シャーレ活動備忘録   作:遊園市街

182 / 236

 感想評価お気に入り登録誤字報告、誠にありがとうございます。



細やかな休息

 今日から始まった本格的な勉強の合宿。そのカリキュラムは大体学校の授業とほぼ同一であり、朝の9時からスタートし、お昼の12時に1時間の休憩を挟んでから、6時まで授業が続く。合間合間に休憩時間は用意されているが、大体10分ほどで長くないため、朝から夕方までの長時間、彼女達は机に向かっていた。

 

 今の時間は午後の7時過ぎ。本日のカリキュラムが終了し、本来ならば夕食を取る時間帯であるのだが……少女達はまだテキストと向き合っている。第二次特別学力試験は合格したいと思ってくれているのだろう。先生としては大歓迎の良いモチベーションであった。彼は黙々とペンを動かす少女達の集中を途切れさせたくないため、黙って見守りつつ……明日以降の日程の調整を行う。

 

 今日の午前中は模擬試験とその解説が大きなウェイトを占めていて、午後からは何時もの補習授業部のような進行であった。ハナコとヒフミがそれぞれアズサとコハルに付きつつ、基礎から怪しい部分があれば彼が教鞭を振るい授業を行う。彼が授業を行っている間はハナコとヒフミは自分達の勉強を行えているため、懸念されていた2人の負担と勉強時間については予想よりも少なかった。だが、彼女達の負担が増えているのは変らないため、様子見は必須であろう。

 

 明日も同じように午前中は模擬試験を行う予定だ。今日は去年の流用だったため、明日は一昨年のものを使用する予定。問題のデータはPCにダウンロード済であるため、後は問題の選別と印刷だけ。仕事量は大した事無いため、今日はヒフミもゆっくりと眠れるだろう。

 

 先生は少女達に視線を送る。今はコハルとアズサ、ヒフミとハナコの組み合わせで勉強を行っている。同学年同士のペアは教え合う事ができるため、これも良い学習方法だろう。

 

「コハル、質問」

「うん……え? 私? 私に!?」

 

 アズサは参考書を開いたまま隣に座っていたコハルに声を掛けると、彼女は驚いた様子で肩を跳ねさせアズサを見た。まさか自分に聞いてくるとは思ってもいなかったのだろう。

 

「そう、コハルに。今同じところを勉強しているはずだ」

「まあ、確かにそうだけど……」

「だからコハルに質問。この問題なんだけど……」

「う、うん……」

 

 声音に頼られた嬉しさと果たして自分に解けるかという不安を滲ませたコハルはそっとアズサの方に寄り、参考書に視線を落とす。アズサの指先にあった問題は数学の図形問題、苦手な人はとことん苦手な分野だ。

 コハルもそこまで得意という訳ではなく、寧ろ苦手な方で、基礎は出来ても発想力を要求してくるものは大体解けなかった。

 だが、折角頼ってくれたなら頑張りたい。そう意気込み、問題の全容を把握しようと文章と図形に視線を走らせる。

 

「……あ、これ知ってる! この問題は確かこうやって、下の所と90°になるように補助線を引いて……」

 

 解けない問題であれば大人しく誰かに頼ろうと思っていたが、アズサが詰まった問題は幸いにもコハルが数時間前に解いて、解説を読んだ問いの類題であった。まだ解き方も頭に残っているため、充分誰かに解説できる。良い復習にもなるだろう。

 コハルは鞄からルーズリーフを1枚取り出し、そこに問題の条件を書き写す。その後、口頭での解説と図解を交えながら、1つ1つの手順を丁寧に分解しつつ躓きやすい場所やポイントとなる部分をペンで書きこんでいく。

 

「そうすると、この三角形とこの三角形が一緒になる。だから、あとは問題に合うように条件を整えてあげて……どう? 分かった?」

「……なるほど、そういう事か。助かった。この紙、貰ってもいい?」

「うん、良いわよ」

 

