シャーレ活動備忘録   作:遊園市街

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あの傷は誰のもの

 マリーとセリナを信用するにあたりアズサが提示した条件は4つ。

 

 1つは、この合宿施設内で起きた全てを他言無用とする事。ティーパーティーは勿論、彼女達がそれぞれ所属するシスターフッドや救護騎士団の誰にも口外を禁ずる。

 2つ、外部と連絡できる全ての電子機器の電源を落としアズサに預ける事。マリーとセリナはアズサの眼の前でスマホの電源を落としそのままアズサに差し出した。

 3つ、全ての手当ては補習授業部の眼の届く場所で行う事。治療と称して別室に連れ込む事は許さない、そうした時点でアズサは彼女達を敵と見做す。

 4つ、合宿施設内を移動する場合は必ず補習授業部の誰かが付き添う事。これも3つ目と同様に不審な行動を許さないためだった。

 

 いっその事過剰とも言える用心深さはティーパーティーから攻撃を受けたから……と謂う理由だけではない。もっと別の、それこそ攻撃を起因とする『何か』があったのだろうと思うには充分すぎる材料だった。

 

「アズサさん、あの場所で一体何があったのですか……?」

「……」

 

 マリーのその問いにアズサは悲痛に目を伏せて口を噤む。言いたくない。言って痛みを新たにしたくない。言えばより状態が悪くなってしまう気がして。ふらふらになりながら世界の闇を歩くあの人が底なしの孔に堕ちてしまう予感がして。その声なき意志を感じ取ったマリーとセリナは互いに顔を見合わせ、頷きを1つ。医療従事者としてセリナが一歩前に出た。

 

「言いたくないのでしたら無理に聞きません。ですが、怪我をされた方の人数とその状態だけは教えてください。それがないと、私達も適切な処置ができませんから」

「……怪我人は5人。ヒフミ、ハナコ、コハル、ティーパーティー所属の監視員」

「分かりました。アズサさん含めて5人、という事ですね」

「いや……私は含めていない」

 

 その言葉にマリーとセリナは凍り付く。そんな場合ではないと謂うのに合宿施設に向かう足が止まり、掠れた様な吐息が口から漏れた。アズサを含めないで5人、もう一人いる。では、それは誰か。分かるはずだろう、彼女達の傍に誰が居たか。

 

「先生も……怪我をしている」

「ッ! 状態は!?」

「多分、重傷だ。かなり血を流していたし、さっきも意識が……」

 

 アズサの歯切れの悪い言葉にマリーはきゅっと胸が閉まるような痛みを覚える。数日前に会った時の彼女は凛としていて、冷静で、言葉も声もクールで鋭い印象だった。だが、今の彼女はまるで幼子のように、まるで堪え切れない嗚咽を少しずつ零すような色で喋っているのだ。それ程までにショックで、痛くて。

 

「……分かりました。申し訳ありませんが、皆さんの怪我は後で診ます。最優先は先生です。他の皆さんは何方に?」

「さっき呼んだからもう直ぐ着くはず」

「ありがとうございます。ではマリーさん、私達は受け入れの準備を」

「は、はい……」

 

 少女達は合宿施設のドアを開く。明かりは点いていない。当然と言えば当然なのだが、その昏さが自分達の道行きを暗示しているように思えてならなかった。

 

 

 ▼

 

 

 アズサから連絡を受け取ったヒフミ達は脇目も振らず一目散に合宿施設へ走っていた。連絡には協力者としてシスターフッドのマリーと救護騎士団のセリナが居る事が記載されていて、彼女達ならば先生の怪我もどうにかできるのではないか────そう思った彼女達の足取りは軽い。

 

 今まではこれ以上状況を悪化させないために、或いは後ろから追い縋る暗黒に足を掴まれないために走っていた。だが、今は違う。今は確固たる希望を持って、良くなるかもしれないという祈りが少女達の足を進ませる。キヴォトスの少女達にとって200mちょっとなんて目と鼻の先。全力疾走であれば10秒も掛からずに辿り着ける距離。だというのに、その10秒が今は惜しくて仕方が無くて、少女達は足が絡まりそうなほど早く動かして前へ進む。

