この日までに敵が仕掛けた爆発物は【ガネーシャ・ファミリア】が多くを発見し、【ヘルメス・ファミリア】と他
【ロキ・ファミリア】が主力の第一部隊、【フレイヤ・ファミリア】が主力の第二部隊、【アストレア・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】の合同第三部隊はそれぞれの配置へとついた。
それぞれ唯ならぬ緊張感が張り詰めている。
一瞬の油断すらままならない、そんな状況で皆が嫌な予感を感じていた。
あまりにも静かで、ことが上手くいきすぎている。
いよいよジャンヌの言っていたことは事実だと再認識せざるを得なかった。
故に警戒度はさらに増していく。
都市中に爆発物が仕掛けられており、敵も今日形勢を決定づけようとしていることが手に取るようにわかる。
これから起こることは誰にもわからない。
だが、誰もが勝ちたいと望んでいる。
この暗く閉ざされた世界を、いつか見た『星の輝き』を照らすために。
「ねぇジャンヌさん」
「どうされましたか、アーディ」
アーディとはこの日までリューと共に巡回をしている中で出会い、たくさんのこの世界の英雄譚や冒険譚を教えてもらっていた。
『アルゴノゥト』や『フィアナ騎士団』を始めとして、『
話を聞くその姿は年相応の少女のようにも見えたことだろう。
そうして数日でありながらも仲を深めることができたのも彼女のそういった人懐っこさも相まっており、ジャンヌもまた、アーディのその人柄を良しと思っており、かなり好意的に感じていた。
そのためにこういう状況でなければ会話に花を咲かせていたことだろう。
「この戦いが終わったらさ、ジャンヌさんの知ってるお話を聞かせてよ」
「お話、ですか?」
「そうそう!英雄譚でも、冒険譚でも!貴方の知ってる物語を!」
ジャンヌの元いた世界にはこの世界に劣らず英雄譚、冒険譚、お伽噺、伝記、伝承などが今に伝えられている。
過去に共に戦った者達もまた
いや、どこぞの劇作家の話を聞かせるのだけはやめておこう。
そう人知れず決めたジャンヌであった。
「良いわね、私も聞かせて欲しいわ」
「団長、こんな時に言ってる場合か」
「でも約束を交わすことは大切よ?約束があるから人は生きようとするもの」
「はぁ…。ジャンヌ、私にも聞かせろよ?」
「えぇ、その時は語らせていただきましょう。『明日』を願い『今日』を続けた『英雄』達のお話を!」
こうして約束は交わされた。
誰もが生きて帰ろう、と誓いを立て、覚悟を決めた。
これからは死にに行くのではない。
『明日』を笑うため、火蓋は切られた。
約束は果たされないと、誰も知らない。
───────────────────────
「うおおおおおおおお!」
「ぐああああああああ!?」
「くそ、死ねえ冒険者!」
「はああああああああ!」
突入後、待ち構えていた
しかしアリーゼやシャクティの適切な指示により、被害はほとんどなく抑えられている。
ここでダンジョンで攻略する冒険者と狂信者の集まりである
だが、数ではやはり敵の方が多く、度々危ない場面も見受けられたが、ジャンヌによって戦闘不能にさせられたことで被害を出さない連携が取れていた。
「
仕掛けていると思われていた爆弾の様子はなく、ただ襲いかかってくる狂信者達を蹴散らしながら、この異変に何人かは気付き始めていた。
なら本命は都市の爆破?
それにしては爆発物の数が合わない。
ならばこの場自体の爆破?
道連れによる冒険者の戦力を減らすことが目的?
