金時の大宝具、摂津式大具足・熊野が召喚され金時と一体化する。
魔力は巡り、前回以上に身体へと馴染んでいた。
そのことが金時に確信を与え、目の前の大百足へと目を向ける。
オルタの宝具による大
熊野と共に戦うという精神的余裕。
この世界の人々を護りたいという意志。
それぞれから託された想い。
それが金時を強くしているからだろう。
声が聞こえる。
オラリオ全体から声が聞こえる。
「がんばれぇぇぇぇぇ!!」
「負けるなぁ!!」
「お願い!明日を見せて!!」
「勝って……勝って!!」
「やってやれぇぇぇぇぇ!!」
声が聞こえる。
勝つと誓った勇者の声が。
「勝て!ここで決めろ、金時!!」
声が聞こえる。
武器を託した鍛冶師の声が。
「見せてみろ!お主の『正義』を!!」
声が聞こえる。
未だ迷いし小さき剣姫の声が。
「勝って!そして教えて!あなたのことを!!その強さを!!」
声が聞こえる。
誰よりも『正義』を諦めれなかった竜胆の声が。
「勝て……勝て!!勝ってくれ、金太郎!!」
人々の『想い』は確かに届けられた。
ならば、金時が負ける理由無し。
最後の大一番が、今、始まる。
「さぁ、いくぜ
───────────────────────
掛け声と共に、真紅の大武者が大百足へと駆ける。
大百足は突如現れた鎧武者に驚きを隠せず動けない。
そのおかげで真紅の大武者は何の妨害もなく目の前まで迫り、渾身の右ストレートを大百足へと撃ち抜いた。
無防備な顔面を真正面から殴られたことで大百足は吹き飛ばされる。
何が起きているのか未だ理解出来ておらず、だが真紅の大武者がその隙を逃すわけもなく追撃としてマウントポジションを取り、大百足を殴る。
右、左、右、左と交互に殴る。
その拳一つ一つがこの世界を生きる者達の無念を晴らすように。
明日をまた生きたいと願えるように。
だがようやく大百足も状況を把握する。
大百足はすぐさま長い身軀を真紅の大武者へと巻き付け締め上げる。
目の前の大武者は間違いなく脅威だと認識したからこそ、何もさせたくなかった。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
必死に振り解こうにもあまりにも長い身軀によって上手く力が伝わらない。
ならばと別の手段を取る。
身体に雷を纏わせ、その出力を上げていく。
最初は静電気程度だったものが電撃となり、雷撃となり、更に出力を上げてその雷撃を巻き付いている大百足へと伝播させる。
そんな雷撃をまともに受けてしまっては大打撃となりかねないと察し、大百足は堪らず拘束を緩めざるを得ない。
そして緩んだ拘束から抜け出せばすぐさま大百足の顔を掴む。
そのまま豪快に背負い投げを決める。
ゴォォォォォォォォォ!!
顔から叩きつけ投げ飛ばされた大百足はのたうち回る。
痛みに悶えながら考える。
こんなはずではなかった。
こんなことになるはずなかった。
もっと簡単に済むはずだった。
負けるわけが無いはずだった。
だが今はどうだ?
硬い甲殻は傷だらけとなり、至る所がひび割れている。
腹側は金時やオルタによってボロボロになってしまっている。
何故こうなった?
こんなことになったのは無駄に足掻きを見せた小さき人間共のせいか?
それとも異様に強い英雄と名乗る者達のせいか?
はたまた今、目の前にいる忌々しい真紅の大武者のせいか?
そのどれもが気に食わず睨み付けたが、ふと真紅の大武者の後ろが目に入った。
オラリオの市壁の上に立つ男。
昏き闇と共に在り、全てを仕組んだ原初の幽冥。
遠い山奥で気紛れに人や神を食べて今まで生きてきた己を唆し、ご馳走があるとこの地まで誘導した邪神である。
全て。
全て全て。
全て全て全て!あの悪神のせいではないか!