 アズサは「ありがとう、コハル」と言い、コハル手製の解答を丁寧にファイリングして問題にチェックと注釈をつけた。これでもう一度開いた時、コハルの解答を見れば自分が何処で分からなくなったのかを把握する事ができる。彼女は頭を悩ませていた問題が一つ分かるようになった事を喜びつつ、コハルに感謝と感心の混じった視線を向けた。

 

「流石だな、コハル。これは確かに正義実現委員会のエリートというのも頷ける」

「ッ!? そ、そうよ! 私、エリートだもの!」

 

 アズサの真っ直ぐな言葉に気分が良くなったコハルは胸を張り、自信満々な表情。褒められた嬉しさ、認めてくれた嬉しさ……様々な嬉しさが混じり合ったコハルの頬は少しだけ赤くなっていた。自分がエリートなのだと、久しぶりに思う事ができた様な気がする。

 

「……も、もし何かまた分からない事があったら、私に聞いてもいいから。アズサはその……特別に」

「ありがとう、助かる。また何かあったら頼らせてもらう。だからコハルも何かあったら私に頼ってくれ。精一杯力になる」

「え、あ……うん、ありがとう……」

 

 助けられたから今度は助けたい。困った事があったらお互い様。友達としてはどこまでも当たり前で、だからこそ善い関係性。それを前にコハルは少しだけ面食らったような表情をするが、直ぐに嬉しそうにはにかんだ。

 

「あらあら……流石裸の付き合いをしただけはあると言いますか、もう深い所まで入った仲なのですね……♡」

「ちょっ、何言っての!? そういうアレじゃないから!?」

「ふふっ……ちょっとだけ妬いてしまいそうです♡」

 

 そんな言葉とは裏腹に2人を優しそうな眼で見つめるハナコ。アズサとコハル、あまり関わりが無かった2人……と言うより、初対面がガスマスクかつ初日に追い掛け回されたトラウマでコハル側が若干距離を置いていたのだが、今はそんな蟠りが嘘のよう。2人は仲睦まじく、同じ机に座って隣り合わせで勉強している。見ているだけで癒されるような光景を前に思わず頬が緩んでしまいそうだった。

 

「うん? ハナコも体を洗ってほしいのか?」

「ふふっ……では、機会があれお願いするかもしれませんね」

「分かった。機会があれば洗おう……ヒフミはどうだ?」

「はいッ!? えっと、その、あ、あの……うぅ……」

 

 突然話を振られたヒフミはしどろもどろになりながら視線を右往左往。同性同士とはいえ体を洗ってもらうのは羞恥心が勝る。もしそういうシチュエーションになったら、間違いなく1日はアズサの顔を真面に見れないだろうという確信があった。

 

「アズサちゃん、まだ仲間外れの方が居ますよ?」

「む、そうだな……仲間外れは良くない。先生も────」

「マジで逮捕されちゃうから勘弁してください。あとコハルにも死刑にされるから」

 

 先生は物凄い顔でこっちを見ているコハルにステイを掛けつつ、ハナコにもストップをかける。生徒に一糸纏わぬ姿を見られる分には構わない……訳ではないのだが、盗撮は慣れているため今更気にするほどのものではない。こんな些細な事を気にしているようではノドカの先生は務まらないのだ。

 だが、その逆は駄目だろう。色んな意味で。そんな事が起きたら彼は自らヴァルキューレに出頭する。

 

「あ、コハル。もう一つ聞きたい。この問題なんだけど……」

「え? あ、うん……」

 

 話を急速に勉強の方に戻されたコハルは再びアズサの方を見て、問題に視線を落とす。そこに書かれていた問いは先程とは異なり、見ただけで解き方がぱっと思いつく類のものではなかった。だが、コハルは記憶の糸を必死に手繰って解答を導き出そうと頭脳をフル回転。全く見た事が無い訳ではないのだ。何か、何処かで見た覚えはちゃんとある。

 

「んー……この問題は、えっと……」

「コハルも知らない問題か?」

「うーんと……これ、参考書で見た様な……ちょ、ちょっと待って」

 