 

 皆で掃除した正門を駆け抜けて、雑草を抜いて綺麗にした庭を走り抜けて、視界に捉えたのは開け放たれた玄関ドアとその傍に立つアズサ。

 

「アズサちゃん!」

「皆、こっち! ロビーに入って!」

 

 ヒフミが叫ぶとアズサはまるでハンドサインを送るように手招きする。ヒフミと背負われた先生、ハナコと背負われた監視員、コハルの順番で合宿施設の中に入った事を確認したアズサは玄関ドアを固く施錠し、施設外周に設置された仕掛けをアクティブ。自動的に正門が施錠され、監視カメラや各種センサ、トラップが来るかもしれない侵入者に手厚い歓迎をするべく立ち上がる。

 

 明かりのついたロビーは簡易的な病院のようになっていて、空き部屋から持ってきたと思われるベッドが幾つか並び、皆で食事を取っていたテーブルの上には所狭しと医療道具が陳列されていた。テーブルから一番近いベッドには人影が二つ、マリーとセリナ。

 

「ヒフミさん、先生は此方へ!」

「はい!」

 

 ヒフミはガラス細工を扱うような繊細な手つきで、だが素早く先生をベッドの上で寝かす。するとセリナは彼の頭のてっぺんから靴で覆われたつま先までざっと見やった。

 

 打撲、擦過、裂傷、火傷、刺傷。1つ1つの傷はそこまで深くないが箇所はかなり多い。呼吸はあり安定している。しかし、これはあくまで表層だ。身体の内側、内臓系や神経、骨がどうなっているのかは目視では不明。戻らない意識の事も気がかりで、油断できる状況でないのは確固たる事実だ。

 

 想定よりずっと傷が深い。早くしないと本当にどうなるか分からない────その焦燥に突き動かされそうになるが、焦っても何一ついい事はない。

 セリナはゴム手袋を嵌めて「失礼します」と小さく呟き、先生の素肌に触れる。反応はない。触れた肌の温度は怖気が走るほど冷たく、これが本当に生きている人の温度なのかと思ってしまう。鳩尾の奥にある不明な器官からせり上がってきたどぶの様な不安と恐怖を飲み干して、セリナは救護騎士団としての責務を果たす。此処に来たのは泣くためではない、助かる命を助けるためであり痛みを少しでも和らげるためだ。

 

 セリナは手袋越しに伝わる柔肌と、そこに乱雑に刻まれた傷の具合を確かめる。筋肉が断裂している箇所や、骨が折れている箇所。一体、どれ程痛かったのだろう。何故、生徒の為に頑張っている彼がこんな目に遭わなければならないのだろうか。何処に向けて良いか分からない怒りが沸々と湧き上がってきたが、それは今相応しくないと頭を振る。

 

「皆さん、手伝っていただけますか?」

「はい!」

「ありがとうございます。では、ヒフミさんとハナコさんは私と一緒に先生のお洋服を脱がすのを手伝ってください。アズサさんとコハルさんはお湯を、マリーさんは替えのシーツの準備をお願いします」

 

 セリナがそう指示すると、アズサとコハルはシャワー室目掛けて飛び出し、マリーはロビーの隣の部屋に行き持ち込んだバッグの中を漁ってビニールで梱包された新品のシーツを探す。その間、ヒフミとハナコは受け取ったゴム手袋を嵌めて先生の体の正面に立った。

 

「もし脱がしにくい部分があれば裁断していただいて大丈夫です。お湯が届く前に脱がしちゃいましょう!」

 

 そう意気込み、袖を捲って「失礼します、先生」と断りを入れて少女達は先生の服に手を掛ける。彼が何時も着ているシャーレの腕章が取りつけられた白いコートと同色のジャケットはアズサが『重しになるから』と何処かに捨てたため、今の彼はかなり身軽だ。