わからない。
戦いながらであるため、考えに集中することができず、シャクティはこの違和感を感じる事しかできなかった。
「やはり罠をこさえているか」
「だとしても作戦続行よ!相手も既に施設内の人員を大勢失ってる!このまま最後まで畳みかけるわ!」
「……!道が開ける!最深部!」
多くの敵を倒しながら突き進んだ最深部には、ピンク髪の人を見下すように下卑た目をする外道、
落ち着いた様子で、冷静に状況を見ている時点で自分達は有利であると確信している様子。
そのことに誰もが否応なく考えさせられる。
一体、
「フィンはいねえ……が、いつぞやの乳臭えガキはいるなあ。また私と踊ろうぜえ」
「踊りたいなら、まずは作法をわきまえなさい」
「つれないねえ、なら後の楽しみにしておくよぉ〜」
「ヴァレッタ・グレーデ!施設内は制圧した!兵士もほとんどを捕らえている!大人しく投降しろ!」
シャクティのその通達を聞き、顔をニヤケさせるヴァレッタを見て、ジャンヌは悪寒を覚えた。
あの目は、あの顔は、これから起こす
嫌な予感が、身体中が警鐘を鳴らしている。
目の前の敵よりも、今この場を離れろと全力で叫んでいる。
「アリーゼ!シャクティ!今すぐ退避です!」
「ジャンヌ!?」
「ここまで来て何を言っている!?」
この機を逃せば敵を逃がすことになり、今回の作戦の失敗を意味する。
例え敵が何をしてこようとも、今は目の前の主犯格の一人であるヴァレッタを何としてでも捕えなければならない。
そこにどれ程の犠牲を払ったとしても。
「おや?気付かれちまったなら仕方ないなあ。出ろぉ、てめえ等ぁ!」
そのかけ声と共に奥から隠れていたであろう多数の敵が現れ、混戦は乱戦へと変わっていく。
魔法も飛び交い、武器を打ち合わせる音がそこら中から聞こえてくる。
またヴァレッタはジャンヌの考えを読み、ジャンヌ達の退路を絶とうと何名かを出入口へと向かわせた。
(明らかに私達をここに留めさせようとしている!でも爆発物は見当たらない!?ならどんな罠を……っ!)
ジャンヌが必死に思考を巡らせ、旗で敵の腹に一突きを入れた時、確かな感覚があった。
鎧にしては形が不安定な、しかし手加減しているとはいえ確かな硬さを感じさせた手応え。
辺りには見当たらない爆発物。
狂信者、敵の余裕さ。
そこで、最悪の予想が考え付いた。
あぁそうだ。
目の前の敵は、
この場の彼らは、冒険者を
「総員退避!敵は、
「「「「「なッ…!?」」」」」
「大正解だぁ!やっぱりあん時にてめえは殺すべきだった!正解したお前には特大のプレゼントをしてやるよぉ!」
ジャンヌの言葉に驚きで動きを止めてしまった。
それが致命的なミスであると、戦場に生きる者なら知っている。
そして、それをLv.5のヴァレッタが逃すはずもなく、ジャンヌを孤立させる様に囲んだ。
ヴァレッタの剣戟をジャンヌは旗で応戦し、四方八方から襲ってくる敵も相手をするという状況に追い込まれてしまった。
「ジャンヌ!」
「全員逃げてください!早く!」
ジャンヌの怒号にも近い叫びに応える様に、すぐさま出入口を塞いでいた敵を即座に斬り捨てる。
そうして退路を確保したアリーゼ達を確認したジャンヌも囲んでいる敵を片付けようとした時、最悪の状況を見てしまった。
アーディが
一気にジャンヌは敵を蹴散らし、アーディを抱える。
そうして、アーディが助けようとした子供は…
「…………かみさま。おとうさんとおかあさんに、あわせてください!」
泣きながら自爆をした。
「「「「「〜〜〜〜〜〜〜っっ!?」」」」」
辺りは白い閃光に包まれ、誰もが視界を取り戻して見た光景は、服などの残骸すら消し飛ばした爆発の跡であった。
皆の時が止まる。
死ぬ覚悟は死ぬつもりはなくてもするもので、だから命を失われようとも「仕方ない」として切り捨てようとする。
だが、それは関わりの無い者に対してへの主な感情であり、親しい友や共に戦う仲間がそうなってしまえば、「仕方ない」などでは切り捨てることなど、不可能である。
「…………うそ」
「まさか………」
信じられない。
信じたくない。
信じてたまるものか!
目の前の惨劇は、起きていいはずのものではない!
あまりの衝撃に、脳の処理が追いつかなかった。
そうだ、ここに『英雄』がいなければ、一人の心優しき少女の命は失われていただろう。
『
「シャクティ!アリーゼ!」
「っ!ジャンn……!」
覚えのある声を聞いた。
その声にホッと胸をなでおろした。
無事で良かったと。
今しがた喪われたと思った声の主の方へ顔を向ければ、そこには頭や腕などあちこちから血を流しながらも気を失ったアーディを抱えたジャンヌがいた。
「あ、あー、でぃ……」
「大丈夫です、気を失ってるだけです。それよりも早く退避を!