 そう言い、コハルは机の横に引っ掛けてある鞄の中を弄る。持ち込んだ参考書の中にその手の問題が書かれたページがあった気がするのだ。そして、その参考書は記憶が正しければ何方かと言うと薄い方。手探りでも薄さと重さが充分ヒントとなる。

 

「確か持ってきたはず……あ、あった」

 

 コハルは目当てのものを掴んだ感覚を覚える。薄くて軽い冊子、間違いなくこれだ。彼女は掴んだものを鞄から引っ張り出した。

 

「────んしょっ」

 

 可愛らしいコハルの声と共に机に出されたのは参考書────ではなく、過激な表紙のR-18指定の本(アダルト本)

 

「……?」

「……ッ!」

「!?」

「……」

 

 コハルの鞄から出された過激なピンクの本を見た時の皆の反応はそれぞれだった。

 アズサは出された本がそもそも何なのかよく分かっていない様子。首を傾げ、『これが参考書なのだろうか?』と小さな疑問を浮べている。

 ヒフミはその手の知識は年相応にあるため、今机の上にあるモノが何なのか知っている。故に何が書かれているのかも大体把握できてしまうため赤面。

 ハナコは僅かに興奮を覚えている。まさかあれほどエッチな事象に厳しかったコハルから、学生の身分では買えないエッチなモノが飛び出てくるとは思わなかったのだ。

 

 アズサは机の上に堂々と鎮座している参考書ことエロ本を指差す。

 

「……コハル、この参考書に乗っているのか?」

「うん、この参考────……え?」

 

 その問いに肯定し、視線を机に向けたコハル。取り出したのは参考書のはず、なのに何故こんな雰囲気になっているのだろう……そんな疑問は自分が今机に置いたものを見て一瞬で吹き飛んだ。過激な表紙にR-18の記。彼女の表情は驚きで固まり、頭の中が真っ白になった。

 

「……あ、れ?」

「エッチな本ですねぇ」

「あはは……」

 

 ハナコはコハルが取り出した本を覗き込み、何故か感慨深そうに呟いた。何か芸術作品を見たかのような感嘆の息であったが、ただエロ本の表紙を見ただけである。

 

 そして────コハルは自分が今何を取り出して、机の上に晒したのかを理解して悲鳴を上げた。

 

「うわあぁぁぁッ!? な、なんでッ!?」

「コハルちゃん、それエッチな本ですよね? まあある意味保険体育の参考書かもしれませんが……あ、隠しても無駄です。『R-18』ってばっちり書いてありましたよ?」

「ち、違う! 見間違い! 兎に角違うから! 絶対違う!」

 

 首を全力で横に振りながら、コハルは机の上に出した本を背中側に隠しながら必死の弁明を試みる。だが、ハナコもヒフミもばっちりと見てしまっているため今更弁明しても遅すぎる。ヒフミはデリケートが過ぎる部分に足を踏み入れる勇気はなかったため、顔を赤くしながらそっと視線を逸らし……視界に彼が入った瞬間目にも止まらぬ速さで俯いた。アズサは一人状況が読み込めておらず、『やはりあれは参考書ではないのか?』と思いつつ、コハルとハナコのやり取りを眺めている。

 

「私の目は誤魔化せませんよ、確実にアレな事をする本でした。それも、結構ハードな……トリニティでも、いえ、キヴォトスでも中々お目にかかる事ができないレベルの内容とお見受けしました。きっと肌と肌が擦れ合い、敏感な部分を慰め交わり、嬌声が飛び交い理性が甘く蕩けるような、それはもう素晴らしい……!」

 

 コハルの性癖発表浦和ハナコとなった彼女の口は止まる事を知らない。過去で一番饒舌なのではないかと疑いたくなる程の速度とテンションでコハルに浴びせる言葉達は色々な意味で酷いものだった。対するコハルの視線は行方不明で口を開いたり閉じたり、あれから皆を一度も直視できていない。

 

「どうしてそのような本を持っているのですか? 確か校則でも禁止されていたと思いますが……?」

「い、いやっ、そのっ、こ、これはほんとに私のじゃなくて、えっと……」

「でもそれ、コハルちゃんの鞄から出てきましたよね? それに合宿所まで持ってくるなんて……もしかして、お気に入りなのですか?」

 

