シャーレ活動備忘録   作:遊園市街

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 本日から投稿を再スタートします。



幕間Ⅱ
鯨の転寝


 朝、少女は目を覚ます。仮眠のような浅い眠りではなく、深い眠りから。それは少女にとって失われて久しい日常だった。これまで胸中を埋めていた漠然とした不安はない。ただ『今日も一日が始まる』という実感だけがあった。朝の雲雀が鳴いている。

 

 気を利かせた誰かさんが居住区や人の集まる場所に警備用オートマタとドローンを寄付してくれたから、日課だった夜のパトロールも随分頻度が減って、今は週に1日か2日程度。ヴァルキューレも時折訪れてくれるようになり、悪化していた治安は少しずつ改善の兆しを見せている。少なくとも、今までのように不良集団や悪徳企業が幅を利かせる不条理は起きそうになかった。

 

 何かに押し潰されている訳でも、支配されている訳でもない。急いでる訳でもなければ、壊れている事もなく。ただ、平和そのものなアビドス。ホシノはその光景を見て少しだけ誇らしさを感じていた。これは紛れもなく自分達が守った世界なのだ。

 

 だが、急に背負っていた荷物が軽くなったから色々と混乱はある。状況が好転したという事は、今まで通りとはいかないという事。今の状況に合わせたチューニングは必要だ。少しずつ慣れて、また営みをしていかなければならない。それが人間としての責務だから。

 

 ────それにしても、本当に色々とあった。ビナーとカイザーの件の聞き取り調査に、報告書作成、それから復興。幸い、戦場となった場所がアビドス砂漠のど真ん中であった点と被害が大きくなる前に倒せた事から復興には多くの時間が掛からなかった。精々、散らばった機械部品を回収する程度。

 問題は聞き取り調査で、正式な生徒会として認められたアビドス対策委員会が連邦生徒会まで呼び出され説明する事を求められたのだ。各室長と議員が揃い踏みしている環境で、だ。肝が据わっているアビドスの面々であっても、緊張するのは当然だろう。勿論、その場には当事者たる先生も同席しており、彼のフォローのおかげもあって恙なく終える事ができた。

 そして、報告書はシャーレが代わりに請け負う事になった。これは先生の希望だ。

 

 正式な部活、及び生徒会として認められるという事は責任を負うという事だ。必要であれば公の場に出なければならないし、求められれば説明をしなければならない。長く非公認の部活として活動していた後輩達はこの手の経験に欠けているため、まだまだサポートは必須だ。報告書や資料の作成方法や、その他諸々。

 勿論、ホシノとて多くの経験がある訳ではないが、それでも一時期は副会長をやっていた身だ。後輩達よりは知識がある。だが、その知識も2年前で更新が終了しているため、何方にせよ先生のフォローや知識のアップデートが必要なのだが……。

 

 ホシノはベッドから出て、洗面室へ足を向けた。顔を洗って、歯を磨いて、寝ぼけた頭で思考を回す。

 彼女の生活は本当に一変した。パトロールのため削っていた夜の睡眠時間は確保できるようになり、ずっと張っていた気を緩める余裕ができた。尚、お昼寝の時間は据え置きのため彼女の睡眠時間は割と凄い事になっているが、そこについては言及しない。

 

 ────元々、ホシノは睡眠が好きではなかった。厳密に言えば、一人で夜眠ることが嫌いだった。悪夢を見てしまうから。夜はずっと寂しくて、寒くて、凍えそうだったから。

 頻繁にする昼寝は夜寝れない分の穴埋めという側面が強く、対策委員会の部屋や学校で眠るのは悪夢を見ずに済む────という理由がある。浅い睡眠、意識はずっと半覚醒状態で夢に落ちることはないけれど体を休ませてやる時間は必要だった。

 だが、今は夜に眠っても悪夢を見る事はなくなった、夜の寂しさに震える事もなくなった。これはきっと、彼女が過去と向き合い、前へ進めたからだろう。

 