「な、何を言って…。それに、そんな傷だらけで!」
「悠長なことを言ってる場合ではありません!早くしなければ、ここも!オラリオも!火の海と化しますよ!」
「っ!……わかったわ、リオン!アーディをお願い!」
「は、はい!」
目の前で失ったと思った友が生きている。
絶望するはずだった少女は友を預かり、仲間達と逃げていく。
それを易々と許す程、敵も甘くはない。
「ちッ!
これ程悪質極まりない罠も無いだろう。
故にアーディは死にかけた。
あのままであれば確実に道連れにされていただろう。
だが、炊き出しの時といい今回といい、目の前で血を流してる少女がいなければ上手く運んでいたはずだったのだ。
多少腕のたつ旗を振るう変なやつ。
その認識の甘さが『
最早ヴァレッタの怒りはただ殺すだけでは収まらない。
徹底的に叩きのめし、『正義の味方』を名乗る者達へ見せしめの様に
次々と自爆兵をジャンヌへと突撃させ、彼女をまた孤立させる。
最早逃げる他の有象無象など視界に入っていなかった。
「ぜってえ逃がさねえからなぁ、糞ガキがぁ!!!」
「ジャンヌ!」
「良いから行きなさい!ここは私が食い止めます!だから早く!」
怒り狂うヴァレッタの攻撃を弾きつつ、迫り来る自爆兵も
一瞬の隙さえ許されない。
頭や腕からの出血による血液不足、いや魔力不足を感じ始め、さすがに危険だとジャンヌも感じ始めた。
しかし未だ避難は終わっておらず、このままでは自爆兵がアリーゼ達に狙いを変更しかねない。
覚悟は、とっくに決めていた。
あの場で既に答えていた。
我が身は既に、このオラリオの平和へと捧げていると!
「はああああああああああああああ!!!」
ジャンヌはそのかけ声と共にヴァレッタ含むほとんどの敵を押し戻した。
あまりの規格外の力に押し戻されるヴァレッタも退避を進めていたアリーゼ達も驚愕する。
そしてふとジャンヌがアリーゼ達の方を見た時、全員が直感した。
そして思わず願ってしまった。
やめてくれ、と。
そしてジャンヌは多くの敵と共に、何かしらの詠唱を唱えた後、敵と共に清き炎へと包まれた。
「ジャンヌ〜〜〜〜〜〜!!!」
風を舞い、彼女の紺色の服の残りが彼女達の元へと流れ着く。
───────────────────────
敵の追撃はジャンヌが引き付けたためほとんどなく、退避にそれ程労力は要さなかった。
しかし外へと避難が完了したかと思えば、都市は火の海に包まれており、外にて敵の捕縛をしていた者達は、ほとんどが敵と共に消え去っていた。
喪失を嘆く暇はなく、涙を流す時間すら彼女らには与えられない。
すぐさま外にいた敵はアリーゼ達に気付き、彼女等に向かって魔法や自爆を行ってきた。
簡単に命を捨てることに、命を何とも思わないことに、その場の誰もが怒りを覚えた。
こんな者達のせいで、大切の仲間を喪うはめになったのかと。
あまりにも不条理な世界の在り方に、怒りを持って答えるしかできなかった。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
「死ねええええええええ!!!」
「ふざけるなああああああああ!!!」
怒号に包まれた戦場には、声を上げることしかできない少女達の
「くそ!くそ!くそ!」
「輝夜、リオンを守って!」
「わかっている!青二才、魔法で援護しろ!」
「───ッ!はい!」
いつかジャンヌが言っていた言葉を思い出す。
『もし私が死んだなら、まずは生き残ることを考えてください。私以外の犠牲を、少しでも減らしてください。そうして終わった後に、泣いていただけると嬉しいです』
そうだ。
【アストレア・ファミリア】の誰もがあの歓迎会にてジャンヌの決意を聞いていた。
ジャンヌはその身をオラリオの平和に捧げると言っていた。
覚悟を決めていた。
今は例えどういった感情があろうとも、まずは生き残ることを考えよう。
敵を倒し、仲間を守りきった後にまで、今はまだ堪えよう。
それが彼女とのもう一つの約束。
まずは、何がなんでも生き残れ!
