遊戯王GX ~二人のHERO~ (旧題:遊戯王GX 精霊と転生者) 作:野良猫14
かなり時間かかりました、すみません。
とりあえず今回までは状況の説明と顔合わせばかりの内容です。
side八雲
「終わっちまった…」
入学式を数日後に控え、寮へと送る荷物をまとめていたのだが、小一時間もせずに終わってしまった。
まあ「こっち」の世界には何も持ってこれなかったし、来てからも必要最低限のものしか買わなかったからな。
手持無沙汰になり、部屋を見渡す。
ほんの数か月しか生活していない部屋。ようやく慣れてきたところだがこの部屋ともしばらくお別れだ。
…そう、ほんの数か月前にはこんなことになるなんて思ってもみなかった。
「いきなりだったからな。」
本当に突然だった。目が覚めたら不思議な空間にいて、デュエルモンスターズの神を自称する精霊に出会い、
そいつからの依頼でこの「遊戯王GX」の世界にやってきた…
その依頼も「精霊世界のバランスを、俺の世界からやってきたイレギュラーの性で崩れそうになっているからデュエルで倒して連れ戻してくれ。」なんていうめちゃくちゃなもの。
俺が選ばれたのだって「精霊が見える可能性があって波長が合ったから」なんて理由だしな。
誰に話したって信じてもらえないだろうし、最悪どっかにに連れてかれない。
自分だって今が夢の中で、2次創作の見すぎだと言われたほうが納得できる。
だが、実際にこの世界でこうやって生活を続けている以上、これは自分にとって現実ということで間違いない。
元の世界から見ればアニメの世界にいるとはいえ、生きている以上腹は減るし眠くもなる。それに…
「八雲ボーイ、少しいいですか?」
「ああ、入ってくれ。」
ドアを開けて入ってきたのは片目を長い銀髪で隠した若い紳士。
彼は俺のこの世界で初めて会った人物にして協力者…
「どうしたんだペガサス?」
そう、デュエルモンスターズの生みの親「ペガサス・J・クロフォード 」。
この世界に来た俺の衣食住のみならずあらゆる面でサポートしてくれている。
正直ペガサスがいなかったら、目的を達成するどころかこの世界で生きてくことすら不可能だろう。
「私は明日から出張なので出発を見送れまセーン。なので励ましの言葉とプレゼントを持ってきました。」
出張か、ペガサスも忙しい身だからな。
そんな中で俺の面倒を見てくれて色々と便宜も図ってくれている。
アカデミアの試験を実技から受けられたのも、ペガサスがオーナーに頭を下げてくれたおかげだ。
「まずは入学おめでとうございマース。これから大変なことが沢山あるでしょうが、学園生活も楽しんできてくだサーイ。」
自分のことのように満面の笑みを浮かべるペガサス。
「精霊界を救うためにイレギュラーを倒す」そういう目的のためにやってきた俺は、
ペガサスにとって大事な「デュエルモンスターズ」の世界を守れる可能性のある人間。
大事にされているのは間違いないだろう。
ただ、学園生活も楽しめというペガサスの言葉には確かな温かみも感じた。
それはただの協力者ではなく、まるで自分の子供に語り掛けるような…
「そしてこれが、プレゼントデース。」
手に持っていた箱から、一枚のカードを取り出しこちらに差し出してきた。
しかし、このカードは…
「何も…書かれていない?」
差し出されたカードにはカード名、レベル、イラスト、テキストにステータス、それら全て存在しない白紙のカードだった。
何かの冗談だろうか?人を驚かせることの好きなペガサスだし、悪戯という可能性も…
「オゥ。実はこのカード、あなたが出会ったという神様からもらったインスピレーションを元に、私自らデザインした精霊の力を宿したカードでした。」
どうやら本当にこのカードがプレゼントのようだ。
デュエルモンスターズを販売している「インダストリアル・イリュージョン」の名誉会長、
ペガサス自らデザインとは…どうやらこのカードには、相当力を入れたみたいだな。
「しかし、完成と同時にこのような状態になってしまいました。
…これは恐らく、宿っている精霊がまだ目覚めていないからだと私は思いマース。」
目覚めていない、か。
受け取った白紙のカード…確かに不思議な感じがする。
確かに脈打つ、小さな鼓動。いつか来る目覚めの時のために、力を蓄えているのだろうか?