それは単なる八つ当たり。
だがそんな理屈がこの蟲に通じるはずもない。
途端にこみ上げてきた怒りが推進力となりボロボロとなっている大百足を動かす。
このままただ死んでなるものか。
一思いにあの街ごと消し飛ばしてやると考え、口を上へと向ける。
「させるかよぉ!!」
だがそれを目の前の大武者が許すはずがない。
真紅の大武者が大百足の無防備な腹へと右ストレートをぶち込む。
大百足は思わず身軀を曲げ、溜めを止めてしまう。
あの悪神を殺すにも、目の前の真紅の大武者が邪魔であると再度認識をする。
なれば先と同じように真紅の大武者の身体に巻き付く。
大武者もまた同じように雷を身体に纏わせる。
だが今回は耐える。
耐え難い苦痛が襲おうとも、あの悪神によって受けた今回の恥辱への怒りがそれを上回る。
何もかも気にせずに溜めを行う。
照準をエレボスへと定め、全てを消し飛ばす
間には何も無く、真紅の大武者は動けない。
小さき人間共も既に死に体である。
誰も己を止める手段を持たない。
故に今度こそあの悪神を、確実に──────
ズガァァァァァァァン!
それは今までの雷撃とは一線を画していた。
全てに耐えていた溜めは解除され、拘束も外れる。
身軀の節々からは煙が上がり、己の身軀を焦がしたものだと理解する。
受けた雷から僅かに感じる気配は間違いなく神のもの。
一体何者の仕業か……
「さて、
「そうだそうだ〜!わざわざ見に来たんだから活躍しろよ〜!」
「貴方の活躍が我らが主の酒の肴となるのです。光栄に思うように」
空にいる何者かが放った雷撃は大百足にとっては神罰の槍となり、金時にとっては恵みの雷となった。
先の雷によって魔力は更に高まり、身に纏う雷は一層出力を向上させたことで雷を纏った拳は大百足に反撃を許させない。
殴りつける度に大百足の身軀へと雷が走り、大百足を
そのように殴り続けられ、最早大百足に残された力はほとんど残されていなかった。
だが、まだ。まだである。
大百足はまだ勝利を諦めてなどいなかった。
大百足はまた口を天に向ける。
幾度と繰り返してきた
何度も見てきた構えに打たさせまいと真紅の大武者が更に追撃しようと近付く。
そうして真紅の大武者が近付いてきたことを認識し、大百足は口をそのまま大武者の右肩へと喰らいついた。
そしてそのまま大武者の鎧を食べ始めたのだ。
「なっ!」
いくら弱っていようとも、そこにいるのは神殺しにして英雄殺しの旧き蟲。
相手が英雄であるならば、神の血を流しているのであれば、大百足が喰らえない訳が無かった。
鎧を食べたことで少しばかり魔力が回復したのか、更に鎧を喰らう。
大百足に余裕が現れ始める。
目の前の真紅の大武者は貴重な魔力を有する餌である。
神の血を受け継ぎ、英雄である者。
それは大百足が過去に何度も喰らってきた者達と何ら変わらない。
ならば過去と同じように骨も残さず喰らってしまえば良い。
簡単なことだと、大百足は認識した。
故に大百足は油断する。
目の前の英雄は、過去の英雄達よりも遥かに強き者だと認識出来ていない為に。
「必殺─────」
鎧を食べられ始めた瞬間から一瞬たりとも途切れさせなかった魔力放出。
肉を切らせて骨を断つ。
鎧を食べられたことで大百足は真紅の大武者を離さず更に食べようとしてくることは推測できていた。
だから魔力を静かに溜めて大百足が油断するその時を、金時は待っていた。
「
拳に溜めていた魔力を一気に解き放つ。
それは己が持つ全ての魔力をもって撃ち抜き、敵対する理不尽と邪悪を許さぬ正義の一撃。
絶望を打ち砕く希望の光と共に、大百足の身体を拳が貫く。
「ギシャァァァァァァァァァ!!」
どれほど魔力を回復しようともこの一撃に耐えられる程体力が残されているわけが無かった。
金時、オルタ、【アストレア・ファミリア】による決死の攻撃。
大百足が経験したことの無い巨大な真紅の大武者との戦闘。
何者かによる神罰執行の槍とも言うべき雷。
そのどれもが大百足を追い詰めていた。
まだ消滅しないのは
大百足を完全に倒し切るには加護が籠められた矢を三回射抜く必要があった。
そしてその倒す為の矢はまだ一発しか撃ち込めていない。
故に金時は大百足に喰われ維持できる魔力がなくなった真紅の大武者から飛び出して矢を番える。
(ありがとよ、相棒!)