 袖や裾が黒く焦げ付き、至る所が破れて乾いた血で固まったシャツ。同じく焼け付いたネクタイ。スラックスも破れていたり血で汚れていて、お世辞にも衛生的とは言えない。これから手当てをするために、先ずは衛生的な環境を確保しなければ。

 

「……?」

 

 首真下のボタンを外し、中の黒いシャツと鎖骨がちらりと見えた時、ヒフミは彼の首元に違和感を覚えた。顎の真下、正面に当たる部分。何か薄いものが見えた。それは見たところ薄皮のようであったが、それにしては形が整い過ぎていて人工物のよう。例えるなら、シールの様な。

 

「これは……?」

「? ヒフミちゃん、どうかしましたか?」

「先生の首にシール? みたいなものが貼ってあって……」

「シール、ですか?」

 

 ハナコはちらりとヒフミが作業している方に視線を送ると、確かにシールに類似したものがあった。色味は彼の肌と全くの同系色で、その質感もほぼ同等だろう。ヒフミが『シールみたいな』と言わなければ違和感を感じなかったであろうそれは、ハナコの距離からでは薄皮がささくれ立ったようにしか見えなかった。

 

「ハナコちゃん、これ、どうすれば……」

「捲れるのでしたら捲った方が良いと思いますが……きっと汚れていますし……」

 

 これが何なのか。その回答を見つけるべくハナコの頭脳が駆動する。肌に直接貼り付けるシールの様なものだと、タトゥーシールが候補に浮かぶ。だが、別にそういった類のものが印刷されていないため、使い方は同じでも目的が異なるのだろう。

 タトゥーシールはファッションやオシャレとして見せたいから素肌に張り付ける。では、この質感や色味が皮膚に限りなく近い無地のシールは……恐らく用途が真逆。このシールは見せるためのものではない、見せたくないものを覆い隠すためのものだ。

 

 では、此処で謂う『見せたくないもの』は何か。それはきっと────。

 

「ひッ」

 

 その嫌な想像を裏付けるように聞こえたのはヒフミの短い悲鳴。彼女は先生の首元を覗き込んだまま固まっていた。顔に張り付いた表情は驚愕と恐怖、不安。

 

 ────見たくない。見たい訳がない。誰が好んで人の痛みなんて見るものか。信頼し、好いている人のものであれば猶更だ。あんなに優しくて、日常の陽だまりで笑っている光景が一番似合う人が。こんな(ハナコ)の事を真っ直ぐ受け止めて、肯定してくれた人が。痛みに苦しむ姿なんて見たくない。

 

 でも、それでも。痛みから眼を背ける事はしていけない気がして。ハナコは意を決して、ヒフミと視線の方向を同じくした。

 

「これは……」

 

 シールのように捲られた皮膚の下には真一文字に刻まれた斬首痕。少し前にケイが彼に与えた救いであり、彼女の証明。ミドリを庇った時に負った痛み。彼にとっては『ただの傷』と言えない、大切な意味を持つ愛。しかし、その事情を知らないヒフミやハナコにとっては悍ましい致命傷であり、古傷でしかなかった。

 

「どうかされましたか? ────ッ!」

 

 先んじて下半身の傷の手当を行っていたセリナが2人の間を縫うように顔を出して覗き込めば、即座に顔つきが真剣なものになった。観察し、触診し、一つの結論を出したセリナは努めて冷静に、2人を不安にさせないように言葉を選ぶ。

 

「……既に手当されている傷です。跡こそ残っていますが、治ってはいます。恐らく以前に負った怪我でしょう。開いている訳でもありませんし、この傷は様子見です」

「……分かり、ました」

 

 何処か釈然としないながらも、ヒフミはセリナの言葉を信じる事にした。確かに見たところ古傷のようであるし、血も流れていない。刻まれている斬首痕こそ目立つが、それ以外は普通の肌だ。彼を処置しやすいように再び作業をしようとすると、ハナコが「ヒフミちゃん、セリナさん」と声を掛けた。

 

「どうかしましたか?」

「此処以外にもこうしてシールを貼って傷を誤魔化している箇所があるとは思いませんか?」

「……た、確かにそうかもしれませんが……」

「プール掃除した時、濡れると分かっていても先生は装いを変えませんでした。その理由がこれなら色々と腑に落ちます」

 

