ダンまち×Fateシリーズ   作:英雄に憧れた一般人

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未だ星が見えずとも

 

 

 

 

 

 

 

 

朝が来た。

昏い朝が来た。

いつも照らし出す太陽は姿を見せず、人々から光を奪っていく。

 

星は見えない。

厚く覆われた雲が、星を見ることを許さない。

そこにあるはずなのに、確かにそこにあるはずなのに、星を見ることは叶わない。

 

朝となったはずの都市はあまりに暗く、それは雲のせいだけではないと皆がわかっている。

『正義』は『悪』に敗北した。

街は火の海に包まれ、民衆は泣き叫び、冒険者は倒れ、闇派閥(イヴィルス)は歓喜の声を上げた。

多くの星が墜ちた。

あんなにも眩ゆく輝いていた星々は一つ、また一つと失われた。

束の間の休みが与えられたが、どこも疲弊しきった者達で溢れかえっていた。

立ち上がることすら億劫で、先の見えない戦いにうんざりしていた。

もはや、生きる気力を失くす者もいた。

自分だけは生き残りたいと(すが)る者もいた。

いつ来るかわからぬ敵の襲撃に怯える者もいた。

誰であろうと関係なく、闇に飲まれていく。

信じていた正義(ひかり)は失われ、何を頼りにすれば良いのかわからなかった。道を見失ってしまった。

見えていたはずなのに、そこに確かにあったはずなのに、今は誰の目にも見えていなかった。

心の拠り所はなく、下を俯いた。

前も、上も、見ても暗く閉ざされている。

そんな状況下でも、神は何もすることができない。

祈ることしか、彼等にはできなかった。

 

「ぐぅぅぅぅぅ……!すまない!この言葉に何の意味も持たないものだとしても、すまない!!子供達よ!」

 

ある神は嘆く。

誰よりも子供達に愛を注ぎ、そしてオラリオの平和のために戦い続けた神は、その場では嘆くしかできなかった。

 

「君達の傷を、癒すことができなかった。我々に、力が足りなかった。すまなかった」

 

ある神は無力さを悔いる。

医療を司り、献身を尽くしてきた神は、多くの犠牲に何もできない己の無力さを悔いるしかできなかった。

旅の神も、鍛治神も、酒の神も、正義を司る神も、その場にいた神は、何かしらの後悔があった。

天界へと還った神と友神だった者もいる。

【ファミリア】同士で付き合いがあった者もいる。

やるせなさが、己の無力さが、彼等へと与えられていた。

故に、それが下界の慣習で神々にはただの『感傷』だとしても、彼等は冒険者(こどもたち)の魂を見送る。

黙祷(もくとう)を捧げる時間すら与えられない、冒険者達に代わって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……ぅあ」

 

「頼む!もうすぐ助け出す!だか───」

 

「ぁ────………」

 

リオンの願いは届かなかった。

あと少しというところで、また助けられなかった……。

神々が魂を見送る少し前、【アストレア・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】、【ヘルメス・ファミリア】の面々による救助活動が続けられていた。

精神的にも限界であるという状況で、一人でも多くの命を救おうと協力し合い、必死になって助け出す。

瓦礫を退け、負傷者を運び出し、臨時の避難所で傷を癒す。

それぞれがそれぞれの役割を全うしていた。

しかし、それで救えるなら良かった。

実際には、救う数よりも目の前で力尽きていく数の方が圧倒的に多かった。

例え英霊による手助けがあったとしても、それで全てが救えるわけではない。

逃げ遅れた者達、力を失った者達、平和を享受していた者達、その多くが声を上げる暇もなく、助けを呼ぶ暇もなく、ただ無惨にも屍へと変わっていった。

その目の前の現実に、リューの心は擦り切れていく。

そして今のが致命傷(とどめ)となった。

 

「そ、そんな………」

 

「おい、リオン!」

 

ネーゼがリューを呼ぶ。

しかしその声は既に届いてなどいなかった。

目の前の現実に、彼女は押し潰されていた。

もっと救えるはずだった。もっと助けれたはずだった。

いつか輝夜が言っていた『全てを救うことなど不可能』という言葉は、あまりにも正しかった。

何せ今、目の前でそれが引き起こされているのだから。

 

