お待たせ致しました
オラリオから離れたとある村。
そこに人はおらず、食卓はそのままにされており、畳みかけの服も子供の描きかけの絵も放置され、先程まで人がいたと思われる痕跡が多々残されていた。
まるで急いで逃げ出しかのような村の様子は正しく、村の者達は全てに構わず逃げ出していた。
着の身着のまま。
それだけで逃げていた。
「はぁ……!はぁ……!」
「早く逃げろ!!」
「他の村も駄目だ!とにかく、とにかく逃げるんだ!」
男も女も、子供も老人も、皆が必死に逃げていた。
涙を流し、汗を拭い、先のことなど考えずただ逃げていた。
一目見て理解した。
ただ逃げる。
口よりも足を動かし、少しでも離れるように。
すでに多くの村人が犠牲となった。
突然やって来て、逃げる間もなく襲われた。
誰も助けに来ない。来るはずがない。
アレに狙われてしまっては、何処に逃げても同じなのだから。
「ひっ……!き、来たぞぉぉぉぉぉぉ!!」
後ろの男が気付いた。
その言葉に誰もが怯え始める。
ある者は足が止まり、ある者は震えながらも逃げようとし、ある者は我が子を庇うように覆いかぶさった。
しかし、そのどれもが無駄であった。
後ろの男の身体が半分になった。
隣にいた老人が消えた。
前を走っていた娘が闇に呑まれた。
誰も悲鳴をあげる暇もなく、誰も為す術なく、アレに呑まれていった。
子供に被さる女は言う。
「どうか、どうかこの子だけでも……」
それもまた意味をなさず、子供と共に
ソレはその場にいた全ての人間を丁寧に食し、次の村へと向かう。
動く度に地震が起き、通った後は何も残らない。
あまりにも長い体躯には食べた量がまだ足りなかった。
もっと、もっと食べたい。
人も、
人々がいなくなった村も呑み込んだ。
動物達が住んでいた森は消え失せた。
何も残らない。
それが通った跡に残るのは、大きな何かが通った痕跡と、無数の足跡のみであった。
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英霊と過去の英雄による戦闘の影響は離れていたリュー達にも伝わっていた。
リューは現在、【アストレア・ファミリア】の面々とアーディ達【ガネーシャ・ファミリア】の面々と共に戦闘を行っていた。
避難を拒む市民を何とか説得し、護衛しながら避難所へ送り届ける最中に
「あの方向は……まさか!」
「リオン、あっちって……!」
リューとアーディは戦闘中ではあったが音が聞こえてきた方向に何があるのか理解する。
二つの衝撃の内、片方は自分達の仲間がいた方角であり、避難活動を行っていた辺りだとすぐに気付いた。
それがあまりにも恐ろしかった。
先程まで笑いあっていた仲間達がどうなっているのか、それがまた不安を募らせる。
しかし、敵もその考えに
次々と襲いかかってくる敵は、まるでリュー達をこの場に留まらせるかのように計算して襲撃を繰り返していた。
その繰り返しを幾度か続けた後、今度は大規模な破壊音が近くで聞こえた。急いでそちらを振り返れば、
誘われた。そう考えるのに時間は必要なかった。
厄介な策に嵌められ、リュー達は圧倒的に不利な状況に追い詰められていた。
質ではリュー達の方が練度が高く多少の数の差も苦にはならないだろう。だがその差をひっくり返すのが数の暴力である。
いくら強いと言っても人である限り限界はある。
疲労が溜まれば動きは鈍くなり、精細を欠き、追い詰められて最後には血の海に沈んでしまう。
対して使い捨ての駒として用意された弱者達はただ挑むだけで構わない。
自分達が使い捨てであると理解し、考えることをやめ、盲信してしまった時点で救いの道は断たれてしまっている。
今の行いが本当に正しいか否か、思考を止めた弱者はただ敵を疲弊させるためだけの邪魔者であり、大切な人と会いたいという純粋な心を邪悪な神に利用された被害者でもある。
それ故に冒険者達は非情の一手を打てない。
相手が悪であると理解していながらも、彼女達は優しいから。
その優しさが身を滅ぼすというのに、手を伸ばすことをやめることが出来ない。
「待っていたぞぉ、冒険者!お前達の滅びの時はすぐそこだ!お前達が滅びるその最期の一瞬を見届けに来てやったぞぉ!」
そう告げるのは
