2か月ぶりです。
本編は薦められませんが、それでも年の瀬に何も書かないのはまずいだろうと、たった数時間でほんの少しだけのお話しで、相も変わらずもしもの話しですが、どうぞお付き合いください
「今年も終わるなー」
アキトの誕生日会もほどほどに、呉島家でぬくぬくと炬燵に足を突っ込んではぐてーーーーーっとしているコウタが、何となくで言う。
時計を見ればあと10分ほどで年が明けようとしているのだが、どうにも年が明ける、という気がしなかった。
「それはコウタが大掃除も年賀状などの準備をしていないからです」
対面するような形で座りながら、表情から察したのか海未が指摘してくる。
コウタの左右にはことりと穂乃果がおり、同じようにぬくぬくとしていた。
「はい、穂乃果ちゃん」
「ありがと、ことりちゃん。んっ、アキト君が十千万、だっけ? そこの人から送って貰ったみかん、美味しいね」
ことりが剥いたみかんを食べさせてもらい、穂乃果が後ろのテーブル席で凛に抱きつかれながらお猪口を手にしたアキトに言う。
何でも静岡県に出向いた先で知り合った地元民から送られてきたらしいが、どういう訳かアキトの表情は険しい。
「可笑しい…確かに記憶阻害の術を施してきたはずなのに、なんで千歌のお母さんには効いてないんだ………?」
「雑煮食いたい奴。テーブルの上を片付けろ」
「みんな! すぐ、すぐに片付けよう!」
奧から大きなお盆に人数分の雑煮を乗せて、カイトと希が出てくる。
それを聞いた花陽が即座にテーブルを片し始める。こんな夜更けに雑煮を食べれば太る、などという小煩い事は吹き飛ばして、そのはつらつとした姿に苦笑してミツザネとにこが台布巾に手を伸ばす。
「まぁ、ペコも年末年始はバイトに出ずっぱり。兄さんも兄さんでお偉いさんとの会合とかで仕事詰め……仕事納め、なんて言葉があるけど、そんなものは関係ないのかもしれませんね」
「ママも仕事………まぁ、おかげで兄弟連れでここに来れたんだけど」
矢澤家は母子家庭であり、唯一の肉親である母親は年末年始であろうとも仕事らしく、ならば妹や弟と一緒に呉島家で遊ぼうという事になったのだ。今は遊び疲れてぐっすりと眠っており、μ'sの雪穂と亜里沙と一緒になって眠っている。
「そうだとしても、きっちりと身辺整理をしていれば………」
「海未。もうすぐ年が明けるのだけら、そんなに叱らないの」
「せっかくみんなで年を越すんだから、笑顔でいましょ」
絵里と真姫に言われ、むぅと押し黙る海未。そんな彼女を慰めるかのようにみかんを差し出し、ことりがあっと声を漏らす。
「みんな!」
「ん?」
どうした、とコウタが尋ねようとした所で、誰も目を向けていなかったテレビからHappy new yearと歓声が上がり、どこからともなく除夜の鐘が鳴り響いた。
「あ、年明けちゃった………」
雑煮をテーブルに配る途中だった花陽が呟き、それぞれが互いに顔を見合わせる。
そして、背筋を延ばして、
「明けましておめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」
どことなくぎこちないお辞儀をして、ひとまず全員で雑煮を味わう事にした。
「んーー。さすが穂むらのお餅! 伸びるー!」
「いつもこの時期は頂いてますが、やはり何度食べても美味しいものです」
海未とことりが美味しそうに頬張るのを見て、ふとコウタは周囲を見回す。
「アキト、かよちん。あーんしてあげるね!」
「引っ付くな暑苦しい」
「り、 凛ちゃん……!?」
「………爆発すればいいのに」
「ここにザクロロックシードがあってですね、真姫さん」
「真姫ちゃんは羨ましいだけやんな」
「うぅ。明ける前に起こして欲しかったです……」
「雪穂に亜里沙。悪いわね、妹逹押し付けちゃって」
「2人の分の雑煮、あるわよ」
「ハラショー! これが………!」
「数が足りなくなりそうだな……」
