シャーレ活動備忘録   作:遊園市街

164 / 236

 感想評価お気に入り登録誤字報告、誠にありがとうございます。



ティーカップから手を放して

 怒り狂ったナギサの発言から数秒。まるで永遠にも思えるような非常に長い時間は、自身の言動を冷静に顧みた彼女により終わりを告げる。ゆっくりと深呼吸をして、浮かせていた腰を下ろし、優雅な所作で口元にティーカップを運び、怒りと共に紅茶を喉の奥まで流して。

 

「あら。私ったら、何という言葉遣いを……失礼しました、先生……ミカさんも」

「いやー、怖い怖い……」

 

 そんなやり取りと共に、ナギサのロールケーキ事件は未遂に終わった。ナギサの名誉もミカの名誉も守られた、誰も大きく傷ついていない平和な帰結だ。ミカがナギサで遊んでいた事は見ない振り、ナギサがミカを脅していた事にも目を瞑ろう。多分、そこを突くと話が余計に拗れて収拾がつかなくなるから。触らぬ神に祟りなし、というものだ。

 

 そして、今は。

 

「……そろそろ本題に入りましょうか」

 

 と、ナギサが話題の変更を切り出す。先生が会談の席に着いてから約30分が経過した頃だった。その時間を挨拶とアイスブレイクに殆ど費やしたため、もう充分空気は解れたと踏んだのだろう。実際、その通りだ……と言うよりはこれ以上雑談に花を咲かせていると何時まで経っても本題に入れないと思ったのが主だろうが。

 

「私達が先生にお願いしたいのは簡単な事です」

「うん……簡単だけど、重要な事だよ」

「はい、そうですね」

 

 口元にロールケーキを運ぶミカを流し目で見て、ナギサは静かに首肯する。

 

「補習授業部の顧問になっていただけませんか?」

「補習授業部、ね……」

「えぇ。つまり、落第の危機に陥っている生徒達を救っていただきたいのです。補習授業部と銘打っていますが、その形態は部活と異なります。故に先生にお願いする仕事は部活の顧問ではなく、何方かと言うと『担任の先生』と表した方が正確かもしれませんね」

 

 放課後の時間、勉学とは直接関わりがない課外活動を見る顧問ではない。放課後や始業前、補講や補修を行い生徒に勉学を教える教師の仕事。故に顧問ではなく担任の先生とナギサは称したのだろう。勉強を教え、疑問点を解消し、テストないしレポートの点数を伸ばす。成績を伸ばして、落第を撤回させる。それが、今回トリニティから依頼されたシャーレの仕事。

 先生は懐かしさを覚えながら、静かに頷いてナギサに先の言葉を促した。

 

「トリニティ総合学園は設立当初から文武両道を校訓として掲げる、歴史と伝統が息づく学園です。それなのにあろうことか、よりにもよってこの時期に、成績の振るわない方がなんと4名もいらっしゃいまして……」

「私達としてはちょっと困ったタイミングでっていうか……エデン条約の件で今はティーパーティー全体が結構バタバタしててね。勿論、あの子達の件も解決しなきゃいけないんだけど……今は時間も人手も足りなくって」

 

 たはは、と少し気恥ずかしそうに笑うミカであったが……直後、ぱんと手を鳴らした。

 

「その時に丁度見つけたの! 新聞に載ってたシャーレの活躍っぷりを! 猫探し、街の掃除、宅急便の配達まで、八面六臂の大活躍! シャーレの先生なら面倒ごと……じゃなかった、補習授業部の子達を安心して任せられそうだなって!」

「そう思ってくれるのはありがたい限りだけど……大丈夫かい? その噂におよそ勉学に関するものが含まれてないけど……」

 

 キラキラとした輝く目を向けるミカに、先生は苦笑いを浮べる。今ミカが挙げた功績は全て心当たりがあるし、シャーレが最近何でも屋のような扱いを受けているのもまた事実だ。

 