 ふと、ホシノは窓の外を見る。美しい朝。空気が澄んでいて、空は高く青い。絶好のお出掛け日和だろう。

 

 ────そう、今日はお出掛けなのだ。先生と二人っきりで水族館に行くという、彼女にとっては重大イベント。いつも以上に準備に気合が入るのも道理だろう。とは言っても、彼に『そういうつもり』がない事は重々承知している。彼は先生で、自分(ホシノ)は生徒。その関係は変えることができない。彼の奥に決して踏み込めない。

 

 だが、その上で言おう。これはデートなのだ。

 

 故に、少しくらいはおしゃれや化粧とかをしたいと思ったが……如何せん、知識も物もない。ファッションなんて気にしたこともなかったし、化粧なんてやった事すらない。自宅にある衣類は制服を除けば部屋着とパジャマ程度で、化粧棚には化粧液と乳液……あと、隈隠しのコンシーラーしかない。

 可愛い自分を見てもらいたい、という年頃の少女らしいホシノの乙女心は無常な現実を前に砕かれた。こんな事になるならノノミに頼れば良かった────と後悔するが、当日の朝にそんな事を思ってもどうしようもない。

 

 勿論、ホシノとて私服くらい持っている。体型が変わらない事を活かした数年前からずっと着古しているもの────ではなく、勇気を出して最近通販で買ったヤツだ。サイトを色々見て回り、流行やら何やらを勉強し、その果てに買った勝負服。何度か試着したがサイズはぴったりで、変な部分はなかったように思える。

 

 今日の為に買ったと言っても過言ではない服であるが、ホシノは中々それに手を伸ばせずにいた。万が一……いや、億が一にも有り得ないが、彼に『似合わない』と言われたら彼女の心はへし折れる。それに、柄じゃないのだ。買った服だって背伸びをし過ぎかもしれなくて────と、そこまで考えて、ふと思った。

 

 ────先生は私服で来るのか? 

 

 当然と言えば当然だが、ホシノは今まで先生の私服を見たことがない。基本的に彼の服は連邦生徒会の白い制服か、たまに黒のスーツ。私服や私生活の話も聞いたことがない。私服を一着も持っていない、なんて事はないと思うが癖で何時もの服装で来るのではないか、という疑念がホシノの中を埋め尽くした。

 

「……聞かなきゃ、だよね……」

 

 胸中を埋める疑問の解答を得るために彼女はスマホを手に取り、メッセージアプリをタップした。

 

 

 ▼

 

 

「……あ〜、やっちゃった〜」

 

 シャワーを浴び、僅かに肌が赤みを帯びたホシノは髪をドライヤーで乾かしながら一人呟く。メッセージでのやり取りで彼に私服で来て欲しいと言ってしまったのだ。これでもう、ホシノはハンガーに掛けてある私服達を着る以外の選択肢は排除された。もし仮に、これでホシノだけ制服で来たら普通に裏切りだ。彼から抗議の視線を受ける事間違いなしだろう。

 

 だが、これで良かったのだとホシノは思う。今日は互いにオフなのだからそんな日にいつもの服を着ていても仕方がないだろう。遊びに来たのか仕事で来たのか分からなくなってしまうから。

 

 故に、今日は『アビドス対策委員会の小鳥遊ホシノ』をお休みさせるために制服ではなく私服を着る。彼も同じで、『シャーレの先生』をお休みさせるために私服を着せるのだ。決して彼の私服やオフが見たいという下心ではない。

 

 いつも以上に丁寧に髪を櫛で梳かし、ヘアオイルも付けて準備は万全。顔にも汚れとかその他諸々が何もついてない事を厳重にチェックして……部屋着から私服へと着替える。

 

 ホワイトのブラウスとブラックのロングスカート。制服とさほど変わらない物の筈なのに、全然違うように思える。ブラウスはスカートの中に入れる、タックイン。その上からベルトを回してスカートとブラウスを固定する。

 ストラップを付けたハンドバッグを肩に掛け、その上からパステルブルーのニットカーディガンを羽織って準備は完了だ。全身鏡で隈無くチェックしておかしな点がない事を確認した彼女は玄関へ向かう。いつものスニーカーではなく新調したローファーを履き、再度チェック。