ヴァレッタが回復し戦線復帰を果たしたことで、エレボスから各幹部への指示が『従え』から『竜を食らう蟲の準備』へと変わり、更に『好きにせよ』と付け加えられた為、オリヴァスは真っ先に希望から絶望に叩き落とされるであろう冒険者達を見に来たのであった。
無論、冒険者達はただオリヴァスが大部隊を引き連れ暴れ始めるとしか考えていない。
その裏の策を読むなど、オラリオ随一の指揮官であるフィンをもってしても読むことは不可能である。何かある、まではわかったとしても、その『何か』を知ることは、神ですら難しい。
そしてその『何か』が彼等に滅びをもたらす絶対的な存在だとしても、今の彼等にどうこうする程の力は残されていない。
既に、冒険者達は
その思惑を知らないリュー達は臨戦態勢をとる。
そしてオリヴァスの言葉の真意を聞き出す。
「【
リューの瞳から溢れ出る勇気と覚悟に、オリヴァスは思わず上げていた口角を下げてしまう。
そこに嘲笑ではなく、
これから何が起きるか知らない彼女達に、オリヴァスは先程とうってかわり静かに話し始める。
「無知とは哀れだ。あぁ、これから何が起きるとも知らないお前達は、本当に哀れでならない!」
どこか怒りも含んだ様なオリヴァスの急変ぶりに、リュー達は動揺するしかなかった。
嗤いに来たのかと思えば、突然憐れみを向けてくる敵を前に、その真意を測りかねる。
そんなことも気にした様子もなく、オリヴァスは言葉を続ける。
「お前達は忌むべき敵であった!目障りで鬱陶しい偽善者共だった!しかし、しかし!そのお前達がこんなにも簡単に消えてしまうことが、私はあまりにも虚しい!」
「何を、言っているの?貴方は、さっきから、何を?」
「あぁ、神よ!我等が邪神よ!我々が望むのは確かに『破壊』と『殺戮』の上に成り立つ『混沌』だ!しかし、これではあまりにも、寂しいではないか」
アーディもどうにか真意を知ろうとするが、どう聞いても理解できなかった。その挙句、今度は涙を流し始めるオリヴァスに、最早質問など無意味だと悟ってしまう。
何を聞いても今のオリヴァスには届かない。
だからリュー達は対話を諦め、武器を構える。
目の前の敵を倒す。
今はそうする他ないと判断する。
だが、冒険者のその姿を見てもオリヴァスは態度を変えることは無かった。
「お前達に告げてやろう。間もなく、オラリオは滅びる。冒険者も、民衆も、神々も、このオラリオの全ての命は潰える!」
「「!?」」
「忌々しいバベルも!築き上げた文明も!満ちていた活気も!全て無へと化す!今からやって来る【災厄】によって!」
【災厄】
その言葉を聞き、今から只事では無いことが起きると即座に理解する。
オリヴァスのこの態度も、その絶対的優位は揺らがないという自信からくる余裕であるのだと気付いた時にはリュー達は大勢の
リュー達がフィン達本部に報告をするのを防ぐ様に、今までとは比にならない数の
「最後にお前達の顔を見れた。さらばだ、正義を名乗る好敵手共。二度と会えぬことを非常に残念に思う」
そう告げてオリヴァスを含む残りは何処かへと去っていく。
それを追いかけようにも周囲の者達がその道を塞ぎ、追いかけることは許されなかった。
蹴散らそうにも時間稼ぎに重きを置いた目の前の敵は、死なないように立ち回るため非常に厄介極まりなく、今伝えられた危機を本部に伝えに行くこともできず、去って行くオリヴァス達を追うこともできない状況に、リュー達は歯を食いしばりながら何とか敵を倒し回るしかできなかった。
「くっ……どけぇ!」
「リオン!落ち着いて!」
「これが落ち着いていられますか!早く【
「わかってるよ。でも、まずは落ち着いて、リオン」
怒りに満ちていたリューはアーディに肩を掴まれ、目を合わせられる。
そこで合わせたアーディの辛そうな瞳に、やっと頭に昇っていた血が下がっていく。
ここで感情任せにしてもただ体力を消費するだけであり、それはなんの解決にも繋がらない。故に冷静に、まずは目の前の問題を一つずつ解決していくしか方法はない。
それを理解したリューは深呼吸をして、己を律する。
やるべきことは、オリヴァスを追うことよりもフィンへの報告。
そのためには目の前の敵の包囲網を潜り抜け、本部まで迅速に行くことが必要であり、それを行えるのはある程度のLvとステータスを持ち、できれば敏捷値が高い者が望ましい。
その適した人材を考えれば、リューかアーディだろう。
しかし今の彼女達はこの場でも主力と言って差し支えない存在。