「嘘だ…こんなの、こんなの嘘だ……」

 

「急げぇ!まだ助けられていない者がいる!!」

 

シャクティが叫ぶ。

どうにかして一人でも助けようと声を張り上げる。

多くの仲間を喪い、それでもなお涙を堪え、己を騙しながら立ち上がる彼女の姿を、綺麗な翡翠(ひすい)だったはずのリューの瞳には映っていなかった。

 

「嫌だ…こんなの、あんまりだ……」

 

「魔導師の派遣を……!誰でもいい!誰でも良いから、来てください!」

 

アスフィが懇願する。

目の前で力尽きていく人を見るのはもう嫌なのだとか細く声を絞り出す。

犠牲者を見たくない。こんなことのために冒険者になったのではない。

だから、せめて一人でも多く救いたい。

そんなアスフィの人知れず告げられる悲鳴も、ヒューマンより長いリューの耳には届いていなかった。

 

「リオン!今はまだ我慢して!今は、一人でも助けないと!」

 

「……………むり、です…アリーゼ」

 

「リオン!」

 

「ほっとけ団長!今は一人でも助けだせ!」

 

アリーゼの説得もリューには意味をなさなかった。

いつも周りを照らし出す、太陽のような存在である団長が呼びかけても、リューの心はもう折れてしまった。

それでも諦めず、なおも説得をしようとするアリーゼをライラが止める。

今すべきはリューの説得ではない。

確かにリューの力があれば助ける数を増やせるかもしれない。

傷は癒せるし力もある。

だが、その説得をしているあいだにも一つ、また一つと命が喪われてしまう。

時間は、待ってなどくれない。

 

「──っ!」

 

「負傷者はここへ!手当をする!」

 

アリーゼはライラ達と共に救助活動へと戻る。

いつ回復するかもわからない彼女に構っている程、人手に余裕があるわけがなかった。

アリーゼはもう一度リューの様子を見て、唇を噛み締めることしかできなかった。

ノイン達医療班は負傷者達の手当を行い、誰もが一つでも命を繋ごうとしていた。

包帯も傷薬も、回復薬(ポーション)も圧倒的に足りていない中で、それでも一つでも多くの命を助けたいと汗を拭う暇もなく働き詰めていた。

そんな中で、リューだけが立ち止まっていた。

リューだけはこの悲惨な現実を受け止めきれなかった。

その覚悟が、できなかった故に。

 

「正義とは……何だ……?」

 

エレン…否、エレボスに問われたこと。

問われた日からずっと考え、ずっとずっと考え続け、友に助言をもらいながら考え、それでも導き出すことができなかった答え。

その明確な答えを、今だけは全てを差し置いてそれを欲していた。

 

「私達が追い求めていた秩序は……こんなにも容易に、悪に屈してしまうのか……!」

 

これは悔しさ。

ずっと仲間達と追い求め、きっと実現できると信じていたというのに、それはいとも容易く打ちのめされてしまった。

それならば、私達の目指した平和とは、勝ち取ろうとした正義とは、一体何の意味があるのだろうか。

 

「ジャンヌが言っていた願いは……こんなにも簡単に踏みにじられてしまうものなのか……!」

 

これは憤り。

友の信じる正義を、敵に嘲笑われながら踏みつけられ、踏みにじられたことに、そして何よりも己の無力さに対する怒り。

何もできなかった。

何もさせてもらえなかった。

ただ目の前で己の未熟さを叩きつけられただけであった。

 

「何も……何も守れなかった………」

 

これは失望。

目の前で何人も亡くなった。

目の前で何人も肉塊へと変わった。

目の前で何人も、屍へと変えてしまったことに対する絶望。

肉の焦げた臭いが、耳をつんざく慟哭が、火だるまとなりのたうち回る姿が、頭に焼き付いて離れない。

吐き気が止まらず、鼓膜を破りたくなる程にうるさく、人だったものに恐怖する。

頭の中でずっとその光景が流れている。

忘れることを許さないと言われているように。

 

「何人死んだ……?何人殺された………?」

 

数えているわけがない。

味方も、守るべき者も、敵も、皆死んだ。皆殺された。

焼かれた。潰された。爆散した。刺された。殴られた。斬られた。貫かれた。燃やされた。

 