「このような状態で申し訳ないないのですが、是非とも一緒に連れて行ってあげてくだサーイ。」
ペガサスとしても、ちゃんと完成した状態で渡したかったのだろう。
残念そうな、申し訳なさそうな表情をするペガサスだが、俺は全く気にせず懐にカードを入れた。
「当然連れて行かせてもらうよ。
ありがとう、ペガサス。このカードと一緒に、必ずデュエルモンスターズは守ってみせる。」
いくら名誉会長となって一線から退き隠居している身とはいえ、ペガサスだって暇ではない。
今もデュエルモンスターズのイベントがあれば必ず呼ばれ、世界中を飛び回っている。
そんな多忙な中で、わざわざ俺のためにデザインしてくれたカード…
例えまだ未完成でも、俺にとってはかけがえのない
「八雲ボーイ…」
俺の気持ちが通じたのか、一転して嬉しそうな表情に変わるペガサス。
全部終わったら、ちゃんとこの人にも恩返ししないとな…
数日後 デュエルアカデミア
入学式も何事もなく終わり、俺はレッド寮の自分にあてがわれた部屋で荷解きをしていた。
デュエルアカデミアは成績によって所属寮と制服の色が振り分けられている。
俗に言うエリートが属するのが「オベリスクブルー」。
特に問題のない生徒、もしくは新入生の成績優秀者が属する「ラーイエロー」。
そして落ちこぼれの属する「オシリスレッド」となっている。
当然施設にも差があり、とくに寮のランクは大きく分かれている。
レッド寮はボロアパート以外の言葉では現しようのない建物で、しかも一部屋を複数人で使うことになっている。
成績の低い生徒用とはいえ、さすがにほかの寮との差があからさまに酷い。
イエロー寮でも、十分おしゃれといった形容詞の付くペントハウスで当然一人一部屋。
ブルー寮に至っては、比べることすらおこがましいレベルの豪邸となっている。
まあ、自分で希望してオシリスレッドに入ったわけだし、文句を言うのは筋違いだな。
色々と動きやすいようにペガサスが一人で一部屋使えるように手配してくれただけでも十分マシだ。
「永嶺くーん、永嶺八雲くんはいますかにゃ~」
俺を呼ぶ声に気付き、荷解きを中断してドアを開ける。
そこに立っていたのは背の高いひょろりとしたメガネの男性だった。
「始めまして、レッド寮の寮長の大徳寺だにゃ。」
錬金術の担当教師にしてこのレッド寮の寮長、大徳寺先生。
その独特な語尾に、物腰柔らかそうな雰囲気が合わさり一見すると頼りなさそうに見える。
だが、その正体は…
「始めまして、永嶺八雲です。よろしくお願いします。」
まあ、今は特に気にしなくてもいいか。
行動を起こすその時までは、あちらも優しい先生でいるだろう。
むしろこちらから変にアプローチをかけてしまった場合、どう動いてくるかわからない。
ある程度先の展開が分かっているというアドバンテージを捨てるのも勿体ないし、できるだけ俺が覚えている物語の流れは崩したくない。
「いきなりで悪いんだけど、校長先生がお呼びだから校長室まで行ってほしいにゃ。」
校長からの呼び出し……おそらく寮のことだろう。
面倒だが、行かないわけにもいかないな。
「分かりました、ありがとうございます。」
早いところ終わらせて荷解きの続きをするか…
案の定、校長の話は俺の所属寮に関してだった。
俺は入学以前にペガサスを通して「所属をオシリスレッドにしてくれ」とアカデミアに伝えていた。
しかし俺は筆記試験を受けていないが、その代わりになったのはあの「ペガサス・J・クロフォード 」からの推薦状。
実技試験でクロノス先生を倒した実力も認められ、最低でもラーイエロー。
希望するなら特例としてオベリスクブルーからのスタートも可能だと説明された。
普通に考えれば、これは十分魅力的な話だ。
しかし、こちらにも理由があるのでその話は断らせてもらった。
これからイレギュラーを探す上で、俺が記憶している物語との差異がヒントになる可能性がある。
もちろん、俺という不純物が混じっている以上すでに本来の物語とはズレてしまっているし、イレギュラーが全く物語に介入してこない可能性もある。
けれど、イレギュラーも俺と同じ世界から来たのなら、何かしらのアクションを主人公「遊城十代」に起こしてくる可能性も十分にある。