 それに、先生としても余程の事……例えば誰かや何かを傷つける依頼や、非現実的が過ぎる依頼でない限りは、その依頼主が生徒であろうと誰であろうと可能な限りは応えたい。勿論、このお願いも断るつもりはなかった。

 

 だが、その功績の中に勉学に関するものが含まれていない人物に、落第寸前の生徒の成績を預けるのは如何なものかと思わずにはいられない。

 

「……面倒ごとなんて言ってはいけませんよ、ミカさん」

「うぐ……ま、まあでも、ある意味本当の事でもあるし、先生にちょっと迷惑かけるのは変らないし……」

「迷惑なんて思ってないよ。寧ろ、頼ってくれて嬉しい」

「……うん、先生ならそう言うよね」

 

 はにかむような、懐かしむような。或いは寂しさを覆い隠す笑み。それを少しだけ浮べて、ミカは何時ものミカらしい表情に。

 

「今は皆BDと教本で学習する時代だし、学校の職員とか教授とかならまだしも、『先生』って概念は珍しいんだよね。先の道を生きると書いて、先生。つまり、生徒を導いてくれる役割って事だよね? 尊敬の対象、あるいは生きる指針として皆に手を差し伸べ、導く……補習授業部の顧問として、これはぴったりだなって思って!」

「噂では、尊敬という言葉が合うかどうかについては、意見が割れているようですが……」

「あー、そうだったね。報告書によって全然違うっていうか……まぁ、これは先生の名誉のためにも言わないでおくね」

「……トリニティで何かをやった記憶はないけれど、察するに他校の情報かな?」

「……えぇ、はい。我々の情報網は外部にも伸びていますので」

「アビドス、ミレニアム。あとは百鬼夜行にゲヘナ……ぱっと心当たりがあるのはこの辺りかな。大方、尾鰭背鰭が付いたりしてるんだろうけど」

 

 違うかな、と聞く彼。細められ、柔らかさの中に鋭さを帯びた視線はナギサを射貫く。あらゆる虚飾を薙ぎ払い、真実を映す双眸。それは確かに、ナギサとミカが『彼の名誉のために』と覆い隠してた噂話の真相を引き出すに至った。

 

 即ち、彼の名誉やら何やらが傷つく恐れのある話の数々を。

 

 曰く、指揮の腕前は最高だが基本的に頭と性格と雰囲気が緩い。

 曰く、財布の紐をミレニアムの会計と連邦生徒会の財務室長に握られている。

 曰く、彼が怪我をしている時は99%以上の確率で生徒絡み。

 曰く、泣かせた生徒の数は底知れず。

 曰く、生粋の女誑し。

 曰く、幾千の夜戦を超えて不敗。

 曰く、グランドティーチャー。

 

 尾鰭背鰭が付いたり誇張されたり、幾つかは心当たりがないものもあるが、大体その通りな噂の数々。それを聞いた先生は静かに「……そう」と呟き、酷く透明な表情で遠くを見て────哀愁漂う一言。

 

「……私ってそんな風に見られてたんだぁ……」

 

 彼の声は、死んでいた。そんな噂がキヴォトスで流れていること自体もそうであるが、何より否定したくても微妙に否定できない事が一番心にくる。

 

 徹夜明けでお風呂に入っていない生徒の頭皮を吸っているだの、生徒を公共の場で四つん這いにさせて首輪をつけるだの、足を舐める妖怪だの、生徒の卒アルを秘密裏に入手するだの、生徒の下半身をセメントで固めて写真を撮るだの、生徒と混浴するだの……そんな噂を流されなかっただけありがたいと思え、なんて声が聞こえて気がしたがきっと気のせいだろう。

 

「えっと……先生がそんな人じゃないのは知ってるからね? まあ女誑しなのは事実かもだけど……でも誑かしたくて誑かしてる訳じゃないもん!」

「……その方がよほど拙いのでは?」

 

 ミカのフォローとも呼べないフォローに、追い打ちのナギサ。ナギサの言う通り、自覚が無いまま振りまいている方が余程質が悪い。主に本人に自覚がなく、改善が見込めないという点で。