どちらかが抜けた穴は必ず隙を生み、決定打を相手に与えられかねない。
どうするべきか。
「リオン、私が行くよ」
「待ってくださいアーディ。もう少し敵を減らさなければ、必ず犠牲が出てしまいます。それに私達のLvでは正直たどり着くのは厳しい」
一人でフィン達本部の元まで向かうというのは、ハッキリ言って無謀である。距離も離れているが、それよりも敵の追撃を受け続けなければならないということ他ならない。
その身を危険に晒され続けることは簡単に容認できることではなかった。
これがオッタルやガレス、あるいはシャクティ達ならば問題なかったが、Lvや戦闘経験の少なさが決断を鈍らせる要因である。
話し合う時間も惜しい。
一刻の予断も許さないこの状況で判断をするには彼女達は若かった。
フィンやリヴェリア達の様に指揮能力に優れた者達はそれまでの積み重ねや経験があるからこそ適切な判断を下せることができる。
切り捨てなければならないもの、優先すべき情報、それらの取捨選択が彼等を強くした。
だがリューやアーディにはそれが足りていない。
ここでも圧倒的に不足した経験が彼女達の判断を鈍らせる。それを補える程の才能も彼女達には無い。
これも一つの壁と考えるべきなのかもしない。
「……ねぇ、リオン」
「アーディ?」
何か覚悟を決めた様子のアーディに、リューは名前を呼ぶことしかできなかった。
それでもアーディは落ち着いた様子で話を続ける。
今から話すのは突拍子の無いことであるが、リューならそれでも受け入れてくれると信じている。
それは二人の間にある確かな絆をアーディは信じているから。
「私はね、本当は今、こうしてリオンと戦っているのが不思議なんだ」
「何を言って───」
「本当は、あの
「違う。そんなことは無い!」
それは事実であった。
あの状況は、間違いなくアーディは命を落としていた。
誰もが気付くことができず、皆の警戒を潜り抜け、予想をしていなかった事態であったからこそ、それは必殺の策であった。
しかし、彼女は助かった。
「ううん。本当はそうだったんだよ。でもね、私はジャンヌさんに助けられた」
「それは───」
「ジャンヌさんが今どうなっているのかわからないけど、でも私は本来死ぬはずだった運命が今、こうしてリオンと一緒に戦っている。自分の足で立って、この眼で見て、この耳で聴いて、この世界で生きてる」
「……」
それは運命に抗う少女の言葉。
定められた死を乗り越え、決められていた道筋から外れ、運命を退けた少女の勇気。
誰もを笑顔に変えてしまう『道化』の英雄に憧れ、そんな彼の様になりたいと思い、その背中を追い続けた少女の覚悟。
一度運命を退けた。
それはどんな介入があったとしても、彼女は確かに未来を変えたのだ。
それが彼女を奮い立たせる。
「だからねリオン。私は死ぬために行くんじゃないよ。皆を助けるために、『明日』を生きるために行くんだよ」
「アーディ……」
「私は死なない。死にたくない。こうして助かった命を、絶対に捨てたくない。だからリオン。私を信じて」
目の前の少女には既に絶望は無い。
それは『道化』に教えてもらったから。
絶望も、悲哀も、憎悪も、怨嗟も、そのどれよりも希望は、正義は、勇気は、そして何より『笑顔』は素敵だから。
だから笑おう。あの『道化』が笑い続けたように。
だから挑もう。あの『英雄』が成し遂げたように。
今、オラリオから笑顔が奪われているなら、明日には笑顔で溢れさせるために。
明日が駄目なら明後日に。
明後日が駄目ならまた次の日に。
いつか来る未来を笑顔で溢れさせるために。
その覚悟を決めた親友の姿を見て、エルフの少女も決断する。
「…………あぁ、貴方はいつもそうだ。一度決めれば、どうしても譲らない。きっと私が何を言っても変わらないのでしょう」
「ごめんね」
「謝らないでください。貴方のそんな所も、私は好きなんですよ」
「リオン!」
それは親愛。
唯一無二の友を得た彼女達にしかない眩しい絆。
目には見えなくとも、確かに繋がっていると感じることができる決してちぎれることのない糸。
やることは、成すべきことは決まった。
片や道を作り、この場で耐え続ける。
片や道を進み、情報を必ず届けるために走る。
「えぇ、だから私は貴方を信じます。ですが、そうなるとやはり私が行きます。貴方のスキルは皆に力を与えます。それに、私の方が速いですから」