それを考えると、十代と同じレッド寮にいるほうが何かと都合がいいだろうからな。
まあ、そんなこと説明できないので「筆記試験を受けていない以上、オシリスレッドからスタートするべきだ。」と考えていることにしておいた。
あまり納得しているような感じではなかったが、あちらとしても無理強いは出来ないようだ。
校長室からの帰り道、デュエル場から走っていく十代と翔を目撃した。
恐らく万丈目たちとひと悶着起こしてきたのだろう。
俺も寮に戻るか…
「あっ、八雲くん!」
そう思った矢先、最近聞きなれた声に呼び止められた。
「お、奏か。」
そこにいたのはやはり、監視対象であり個人的にも気になる少女「月代奏」だった。
あの入試以来、俺は彼女と頻繁に連絡を取り合っている。
色々な話をしていくうちにそれなりに打ち解け、最近ではお互いに名前で呼び合うようになっていた。
しかし、初めて見るオベリスクブルーの制服も似合ってるな。
…ノースリーブでここまでミニのスカートが指定の制服ってどうかと思うが。
「よう、こんなところで何してんだ?」
普通なら新入生は寮で歓迎会まで寮で待機の予定だ。
まあ、十代みたいに落ち着きのない奴もいるが、奏はそんなタイプじゃないしな。
「実は道に迷っちゃって…」
乾いた笑いをこぼしながら視線を後ろに向ける奏、その後ろには半泣きで「ごめんなさい」と謝っているルナの姿が見える。
…なるほど。大方ルナが飛び出してそれを追いかけているうちに、奏もどこにいるのか分からなくなったってところか。
「あ、でもね、天上院さんが助けてくれて今から寮に戻るところなんだ。」
だから大丈夫。そう言って今度はこちらを安心させるように笑った。
しかし、天上院ということは…
「あら、あなたは…」
その時、十代と翔が出てきたデュエル場からオベリスクブルーの制服を着た美人が現れた。
奏の話に出てきた「天上院さん」はやはり彼女だったか。
「あ、八雲くん、彼女が天上院さん。
…えと、天上院さん。こちら友達の八雲くん、です。」
奏は俺と天上院さんにお互いを紹介した。
どうやらまだ奏は天上院さんに慣れていないらしく、話かけるのも恐る恐るといった感じだ。
「始めまして、私は
そういって手を差し出してくる天上院さん。
こう改めて見ると、やはりすごい美人だ。
長い金髪に整った顔立ち、女性としては高い身長に抜群のスタイル。
雑誌やテレビに出ていても何ら不思議のないレベルの美女に、少し緊張してしまう。
「始めまして、俺は永嶺八雲だ。」
できる限り平静を装い握手を交わす。
だが、天上院さんはこちらの考えなど無視するかのように顔を近づけてくる。
少しでも前に踏み出せば唇どおしが触れてしまいそうな距離まで近づくと、天上院さんの瞳に確信の色が浮かんだ。
「あなた、受験番号0番の人よね?」
…なるほど、そういう事ね。
かなり浮き足立っていた気持ちがその一言で大分落ち着いた。
「ああ、そうだよ。」
苦笑混じりに返事を返す。
あれだけ派手なことをやったんだし「受験番号0番」として有名になっていても不思議じゃない。
むしろ話題にならないほうが不自然か。
「やっぱり…噂の有名人に会えて嬉しいわ。」
有名人ね…
入学式の最中も周囲から視線を感じたが、そういう理由か。
この状況がいったいどうこれからの展開に影響を及ぼしてくるのだろう…
「大分目立っちまったみたいだな…面倒事に巻き込まれないといいけど。」
もう少し奏や天上院さんと話していきたいところだが、歓迎会までの時間もない。
晩飯を食えないのは困るし、俺は2人に別れを告げてレッド寮へと歩みを進めた。
その後ろで…
「…もう遅いかもしれないわね。」
「…そうですね。」
そんな会話を2人がしていることに俺は気付かなかった。
時刻は深夜零時、俺は十代と翔と一緒に歓迎会の前に通ったデュエル場に再び来ていた。
原作どおり、歓迎会が終わった後、十代に万丈目から呼び出しがあった。
だがその内容に俺も連れてくるように添えられていたのは予定外だった。
無視することも考えたが、せっかくなので万丈目と顔を合わせておこうと思いついてきたのだが…