 先生自身、誰かを誑かしている自覚は皆無だ。生徒に対する言動は彼女達の絶対的な味方であろうとする意志を基盤に、己の善意をコンパスとしている。

 

 生徒が泣いているならその涙を拭う。

 悪意を持って生徒を泣かせている相手は何としてでも排除する。

 生徒が何処にいようと、『助けて』の一言さえあれば星の光より早く駆けつけよう。

 救われないと嘆いているなら、必ず手を差し伸べる。

 

 徹頭徹尾、生徒の味方。彼女達が当たり前に日常を謳歌できるように、当たり前に明日に希望を持てるように、当たり前に笑い合えるように。見返りは求めない、君が笑って幸福の中にいられるならそれでいい。君の笑顔こそが、私に与えられた最大の報酬であり、報いであり、見返りなのだから。

 

 ────この何処が『誑かしている』のか、皆目見当つかない。だが、自己評価はあくまで自己評価。ナギサやミカからの評価が『他人から見た先生像』に近しいだろう。つまりは結局誑かしなのである。

 

 その現実を真面に食らった先生は呻き声1つ漏らして、苦い顔のまま紅茶を飲む。こんな時でも味覚は正直で、美味しいものはちゃんと美味しいと反応を示す。いっそこのまま、苦い現実も紅茶と一緒に飲み干せると良いのに、なんて思っても何も変わらない。

 

「そのような心ない噂が流れているのも事実ですが……私としては、その様な事は思っておりません。記憶に新しいシャーレ解放戦線、先生と共に七囚人の一角と銃火を交えたハスミさんは先生の事を高く買っていました。とても優しく、暖かく、他人を心から愛せる人であると。勿論、ハスミさんだけではありません。ミカさんを筆頭にシスターフッドの歌住サクラコさんや若葉ヒナタさん、伊落マリーさん、トリニティ自警団の守月スズミさん、宇沢レイサさん、図書委員会の古関ウイさん、円堂シミコさん……それ以外にも沢山。先生と関わった生徒の皆さんは、口を揃えてハスミさんと似た様な事を仰っていました」

「……そっか」

「噂はあくまで噂、決して真実ではありません。勿論、真実が含まれている事もあるのでしょう。火のない所に煙は立たぬ……とは、百鬼夜行の言葉でしたか。ですが、火と煙は別物。これは噂と真実も同様でしょう。人から人へ伝わる過程で恣意的に歪められ、脚色された噂は真実に値しません」

 

 ナギサはそこで一息吐いて。

 

「ですので、私は先生を実際にこの眼で見るまで噂も報告書も、誰かの話も然程信じていませんでした。思い込みは真実を曇らせてしまいますから」

「……それで、私はナギサのお眼鏡に叶ったのかな?」

「えぇ、こうして実際にお会いし、お話して確信しました。先生は信用に値する人物である、と。ハスミさんやトリニティの生徒の皆さんが仰っていた通りです」

 

 そう云い、ナギサは微笑みと共に紅茶を口に含む。幼馴染たるミカや正義実現委員会の副委員長を任されているハスミを始めとするトリニティの生徒達と、どこの馬の骨とも分からない人物が流したであろう噂。その何方が信頼に値するかなんて、元より始めから分かり切っていた事だ。

 

「兎に角! 今はちょっと忙しい事もあって、私達の手が空いてないから……ぜひ先生にこの子達を引き受けてほしいの!」

「話を戻していただきありがとうございます、ミカさん……もう少し説明しますと、この補習授業部は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて都度創設し、救済が必要な生徒達を加入させています。少々特殊な形ではありますが、急ぎという事もありシャーレの超法規的な権限をお借りしつつ……といった形で、ですね」

 

 まあ、そうだろう。落第寸前の生徒を救済するための部活が常設されているのは流石に拙い。それこそトリニティの教育カリキュラムを一から見直さなければならない程の大問題だ。

 そして、シャーレの権限に乗っかる形で今回の補習授業部が創設されたという事は……恐らく、この時期での創設はイレギュラーだ。

 

