ダンまち×Fateシリーズ   作:英雄に憧れた一般人

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人心雷煌

 

 

 

 

 

 

「──て!─────く!」

 

誰かの叫びが聞こえる。

 

「───て!──か!」

 

誰かの願いが聞こえる。

 

「────い、────────ら」

 

誰かの呼ぶ声が聞こえる。

私は、何をしていた?

私は、何のためにここにいる?

 

『ジャ──さ─の知──る──を聞─せ─よ』

 

誰よりも優しい少女と約束をした気がする。

 

『わ──聞──て欲──わ』

 

誰よりも明るくあろうとする少女と約束をした気がする。

 

『───ヌ、─たし──聞──ろよ?』

 

誰よりも明日を望んだ少女と約束をした気がする。

 

『───貴方は、『正義』とは何だと考えますか?』

 

誰よりも『正義』を考え、目指す少女の姿を見る。

あぁ、そうだ、そうだった。

この世界の嘆きを聞き、私はやってきた。

この世界で、私を友と、仲間と呼んでくれた者達のために戦っていた。

そうだ、私はまだ旗を振らなければならない。

こんな所で寝ている場合などではない!

私にはまだ、果たせねばならない約束がある!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、君があの雷を」

 

場所は作戦本部であるギルド内部。

敵の主犯が邪神エレボスと判明し、切り札のザルドとアルフィアと共に闇に去っていくのが見え、まずは被害状況の確認を迅速に行った。

神が九柱も去り、その眷族達は恩恵を失ったことで集中的に狙われ、ほぼ全滅。

主要ファミリアである【ロキ・ファミリア】はガレスとリヴェリア含む三分の一の団員が現在治療中、【フレイヤ・ファミリア】は被害こそ少ないものの団長であるオッタルや主力であるヘディンやヘグニ達が敗北したことで現在治療中、【ガネーシャ・ファミリア】は敵の捕縛などを担当していたために多くの者が犠牲になっている。

【アストレア・ファミリア】は団員数が少数精鋭ということで誰一人喪わずに済んだのだが、共に行動していたジャンヌが現在生死不明の状況となり、こちらも今までのような活気はあまり感じられなかった。

オッタルとリヴェリア、ガレスの敗北が予想以上に冒険者達の士気を下げ、それにより敵に良いようにされていると言っても過言ではなかった。

幸い街の鎮火は進んではいるが、逃げ遅れた市民の救助と治療にはやはり手が回っていなかった。

敵が攻め込んで来ないことが救いだが、それでもいつ仕掛けてくるかわからない。

市民の中には都市から出ようとする者達も多く出始めた。

そんな中、輝夜が青年を連れてフィン達の元までやってきた。

金髪をかきあげ、緑の雷があしらわれた黒いバンダナを頭に巻き、蒼い宝石の様な瞳をし、大きな手斧を肩に担ぎ、腰には傷付いた大剣を差す大柄な男。

オラリオでも闇派閥(イヴィルス)でも外の国でも見たことのない青年に、フィンはジャンヌの時と似たような雰囲気を感じた。

輝夜から目の前の金髪の青年が雷を降らせた張本人であり、そして味方であると簡単な説明を受けた。

 

「あー、なんか悪かったな。余計な心配とかさせちまったみたいだし、ガキとか泣かせちまってたらしいしよ」

 

「心配するのはそっちか…。本当に、絵に描いたようなお人好しだな…」

 

「それ以外に心配することがあるか?」

 

青年は自分の置かれている状況をハッキリとはわかっていないようである。

普通ならば自分の身の潔白を証明するために言葉を並べ、何かしらの証拠を提示し、味方であると説得するだろう。

しかし、この青年の真っ先の心配は子供が泣いたことに対して申し訳なさそうにするということ。

一応雷を起こしたことでフィン達にも迷惑をかけたとわかってはいるようだが、それでも彼は自分の身の潔白の証明よりも先に子供を泣かせたことに心を痛めていた。

輝夜から青年も自分の立場など簡単に説明されてたにも関わらず、その言葉が出てきたことで、輝夜も呆れるしかなかった。

団長(アリーゼ)もお人好しだが、それに勝るお人好しに会うとは輝夜も思ってもみなかった。

 

「はぁ…。フィン、こいつのことは出会った我々が保証する。正真正銘の善人だ」

 

「ふむ、今は選り好みをしている時間は確かに無いが…」

 