「どうしたの、コウタ君?」
ゆっくりと見回した所で穂乃果と目が合い、コウタはどこか納得したように答えた。
「いや、年が明けた気がしない、ってのがわかったらさ」
不思議そうに穂乃果が首を傾げる。
「俺達って、知り合ってまだ1年経ってない。初めて一緒に新年を迎えたけれど、出会ってから一緒にいるからか、年を明ける前も後もずっと一緒にいるって予感がするから、新鮮さがないっていうか」
「…………年が変わろうとも、いつも通りという事ですか?」
表現を砕いた物に言い直してくれた海未にそういう事、とコウタは頷く。
まだ出会って1年も経っていないが、様々な苦難と共に経験して乗り越えてきた。何年も一緒にいたのではないかと思えるくらいに、築いてきた絆は濃密だ。
だからこそ、もう何があってもいつも通りに過ごすのだろうと、コウタの奥底には確固たる自信があった。
「……………そっか」
どこか安堵したように穂乃果が笑みを浮かべて、コウタと同じように一同を見回す。
不意に、視線を感じて向けると、カイトと目が合った。その目が訴えている事を、理解出来ないコウタでもない。
わかっている。ずっと一緒にいると言ったとしても、それはありえない。特に3年生には、もうすぐ別れが迫っている事も重々承知している。
だからこそ。
「……………今が最高、ってな」
誰にも聞こえないくらいの小ささで呟いた時、ふとパーカーのポケットに入っている携帯が震え出した事に気付く。
手に取ると、画面にはA-RISEの綺羅ツバサも文字が表示されていた。
「ツバサ……………? もしもし?」
『あ、コウタ君? 明けましておめでとう。突然なんだけど、μ'sの皆さんといる?』
「いるけど」
「誰?」
ことりが小声で尋ねてきたので、同じく小声で「A-RISEのツバサ」とだけ答える。アイドルに関しては地獄耳であるにこと花陽が即座に反応したが、真姫とアキトに首根っこを掴まれていた。
「どうかしたか?」
『今、シックスシップスの子らと一緒にアキバにいてね。どう? 神田明神にみんなで初詣に行かない?』
そう言われた事をそのまま一同に話すと、真っ先に立ち上がったのは穂乃果だった。
「行こう!」
穂乃果の声が届いたのか、くすりと笑ったツバサが『待ってるわね』を最後に通話を切る。
「……………うっし。行くか!」
「あぁ、行ってこい。虎太郎達を1人にさせておく訳にも…………」
「私と亜里沙が残ってますから、カイトさんもどうぞ!」
1人だけ
パーカーの上っからジャケットを羽織り、外に出る。
年の瀬とはつまり、極寒の中である。吐く息は当然白く染まり、穂乃果達には見つからないように飲んでいたお神酒という名目の日本酒で火照っていた頬も冷たく震える。
「コウタ君」
呼ばれて振り向くと、穂乃果が両頬を包んでくれた。一瞬にして温もりとは別の熱さがこもり、しかし気付かれないように目を瞬かせた。
「……………ありがと」
「行こ!」
見れば全員が歩き出しており、残されていたのはコウタと穂乃果だけだった。
手を差し出してくる穂乃果に、コウタは気恥ずかしさを覚えながら握り返す。
手袋をしていない2人の手は当然、すぐに冷え切っていて少し肌は痛々しい。
けれども、握り合って肌が重なり合っている所が、余計に熱さを帯びていくのを感じて、2人は妙に可笑しくて笑い合う。
小さなな笑い声は、新た強い年の夜空に響いて、未来へと羽ばたいた。
これ、思いついたの仕事帰りでしみじみとしたのを書きたくなったのでやってみました。
書いている時のBGMをμ'sのライブコレクションを流していたのですが、どうにも視界が緩んで執筆どころではなかったのを頑張って堪えました。
彼女達に出会えて、後悔している僕だけど。
彼女達に出会えてよかった。
そう思ってる僕。
今年はこれにて。
2017年も、ラブ鎧武!ともども、よろしくお願いします。
ではでは。