狙うは一度目と同じ脳天。
空中で姿勢を整えながら矢を限界まで引き、己の魔力を込めて放つ。
魔力が込められた矢は雷を纏いながら回転して吸い込まれるように大百足の脳天を射抜く。
これで二度目。
地面に降り立ち三本目の矢を番えようとする。
だが、すでに限界は近かった。
「しまった……力が、入らねぇ……!」
金時は弓と最後の矢を落としてしまう。
既に手に力は入らず、いくら魔力が世界に満ちていようとも、雷の援護を受けようとも身体にある魔力は底をついていた。
最後の矢を射抜かなければ、大百足は逃げてしまう。
ここで逃がせば、きっともう倒すことは出来なくなってしまう。
あの臆病な蟲のことだ。
人に見つからない場所に潜み、人知れず村を食い尽くして周ることだろう。
それは何よりも避けなければならないことだった。
期待をした者達を、希望を抱いた者達を、想いを託した者達をここまで繋いでくれた全ての者達を裏切ってしまいかねない。
それだけは、英雄としてしてはならない。
立ち上がろうとした時、後ろから少女が金時の弓と矢を持ち、番える。
「逃がさない!!」
アリーゼであった。
既に満身創痍で、立つこともやっとだった彼女は弓を構える。
英雄達が見せた希望を、こんな形で終わらせるわけにはいかなかった。
必死に力が入らない手に魔力を込めて弓を引こうとする。
だが、アリーゼではあまりにも非力であった。
弓は金時用に調整された特注品。
もちろん金時が引くことを想定している為、並の冒険者では引くことなど出来ない。
大百足は既に逃げる体勢を取っている。
何としても生き延びようとする生き汚さをみせる後ろ姿を、アリーゼは睨みつけながら必死に弓を引こうとする。
「こんなにも……こんなにも頑張ってくれたのに!報われない結果なんて!あっていいはずがない!!」
何とか引こうとする。
自身の魔力を高め、魔法による身体強化をして、限界まで力を込める。
だが、無情にも弓は引けない。
少女の頑張りなど、大いなる悪の前では、無意味であった。
「諦めぬその意気や良し!よくぞ立ち上がったな少女よ!」
誰かが声をかける。
聞いたこともない、絶望の縁に立たされているというのに
「後は任せよ!なぁに、これほど当てやすい的も他にはなかろう!」
少女から弓と矢を受け取り、矢を番える。
その一連の動作は美しく、一切の無駄が省かれていた。
誰も知らない男がアリーゼがどれだけ頑張っても引けなかった弓を当たり前のように引く。
静かに魔力が高まり、男を中心に渦を巻いている。
その魔力は、ありとあらゆる邪気を跳ね除けるかのような精錬された澄んだ魔力だなとアリーゼは感じた。
そして男は
「南無八幡大菩薩……願わくば、この矢を届け給え!」
それは必中の一射。
矢は一直線に大百足へと向かっていく。
ただの矢であったが、それは段々と
後ろから迫り来る矢の気配に大百足も理解した。
これは逃げることも、躱すことも、落とすことも出来ない必中の矢。
外れることはなく、外すことはなく、己を確実に仕留める回避不能の一射。
故に諦める。
ここで、大百足という『災厄』は幕を下ろす。
迫り来る龍となった矢は一切ぶれる事もなく、大百足の脳天を撃ち抜く。
長き時を生きた蟲は、大量の灰となって消え去ったのだった。。
「…………勝った?」
アリーゼは信じられなかった。
目の前の脅威はダンジョンのモンスター達と同じように灰となって消えた。
だがまだ上手く状況を呑み込めておらず呆然とする。
「うむ!さぁ、勝ち名乗りを上げよ!」
「え?」
そこへ男が声をかける。
既に男は金色の光に包まれており、身体も薄くなっていた。
時間なのだと直感的に理解する。
この男は、ただあの一瞬の為にここに来たのだと。
「残念ながら
「で、でも!」
「最後のお主の勇気が俺を間に合わせたのだ。それに、これはお主らにも必要なことであろうよ」
「待っ、待って!」
「さぁ掲げよ、お主らの旗を!」
そう言い残して男は光に包まれ消え去った。
一体誰なのかすらわからず、ただ晴れやかな笑顔を浮かべながらアリーゼへ言葉を残して消えてしまった。
ただ男について何も分からずとも、男が言い残したことの意味は理解していた。
「みんな、立って」
「団長……」
「立って、私達が彼等の代わりに告げるの。彼等が勝ち取った、最初の『正義』を!『正義』を司る私達【アストレア・ファミリア】が!」
それは今のオラリオに必要なことであった。
少女は告げる。
「英雄達の活躍により、恐ろしき悪は打ち倒された!」
悩み続け、未だに答えを見つけていなくとも。
「彼等の代わりに我らが告げる!」
英雄達の示した光を元にして。
「使命を果たせ!天秤を正せ!いつか星となるその日まで!」
彼等は成した。
恐ろしき悪を打倒してみせた。
「秩序の砦、清廉の王冠、破邪の灯火!友を守り、希望を繋げ、願いを託せ!正義は巡る!」
なれば次は我らの番だ。
「たとえ闇が空を塞ごうとも、忘れるな!