「……あはは、確かにそうだね。うん、お願い、リオン」
アーディのスキルの
それにリューは機動力と大火力を両立できる高難度レア職の『魔法戦士』である。そのことを踏まえるとリューが本部へ向かう方が良いとも言える。
アーディも頑固な所はあるが、リューも頑固な所がある。
お互い譲れない物があるからこそ、大切に想うからこそ妥協はできない。
僅かでも被害を抑えるためにも、今考えうる最善を実行する。
「任せてください。だから、アーディも生きてください。もう一度会ったその時は、また踊りましょう」
「うん!道は作るから!」
「任せました!」
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「なるほど。君についてはよく分かったよ」
オラリオから少し離れた街にて、神ヘルメスはとある人物と話していた。
眷族が見つけた謎の女性のような青年の目的も聞き、
先に眷族達に荷物の運搬をさせ、ヘルメスはまだ青年と話すことがあり、その場に留まる。
目的は知った。
しかしその正体や
相手は人であるが、限りなく自分達に近い存在、つまるところ神かそれに準ずる存在であることを指し示している。長い白髪や端正な顔立ち、細い体格から女性に見間違えてしまうが、それでも男性であるのはよく分かり、今オラリオにいる二人の
そうなると目の前の青年が彼等並に強いという懸念が生まれる。
本人は戦闘は不得意だと言ってはいるが、一人で百以上もの
敵ではないし、多くの
だがそれだけで信用するにはあまりにも根拠が足りてなさすぎる。
それに彼の目的も本当なのか疑わしい。
あまりにも無謀で現実的ではない目標を簡単に信じる程ヘルメスは単純な神ではない。
腹の探り合いをしようにも向こうは興味はなく、早くこの場を去りたい様子ではあった。
ヘルメスも多少時間があるとはいえ急いだ方が良いのは間違いない。
潮時か。
そう思い立ち去ろうとすれば、目の前の青年と同時に嫌な気配を感じ取った。
あまりにも邪悪で、吐き気を
まだ遠くにいる。
しかし、それは確かに迫って来ている。
確実に近付いてくる気配の目標の先にあるのは恐らく、オラリオ。
エレボスが用意した隠し玉という考えに行き着くのもそう時間はかからなかった。
「すまない。俺はすぐにオラリオに戻る。君も早く逃げた方が良い」
ヘルメスはそう一方的に告げ、去ろうとする。
しかし「待て」と呼び止められた。
そして投げ渡されたのは紙が巻かれた瓶が二つ。
恐らく手紙なのであろうが、書かれている文字はこの世界のものではなかった。
全知と言えどもこの世界のものではない文字は対象外である。
ただハッキリ分かるのは、目の前の青年も、旗を振る少女も、雷を起こす青年も、この世界の存在ではないということだ。
「それを
「……これが何か聞いても?」
「ちょっとした手紙と、今から来る【災厄】への、『切り札』だ」
目の前の青年はこれから何がやって来るのか分かっているのだろう。
それを知りながらオラリオには来ないということは、彼の目的もあってということもヘルメスは理解している。
何せ彼はその目的をもう
今更その信念を変えることは無いと確信を持って言える。
「僕は忙しい。ここにいる患者達も避難させなければならない。この街は恐らく通り道となる。今のうちに少しでも離れなければならん」
「……今から何が来るんだい?」
それは何よりも知らなければならない情報であった。
目の前の青年は【災厄】と呼んだ。
それが何を指すのかヘルメスには知る由もないが、だが危険度は遥かに高い厄介な案件だということはよくわかる。
それに対抗するためには、少しでも情報を得ていたかった。
目の前の青年もその【災厄】によって多くの人が死ぬことを良しとはしない様で、ある程度情報を開示してくれる。
「神時代よりも前の、『英雄時代』の【災厄】だ」
「何だと?」
「詳しい話はその手紙に書いている」
『英雄時代』
一人の『道化』を始まりとし、数多の英雄が生まれ、人の身でありながら多くの魔物を打ち倒し、そして今という『未来』を繋いだ者達の時代。
黒竜を退けた
それは最強であった
そんな英雄達ですら倒せなかった怪物、と考えた方が良さそうである。
だが何故彼はそんなことも知っているのだろうか?