青年が話しても先に進まないと判断した輝夜は青年に変わり彼の潔白を保証した。

輝夜としてはこの青年の潔白を証明し、早く救助に戻りたかった。

この青年の力で救助活動は今の三倍以上の速度で進めることができると確信している。

そうなれば一人でも生存確率を上げることができる。

それ程までに強力であるからこそ、この話は早く切り上げたかった。

しかしフィンとしても、ジャンヌの一件があるとは言え、この青年も善人と言われすぐに信じることはできなかった。

それはこの戦いを勝たなければならない指揮官として、一つでも多くの不安要素、不確定要素を取り除かねばならなかったからだ。

慎重とまではいかずとも、目の前の青年の情報は引き出せるだけ欲しいところだった。

 

「何ならこいつに助けられた人間全員に聞いてみろ。泣いてるやつも怒ってるやつも苦しんでるやつも、皆こいつに笑わされてる。道化を演じるのではなく、ただ馬鹿正直に行動しただけでだ」

 

「なるほど。斥候からもいくつか同じ情報を得ている。信頼には値する、か。すまない、君の名前を教えて欲しい。僕の名前はフィン・ディムナだ」

 

輝夜の弁明、潔白の証明の情報は斥候から得ていた情報と一致していた。

口裏を合わせる暇もなく、そんなことをする必要は目の前の彼女は絶対無いと言い切れる。

ならばあといくつか質問を行い、それをロキと確認した上でフィンは目の前の青年の処分を検討することにした。

だから名前を名乗った。

まずは歩み寄るために。

 

「そういやまだ名乗ってなかったな。オレの名前は坂田金時だ!よろしく頼むぜ、フィンの大将!」

 

「サカタ・金時?君と同郷かい、輝夜?」

 

「おそらくな。だがサカタという名前は聞いたことない」

 

名前の感じからして輝夜と同郷なのだろうとあたりはつくが、輝夜も確信は得ていないようであった。

輝夜も故郷を離れてからそれなりに経っている。

だからその間に増えた名前なのかもしれない、と輝夜も考えるがそれも今はどうでもいいことであった。

 

「そうか。それと、その大将というのはどうして?」

 

「あぁ?そりゃアンタが指揮とか執ってんだろ?オレはアンタの下につくわけだ。ならアンタをそう言ってもおかしくはないだろ?」

 

「まぁ、あながち間違いではない、か。それに悪い気はしない。うん、そう呼ぶのを許そう」

 

「そりゃ良かったぜ!」

 

金時は独特な感性というか美学のようなものがあるのか、とにかくよくわからないとしか言えなかった。

だが子供のように笑うその屈託の無い笑みで多くの者を笑わせていた。

本当に、よくわからない。

 

「それと、君はジャンヌ・ダルクという名前に聞き覚えはあるかい?」

 

「あ?あるぜ」

 

フィンのその質問に、輝夜は思わず肩を震わせた。

アリーゼは生死不明と言った。

しかし、あの状況では生存は絶望的。そう考えるのが普通だ。

だから諦めなければ。そしてそれを無駄にしてはいけなかった。

彼女の残した意志を、彼女が繋いだ想いを守らなければならない。

そうしなければ、彼女に顔向けができない。

だが、もし生きているというのなら、と一縷(いちる)の望みも抱いてしまう。

それ程までに、彼女の存在は気が付けば彼女達の中では大きくなっていた。

そんな彼女を金時は知っている。

聞きたい。

そう考え、気が付けば耳を傾けていた。

 

「なら君の知ってる彼女はどんな人間だい?」

 

「そうだなぁ〜。オレも詳しく知ってるわけじゃねぇけどよ、アイツはスゲぇゴールデンなやつだぜ」

 

「ご、ごーるでん?」

 

「フィン、こいつのゴールデンは最上級の褒め言葉らしい」

 

聞きたいと思ったそばからこれだ。

これにはズッコケず、冷静にフィンに説明した輝夜を褒めなければならない。

フィンも何となしに理解したようで、続く話に耳を傾ける。

 

「アイツは恐れず、勇気をもって先頭で旗を振り続けることができるやつだ。味方を鼓舞して、何度挫けても立ち上がることができる信念がある。味方なら心強えし、敵なら厄介過ぎる。ありゃ敵に回したくねぇタイプだな」

 

「………」

 