このオラリオに巣食う闇を、今度は私達が打ち払おう。
「女神の名のもとに!天空を駆けるが如く、この大地に星の足跡を綴る!」
そして照らし出すのだ。
誰もが見失ってしまった、希望の光を。
「正義の剣と翼に誓って!」
「「「「──正義の剣と翼に誓って!!」」」」
今ここに『正義』は蘇った。
英雄達のバトンは、確かに託された。
───────────────────────
あぁ、やっぱかっけぇな。
オレが憧れた英雄は……
───────────────────────
「くそっ!まさかマジでアレを倒すのかよ!」
大百足が打倒されたことに『悪』を掲げる者達も冷静ではいられなかった。
あれは倒すことなど不可能な怪物だとここにいる者達は誰もが思っていた。
しかし現実にあの大百足は倒されてしまった。
元々倒される可能性が高いとエレボスから聞いていた。聞いてはいたが、まさか本当に倒すとは思いもよらなかっただろう。
更に英雄二騎が戦線離脱した程度でオラリオの冒険者達はほぼ無傷である。
「おのれ!今ならば奴らを殺せる!少しでも戦力と希望を打ち砕かねばなるまい!向かうぞ!」
「馬鹿野郎、今行ったところで他の奴らと鉢合わせんのが目に見えてんだよ。しかも士気は完全にアイツらの方が上だ。ちっ、少し前まで葬式みてぇな空気だったのによォ、息を吹き返しやがった」
「今は備えましょう。次が恐らく、最後の戦いとなるでしょうから」
オリヴァスも馬鹿ではない。
二人に比べると勝手な行動をしたり、戦略が甘かったりとするが、今の盤面を冷静に見れない程能無しでもない。
故にヴァレッタとヴィトーの言葉も理解はできる。
だが、納得できているかはまた別である。
「くっ!」
オリヴァスは悔しそうな絞り出した声を残してその場を後にする。
ただでさえまとまりのない
そして気付いてしまう。
「……おい、あの変態
「見てませんね……まさか……!」
「はぁ……放置だ放置」
もう自身の手に負えない者のことなど考えたくなかった。
掻き回すならそれはそれで良いし、何も起きないなら最早関係ないに等しい。
頭を抱えながらヴァレッタは最終決戦に備え、策を練ることにした。
そして当の本人達はというと。
「ねぇディナお姉様!今からあの人達を
「そうね、ヴェナ!きっと最高に
あの大百足を倒した英雄達のその首を取りに行こうとしていた。
ただ自分達のコレクションに加えたいから。
あの希望の光を目の前で喪う人間達を見てみたいから。
先を見ての行動でも、過去の因縁による動機でもない。
それはきっと愉しそうだから。
それだけの理由。
「おっと、それは困るなぁ」
そんな姉妹を全力を賭して戦い抜いた英雄の元へ行かせる訳にはいかなかった。
さすがにそんな結末を青年は望んでいない。
立ち塞がるフードを被った白い青年を見てディース姉妹は興味なさげに、路傍の石のように扱う。
「あら?おかしなゴミ虫が道を塞いでるわ」
「ほんとね。さっさと先に行きたいからとっとと片付けましょう!」
「はぁ、私はこんな役回りばかりな気がするのだけれど……」
───────────────────────
「……ん、ここは?」
ジャンヌ・ダルクはこの世界へと帰還していた。
オルタは律儀にジャンヌへと霊基を返却しており、霊核も無事であるためこの世界に留まることが出来ているようであった。
そして目を覚ましたジャンヌに気付いた少女が声を張り上げる。
「ジャンヌ!目を覚ましたのね!」
「アリーゼ……ここは、治療院ですね。ということは……」
「えぇ!貴女達のおかげであの怪物を倒せたわ!」
大百足は倒された。
それは英雄達にとっても、『正義』を標榜する者達にとっても大きな勝利であった。
この勝利により人々の活気は取り戻され、絶望へと落ちていた者達は希望に魅せられ立ち向かうことを決意した。
まもなく行われるであろう未来の行く末を決める正邪の決戦。
今はその決戦に向けた準備期間であった。