 ハナコは興味津々な様子で小さな体の裏に隠された本を覗き見ようとするがブロックに阻まれなかなか見えず。だが、見えないなら見えないで構わなかった。内容を頭の中で膨らませる余地があるというもの。彼女は色気づいた妹を見守る様な温度感でコハルを見つつ、持ち込まれたエッチな本に大変ご満悦。謎の喜び方をしていた。

 

「……いえ、成程。そうですね。考えてみたらそんなに変な事でもありませんね? 予行演習もバッチリ……つまり、合宿の為に必要なものなんですよね、コハルちゃん♡」

「こっ、これは違うんだってばああぁぁぁぁッ!」

 

 そう叫ぶコハルはとうとう本を胸に抱いてハナコに背を向けてしまう。羞恥やら何やらで赤くなった頬と綺麗な瞳の縁に溜まった大粒の涙。悲しんでいて、苦しんでいる。

 此処が頃合いだ。これ以上は少女達の関係性に悪影響が出てしまう。異性である自分が口を挟んだら余計にややこしくなりそうで、自分が何を言っても彼女を傷つけてしまいそうだったから口を噤んで静観していた先生であったが……動くとしたらこのタイミングがベストのはずだ。彼はコハルをそっと抱き寄せ、視界を白のジャケットで、聴覚をコートでふわりと塞いだ。

 

「はいはい、そこまでにしておこうね。それ以上はコハルに嫌われちゃうよ」

「そ、その、ハナコちゃん……先生も言っていますし、その辺りで……」

「……やり過ぎてしまいましたね。本当にごめんなさい、コハルちゃん……てっきり、お話が合うのかと思ったのですが……」

 

 別にハナコとてコハルを虐めたいからあのように言っていた訳ではない。揶揄う目的はあるにはあったが、一番は仲良くなりたいからだ。皆が集まる合宿にあの手のものを持ってくるあたり、もしかしたらと淡い希望を抱いていたのだが、どうやら違ったようで。誰かを傷つける意図を持っていた訳ではないのだが、大切な友達を泣かせてしまった事実は変らない。その罪悪にハナコの胸が刺されたように痛んだ。

 

「うぅ……」

「大丈夫だよ、コハル。ちょっと見慣れないものが出てきて皆びっくりしただけだけだよ。それがコハルのものじゃないって事はちゃんと分かってる」

 

 言い、先生はそっとコハルの背中を優しい手つきで擦った。大丈夫だよ、皆分かってるよ、コハルが嫌いな訳ではないよ……そう言い聞かせ、零れる涙が止まる時を待つ。

 暫く背中を擦り、頭を撫でていると「すん……すん……」と鼻を啜る音が聞こえたタイミングでコハルを解放して、膝立ちになって視線を合わせた。目元は赤いが涙は止まっていて縁に溜まっていた最後の雫をそっとハンカチでふき取り、「大丈夫?」と努めて優しく声を掛けると、こくりと小さく頷く。

 

「……その、正義実現委員会として活動中に差し押さえた品を、つい入れたままにしてしまった……とか、そういう感じなんですよね?」

「……うん、私、押収品の管理とか……してたから……これは本当に、その時のやつで……」

「なるほど……そういえばトリニティの古書館の地下には何やら禁書が沢山積まれているという噂も聞きましたし……正義実現委員会がそういったものも含めて色々と差し押さえたり取り締まっていたとしてもなにも不思議ではありませんね」

「……もしかして、これって差押え品の無断持ち出しになったりしますか……?」

「多分そうなりますね。バレたらどうなるか分かりませんし、出来るだけ早く返してしまった方が良い気がするのですが……どうしましょう?」

 

 言い、視線を当事者たるコハルに向けると彼女は少しだけハッとしたような顔をしながらハナコと本の間を視線が往復し……控えめに口を開いた。

 