金時の言っていることもわかる。

いつも挫けそうで弱音を吐く団員に、隠れて泣いている少女に声をかけ、そして前を向かせていた。

そして敵には誰よりも早く挑み、そして打倒していた。

輝夜もその光景を見て何度も思った。

敵には回したくないと。

そして、味方であったからあまりにも心強いと。

 

「あとは自分よりも味方を優先するようなやつだな。常に周りに気ぃ配ってるし、ありゃ献身的過ぎるってやつだ。危険があるなら真っ先に自分が囮を買ってでる」

 

「───っ!」

 

そうだ。それに救われた。

輝夜もアリーゼもライラもリューもシャクティもアーディも、他の団員も皆、彼女に救われた。その献身性に救われ、そして失った。

自分達が弱かったから。

自分達の判断が甘かったから。

だから、彼女を思い出す度に、唇をかみしめる。

無力だった自分達のせいで、仲間を失ったと、(いまし)めとして。

 

「だからこそ、アイツはスゲェんだよ。ていうか、何でそんなこと聞くんだ?」

 

「いや、僕らが知ってる彼女と、君が知ってる彼女が合ってるか照らし合わせたくてね」

 

「そういうことか。どうだった?合ってたか?」

 

「どうだい、輝夜。君達が一番彼女と関わっていた」

 

「………あぁ、こいつの言ってる通りの人間だったよ」

 

フィンも思うところはあった。

しかしそんなことを気にしている程の余裕もなかった。

金時の言っていることも正しいとわかったため、フィンは次の確認事項に移る。

 

「そうか。なら最後に、君の背中を見せて欲しい」

 

「背中だぁ?」

 

「君はどこかの派閥(ファミリア)に入ってるのかの確認をしたいんだ」

 

「あー、確か神サンに力を授かるってやつか?ならオレは持ってねぇぜ。信じられねぇなら好きに確認してくれ」

 

金時はリアから聞いていた説明を思い出す。

この世界の冒険者は神より恩恵を受け取ることで力を得ることができ、それによってモンスターを倒すことができているということらしい。

金時のような人外魔境とも言える時代の人間からすればそれはそれで強さを目指すこともでき、身の丈に合った相手を選ぶことができる。

それは無用な死を減らすことにもなる。

良い時代だな、なんて思わず金時は思っていた。

 

「入ってないだって?………ラウル、ロキを呼んでくれ」

 

「ロキっすか?り、了解っす」

 

「【神の恩恵(ファルナ)】を有さずしてあの力…。精霊の力を授かったりは?」

 

金時がほのぼのと考えている(かたわ)ら、フィンと輝夜は驚いていた。

ジャンヌでさえ、フィン達の予想外であったが恩恵のようなものは受けていた。

ならばこの金時は、まさか精霊の力を受けているのでは?と考えに至る。

それは今【ロキ・ファミリア】にて抱えている問題児と同じ境遇なのかもしれないと、そう考えるには十分な判断材料であった。

 

「ねぇなぁ。精霊?ってやつは知らねぇけどよ、力についてはオレに流れてる血が関係してるんじゃねぇか?」

 

「血だと?」

 

「あぁ。この血は特殊でよ、信じらんねぇかもしれねぇが──」

 

「団長、ロキを連れてきたっす」

 

金時の秘密を聞こうとした時、タイミング悪くロキがやって来た。

話は後だなと考えていた二人だったが、その話もなされなかった。

 

「フィン、呼んだか──なんや、お前」

 

「オレか?オレは──」

 

「黙れ、バケモン」

 

ロキの突然の罵倒。

それには輝夜も連れてきたラウルも、そして何より付き合いの長いフィンですら驚いていた。

あまりのことに誰もが口を閉ざす。

ロキは親の仇のような目で金時を睨みつけ、金時は黙ってそれを受け取っていた。

言い返さず、ただ黙っていた。

 

「ロキ、どうしたんだ」

 

「フィン、アンタにはアレが何に見える?」

 

ロキの意図の読めない質問にフィンは冷静に思考を切り替える。

ロキからすれば、金時は化け物に映っているというわけだ。

確かに体格はかなり大きく、見た目も整った見た目をしており人間離れした雰囲気ではあるとフィンも思う。

しかし、目の前の彼は、化け物には到底見えなかった。

 

「……彼は口調や見た目はおかしな所はあるが、それを考慮しても稀に見ない善人だよ」

 