治療院にいた者達も慌ただしく動き回っているが、その目には諦観や悔恨ではなく、明日へと向かう光が宿されている。
「良かった……くっ……」
「無理なさらないでください。
思わず張り詰めていた糸が切れてしまい、自身の状態を嫌でも把握することになった。
霊核は無事でも霊基は傷だらけで回路もズタボロ。
アミッドの説明の通り
自分のことはしばらく安静にするしか無いと理解し、他に気になっていたことをアリーゼやアミッドに聞く。
「バーサーカーはどうなりましたか?」
「彼も似たような状態です。ですが貴女よりかはまだ幾らかマシです」
金時がジャンヌよりマシな理由は様々な要因が重なり合った偶然ではあるのだ。
ジャンヌより適正の高いオラリオという土地。
摂津式大具足・熊野との合体。
雷の援護。
それに自身が元々持つ天性の肉体。
あらゆる面でジャンヌよりも金時の方がこの世界と相性が良かった、ただそれだけに他ならない。
それでもそんな金時の様子を聞いてジャンヌも少し安心する。
そして自分を誰よりも心配してくれたであろう少女へと向き直る。
「そうですか……アリーゼ、申し訳ありません」
「謝ることなんてないわ!貴女達がいなければ、きっとオラリオは立て直すことが出来ないくらい傷付いていたから……だからお礼を言わせて、ジャンヌ」
少女は笑顔で告げる。
それは初めてホームを招いてくれたあの時よりも明るい、とびっきりの笑顔で。
「この街を助けてくれて、ありがとう!!」
迷いは無く、告げた『正義』を今度は自分達が果たすため。
そしてその『正義』を今度は誰かへと巡らせるため。
「ここからは私達の番!だから安心して待ってて!必ず私達は勝ってくるから!」
少女達が誓いを立てた時、また別の場所でも再会を果たした者達がいた。
「お、ようやく見付けた」
「なんだ、お前か」
先程まで大百足と戦い、最早立つことすらままならなかった男は何故か治療院を抜け出し、オラリオの街を人知れず歩いてようやっと目的の人物、ザルドを見つけ出すことが出来た。
未だ戦闘による疲労があるのか、顔はいつもより余裕がなさそうである。
「本当なら色々と話してぇこととかあるんだが、まぁまずはこれだな」
「これは?」
「お前さんの主治医からの薬だとよ。だいぶ良くなるらしいぜ」
金時が大百足戦前に医神から渡されていた薬をザルドへと渡す。
渡すように頼まれてはいたものの、
そしてこの薬と主治医という単語から嫌な記憶を思い出す。
ある日突然主神たる
あの時期ばかりはベヒーモスの方がマシだったと心の底から言えるくらいには思い出したくもない嫌な記憶だった。
「……まさかとは思ったが、嫌な予感とは当たって欲しくない時に当たるものだな」
「違ぇね!……最後の挨拶をしとく。じゃあな」
金時は渡すべき物を渡した。
そしてこの再会がこの先二度と訪れることは無いとお互いが理解する。
ただ名残惜しそうに声を掛け合う。
「……あぁ。お前とは一度、酒を飲み交わしたかったよ」
「オレもアンタと相撲を取りたかったさ」
召喚される時期が違っていれば、出会う立場が違っていれば、きっと最高の友として冒険を続けていられたかもしれない。
そのことが何よりも、口惜しかった……。
「で、そんな身体でどこをほっつき歩いていたんだ、あぁ?」
ザルドと別れた後にすぐに治療院へと戻った金時だったが、もちろん勝手に抜け出した怪我人に対してとてつもない形相で出迎える者がいた。
何を隠そう輝夜である。
「悪ぃ悪ぃ。やることがあってだな……」
「言い訳なんぞ聞きたくなどない!大人しくするということが出来んのかお前は!」
「……心配かけてすまねぇな」
「心配などしておらんわ!せめて声を掛けるか書き置きくらい残していけぶぁかがぁ!!大体──────────」
至極真っ当なことではある。
金時は目覚めたすぐに薬を持ってザルドの所へ向かったのだから誰もそのことを知らず、ましてや怪我人が脱走だなんて考えたくも無かったのは事実であった。