「目の前の手を……何度とれなかった……?」

 

数えてなどいるわけがない。

手を伸ばす彼等の嘆きが聞こえる。

どうして助けてくれなかった、と。

どうして手を掴んでくれなかった、と。

もっと早く来てくれたら助かった、と。

何故お前達は生きて我々が死んだのだ、と。

聞こえないはずの声は、リューの精神を(むしば)んでいく。

 

「私達は……何のために、戦っていたんだ………?」

 

理由を見失った。

元々あった理由を見失う程、そんなことも考えられない程、彼女の頭はまわっていなかった。

抑えきれぬ絶望が、直視できない現実が、理不尽な不条理が、救いきれぬやるせなさが、そのどれもがリューの思考を進めさせなかった。

一種の防衛反応かもしれない。

これ以上先の思考に至れば、間違いなく再起不能となる木偶(でく)へと成り下がるかもしれなかったから。

だから今は考えなくていい。

 

(………アリーゼ達を、手伝わねば)

 

最早、涙すら出ない。

涙を流す余裕もない程に、心は摩耗していた。

アーディを失いかけた時、ジャンヌがアーディを守ってくれた。

だから絶望に堕ちなかった。

ジャンヌが炎に飲み込まれた時、彼女の願いで踏ん張ることができた。

だが、今回は何もない。

何も残されていない。

リューはやつれ、瞳は濁り、視界はハッキリせず、幽鬼のように、ふらふらと覚束無い足取りで一歩、また一歩と歩みを進める。

もう、壊れても良い。

そうだ、いっその事壊れてしまえば、もう何も考えずに済む。

もう、『正義』のことすら考えずとも───

 

『──リオン!『正義』は巡るよ!』

 

ふと思い出す。

眩しい。この昏い世界でそれは、淡く、何よりも美しく輝いて見えた。

やめてくれ。

もういいじゃないか。

もう充分と頑張ったじゃないか。

だから、もう行かせてくれ。

闇へと歩みを進める。

その光から目を背けるように。

見たくないと逃げるように。

 

『ただ明日を願う、それこそが何よりも大切な『正義(ねがい)』ということが、私が今、答えれる最大限です』

 

また聞こえる。

二人の友が、先へと進ませてくれない。

目の前だ、もうすぐそこなのだ。

目と鼻の先に奈落まで堕ちる闇があるというのに!

それなのに……『正義』を示してくれた友が止める。

誰よりも優しい友が、誰よりも高潔な友が、リューを引き止める。

 

『そっちじゃないよ』

 

そんな聞こえないはずの友の声が聞こえる。

いつも笑顔を絶やさず、英雄譚を好み、どんな時でも夢を追い求める友の声が聞こえる。

彼女は今、この場にいない。

いるはずがない。

いないでくれ……。

決心が、心を壊す決心が揺らいでしまう。

振り返りたくない。振り返りたくない。

早く前へ。

そう思って踏み出そうとも、一歩が出なかった。

目の前に奈落があるのに、まだ希望を捨てたくないと足は踏み出せない。だから、振り返ってしまった。

涙を出せない少女は、哭くことさえできない少女が、ただ光を求めて、振り返る。

何も、何も考えず、何も考えたくなく、そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その何かに、縋るように、振り返った。

そこには本来いるはずのない、かつての記録では存在しなかった、希望(とも)がいた。

 

「リオン、こっちにおいで」

 

その言葉と共に、リューは駆けた。

目の前にあった闇から逃げるように、目の前の光を手放さないように、リューは駆けた。

奈落は這い上がって来る。

お前はそっちではないだろう?と下卑た笑みを浮かべながら手招きをする。

しかし、すでに少女の目にはそんな闇は映っていなかった。

 

「────アーディ!!」

 

目の前の友に抱きついた。

実感を確かめるように。

目の前の彼女が夢ではないと確かめるように。

もう二度と離さないと決めたように。

同時に泣き叫ぶ。

泣き崩れる。

涙を流せなかった少女は、やっと、その悲鳴を口に出せた。

 

「ごめんなさい……!ごめんなさいごめんなさい……!助けられなくて、ごめんなさい………!」

 