 

「うーん……」

 

 変な部分は特にないはずだ。念の為、バッグから手鏡を取り出して前髪等をチェックする。異常なし。多分いつも通り……いや、いつもよりも可愛い気がする。勿論体感だが。

 

「よし!」

 

 気合いを入れ、ガンラックの銃とシールドを手に取り────彼女はドアを開けた。

 

 

 ▼

 

 

 D.U.シラトリ区、駅前。噴水が空に虹を作り、ガラス張りの駅舎を通して賑わいが見える。人工芝の上で跳ねる子ども達、駅構内のカフェを楽しむ人達。それなりに大きな駅だからか人の流れが絶えることはなく、楽しそうな声が聞こえない瞬間はない。

 

 そんな場所に彼はいた。見慣れない格好の、見慣れた人。

 

「────」

 

 先生ではない彼、等身大の普通の青年としての側面。キヴォトスでは見ない浮世離れした姿。今まで未知のヴェールに覆われていたもの。ホシノがその姿に見惚れていると、気付いた彼が手を振りながら歩み寄ってきた。勿論、見慣れた柔らかい笑みも携えて。

 

「おはよう、ホシノ」

「うへ、おはよう、先生」

 

 彼が寄ると花の香りがした。ホワイトリリー、中性的な香水。或いは、彼自体の香り。

 

「……」

 

 ホシノは彼を頭の先からつま先までじっと観察する。

 髪はセットされていて、左耳には小振りのアクセサリーが飾られていた。恐らくノンホールピアスだろう。首には土星のようなトップが下がるネックレス。

 服も綺麗めで纏っており、トップスはライトグレーのシャツ。第一ボタンは外されていて、鎖骨とネックレスが覗いている。ボトムは黒のフレアパンツで、同色のギブソンシューズと良くマッチしていた。そして、アウターにはベージュのトレンチコート。

 

 ────見れば見るほど、何かいけない扉を開きそうな気がした。

 

「先生、結構おしゃれさんなんだね。あんまりそういうイメージなくてびっくりしたよ」

「今日はホシノの隣を歩くし、それに恥じない格好をしてきたつもりだから……うん、そう言って貰えて嬉しいよ」

 

 涼し気に彼は言うが、数時間前は彼も『ホシノにダサいって言われたら死のう』と思いながら準備を進めていた。過去の経験……ミカに着せ替え人形にされた事があるため、ファッションについては少し知っているし、彼女の反応から自分にどんな服が似合うのかも大体は分かっていたが、それはそれとして不安だった。

 そのため、今の彼は内心ガッツポーズをしている。ミカに対する感謝の念を浮べながら。

 

 そして、彼は大事な事を忘れていたと言わんばかりに。

 

「ホシノの私服も凄い似合ってるよ。可愛いね」

「……うへ」

 

 ────あぁ、もう、本当に狡い。どうして彼はこうやって歯の浮くような言葉が湯水の如く出てくるのだろうか。お世辞や社交辞令でない事が余計に質が悪い。

 誰かの欲しい言葉を、欲しいときに掛けれるのは余り宜しくないように思える。こうやって勘違いしそうになるから。そんな事を思いながら彼に視線を送っても、見慣れた笑みを浮べるばかりで抗議にもなりはしない。だから。

 

「ほ、ホシノ?」

「お休みは有限なんだから無駄にはできないよ。さ、出発出発~」

 

 彼の左手を握り、照れ隠しのように手を引く。ホシノの手を包めるくらいに大きな手だけれど、彼女よりずっと脆く、弱い。だが、そこには他者を傷つけぬ強さがあって、大きな優しさがある事を良く知っている。この手に、何度も守られたから。

 

 

 ▼

 

 

 水族館の中は人がポツポツといる程度だった。全くいないわけではないが、客足は疎らで、これならばショーは良い席が取れるだろうし、人をかき分けながら進む必要はないだろう。水槽にも周りを余り気にせず近寄れるし、何より雰囲気が落ち着いていて良い。現実から切り離された水底の世界。この浮世離れした雰囲気がホシノは好きだった。