「……アストレアんとこのアンタはどうや?」

 

フィンの答えが気に入らないのか、それでも何とか飲み込み輝夜へと質問を振る。

目の前の彼は化け物か否か。

それは、答えの出ている問いかけだった。

 

「フィンと同じ意見だ。こいつは紛れもない善人。例え神がこいつを化け物だと言おうと、少なくとも私はこいつを『人間』だと言おう」

 

彼は人間だ。紛れもない、心優しき人間だ。

正体が怪物(モンスター)なのかもしれない。

人のフリをして騙しているのかもしれない。

それは何度も目を疑った光景を見た彼女が思わないわけが無い。

だが、『人間』なのだ。

思いやりがあった。手を取り合っていた。手を差し伸べていた。そして掬いあげていた。

助からなかった命に涙を流していた。

命を奪う敵に怒っていた。

常に誰かの助けであろうとしていた。

そんな彼を、彼女は知っている。

だから彼女の意見は変わらない。

例え正体がモンスターであろうとも、未だ見ぬ怪物であろうとも、神が化け物だと認めようとも、目の前の、『坂田金時』という存在は、紛うことなき『人間』であると、輝夜は何度でも言い続ける。

その覚悟を、ロキも感じ取っていた。

 

「……ちッ、そうか。おい、この子らになんかあったら、ただじゃおかんからな?」

 

「あぁ、わかってる。そうならないために、オレは来た」

 

金時もまた、覚悟をもって応える。

己のことを『人間』であると認めた者がいる。

フィンはともかく、輝夜が『人間』だと言い切った。

なればこそ、金時もまた誠意を見せる。

ロキもあまり見たくないのかもしれないが、それでも金時の目を見据え覚悟を汲み取る。

 

「フィン、悪いけど頼み事は無しや。大方こいつの背中の確認とかやろうけど、断らせてもらう」

 

「…わかった。来てもらって悪かったね」

 

「ホンマやで。あとで美味い酒でも渡して貰わな帳尻が合わんわ」

 

「わかった、あとで用意させよう」

 

「ホンマか!いやぁ言うてみるもんやなぁ〜!」

 

「但し、飲めるのはこの戦いが終わってからだ」

 

「そ、そんな殺生なぁ〜」

 

ロキの扱いを手馴れたフィンは軽くあしらい、ロキもまたその場を去った。

ロキのせいでかなり悪くなった空気に耐えられず、金時は言葉を口に出す。

 

「悪かったな、オレのせいでアンタ等の神サンの気を悪くさせちまってよ」

 

「別に気にしていないさ。色々と聞きたいことはあるが、それも戦いが終わった後でも聞ける。それに、君は信用しても良さそうだ」

 

フィンは何も無かったかのように話を進める。

確かに聞きたいことは山積みであった。

しかし、それはきっと不安材料にはならないと指の疼きが無いことで確信する。

ならば彼を信頼して思う存分こき使おうと判断を下した。

 

「君には冒険者が手薄な所に行って欲しい。そのため、東西南北のあちこちに行って貰うことになると思う。かなりの負担だが、君を信用して任せたい」

 

「応ともよ!アンタはオレを信じてくれるって言うなら、オレもその信頼に応えてやるさ!」

 

「ありがとう。輝夜、君はアリーゼの指示に任せる。巡回場所などはこっちから指示を出す」

 

「わかった」

 

「なら各自持ち場に戻ってくれ。敵が引いた理由がわからないが、今の内に救助しきれていない所を片付ける」

 

その言葉でその場は解散となった。

ギルドから出る最中、金時は輝夜に感謝を述べる。

 

「ありがとよ」

 

「なんだ急に」

 

「あの神サンの言うとおり、オレはバケモンだ。でも、アンタはオレを『人間』だって言ってくれた。だから礼を言わせてくれ」

 

金時は輝夜に頭を下げた。

大柄な男が少女に頭を下げる図など、稀有(けう)な光景の何ものでもない。

だが、金時は嬉しかった。

自分ですら、たまに『人間』ではないと感じることもある。

そこが変わろうとも金時はやることが変わらないのだが、それでも『人間』として呼んでくれることは彼の在り方の肯定だ。

嬉しく思わないはずがない。

そんな金時に、輝夜は思わずため息を吐く。

 

「……はぁ。案外センチメンタルな男だな、貴様は」

 