「待っていろ!このドロップアウトボーイの次はお前だ0番!!」
エリート意識が服を着て歩いているような男、「
デュエルの腕はそれなりのものだが、その高圧的で人を見下した態度はあまり好きにはなれない。
万丈目はそう言うと、十代とデュエルを始めてしまう。
たしかこの後ガードマンがやってきてデュエルは中断になるはず。
このままだと俺はデュエルを眺めているだけになりそうだ。
「なあ…、手が空いているなら俺とデュエルしないか?」
髪を逆立てている男とメガネの男、万丈目の取り巻きの2人に声を掛ける。
こんな時間にこんなところまで来て何もしないのも勿体ない。
名前も知らない奴らだが、せっかくだしこのデッキのテストに付き合ってもらおう。
「へ、ふざけやがって。」
「万丈目さん!コイツやっちまっても良いですよね!」
こちらを小馬鹿にして調子に乗り出す2人。
なんという小物臭、分かり易いやられ役だな。
「フン、好きにしろ。」
万丈目からのお許しも出たことだし、やらせてもらうとするか。
「よし、まずは俺が相手だ!」
逆毛の男がデュエルディスクを起動させる。
多少歯ごたえがないとテストにならないが…
「あぁ、よろしく。」
俺もデュエルディスクを展開し、腰のホルダーから新しいデッキを装着する。
まあ、せっかくだし楽しませて貰おうか!
「「
「俺の先攻、ドロー!」
先攻は取られたか。
さあ、どう出てくる?
「俺は『ブラッド・ヴォルス』を攻撃表示で召喚!」
奴のフィールドに現れたのは悪魔の形相をした復讐鬼。
特別は効果は持たないが優秀なステータスを持つアタッカーだ。
ブラッド・ヴォルス ATK1900
「さらに『
ブラッド・ヴォルスの持つ武器が禍々しいオーラを纏った剣に変わる。
しかし、「ブラッド・ヴォルス」に「執念の剣」か。懐かしいカードだな。
ブラッド・ヴォルス ATK1900→ATK2400
「そしてカードを1枚伏せてターンエンドだ。」
得意げにターンを終了する取り巻き。
攻撃力の高いモンスターを立てて、セットカードが一枚。
確かに悪い手ではないが…
「や、八雲くん?」
唐突にかけられる声。
振り返ると、オロオロしている奏がそこにいた。
予想外の登場に少し驚いたが、十代の近くに天上院さんの姿が見える。
おおかた、彼女に付いてきたのだろう。
「ああ、夕方以来だな。」
心配そうな表情をしている奏に笑いかける。
こんな時間に施設の無断使用。入学早々見つかったら大目玉を食らう行為だ。
自分もその現場にいるということに、真面目な奏はえらく気を揉んでいるようだ。
…さっさと終わらせて引き上げるか。
「俺のターン、ドロー!」
こちらの手札は悪くない、最初から飛ばして行こう。
「スタンバイフェイズに速攻魔法『
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、カードを2枚ドローする。」
「わざわざスタンバイフェイズに手札交換を?」
奏の疑問ももっともだろう。
通常、手札からカードを発動するのはメインフェイズに入ってからだ。
わざわざ手札交換をスタンバイフェイズにする意義は薄い。
…だが、モンスターをスタンバイフェイズに墓地に送る行為はそうとも言えない。
「そして、今墓地に送った『ミンゲイドラゴン』の効果発動。
自分のスタンバイフェイズに墓地にドラゴン族モンスターのみが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、
このカードは墓地から特殊召喚できる。」
「そっか、そのためにスタンバイフェイズに手札交換をしたんだ。」
フィールド上に現れるのは頭部に口しか存在しない珍妙なドラゴン。
そう、スタンバイフェイズにのみ効果を発動するモンスターも少なくない。
そういった効果を手早く発動させるにはこう言った方法もある。
「えっ?」
「ドラゴン?」
「E・HEROじゃない?」
十代、翔、天上院さんが驚きの声をあげる。
どうやらこっちの世界では、複数のデッキを使い分けるデュエリストは少ないらしい。
俺のいた世界では当たり前のことだったから、驚かれるのは変な感覚だ。