「ライラ、ノイン、メリューは魔導師を優先的に狙って!ネーゼ、アスタ、リャーナは自爆兵を近付けさせないで!他はそれぞれのサポートと逃げ遅れた人の保護!敵を倒しながら
「「「「「「了解!」」」」」」
アリーゼの指示により【アストレア・ファミリア】は結束し直し、それぞれが己の成すべきことを成す。
幸いこの辺りは住民の避難が完了している地域だったようで、住民を助ける手間は減り、戦闘に集中することができた。
だが、未だあちこちから爆発音や悲鳴が聞こえてきており、今抱えている怪我人を預け次第すぐに救助へ向かわなければならないようだと理解する。
そうして敵の追撃を退け、何とか
「【
「アリーゼ達か。【ヘルメス・ファミリア】の活躍で市民の死傷者は思ったよりは出ていない。だが逃げ遅れた区画がある。そこを任せたい」
「わかったわ」
「では【
「了解した。……ジャンヌは?」
「っ………生死不明」
その言葉は、僅かながらの願いが込められていることにフィンも理解する。
ジャンヌを失っても彼女達は今するべきことを成そうとしている。
そこにどれほどの覚悟、決意をしているのかなど想像に難く無い。
「そうか……わかった、君達も充分気を付けてくれ。僕の親指はまだ疼いている」
「了解!」
その返事と共にアリーゼ達はすぐに駆け出す。
この響き渡る悲鳴を少しでも減らすために、この泣き叫ぶ声を少しでも笑い声に変えるために。
そう考えていた時、アリーゼが立ち止まる。
「どうした団長!」
「……アストレア様が危ない」
「なにっ!」
アリーゼの顔色は火に照らされている中でもわかる程白くなっていく。
【ファミリア】の主神が死ぬと天界へ送還される。
そして与えていた恩恵もなくなる。
それは冒険者に対する死刑宣告である。
特に戦闘中におけるそれは、確実な死を示す。
故に主神の安全は最優先で行わなければならない。
「理由、わかんない。でも、
「……ネーゼ、イスカ、マリュー。アリーゼと一緒に行け」
「ライラ!?」
「うちの
ライラは冷静に分析する。
アリーゼ達が抜けた穴は共に来ている【ガネーシャ・ファミリア】の面々と協力すればなんてことはない。
敵の
特に後ろ二人と出くわせば確実に屍の山ができあがってしまう。
それだけは何としてでも避けなければならない。
固まっているところをそんな連中と出会うよりも分散していた方がリスクも減る。
そのことに【ガネーシャ・ファミリア】の者達も賛同した。
「君達の分は我々が対処する!だから早くアストレア様の元へ!」
「ライラ、ありがとう!【ガネーシャ・ファミリア】のみんなもありがとう!そして、全員生きること!」
アリーゼ、ネーゼ、イスカ、マリューの四名はアストレアの元へ向かうため離脱。その場の指揮は輝夜が執ることとなり、避難民の救出と敵の撃破を急いだ。
未だ惨劇は終わらない。
───────────────────────
「アストレア、止まれ。何かが、来る」
闇が
都市を焼き、悲鳴を呼び起こした業火でなお照らし出すことのできない暗黒の奥で、何かが
うねり、歪み、ねじ曲がり、ギチギチと、ゲラゲラと、縛るように、嗤うように、音を立てて、その漆黒の眼差しで彼女達の身を貫く。
まるで肉を裂く
「アストレア様!」
「──!アリーゼ…」
闇は女神には届かなかった。
そこに現れた
闇はあと少しだったと拗ねる子供のように言う。
しかし、新しい遊びを思いついたかのようにすぐに笑顔を見せる。
「我が身を顧みず、
静かに、獰猛に、狡猾に、そして何よりその場の者達に恐怖を与えるように、闇は姿を映し出す。
「
まるで地獄から現れたかのように、闇そのものとも言えるその存在に、
「そして、
「貴方は──」
「お前は、まさか……!」
足音を鳴らし、まるで着いて来るなら着いて来いと言わんばかりに去って行く。
確かめなくては。
アストレアがそう言って足を踏み出すのをヘルメスが止める。
『途轍もない何か』が起きようとしていることに危険を感じ、今すぐこの場を離れようと提案する。
その時、それは引き起こされた。
巨大な光の塊が、天へと還っていく。
それはオラリオ中の誰もが確認した。
『過去の英雄』も
『静寂好む魔導師』も
『都市最強たる猛者』も
『全体の指揮を執る勇者』も
『正義』も『悪』も
その光の意味を、知っている。
始まったのは絶望のプロローグ。
辺りに響き渡る悲鳴は、無辜の民だけのものではなくなった。
「や、やめてくれええええええ!!!」
一つ、二つと天へと昇る光は増えていく。
「嫌だ、死にたくな──」
三つ、四つと悲鳴は響いていく。
「た、助けてくれええええええええ!!!」
五つ、六つと屍は積み重なっていく。
「ハハハハハハハハハハハッ!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
七つ、八つと嗤い声があげられていく。
そして、最後の九つで、全ては仕上げられた。