「とか言って、お前がいないって聞いて真っ先に探しに行っていたじゃねぇか」
「……ライラ?」
金時に説教をしていた輝夜であったのだが、ライラからの思わない横槍に思わず口を止めてしまう。
それは何よりもバラされたくないこと。
「そもそもコイツがあのデッカイのになった時も叫んでたじゃねぇか」
「ライラ……そこまでにしときなさい?」
あの状況のあの空気感に乗せられついつい口走ってしまっていたことまでバラされる。
輝夜は愛刀の鯉口を切る。
「自分も
「よっぽど斬られたいようですね。安心してください、すぐにでも細切れにして差し上げますから」
完全に切れた堪忍袋の緒。
ライラはすぐさま逃げ出し、それを追い掛けて輝夜も刀を振り回しながら駆け出して去ってしまった。
あまりの流れに金時もさすがにキョトンと呆然とするしかなかった。
そんな金時の元へ代わる代わる別の人物がやってくる。
その中でも会うべき人物が向こうから会いに来てくれた。
「やぁ金時。傷の方は大丈夫かい」
「よぉ大将。あぁ、みての通り傷はバッチリだ。だがしばらく戦闘には参加できそうにねぇ」
フィンからの気遣いに金時も明るく返すが、身体が本調子でないこともきちんと伝える所に根の真面目さが窺え、そういった教育を正しく身に付けていることも理解できた。
そしてそんな金時の状態を何となしに察し、フィンは気にした様子もなく労いの言葉をかける。
「あれだけの戦いだったんだ。君が僕との約束を果たしてくれたことの方が喜ばしいさ」
「それなら何よりだ。約束通り、ちゃんと勝って帰ってきたぜ」
「あぁ、おかえり。今度は僕らが君達に示す番だ。どうか、最後の決戦を見届けてくれ」
「応よ!ゴールデンな活躍、楽しみにしてるぜ!」
「君達に負けない輝きを見せると誓うよ」
お互いが拳を突合せ、新たな誓いを立てる。
英雄から勇者へ。
過去を生きた者から今を生きる者へ。
想いは託される。
「それと、この戦いが終わってからで良いんだが、少し頼みたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「僕達の所にいる子が君に興味津々でね。手合わせを希望しているんだ」
「それくらいなら構わねぇさ。そのためにも、絶対勝ってくれや」
「任せろ」
新しい未来はもうすでに。
少し駆け足気味になってしまいました。
中々上手く言葉が出てこない……
たくさん感想を書いてくださったり、評価をしてくださってありがとうございます。
喜んでいただけたり、各々の思ったことを数字や文字を見ることが出来て嬉しい限りです。
また次の話も少しお待ちください。
サムレムコラボお疲れ様でした。
次はぐだぐだですね。
朗読劇はまだ観れてないので今日か明日にでも観ようと思います。
番外編で読んでみたいのは?(時間軸などに合わせ執筆時期が異なります)
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ベル君がオラリオに来るまでのお話
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金時、師匠になる(終了後予定)
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ジャンヌとアストレア・ファミリアの女子会
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英雄神話組の何気ない日常
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花のお兄さん、恋する乙女を応援する
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次回執筆予定のちょっと先出し