ミンゲイドラゴン ATK400
「フンッ!僕の『ブラッド・ヴォルス』の攻撃力は2400ポイント、そんな雑魚を特殊召喚したところで無駄だ!」
確かに攻撃力では「ブラッド・ヴォルス」の足元に及ばない。
しかし、モンスターっていうのは…
「ステータスの低いモンスターでも、能力によっては強力なモンスターを凌駕することもある。
こんなの基本だぜ、エリートさん。」
「そこまで言うならやってみろ!落ちこぼれ!!」
落ちこぼれねぇ…
そいつに負けた奴はなんて呼ばれるのか、考えておいたほうがいいな。
「魔法カード『スタンピング・クラッシュ』発動。
自分フィールド上にドラゴン族モンスターが存在する時、
魔法・罠カード1枚を破壊し、そのコントローラーに500ポイントダメージを与える。
俺は『執念の剣』を破壊!」
カードから現れた巨大な竜の足に『執念の剣』のは踏みつぶされ『ブラッド・ヴォルス』の攻撃力は元にもどる。
ブラッド・ヴォルス ATK2400→ATK1900
??? LP4000→LP3500
「クッ!?しかし、『執念の剣』は自身の効果でデッキの1番上に戻る!」
デッキの一番上に戻る効果ね。
使いまわしができると言えば聞こえは良いが、ドローをロックしてしまうリスクが付きまとう。
優勢時ならまだいいが、一旦劣勢にまわってしまえば…
「行くぜ、『ミンゲイドラゴン』を自身の効果で2体分の生贄として…」
『ミンゲイドラゴン』はドラゴン族モンスターを召喚するための生贄になる場合、1体で2体分の生贄として扱える。
つまり、俺がこれから呼び出すのは、最上級レベルのドラゴン!!
「現れろ!『
光を放ち、闇を纏いフィールドに降臨する『ライトアンドダークネス・ドラゴン』。
半身に光を、もう半身に闇を蓄えたこのデッキのエース。
「すごい…」
光と闇、その相反する2つの力をその身に宿すドラゴン。
その美しさに、周囲の人間は感嘆の息を漏らす。
「………」
その中で、ほかの誰よりも『光と闇の竜』に目を奪われていた奴がいた。
だが、俺はこの時そいつの存在に気付くことができなかった。
「行け『光と闇の竜』!『ブラッド・ヴォルス』に攻撃!!」
俺の攻撃宣言を受けて『光と闇の竜』はその力を口部に収束させる。
このまま攻撃が通れば相手の『ブラッド・ヴォルス』を破壊でき、相手にダメージを与えられるが…
「クソッ!リバースカード、オープン『
このカードにより「無駄だ。」なに!?」
やはり罠を仕掛けていたようだが、その程度じゃ俺の『光と闇の竜』は止まらない。
奴の罠により首に手榴弾付きの首輪が出現するが『光と闇の竜』の頭部から発せられた雷により無効にされてしまう。
「なんだと!?」
「『光と闇の竜』は、自身の攻撃力と守備力を500ポイントづつ下げることで
効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にする。」
これこそが『光と闇の竜』の真の力、あらゆる効果を無効にする裁きの雷。
だが、その強力な効果の代償として自身のステータスを失ってしまう。
光と闇の竜 ATK2800/DEF2400
→ATK2300/DEF1900
「そんな!?」
しかし、それでも『光と闇の竜』の攻撃力は2300ポイント。
奴の『ブラッド・ヴォルス』を倒すには十分だ。
「攻撃を続行する。シャイニングブレス!」
「うわぁぁぁ!!!」
放たれた眩い光の波に『ブラッド・ヴォルス』は飲み込まれ消滅する。
さらにその余波はプレイヤーをも飲み込んだ。
??? LP3500→LP3100
「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ。」
セットしたカードもそれなりの物。
奴の動き次第では、次の俺のターンは来ないかもしれないな。
「なんてモンスターなんだ…」
『光と闇の竜』の強力な力に、天上院さんや翔は未だに驚きを隠せないでいる。
確かに、『光と闇の竜』の効果は強力だ。しかし、当然デメリットも存在し、状況によっては容易く破壊もできる。
…だが、そう易々とやらせはしない!