「何故そこまで知っているんだい?」
「使い魔を使って見た。あれは僕の手には負えない。だから
そうして青年は自身の傍に寝ている白蛇を撫でる。
美しい白い鱗と赤い瞳の白蛇が彼の使い魔というやつなのだろう。ヘルメスからすれば聞き慣れない単語が多く多少混乱していた。
情報を素直に教えてくれるつもりは無いのか?と疑問すら抱いてしまう。
彼は確かに詳細は教えてないが、一応情報提供はしている。
一応しているのだ。嫌いな神相手に。
「さっきから言ってる
「何だ、真名を明かしていたのか。あぁそうだ」
「ちなみに君の名前は?」
「さっきも名乗っただろ?お前の脳みそはあっちのヘルメスと同じでちゃらんぽらんなのか?」
「酷い言い草だなぁ。確かに聞いたが、
「教えないに決まっているだろ。特にお前達神にはな」
これ以上は
これでも一応旅と商人の神である。これをきちんとしなければ最早この神はただのちゃらんぽらんの神と呼ばれかねない。
本人もある程度自覚はしているが、それを他人に言われるのでは
特に女の子に言われた時には一日二日は寝込みかねない。
そうならないためにもヘルメスは決める時は決めるようにしている。
「嫌われたものだね。まぁ依頼の件は了解した。責任をもって届けよう」
「あぁ。その『切り札』が、お前達にとっての
その言葉を敢えて使った、ということは、彼はやはり神の中でも自分達に近いのだろうと推測する。
いよいよ目の前の青年の正体が分かりそうではあった。
しかし、それを考察する時間は今はない。
代わりに別の質問をする。
「……これは、彼等しか使えないのかな?」
「そうだ。あいつ等しか無理だ。お前達に無い物をあいつ等は持っているからな」
ちょっとした頼みの綱だった。
これは眷族達が乗り越えなければならない壁であり、それを部外者に邪魔されるのはヘルメスとして嫌である。
確かに多くの命が救われた。
しかし、それは本来喪われる命であろうとも、それが運命だと受け入れるべきだと考えていたからだ。
できる限り邪魔にはならないようにしているが、それでも彼等という存在を受け入れることはヘルメスとしては難しかった。
ロキやガネーシャならば喜んで受け入れるのだが、仕方ないと割り切る他ない。
せめて眷族達自身で【災厄】とやらに立ち向かって欲しかった。
例えそれが、多くの犠牲を生み出そうとも。
「そうか。色々とありがとう。またいずれ何処かで会えることを期待しているよ」
「僕はもう会いたくない」
青年は冷たくそう告げて怪我人達が待つ広場へと向かって行った。
あまりにも嫌われた様な態度にやれやれと感じながらも帽子を深く被り直し、別れの言葉を残す。
「それでは、またな。
本当はアーディを向かわせたかったのですが、スキルなど確認しているとリューさんの方が向いていたため変更しました。
文脈がおかしな所があるかと思いますがご了承ください。
その辺りをご指摘頂けると幸いです。
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