 

 ホシノは先生と腕を組みながら順路を歩く。恥ずかしさは既に捨てた。折角の彼とのお出かけなのだから楽しまなければ損だろう。だから、馬鹿みたいにテンションはガン上げで。ひたすら遊ぶ、はしゃぐ、浮かれる。今日という一日を大切に過ごしたいから。

 

「……さて、さっきまで淡水魚と近海の魚の水槽を見てきたから、次は熱帯魚かな」

「熱帯魚ってカラフルなやつ?」

「そうそう。クマノミやグッピー、テトラとかのやつ」

 

 館内案内を見ながら、ホシノのペースに合わせて歩く先生。館内は少し薄暗く、人も少ないから落ち着いていて、魚との距離も近い。普段の生活では中々目にする事のない生き物を眺めるホシノの視線は年相応の少女のように輝いていて、先生は『来てよかった』と一人思う。

 

 色鮮やかな魚が泳ぐ幾つものアクアリウム。スポットライトが照らす、この水槽の主役達。

 水中を優雅に泳ぐ多くの魚をじっと見入るホシノと、展示している魚の紹介パネルと水槽を交互に見る先生。彼女はこの水槽という一つのアートを楽しみ、彼は生物学的な楽しみ方をしている。

 

「この子達ってなんでこんなにカラフルなのかな?」

「確か、正確な理由は分かってないみたいだよ。この子達が元々生息している環境だと派手な色の方が見つかりにくいとか、体色が警戒色を表しているとか、紫外線から身を守るためだとか……説は色々あるみたいだけどね」

「へ~、そうなんだ。この子達も元はサンゴ礁とかで生きてるもんね。川魚みたいな保護色だと、かえって見つかりやすいのは何となく分かるかも」

 

 右へ左へ。生息地や好む環境毎に分かれている熱帯魚の水槽を移動しながら、水族館というコンテンツを楽しむ。そして、一通り楽しんだ後はARが示す順路の方に足を向ける。

 次のコーナーは深海魚だった。

 

 

 ▼

 

 

「お~……」

 

 深海魚のコーナーに来たホシノは興味深そうな声を漏らしながら水槽を見つめている。深海という過酷な環境に適応するために進化をした生物は少々不思議な見た目をしており、例えば目が肥大化していたり、逆に退化していたり。今までの魚達とは雰囲気も生態も変わっており、誰もがイメージする魚とは離れている。

 深海魚の展示スペースは先程まで訪れていた熱帯魚のコーナーよりも明度と彩度が落とされており、より暗い……深海という場所に雰囲気を近づけている。

 

「すっごい形だね~」

 

 じっと見つめているホシノ。その瞳には好奇心が多く含まれていて、魚の名前や生態を壁に飾られているパネルと水槽そのものを交互に見つめている。少し前の彼と同じ視方。非常に珍しい、普通の生活を営んでいる上では滅多に見る事のない生き物は生命の不思議を感じさせる。そして、その生命の不思議を暴くために、白紙の地図を埋めるように人類は星を開拓してきた。知生体として進化を果たした人間が未だ届かない場所が深海と宇宙だ。そのどちらも深淵であり、昏い青を見ると生命にプリセットされた探求心や好奇心が疼いてしまう。

 隣に立つ先生も水槽をぼうっと眺めて……それから腕時計を確認した。時刻は午前が終わりそうな頃合い。

 

「……うん、満足! 深海魚も面白いね~」

 

 非常に満足そうに呟いたホシノ。そんな彼女に彼は微笑みながら。

 

「そっか。じゃあ、いい時間だし、この辺りでお昼にしようか」

「うへ、そうだね~」

 

 ▼

 

 