「ぼ、僕のターン、ドロー!」
動揺を隠せずにいる逆毛の男。
まあ、ドローカードは自身の効果でデッキトップに戻った『執念の剣』に決まっている。
それを入れて奴の手札は4枚。『光と闇の竜』を突破できるかな?
「そんな竜!このターンで倒してやる!!」
別に『光と闇の竜』が倒されても次の手は用意してある。
しかし、そう簡単には行かないぜ。
「僕は『アックス・レイダー』を召喚!」
斧を持った戦士が現れる。
たしか攻撃力1700の特に効果を持っていない通常モンスターだったはず。
これまた懐かしいカードだな。
アックス・レイダー ATK1700
「手札から『執念の剣』を装備!」
「無効だ…」
再び装備される『執念の剣』。
だが、いまの俺のフィールドには『光と闇の竜』がいる。コイツがいる限り装備カードの発動すらも無効にする。
光と闇の竜 ATK2300/DEF1900
→ATK1800/DEF1400
「『強欲な壺』を発動!」
「無効だ…」
だが、『光と闇の竜』の無効効果は強制効果。俺の意思とは関係なく敵味方問わず全て効果に発動してしまう。
つまり…
光と闇の竜 ATK1800/DEF1400
→ATK1300/DEF900
「ここまで攻撃力を下げれば『アックス・レイダー』で倒せるがまだ終わらないぞ!『突進』を発動!」
「無効だ…」
コイツがやったように連続でカードを発動されれば『光と闇の竜』のステータスは強制的に下げられてしまう。
戦術としては何も間違ってはいないが、さすがに手札を使いすぎだ。
光と闇の竜 ATK1300/DEF900
→ATK800/DEF400
「ハハハッ、行け、『アックス・レイダー』!目障りな竜を蹴散らせ!!」
力を失った『光と闇の竜』に『アックス・レイダー』が斧を振りかぶり突進する。
この戦闘が成立すれば『光と闇の竜』は破壊されてしまう。
「リバースカード、オープン!」
だが、俺とて何も策を用意していないわけではない。
こちらのリバースカードを警戒しないとは、オベリスクブルーの制服が泣いているぜ。
「バカめ!自分のモンスターの効果を忘れたのか!?」
確かに本来なら『光と闇の竜』の効果でこのカードの発動は無効にされてしまう。
だが…
「…『光と闇の竜』の無効効果は、自身の攻撃力と守備力を500ポイントづつ下げる必要がある。
つまり、攻撃力か守備力のどちらかが500ポイントを下回った場合効果は不発となる。」
『光と闇の竜』が放とうとした雷は拡散してしまい、俺のカードには届かない。
やつが限界まで『光と闇の竜』効果を誘発させてくれたおかげで手間が省けた。
「よって、このリバースカードは発動は無効にならない!!」
「何!?」
そして俺が発動したこのカードは…
「『あまのじゃくの
「『あまのじゃくの呪い』…だと?」
「それって確か…」
「どんな効果だっけ?」
周囲は予想外のカードの登場に驚く。
あまり有名なカードじゃないが『光と闇の竜』とのコンボはなかなかに面白いことになる。
「このカードは発動ターンのエンドフェイズ時まで、攻撃力・守備力のアップ・ダウンの効果を逆にするトラップ!