「What!?」

 

「そのまんまの意味だ。あの神はお前が人助けするところを見ていない。それに比べて私達はお前の善人さをちゃんと見ている。だからあぁ言ったまでのことだ」

 

アメリカ被れの英語での発言をしてしまった金時に呆れたような視線を輝夜は向ける。

もちろん、アメリカだとか英語だとかわからないことだが、わかるのは驚いたということ。

そして金時への信用をしっかりと告げる。

人は見た物しか信じない、という人が多いが輝夜もその類いだ。

逆に言えば、一度見た物は現実として受け入れる。

だからこそ、輝夜の中で金時への価値観は変わらない。

それが金時も嬉しく、はにかむ。

 

「……そうかい」

 

「あぁそうだとも。だから、頼む。一人でも多くの命を救って欲しい」

 

輝夜から告げられる、切実な願い。

全員を救うなんてことは不可能だ。それは傲慢の在り方だとリューにも告げている。

だが、救われる者が一人でも多いなら、それに越したことは無い。

それ故の切実な願い。

 

「……任せとけ。『明日』を願うやつがいるなら、オレはそいつを必ず助けるさ」

 

「『明日』を願う…か」

 

「だから、アンタもちゃんと言えよ。もし『明日』を願うなら、オレはどこにだって駆けつけてやるからよ」

 

「ふっ、楽しみにしておいてやる」

 

きっと、神々がたまに言っていた『ヒーロー』なんて存在は、彼のことを言うのだろうな。

と輝夜は思いながら仲間達が救助活動を続けている所へと駆ける。

金時もその背中を見送った後、フィンから指定された場所へと向かう。

己を信じてくれた、彼等のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん、………あれ?ここは…?」

 

少女は目を覚ます。

確か自分は戦っていたはずだと思い返し、順を追って記憶を辿っていく。

そして気を失う最後の瞬間を思い出す。

目の前で、幼き子供が泣きながら、光に包まれる光景を。

 

「うっ……!」

 

胃に何も入ってなかったのが幸いだろう。

思わず場所も確認せぬままこの場を自身の物で汚すところだった。

あまり先程の記憶を考えないようにしつつ、ここがどこなのかを確認する。

自分と同じ意識を失っている者や怪我をしている者、そして後ろには天高くそびえる塔を確認し、ここが中央広場(セントラルパーク)の治療場だと認識した。

一体、自分はどれくらい気を失っていたのかを知るため、近くにいる者に声をかける。

 

「すみません、私って、どれくらい気を失っていたかわかりますか?」

 

「あぁ、アーディさん。気が付かれたのですね。今はまだ突入があった日の深夜ですよ。今のところ敵の襲撃が止んだので皆、治療にあたっている所です」

 

「そう、でしたか。ありがとうございます」

 

「いえいえ。まだ意識もハッキリはしていないでしょう。今はまだ安静にしていてください」

 

「……はい」

 

そう言ってその人はすぐ次の人の治療にあたっていた。

今はどうなっているのだろうか。

眠っている間に、何が起きたのだろうか?

戦いはどうなったのか。

アリーゼ達は無事なのか。

姉は無事なのか。

知りたいことは多くあり、そして何よりも知りたいことがあった。

 

ジャンヌは、どうなったのだろうか。

 

自分を助けるために庇い、その後どうなったのかわからない。

生きてて欲しい。

生きて、そして彼女の知る物語を教えて欲しい。

戦いの前にした約束を思い出しながら、アーディは立ち上がり、武器を携え戦場へと戻る。

この目で確かめなければ。

何が起き、何をすべきなのか。

まずは【ガネーシャ・ファミリア】本拠へと戻り、情報の確認を行おう。

足取りは覚束なくとも、徐々に意識はハッキリとしてくる。

顔を叩き、気合を入れる。

 

「よし!」

 

そう言って彼女は戦場へと戻った。

先に待つのは、確かな『希望』だと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アストレア・レコード

人心雷光(じんしんらいこう)

番外編で読んでみたいのは?(時間軸などに合わせ執筆時期が異なります)

  • ベル君がオラリオに来るまでのお話
  • 金時、師匠になる(終了後予定)
  • ジャンヌとアストレア・ファミリアの女子会
  • 英雄神話組の何気ない日常
  • 花のお兄さん、恋する乙女を応援する
  • 次回執筆予定のちょっと先出し
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