 単純に素肌を見せたくなかった。この偽装が露呈する可能性があるから。あの楽しい雰囲気に水を差したくなくて、彼は傷を覆い隠したのだ。傷なんて見ても楽しくないし、良い気持ちにはならない。皆に気を遣われてしまう。そんなごく普通の善性で以て、彼は誰にも言わずに痛みを抱える事を肯定した。

 

「セリナさん、このシールを発見した場合はどうしますか?」

「……剥がして逐次確認しましょう」

 

 絞り出したようなセリナの声。先生の健康管理をやっていたのにも拘わらず気が付かなかった。ちゃんと見れば、ちゃんと触れてあげれば、もっと深く踏み込んでいればきっと気付けたはずなのに。

 

 誰が悪いかと問われれば、それは勿論隠していた先生だ。彼が隠さなければこんな形でばれる事はなかった。心配をかけたくないからと言いながらセリナに嘘を吐いてのらりくらりとやり過ごしていたのは明確に彼の過失だろう。第三者であれば間違いなくこう断ずる。彼が悪く、セリナは悪くないと。

 

 だが、それでも────自分(セリナ)に一切の非が無いとは、優しい彼女は言えなかった。彼も悪いけど、それと同じくらい気付かなかった自分(セリナ)も悪いと。

 

「知らないと、寄り添う事も出来ませんから」

「……そうですね」

 

 彼は何を抱えているのだろうか。

 

 生徒を信じて、生徒の明日がより笑顔と幸福で溢れているようにと奔る彼。それが生徒の皆に見せる姿。

 痛みと呪いと怒りに愛され、悲劇と呪いに魅入られて戦いの中でしか生きれない彼。それがキヴォトスに於ける彼の運命。

 

 何を見て、何を信じて、何を祈って。彼は何のためにこんな傷を負ったのか。こんな傷を負ってもなお投げ出さずに走り続けるのか。それを知って、寄り添う事が……子どもと大人の狭間で揺れる生徒にできる事だ。少なくとも少女達は、そう思っている。

 

「では、続けましょう」

 

 

 ▼

 

 

 先生の衣服が脱がされ、患部が全て分かった頃。下着の上にミントグリーンの病院着を着せられた彼はセリナが付きっきりで手当てする事になり、ヒフミとハナコはお役御免。

 

 手持ち無沙汰になった彼女達も奇襲や度重なる戦闘により軽いながらも怪我をしており、今までは軽い応急手当と溢れるアドレナリンで誤魔化していたのだが、それも限界。張り詰めていた気を緩めた途端に今更ながら痛みが襲ってきた。顔を見合わせた彼女達はお互いに手当てをしようとしたタイミングでアズサとコハル、マリーが戻ってきた。

 

 アズサとコハルはセリナにお湯を渡し、先生の体を見て絶句。同じくシーツをセリナに渡したマリーも顔を悲痛に歪めた。少女達が目の当たりにしたのは確固たる現実。有事の際に身を守る事すらできない人間が、何度も命のやり取りに巻き込まれたらどうなるか────それを端的に、だがどうしようもないほど残酷に映し出した鏡だった。

 

「……」

 

 5人はそれぞれ背凭れの無い椅子に座り、まるで借りてきた猫のような静寂を保っていた。ちらり、とアズサが一瞬だけ視線を向けたのはティーパーティー所属の監視員が眠るベッド。先生に次いで2番目に重傷だった彼女は脳震盪らしく、安静にしていればじきに目を覚ますだろうとの事だった。だから、彼女の事はいい。問題は────。

 

「先生……」

 

 セリナがつきっきりで診ている彼だ。ヒフミが偶然見つけた皮膚の偽装、それを発端とした捜索は非常に嬉しくない事に大きな成果を挙げた。首を含めて全7か所。それだけの数、彼の体には生死の境目を彷徨った傷が刻まれていた。

 

