確認する。それは戦闘によって生じた物で、ブドウロックシードをいつでも出せるように心構えをして、アクセルを回す。

 

爆音を立てて市街地をローズアタッカーが走る。その音で昨日のようにインベス達が集まってくるかと思ったが、不思議とそんな事はなく、何かに阻まれる事なく音源の場所まで辿り着く事が出来た。

 

「…………………は?」

 

到着してその光景を見た瞬間、ミツザネは思わず声を漏らしてしまう。

 

この島は現在、地獄の真っ只中にある。広がる光景は地獄絵図であり、絶望が支配しているはずだ。

 

なのに。

 

「はぁぁっ!」

 

気合いと共に飛び上がった赤黄緑の戦士が暴走するイノシシインベスに向かってミサイルのように突撃する。巨体が衝撃で浮き上がり倒れたのを確認して、接近してくる初級インベスを流れるような動きで倒していく。

 

そして、その近くでは赤い戦士が荒々しい徒手空拳をもって上級インベスたるコウモリインベスやシカインベスに襲いかかる。殴る、蹴るだけでなく掴み掛り、投げ飛ばすなどのダイナミックな攻撃に規則性はなく、まるで数多の戦いを得て培った力のようだった。

 

2人の戦士がインベスと戦っている。しかし、アーマードライダーではない。腰にあるのはベルトだが、戦極ドライバーとは異なるものだった。

 

だが、纏っている雰囲気や感じる気配は決して悪ではなく、むしろ安心感を覚える。

 

「か、彼らは一体………!?」

 

「何だと言うのですの……!?」

 

ミツザネの呟きに、背後で応じる声があった。

 

振り向いて顔を上げると、ひしゃげた信号機の上に立つ人物を認めて思わず名前を叫んだ。

 

「アネモネさ………ん…………!?」

 

「っ、ミツく…………!?」

 

白いワンピース姿でアネモネがそこにいた。しかし、叫ぶような言葉が途中で抜けていくように沈んだのは仕方がない。

 

アネモネはミツザネから見て斜め上に立っており、つまりは見上げるような形になっていた。

 

さらに言えば、アネモネの格好は相変わらずのワンピース姿である。

 

つまり、なんと言うか、不本意というか役得というか、ラッキースケベというか。

 

「………………見ました?」

 

ばっ、と裾を抑えて涙目になり、アネモネが睨んでくるが時すでに遅し。敵対関係である事実など吹き飛ばして、反射的に頬を紅くさせて顔を背けたのがいけなかった。それではバッチリミター、と言っているよいなものである。

 

「………ッッッ!!」

 

ぼん、と顔を赤くさせたアネモネは言葉に詰まり、信号機から飛び降りる。そこをキャッチするようにイーグルインベスが抱えあげると、彼方へと飛び去っていった。

 

「っ、待って!」

 

追いかけようとローズアタッカーのハンドルを切ろうとしたミツザネだったが、衝撃によって走った噴煙が襲ってくる。

 

見ればイノシシインベスがダメージを受けて悶え、暴れていた。

 

謎の戦士2人はミツザネの前に背を向けて降り立つと、ちらりと顧みた。

 

「君はあの子を追って」

 

「貴方達は、一体………!?」

 

「俺達はライダーさ。通りすがりの、ね」

 

そう呟いた赤い戦士の輪郭が、一瞬だけぶれた。見れば信号機の戦士も同じように姿が不安定になっており、まるで今にでも消えてしまいそうである。

 

「世界が俺達をつまみ出そうとしてるみたいですね」

 

「あぁ。ここで決めるぜ、映司」

 

「はい!」

 

頷きあった2人はミツザネの方を向いて言葉を残した。

 

「この世界は君達に任せたよ!」

 

「μ'sだっけ。あの子達なら先に進んだから!」

 

「あ、はい………」

 

質問にまったく答えてもらっていないが思わず頷いてしまった。

 

2人は暴れているイノシシインベスを見やって、構えを取る。

 

赤い戦士は腰を深く落とし神経を研ぎ澄ませるように、じっとイノシシインベスを睨む。

 

信号機の戦士は右腰にあった円盤を手に取り、ベルトの前を滑らせる。

 

 

『スキャニングチャージ!!』

 

 