「た、確かに……ずっと忘れて放置しちゃったけど……」

「そうだね。差押え品も数が数だし頻繁に個数確認とかはしていないはずだけど早めに返すに越した事はないと思うよ。個数が合わなくて、管理を任されているコハルが疑われてもいけないし」

「そ、そうですね……それに、差押え品だとしても持っていて良い類のものでありませんし……」

「でしたら、今のうちにこっそり行って、バレないように正義実現委員会の所に戻してくれば大丈夫じゃないですか?」

 

 コハルは眼をぱちぱちと瞬かせて驚きながら口を開いた。

 

「……え、今から?」

「はい、こういうものは時間でリスクが上がるものですから。早い方が良いですよ?」

「た、確かにそうだけど……今は私、正義実現委員会に入れないし……」

 

 コハルは現在補習授業部の生徒であり、規定の関係上、卒業するまでは正義実現委員会としての活動を禁じられている。今の彼女は正義実現委員会にとって部外者なのだ。勿論、コハルが正義実現委員会の一員である事は周知の事実であるため不審者として即座に通報……とはならないだろうが、それでも活動を禁じられているにも関わらず差押え品の保管所に居れば不審に思われてしまうだろう。

 何より、これはハスミへの裏切りだ。信頼し、尊敬する彼女との約束を破ってしまうような行動に思わず二の足を踏んでしまうが……そこに先生は助け舟を出した。

 

「なら私と一緒に行くかい?」

「え、でも……良いの?」

「勿論だよ。陽も落ちてくる頃だし、コハル一人だけを行かせる事はしないさ。それに、トリニティからこっちに運びたい教材もあるし」

 

 彼が微笑みながらそう言うとコハルも少しだけ表情を和らげた。だが、若干まだ不安が残っているようだったため、彼はコハルの肩をポンと叩いて。

 

「こういう時は下手に委縮せずに堂々とするのが良いよ。自分はちゃんと仕事をしに来たんだって、周囲にアピールするんだ。心配しなくても大丈夫、私も居るからね。見つかっても言い訳はできるし、その辺りがバレたとしても一緒に誠心誠意謝ればきっと許してくれるよ。この類のミスって誰しもが一度はやっちゃうものだからね」

 

 間違える事は誰にでもあるし、忘れる事は誰だってある。このようなヒューマンエラーはどれだけ気を付けていても起きてしまうものであり、それはどうしようもない。だからこそ大事なのはその後だろう。起きてしまったミスを如何に早くして正すか……つまりは事後処理を上手くやるか、だ。

 

 勿論、コハルのミスはそんなに大きなものではないため、変に気負う必要は無い。見つかったら理由を説明すればいいし、謝ればきっと許してくれる。誰も彼女を責める事はしないだろう。

 

「今、差押え品の管理をしてる人って誰か分かる?」

「た、多分ハスミ先輩……で、でも、もしかしたらイチカ先輩かも……?」

「んー……ま、その2人なら多分大丈夫かな」

「あら、仲正さんともお知り合いなんですか?」

「これでもシャーレだからね。多少顔は広いさ」

 

 ハスミやイチカ、あとは最近挨拶したマシロを始めとした有力な生徒達は勿論、特に役職を持っていない生徒とも大体は顔見知りだ。何ならツルギともよく話すのだが……10分ぐらい経つと顔を真っ赤にして足早に立ち去ってしまうため、会った回数は多いのにあんまり話せていないという奇妙な現象が起きている。今度はゆっくりと話したいなと思いつつ、お互い多忙な身であるため出来ていないのが現状。ツルギらしいとは思うが、腰を据えて顔を見てゆっくりと時間を楽しみたい……と思うのは贅沢なのだろうか。

 

 彼は頭を過った思念に苦笑しつつ、口を開いた。

 

「今から軽く準備をして……そうだね、5分後くらいに出発しようか」

 

 先生は「じゃあ、後で」と言って教室を後にする。

 

 そして────ハナコは鞄の中に本を仕舞ったコハルにそっと耳打ちをした。

 

「────ところで、コハルちゃん」

「な、何よ……」

「もし他にお勧めがあればぜひ♡」

「う、うるさいッ! バカッ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。