 ヒフミも、ハナコも、アズサも、コハルも、マリーも喋らない。口を開いても言葉が思い浮かばない。何を言えば良いのか、何を言っても良いのか。皆、口を開けば徒に自他を傷つけると思っている。大丈夫だの心配しないでだの、そんな言葉は何の気休めにもならない。少なくとも、少女達が知る言葉の中に彼の体に刻まれた醜悪な現実に打ち勝てるものは存在しなかった。

 

「────」

 

 5人の少女達は考える、思い出す。あの時、視界に入れた彼の事を。

 

 首に残る鋭利な刃物で切り裂かれた痕。左胸、心臓直下に残る何かが貫通した痕。右腕の縫合痕。黒く変色した左肘。左手の小指、蒼が零れる肉体の断層。脇腹を中心として広がる茨の紋章。欠落した左足の小指と薬指、義指。

 

 それ以外にも大なり小なり傷は多くあり、全身の至る所に銃創を始めとする痕が残っていた。今日の出来事で負ったものから、今日以前に負ったであろうものまで幅広く。適切に手当されたものもあれば乱雑に手当されたもの、放置されたであろうものまで。言い方を選ばないのであれば、彼の体をキャンバスにした傷の博覧会のようだった。

 

 彼、ひいてはシャーレの活動遍歴は公式のホームページ等に記載されている。ある時は連邦生徒会のかっちりとしたフォーマットに則った報告書の体裁で。ある時は普通の団体や企業のお知らせの様な体裁で。それ以外にも動画や画像、スライドなど。活動に合わせて、伝えたい事に合わせて、或いはTPOに合わせた媒体で彼はシャーレとしての活動をキヴォトス全土に発信していた。

 流石に学園の機密に抵触する様な詳細な事は書いていないが、彼が何時何処で何をやったのか、その大まかな内容はインターネットに接続できる環境と端末さえあれば誰でも閲覧可能だ。

 

 故に少女達も彼が補習授業部の顧問に就く前に何をしていたのかは知っている。興味本位、知的好奇心、情報収集、彼に近づきたい、彼を守りたい。動機は人それぞれであるが、彼女達は一様に彼の赴任から今に至るまでの活動を把握していた。

 

 赴任初日、シャーレオフィスビル奪還作戦。トリニティ、ゲヘナ、ミレニアムに所属する4名の生と共に災厄の狐率いる不良生徒達と戦闘し、奪還を果たす。その後、如何なる経緯を経たかは不明であるが、災厄の狐はシャーレの所属に。百鬼夜行への復学手続きも進行中のようだ。

 次はアビドス。主な活動は物資支援、過去現在の取引調査、アビドス対策委員会の顧問就任及び公的組織の認可。アビドスに降臨した預言者への対処。

 その次はミレニアム。此方の活動は殆ど不明であるが、辛うじてゲーム開発部なる部活とC&C、セミナー、特異現象捜査部、ヴェリタスと呼ばれるハッカー集団との関わりが読み取れるくらい。それらの団体、人物達と何があったのかは一切合切不明だ。

 そして、大きな案件の合間合間に様々な依頼やお願いを熟し、今ではキヴォトスの何でも屋の様な地位を築いているのがシャーレ。困ってどうにもならなくなってしまった場合、彼を頼れば事態が好転するかもしれない……みたいに言われているとかいないとか。

 

 兎に角、彼の大きな活動はアビドスとミレニアムの2つ。この内、ミレニアムは考察しようにも情報が少なすぎるし、知る人がこの場に居ないため除外。ではアビドスは。情報もそれなりにあるし、何よりこの場にはその当時を知る人物がいる。

 

 ハナコは翡翠の瞳に理知を灯し、静寂を切り裂く声を静かに紡ぐ。

 

「ヒフミちゃんはアビドスで先生とお会いしているんですよね?」

「そ、そうですが……それが、どうかしましたか?」

 

 ヒフミの肯定を受け取ったハナコは────彼の事情を知るべく、無明の闇へと一歩踏み出した。

 

「ヒフミちゃんの知る範囲で構いません。教えてくださいませんか? アビドスで……何があったのか」

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