俺の『光と闇の竜』はステータスが2000ポイントダウンしている。よってこのターン中は逆にステータスが2000ポイントアップ!!」
力を取り戻すだけでなく、その輝きを極限まで高める『光と闇の竜』。
このコンボが決まった以上、このデュエルの勝敗は決した。
光と闇の竜 ATK800/DEF400
→ATK4800/DEF4400
「攻撃力…よ、4800だと!?」
「すごい…」
「なんてコンボなの…」
「『あまのじゃくの呪い』に、こんな使い方があったなんて…」
『光と闇の竜』の効果、そのデメリットすらも利用したコンボ。
その鮮やかさに周囲の人間は唖然としている。
「攻撃宣言を取り消すことは出来ないぜ!迎え撃て!!『光と闇の竜』!!!」
「あ、あぁ…」
光と闇の竜の体が光を増す。
その光は闇へと変わり『光と闇の竜』の胴体に存在する第2の口へと収束する。
「ダークバプティズム!!!!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
放たれた圧倒的な闇の力に全てが飲み込まれる。
奴の十分に残されていたライフは一瞬で吹き飛ばされる。
??? LP3100→LP0
これで終わりだ…
お疲れ様、俺のモンスターたち…
俺のデュエル終了後は原作通りガードマンたちが近づいてきたため、十代と万丈目のデュエルは中断、俺たちはデュエル場から逃げ出した。
原作と違うところと言えば明日香が十代だけでなく、俺にも興味を持ったことぐらいだ。
「しかし、惜しかったな十代。あのままデュエルを続けていたら勝ててたんだろ?」
レッド寮への帰り道の途中、俺は十代に問いかけた。
あの時は自分のデュエルに集中していたから、十代と万丈目のデュエルはほとんど見ていなかった。
「う~ん、そうなんだけどさ。
万丈目の奴、八雲があの竜を召喚してから様子が変でさ。俺とデュエルしてるのにあの竜ばっかり見てたんだよ。」
…確かに『光と闇の竜』は万丈目の相棒とも言えるカードだ。
だが、それはまた別の物語、あったかもしれない平行世界での話だ。
十代の使っているデッキが俺のHEROデッキと違う段階で、そちらの世界ではないことは間違いない。
この世界では幼少時に十代は「響紅葉」と出会わず、万丈目も『光と闇の竜』と出会っていないはずだが…
例え世界が違っても、何か感じるものがあったのだろうか?
「…ってか八雲!俺と真っ先にデュエルする約束だったろ!!約束破ってるじゃん!!!」
今になって思い出したのか、十代は急に騒ぎ出す。
順番なんてどうでもいいと思うが、十代にとっては大事なことだったのだろう。
「そうだったな…悪かった、明日にでもデュエルしようぜ。」
俺としても十代とのデュエルは心待ちにしていた。
この物語の主人公「遊城十代」。コイツとなら、最高にワクワクするデュエルができそうだ!
「おしっ!約束だぞ!!絶対忘れるなよ!!!」
俺の返答に満足したのか、十代は笑顔に戻って走り出してしまう。
悪いことじゃないが、本当に素直な奴だ。
「はいはい。」
とりあえず、もう時間も大分遅い。
明日に備えて、まずはぐっすり寝よう…
第3話リメイク版、終了です。
もともと八雲に『光と闇の竜』を使わせたのはデュエル展開のマンネリ防止のためでした。
「別のオリキャラに使わせればいい」とも思ったんですが、そんなにオリキャラ出しても扱いきれそうになかったんですよね。
今にして思えば失敗だったかと思いますが、やはり今更追加でオリキャラ出すのもアレなんでこのまま行きます。
とりあえず今回である程度の説明は終わったんで次回以降はデュエルメインの話に持っていけそうです。
次回と次々回ではVS十代となる予定です。
このデュエルは自分がこの小説を書くきっかけになったものなので、思い入れもだいぶあります。
そんなわけでまた投稿には時間がかかってしまうかもしれませんが、できるだけ早くあげられるように頑張ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
感想や質問、誤字脱字やご指摘などはご自由にどうぞ。
それでは、これにて失礼いたします。