「色々とややこしいですが、本質はあくまで『成績の振るわない生徒達を救済する事』にあります。だからこそ、こういった特殊な形での創設が許された訳ですが……」

 

 ナギサは一旦言葉を区切る。ティーカップもソーサーに置き、先生を見つめる視線は真剣そのもの。隣を見ればミカも同じような表情を浮かべている。

 

「如何でしょう、先生? 助けが必要な生徒達に、手を差し伸べていただけませんか?」

 

 ────その願いに対する返答なんて、決まり切っている。

 

「勿論。私にできることであれば、喜んで」

 

 助けが必要な生徒がいるのなら何だってする。必ず手を差し伸べる。そこだけは、決して譲れない己の先生としてのプライドだ。

 

「やった! ありがとー先生!」

「ふふっ……きっと断らないでしょうとは思っていましたが……ありがとうございます」

 

 ミカは少女のように愛らしく。ナギサは上品に喜びを表す。予想していた解答とはいえ嬉しいのだろう。彼が何の打算もなく協力してくれたことが。

 

 そして、ナギサが手元のベルを鳴らすと扉のすぐ先に控えていたと思われるティーパーティーの行政官がトリニティの校章が箔押しされた真白いバインダーを抱えながら入室し……それを彼女に渡して、速やかに退室した。

 

「では、こちらを」

 

 先生はナギサからバインダーを一冊受け取る。そのまま彼はナギサに目配せをして、視線で了承を受け取るとぱらぱらと中身を捲り出した。

 

「そちらの名簿に記されている方々が補習授業部の部員、全4名です。名簿以外にも生徒情報、試験の点数、面談の記録等のパーソナルな情報も含まれていますので、くれぐれも取り扱いにはご注意ください」

「つまり、トリニティの困ったちゃん達!」

「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん。こう言いましょうか、トリニティにおける愛が必要な生徒達、と」

「そうだった、ごめんねナギちゃん……ま、呼び方はなんでもいいんだけど……」

 

 その会話を尻目に先生はぱらぱらとページを捲る。名前、顔写真、学年。どれを取っても見覚えのあるものばかり。知っている顔ばかり。大切で、愛おしくて、己の何を対価にしても守りたかった笑顔達。先生は瞳に僅かな郷愁の色を覗かせた後、優しい眼差しで名簿を一撫で。思い出の中に多くを仕舞い、バインダーを閉じた。

 

「詳しい内容については追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」

「そうだね……この件とは全く関係ない話で申し訳ないけれど、2人は妙な話を聞いたり、体験した事はないかい?」

「妙、ですか……具体的には、どのような点が妙なのですか」

「うーん、そうだね……不自然な物資の流れ、無所属のオートマタやドローン、原因不明の体調不良、局所的かつ短時間の地震、神秘や空間の揺らぎ……とか?」

 

 その言葉にナギサは少し考えこむ。ここ最近、誰かから伝えられた情報を改めて精査しているのだろう。彼の云った妙な点に該当する案件が無いかどうか。だが、その結果は芳しくなかったようで彼女は苦い顔で首を横に振った。

 

「いえ、特にそのような話を聞いた記憶は……お力になれず申し訳ございません」

「大丈夫だよ。知ってたらラッキー、程度の事だったからね。それに、これはトリニティの問題じゃなくてシャーレが管轄する問題だ。だから、ナギサは気にしないで」

「お気遣い、ありがとうございます。もしそのような話が入ってきた場合は真っ先にお伝えしますね」

「ありがとう、助かるよ」

 

 ────談笑する傍ら。テーブルの下で手を固く握り締めていたミカに2人は気付かなかった。

 

「うん、今聞きたいのはこれ位かな」

「承知しました。また何かあれば聞いてください。では準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形で来ていただくことに出来ればと。先生のご協力に感謝します。これで一安心です」