目の前の少女に向けられた言葉ではない。

しかし、アーディは黙ってそれを聞く。

リューを抱きしめ返し、頭をぽんぽんっと子供をあやすように頭に手を添える。

そうしてリューは言いたかったことを、叫びたかったことを吐き出す。

 

「助けたかった!救いたかった!守りたかった!でも、何もできなかった……!何も、できなかった……!」

 

「うん」

 

目の前で何度見届けただろうか。

その手から何度こぼれ落ちてしまっただろうか。

その手には、一体何が残ったというのだろうか。

 

「頑張ったのに……何とか助けようとしたのに、届かなかった……!」

 

「うん」

 

罪の意識が彼女を追い詰めていた。

罰を誰かに与えて欲しかった。

許しを誰かに乞いたかった。

 

「ずっと、声が聞こえる。何で助けてくれなかったと、何でもっと早く来てくれなかったと」

 

「うん」

 

頭の中で助けられなかった者達の幻聴が聞こえ続けていた。

耳を塞いでも、別のことを考えても、それでも聞こえ続けていた。

 

「肉の焦げる臭いも、声すらあげれなかった者達の慟哭も、苦しむ姿を見ることしかできなかった!」

 

「うん、よく耐えたね」

 

目に焼き付いた光景。

鼻に残る臭い。

耳に聞こえ続ける声。

手に残る力尽きていく者達の冷たさ。

どれもが忘れさせないと言うように苛み続けた。

 

「ごめんなさい!助けられなくて、ごめんなさい!!ごめんなさい……ごめんなさい………」

 

「大丈夫だよ、リオン」

 

アーディは静かに、リューへと告げる。

泣き続ける子供を安心させるように、救いを求め続ける少女を許すように、そして、『英雄』を求める女の子の英雄となるように、静かに告げる。

 

「みんな、許してくれる。だって、リオンはこんなにも傷付いたんだから。だから、大丈夫」

 

「ぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

溜まっていた淀を吐き出すように、少女は大声で泣き始めた。

()き止められていた涙は決壊し、多くの者が少女の叫びを聞いた。

それにつられるように、涙を流し始める者がいた。

後悔を口に出す者がいた。

謝り許しを乞う者がいた。

皆限界だった。

それでも手を止めることは許されない。

だから、少女はただ泣き続ける。

今を泣くことのできない強き者達の代わりに。

はるか昔から『英雄』を求め続けた少女の元に、誰よりも優しい『英雄』は現れた。

そして、それは更なる『英雄』への、確かな(えにし)となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「やっと泣いてくれたわ!あのリオンを泣かせるなんて、やっぱりアーディはすごいわ!私の次にすごいと認めてあげるわ!フフン!」

 

「何でアンタが調子に乗るんだ……。団長様、調子に乗るなら手を動かせ」

 

リューの泣く姿を見て、何故か調子に乗るアリーゼといつもいるツッコミ役の代わりをするライラ。

そんな二人も内心はホッとする。

魂の無い抜け殻のようなリューはあのままいけば堕ちるところまで堕ちていただろう。

その危惧をアーディという一人の少女が繋ぎ止めた。

彼女だから繋ぎ止めることができた。

稲穂に佇む少女(ゆうれい)はいない。

目の前に、ちゃんと存在している。

 

「でも、本当に良かったわ。アーディが戻ってきてくれて」

 

「……団長」

 

「その先は言わないで、ライラ。私、まだ諦めてないの」

 

その瞳には、覚悟があった。

ライラの次の言葉もわかっててなお、彼女は怯む様子様子もなく、毅然(きぜん)としていた。

 

「──っ、真っ先に向かって、何もなかったじゃねぇか」

 

アリーゼ達とライラ達が合流した時、アリーゼの頼みで彼女らが突入した場所へと向かった。

多くの爆発痕が残りどこを見渡してもボロボロで、いつ崩れてもおかしくない状況であった。

そして何より、多くの血痕が残されていた。

焼けた臭いに鼻を摘みながらも必死に捜索した。

奥に進めば進む程、敵の亡骸も見つける。

そうして最奥部にたどり着けば、そこには何もなかった。

血痕は残されていた。

しかし、何もなかったのだ。

僅かな希望が打ち砕かれた気がした。

もしかしたらという淡い期待が崩れていく気がした。

それでも、アリーゼは諦めなかった。

 

