むかし、むかし。
あるところに、ひとつのまちがありました。
そこは、ほかのまちとはかくぜつされたようなおおきなおおきなまちでした。
そこでは、こどもがようせいをよびだしてたたかわせるげーむがあり、みんなのたのしみとなっていました。
しかし、それはすがたをかえていきます。
ようせいをたたかわせるはずが、こどもたちがたたかうものになり。
やがて、せかいをまきこんだおおきなたたかいになっていったのです。
ただのあそびだったはずなのに、そのせきにんをじぶんたちでおわなければならない。
そう、子供達は大人にならなければならなくなったのだ。
激化していく戦い。かつて友だったはずなのに刃を向け、敵だったはずなのに救われ。
世界の覇権を賭けた大戦。
勝利したのは、泣き虫だった。
何度も何度も絶望を前にして、何度も何度も膝を折って。
それでも、泣きながら進むと決めた。
そんな彼を、本当に強いと、 称えた友の屍を超えて。
なきむしは、神さまになりました。
女神さまのしゅくふくをうけて、すごい神さまに。
神さまは、考えました。
このままだと、せかいはたいへんなことになってしまうから、せかいのりゆうのないあくいを引き受けようと。
このみどりゆたかないのちにあふれたほしをすてて、いのちのないじごくへいこうと。
ばかなことを、とだれかがいいました。
それでも神さまと女神さまはくじけませんでした。
「いつだって世界は闇の中だ。だからこそ、光を灯しに行く価値がある」
そうして、神さまと女神さまは旅立ちました。
そだててくれたほしにさよならをつげて。
それからも神さまは、なんどもなんども助けてくれました。
助けてとよぶこえがあれば、かけずにはいられない。
きぼうのまほうつかいからうけつぎ、せいししたじかんのなかをだれよりも駆けるけいさつかんへ、そしてあらたな時代をいきる彼らへとバトンをわたして。
なにかあれば、どれだけ遠く離れていても、うちゅうがこころないものにおかされ、きゅうせいしゅたちがたたかううらがわで。
いつまでも、だれもみすてないと、たたかってくれているのでした。
けれども、彼はやはり、泣き虫だった。
子供のように情熱で飽きやすい。
幾度の戦いで友と再会し、神へと至った彼だが、それでもやはり、普通の少年だったのだ。
神さまはさみしかったのです。
女神さまはいるけど、それでもさみしたなったのです。
そこで神さまはおもいつきました。
だったら、ともだちをつくればいい、と。
にんげんはただしく生きていけるとしんじているから。
それが、ひげきのはじまりでした。
作り出した人々は、最初こそは想定通りに育ったが、やがて知恵をつきはじめ、そこからはまるで転がるボールのようだった。
知恵を身に付けた人々は、争い、やがて神さまの力に目をつけた。
そして。
神さまはひどくかなしみました。
うみだしたひとびとは、ただしい道をあるくどころか、たいせつな女神さまをうばっていったのです。
うばったのは、たたかいのはてにしんじあえたとものすがたをとったまじんでした。
まちがいだったのか。
にんげんは、へんしんできるはずなのに。
そこへ、ひとつの存在が囁き出した。
ちくたく、ちくたく、と秒針を刻むように唄いながら。
のしり、のしり、と顔のない獣のようにゆったりと。
或いは。
或いは。
或いは。
或いは。
いくつもの言葉を持つそれは、こう名乗った。
「鮮花、とでも名乗っておこうか」
それは黒髪の美女だった。
それは美しい女だった。
それは、情けない男の妻だった。
ある意味で、遠く遠く巡り巡り回った縁の果てに、感化された女の化身だった。
「君は人の悪意よりも善意を信じた」
「けれど、君が本当の悪意を知らなかったからね」
「ならば、私が夢を見さてあげるよ。夢ならば、ずっと幸せな世界を見続けていられるよ」
赤い3つの瞳を燃えさからせ、鮮花は告げる。
神さまは、その手を取ってしまった。
それは新たな神話の始まりでした。
こうして、神さまは今でも夢を見ています。
醒めない夢を。
子供のように情熱的で子供のような昔の彼のように。
すやすやと。
チクタク、チクタク、と秒針の音を子守唄にして。
神さまは、夢を見続けている。