「じゃっ、またね先生! 今度は私がお茶会に招待するよ! いつになるかはちょっと分からないけど……」

「そうですね……今は特に忙しい時期ですし、ティーパーティーの生徒会長がこうしてまたすぐ集まれるとは限りませんから」

「そうだねー、パテルの方もバタバタしてるし。ナギちゃんのところ(フィリウス)セイアちゃんのところ(サンクトゥス)も似た感じでしょ?」

 

 そう言って、ミカは椅子から立ち上がりぐっとと背伸びをする。

 

「ま、でも先生にもナギちゃんにも会えてお話しできたし……うん、私は嬉しかったよ!」

「はい、私もですよ、ミカさん」

 

 その会話にこの御茶会の閉幕を感じ取った先生もミカと同じように席を立つ。凝り固まった体を適度に解しつつ、脳内で今後の予定を組み立てて……ナギサの方に視線を送った。

 

「では、これからよろしくお願いいたしますね、先生。私もティーパーティーのホストとして、先生をエスコートいたしますので」

「私も手伝うから、困ったことが有ったらいつでも呼んでね!」

「うん、ありがとう。こちらこそよろしくね」

 

 遠ざかっていく2人の背中。それをナギサは微笑みながら見送った。

 

 

 ▼

 

 

「────首尾は?」

「うん、いい感じ。分かってはいたけど、やっぱり引き受けてくれた」

「そっか……先生は変らないな」

 

 トリニティ総合学園内部、ミカの執務室で待機していた少女はふわりと笑う。懐かしむような、或いは焦がれるような。およそ『氷の魔女』と呼ばれている少女とは思えないほどに、その表情は柔らかだった。

 

「これで先生を補習授業部に拘束するって目標はクリア。あとは私達次第だね」

「うん……調印式前まで、先生の安全は私が守る。ミカは────」

「ナギちゃんとセイアちゃんには手を出させないよ、絶対にね」

 

 ミカは「その為にミネ団長を動かしたんだし」と言って、椅子に腰を掛ける。開かれた窓から入り込む初夏の風に毛先を遊ばせて、流し目で少女を見た。

 

「調印式前まで────先生を頼んだよ、アズサちゃん」

「あぁ、任せてくれ」

 

 

 ▼

 

 

「────ふむ、良いだろう」

「賢明な判断、感謝しますよ。プレジデント。では、正式な契約は後日メッセンジャーを通してお伝えします」

 

 カイザーコーポレーション本社。最高責任者の執務室で赤い女は口の両端を歪める。そして、要件は済んだと言わんばかりに背を向けて……執務室を後にした。その傲岸不遜な振る舞い、敬意の欠片もない言動が癪に障ったのか、軍服にも似た正装を纏ったオートマタ……ジェネラルと呼ばれる人物は静かに耳打ちをする。

 

「……宜しいのですか?」

「防衛室の小娘と協力するよりも、あの女と手を組んだ方が得られるリターンが多い。無論、あの小娘よりは御しにくいだろうが……使いこなしてみせよう」

 

 御せなければ、機嫌を損ねれば、或いは契約を違えれば────確実に死ぬ。一切の抵抗すら許さずに、機械仕掛けの頑強な体は瞬く間に物言わぬスクラップと化す。正しく災害と呼ぶに相応しい女。

 

 あぁ、正しく災害。傲慢の権化。カイザーの兵器、オートマタ、ドローンを求める大欲。普段なら鼻で笑い一蹴するようなふざけた提案だったが……あの女には賭ける価値があった。神の片鱗に届き得る絶大な戦闘能力、神秘に対する深い理解、一つの自治区を長年収めている手腕。どれを取っても一級品。求めるものを差し出し、取引をして協力関係を結ぶだけの価値があの女……ゲマトリアが一角たるベアトリーチェにはあった。

 

「承知いたしました……防衛室長との関係は如何なさいますか?」

「協力関係は続けておけ。連邦生徒会にパイプ役が居る方が我々としても動きやすい。関係を切り、処分するのは全て済んだ後だ。それまでは踊らせておけ。あの小娘は人を蹴落とす気概はあれど、人を殺す気概はないのだからな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。