ベルトが戦極ドライバーのように咆哮を上げて、同時に赤い戦士が右足を少し捻る。それによってエネルギーが生まれ、右足に集まるように燃え出した。

 

信号機の戦士もエネルギーが唸るように上がりら脚が形を変える。まるで飛蝗のように、跳躍に適した形へと。

 

そして、

 

戦士達が走り出すのと、飛び上がるのは同時だった。

 

戦士が右足で地面を踏み締める度に、大地がまるで歓喜するかのように震え、燃える。

戦士が宙に上がると、世界がひれ伏すかのように空気を揺らす。

 

そのどちらも狙いは1つ。

 

世界を蝕む悪意。

 

戦士が助走から飛び上がり、一度前回転する。

 

戦士が宙で翻り、背中から赤い美しい紋様が彩られた翼が羽ばたく。

 

2人の戦士がキックの体勢に入って、イノシシインベスに襲来した。

 

その技を、ミツザネは知っている。アーマードライダーになった時、誰にも教わらずとも自然に出来るようになった技。

 

悪意を貫く、正義の矢。

 

つまり。

 

「ライダーキック…………!」

 

「うぉりやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「セイヤァァァァァァァァッ!!」

 

2人の戦士の叫びが響き、もがくイノシシインベスを貫く。

 

その一撃は今までのどの攻撃をも上回る破壊力と確固たる決意を乗せ、それをまともに受けたイノシシインベスは火花を散らしながら撃破の証拠でもある爆炎を上げて砕け散った。

 

爆風の余波に煽られて、ミツザネは思わず両腕で視界を防ぐ。余波が収まって前を見据えた時、そこにあったのは戦闘の残り火のみで、あの戦士達の姿はどこにもなかった。

 

「………………あの人達は…………?」

 

一体何だったというのだ、と誰にも答えられない疑問を口にするも、首を横に振って意識を切り替える。

 

確かに謎の戦士の事は気がかりだが、どうやらμ's達は無事のようだ。

 

アネモネが去っていた方向を見やって、ミツザネはローズアタッカーを翻してアクセルを回す。

 

この方向の先にあり、思いつく施設は1つ。

 

この島が有事に陥った際に拠点となり、指令本部となるはずだった中央に座す塔。

 

防衛タワービル。

 

ここからでも見える真っ直ぐに聳え立つ昼間の摩天楼に、ミツザネは向かってローズアタッカーに爆音を唸らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉島タカトラが所有するロックシード

 

 

・メロン

・ドリアン

・ウォーターメロン

・ヒマワリ

 

 

 

 

次回のラブ鎧武!は…………

 

 

 

「それ以外に方法がなければ仕方ないだろう?」

 

「けど、アンタはもう戦えない身体でしょう!?」

 

リョウマに詰め寄るヨウコ。その訳は。

 

 

 

「……………どうやら、俺はライブチケットを持ってないから入場不可らしいな」

 

μ'sに、凛に襲い掛かる絶望。

 

 

 

「私は自分が正しいと思う信念の為に、この身を捧げる! 例え残酷で、冷酷だと言われようとも!」

 

「貴様の正しさは人を追い詰めるという事がわからんのか!」

 

 

『ウォーターメロン!』

 

 

タカトラの覚悟。

 

 

 

 

「行こう。世界だなんて気張らずに、私達の…………μ'sのライブを! 1!」

 

そして、絶望に屈しないために、未来を掴む為のライブが始まる。

 

 

 

次回、ラブ鎧武!

 

47話:火花散らして ~恩師と教え子~

 

 





どうも、色々あって相変わらず散財しているグラニです。

今回は各々反撃に向かっての動きを書きました。怒涛の決着をこうご期待!

チューリップホッパーの設定は従来のものとは少し変更してあります。この世界だとクラックを操るという能力はそれほど重要視されていないですし、使うとしたらその格闘性能の高さくらいかもしれません。


そして復活した鎧武&バロン!
が、しかし!
この先、あまり活躍はありません。これはミツザネメインのシナリオなので…………

さらに現役ライダー達に世界の命運を託して、先輩ライダーは退場。もうほんと、少しだけでも書けて嬉しかったw

そして、次回。決着をつけるためにみなみなが……………!?


感想、評価随時受け付けておりますのでよろしくお願いします!

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話しのネタバレなどやってるかもしれませんので、良ければどうぞ!

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