 水族館内のカフェで昼食を済ませた2人が次に向かった場所は触れ合いコーナーだった。大きく開けた明るい屋内には天板がない水槽が幾つか配置されており、その中には数種類の生き物がいる。魚やヒトデ、ウニ、ナマコ、カニ、ドクターフィッシュといった有名どころ。小さいサメやエイ、タコといった少々珍しいものまで。ホシノは全種コンプリートして、先生はカニに指を挟まれた。

 

 その後はペンギン、アザラシを見てからイルカショーを訪れて……一番の目玉にしてホシノが一番楽しみにしていた海のトンネルに足を踏み入れた。

 

「へぇ~、凄い! こんな所、初めて来たよ!」

 

 上を見ても、左右を見ても魚が泳ぐ幻想的な風景が其処にはあった。数えられない位の魚が泳ぐ、全長30m近いトンネルにホシノは目を輝かせていた。ぱっと見えるだけでもシュモクザメやマンタ、マンボウが泳いでいる。勿論、小型の魚も沢山泳いでいてどの方向を見ても楽しめる作りになっていた。

 

 そして、ホシノは天蓋を覆うような巨大な影を指差した。

 

「お、あれ見て! ジンベエザメ! 大きいね~」

 

 ホシノと先生の真上を通り過ぎるような巨大な魚影は、この館の目玉であるジンベエザメであった。優雅に泳ぎ、トンネルの終わりへと向かうジンベエザメに導かれるように2人も足を進める。

 その最中。

 

「……私、幸せだった。でも、それに気づかない振りをしてたんだ。失うのが怖くて、私一人が幸せなのが許せなくて」

 

 少しずつ、息を吐き出すようにホシノは言葉を紡ぐ。眩しすぎて、痛すぎて直視できなかった現実。ホシノを取り囲んでいた沢山の事、それを彼女は見つめなおす機会を得て────そして、気付いた。今の自分が、過去の自分が……笑えていた事に。

 

「私、ちゃんと向き合うよ。現実に、幸せに。それが私のやりたいことだから。向き合って、ちゃんと生きていく。いつか、胸を張って会えるように」

 

 今日はその旅立ちの一歩。自分に正直に、ありのままを受け入れて生きていくから。遠くにいる、ホシノだけの先輩に『立派になったね』と言ってもらえるように。大切な仲間達に頼ってもらえるように。

 

 その果てのない、終わりある旅を真っ直ぐに歩いて行けるように────。

 

「だから、ずっと隣で見守っててね。私の先生」

 

 

 ▼

 

 

「今日はありがとうね、先生」

「私の方こそありがとう。楽しかった?」

「うん、勿論! 先生はどうだった?」

「楽しかったよ。こんなに羽を伸ばせたのは久しぶりだからね」

 

 お土産コーナーでお揃いの鯨型ストラップを買った後は水族館を出て、丁度良い時間だったためそのまま夕食を取った。2人で取り留めのない会話をして、笑い合って、一日はあっという間に過ぎ去り……名残惜しいが、お別れの時間が近づいた。

 

 ぐっと背を伸ばす先生には確かに楽しさが滲んでいて、その言葉が嘘でない事がよく分かる。今日一日、本当に楽しんだ。

 

「また行こうね、ホシノ」

「……うん!」

 

 

 ▼

 

 

「……うへ」

 

 ホシノはお揃いのストラップが付いたスマホ、そこに映る画面を眺める。海のトンネル、ジンベエザメや無数の魚をバックしたホシノと先生のツーショット。ホシノは満面の笑みで、彼は優しい……ホシノが好きな微笑み。

 今日という一日、彼と過ごした轍の様なもの。そして、新しくできた彼女の宝物。

 拡大して、縮小して、色々な角度から眺めて一通り楽しんだ後……ホシノは件の写真をホーム画面とロック画面に設定してベッドに飛び込む。

 

 本当に良い一日だった。楽しくて、新鮮で。これほど羽を伸ばせた経験なんて今までなかった。これでまた頑張れそうだった。この一日を糧に、帰り際の彼に言われた「また行こうね」の言葉を糧に。

 

 ホシノはもう一度、宝物の写真を眺めて────今日という大切な一日に終わりを告げた。

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