昨日一緒に笑った仲間が、先程まで戦っていた友が、明日の話をしていた先達が、夢の話をした若輩が、名を挙げていた強者が、これから名を挙げる弱者が、力を失い狙われる。
止まらない。止めることができるはずもない。
人手が足りない。
優勢だと、勝てると『希望』を抱いていたそれは、より大きな『絶望』へと塗り替えられたのだから。
阿鼻叫喚、地獄絵図とはこれこのとおり。
【ギルド】も【ファミリア】も絶望の悲鳴を響かせ、【
誰も助けに来ない。
ここは、今しがた『地獄』へと化したのだから。
───────────────────────
「ひっく…ひっ、ひっく……」
幼い子の泣く声を聞いた。
「この子だけは、この子だけは!」
我が子を想う親の叫びを聞いた。
「頼む、誰でもいい!助けてくれえええええええ!」
明日を夢見た者たちの願いを聞いた。
「最高だああああああああ!」
反吐が出る外道の嗤い声を聞いた。
あぁ全く。
そんな風に泣くな。嘆くな。
そして
オレには大層立派な『正義』なんてものは持っちゃいない。
でも、『明日』に『希望』を持つということが、それがどれほど尊いものなのかは知っている。
だからオレは立ち向かおう。
『絶望』が世界を覆い尽くすというのなら、その『絶望』を跳ね除けてみせよう。
何でもない毎日を生きたいと願う、
数多の
オレは!もう一度オレの
───────────────────────
「死ねえ、無知なる罪人共!」
「やめてええええええええええ!」
親の泣き叫ぶ声が響く。
無辜の民を襲う外道の叫びが迫る。
誰も助けに来ない。
『希望』など、何の役にも立たない。
誰もが『闇』の強大さを、『悪』の恐ろしさを再認識した。
そんな絶望に包まれたこのオラリオの中央広場にて、気を失っていたとある少女は呟いた。
「お、おねがい…。たすけて、『
『英雄』を求める声が告げられた。
誰もが求めていた。
誰もが願っていた。
誰もが望んでいた。
しかし『英雄』とは口にしてこなかった。
だが、たった今、少女の
『道化』を『英雄』と呼び、憧れと希望の象徴としていた少女の願いは確かに聞き届けられた。
『奇跡』は一度しか起きないと、誰が言っただろうか。
それに、皆は知っているだろう?
『道化』は、『
───────────────────────
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
それまであった嗤い声がかき消された。
それまであった悲鳴は止まった。
それまであった泣き声は、目の前の現実によって泣き止んだ。
誰もが目を疑った。
神も、冒険者も、
神は天へと還る時、光は上へと昇っていく。
しかし今起きているのは、
この現象を誰もが知っている。
災害たる現象の一つ。
自然による暴力。
そして、神々の
人はそれを、
「
男は雷と共に現れた。
大きな斧を担ぎ、黄金とも思える金髪をかきあげている。頭には雷をあしらったような緑の模様が描かれた黒いバンダナを巻いており、瞳は宝石のように蒼かった。
かつて物語に紡がれたとある将軍のように、
男は治癒できない。
でも、少女はまだ生きようとしている。
ふと転がっている瓶を見つける。
それが何なのか、何となく理解していた。
瓶を拾い、中の液体を少女へとかける。
すると傷は塞がり、呼吸も安定した。
その効力に驚きながらも、男は少女を安全な場所へと寝かせた。
そして、目の前の白と黒の装束に身を包んだ外道を見据える。
彼の中では、状況がわからなくとも構わない。
ただ一つしなければならないことは、
「さぁ、
男のかけ声と共に、オラリオに無数の雷が降り注いだ。
それは犠牲となった六柱の怒りと嘆き。
それは屍となった者達への弔い。
それは、新たな『希望』を知らしめす宣戦布告。
死の七日間のその始まりは、こうして幕を開けた…
番外編で読んでみたいのは?(時間軸などに合わせ執筆時期が異なります)
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ベル君がオラリオに来るまでのお話
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金時、師匠になる(終了後予定)
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ジャンヌとアストレア・ファミリアの女子会
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英雄神話組の何気ない日常
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花のお兄さん、恋する乙女を応援する
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次回執筆予定のちょっと先出し