「それでもよ。なかったのならどこかへ歩いて行ったのかもしれない。名も知らぬ誰かが助けてくれたのかもしれない。だから、私は諦めない」

 

「………はぁ、諦めの悪さがアタシ等の団長だからなぁ」

 

あの場でも同じことを言ってのけた。

団員の多くが歯ぎしりをする中、彼女だけは前を見ていた。

そこに死体があったのなら、彼女ですら膝をついたのかもしれない。

だが結果はなかった。

何も残されていないというのなら、それは諦める理由にはならなかった。

今までと同じように、諦めの悪さが、団員を救った。

それはライラも同じである。

 

「ええ、そうよ!私の諦めの悪さはきっと天よりも高く、ダンジョンより深いわ!フフーン!さっすが私!」

 

「はいはい。……まぁ、アタシも一発殴っときたいしな」

 

「あら?ライラ、ジャンヌのこと苦手じゃなかったかしら?」

 

アリーゼの調子に乗る言葉も流し、ライラは呟く。

ライラはジャンヌの聖人然としたところが苦手だった。

強く、たくましく、清く、誇り高く、(おご)らず、誰であろうと目線を合わし、誰の手もとる彼女の聖人然としたところがあまりにも苦手だった。

何故苦手なのか、ライラ自身も理解している。

これは醜い嫉妬なのだと、理解している。

理解して、自身と比較して、卑下してしまう。

そんな自分に嫌気をさしていた。

ジャンヌは気にしないと言うだろう。

現に団員に死なないでと言っておきながら、自分は生死不明なのだ。

とんだお人好しである。

 

「苦手に決まってんだろ。でもそれ以上に、アタシ等に死ぬなって言っておいて、自分が死にかけてることに腹が立ってるんだよ!」

 

だから殴る。

例え苦手であろうとも、ライラを小さく弱い小人族(パルゥム)だと馬鹿にせず、一人の人間として他の者と変わらぬ態度で関わってきた彼女に、自分の気持ちを伝えるために。

 

「それはそうね。よし、なら私も一発やるわ!」

 

「お?一緒に殴るか?」

 

ニマニマとした笑みを浮かべながらライラは提案する。

二人で殴れば丁度いいなんて思ってしまう。

全く、本当にあの聖女様とはソリが合わないなぁ、なんてライラは考えていた。

 

「いえ、私はジャンヌのあの胸を!揉みしだくわ!」

 

そんなライラの考えはどこぞの馬鹿のせいで打ち砕かれた。

何の迷いもなく、何の躊躇(ためら)いもなく、堂々と、凛として、何の(けが)れも知らない純真無垢な子供のように言ってのける。

あぁ、貴方はどうしてそんなにもこういう時に限って残念なのか……

それに、それは一発ではなく二発なのでは?

 

「堂々とエロいこと言ってんじゃねぇ馬鹿団長!!」

 

ポコンっ!

 

「あいたっ!?」

 

「はぁ……マジで生きてやがれよ、聖女サマ」

 

容赦のないライラからのゲンコツに涙を目に浮かべうずくまる。

どうしてか大きなタンコブでもできてしまいそうだ。

そんな痛みに(もだ)えるアリーゼを横目に、ライラは厚い雲に覆われた昏い空へと言葉を放つ。

僅かな希望だとしても、信じたくなってしまうのが、人なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにまだ救助活動中である。

 

「そこ二人!!手を動かせ!!それとリオンとアーディもだ!!いい加減手伝え!!」

 

もちろん、二人仲良く怒られる。

泣き止んだリューとそれを待っていたアーディも一緒に怒られる。

モンスターも裸足で逃げ出すオーガの形相をしたシャクティに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編で読んでみたいのは?(時間軸などに合わせ執筆時期が異なります)

  • ベル君がオラリオに来るまでのお話
  • 金時、師匠になる(終了後予定)
  • ジャンヌとアストレア・ファミリアの女子会
  • 英雄神話組の何気ない日常
  • 花のお兄さん、恋する乙女を応援する
  • 次回執筆予定のちょっと先出し
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