能力】ーーーそれは、限られた人だけが発現する特殊な変異状態で身についた人ならざる業のことであり、後天的に発現することはほぼないと言われている。1度【能力】を持ったものは、それを捨てることはできず、【能力者】として生き続けることとなる。【能力者】は人々からの畏怖や嫌悪の対象となり、古くから人々に忌み嫌われてきた。
【能力】の種類は多岐に渡り、物を浮かすことができる、というような軽いものから、古明地さとりのように、心を読めたりするチート能力まで存在している。
また、自分が【能力者】であることに気づくと、その【能力】の使い方は誰に学ぶことも無く、自然と頭に埋め込まれる、とされている。
しかし、一般人は【能力】について知らない人が多い。それは何故かというと、政府が隠蔽工作をしているからだ。
通常、【能力】を持つ子供は、生まれた直後の検査で発見され、“適切に処理” される。しかし、検査に引っかからなかったり、産婆の人情で助けられたりした場合などは、【能力】を持っていることを知らずに成長し、そのまま生きていく子供も少なくない。
一方で、自分が特異な【能力】を持っていることに気づいてしまい、かつそれを公共の場で使用した場合、警察に拘束されて、人体実験や拷問などの “適切な対応” を行われる。
そのため、この神皇学園は、そうした気づいてしまった人たちに招待状を送り、人間社会で生きていくことができるように教育するのだ。
【能力者】が二度と過ちを犯さないように......
「いったい...」
僕はまた床に腰を打ち付けていた。あのスキマの移動は何度やっても慣れることはなさそうだ。ふと隣をみると、こいしはしっかりと着地していた。どうやっているのだろうか。これは僕がおかしいのか?
「やっときたか。待っていたよ。それじゃあみんな、今から能力審査を開始する。」
突然現れた僕らをみて騒ぎ立てる生徒たちを抑え、そう告げたのは白髪ロングの妹紅先生だった。みんながざわざわとするなか、声を張り上げて続けた。
「【能力】を持っていない人、持っていても使い方がわからない人は、先にこちらへ。」
すると、その場にいた半分くらいの人が移動し、彼らは別の先生に連れられてその場を去った。
「それでは今から能力審査の説明を始める。一人ずつ前に出て、ここにある試験台ロボットを倒すように攻撃をすること。相手も無論攻撃はしてくるが、怪我をすることはないので安心してほしい。制限時間以内に倒せなかったら負けだ。」
「え!今から戦うの?どうやってやるのかな!?」
「こいしは、無意識の能力とか使って回り込めばいいんじゃないか?」
「なるほどーー!!奏多頭いいね!」
「いや、ちょっと考えればわかるような...」
そんな話をしていると、
「じゃあ早速いくぞー。まずは一番、十六夜咲夜。」
前に進み出たのは、白を基調とした服をきた目つきの鋭い少女。態度はとても落ち着いていた。
「それでは...はじめ!!」
その十六夜咲夜、と呼ばれた少女はおもむろにナイフを取り出して構えた。そんな量のナイフ、どこにしまっていたんだ...?
ロボットは咲夜に向かって攻撃を仕掛けようとした。が、その攻撃は外れ、一瞬で勝負は決した。咲夜が突然後ろにワープし、大量のナイフを寸分の狂いもなく投げ、串刺しにしたからだ。
「え!?どういうこと!?」
「...意味がわからん」
驚きの声をあげるこいしに僕は何も言えなかった。本当に意味がわからん。どういう【能力】だろうか?ワープ系なのだろうか。
しかも驚いたことに、礼をして立ち去った咲夜の手には先程投げたナイフが収まっていた。回収していたそぶりもない。
「おいおい、初手からハードル上げすぎだろ...」
周りがざわざわしているなか、僕もそう呟かざるを得なかった。恐ろしい【能力】だ。きっと勝ち目はないだろう。
僕は怯えながら、呼ばれる順番を待つのだった。
「次。霧雨魔理沙。」
どんどんと人が進んで行った。手から水を発射するもの、地面を叩いて亀裂を起こすもの、たくさんの【能力者】がいた。しかし、試験台ロボに勝てる人は最初の十六夜を除いてほぼ居なかった。
そして、目の前に出てきたのは箒を持った金髪の少女。見ただけでどんな【能力者】か分かるようないでたちだった。
「箒ってことは魔法使いかな!?」
「多分な...」
するとその少女は箒にまたがり、空中に飛んだ。ロボが追いかけようと浮き上がるその瞬間、隙ができる。
「【恋符】マスタースパーク!!」
少女が叫び、手に持っていた何かから超巨大なレーザーが発射される。ロボの姿は光の中に掻き消えた。瞬殺。
にしても、恋符ってなんだ、あまりにもロマンティックすぎるが、あのレーザーは破壊的だったぞ..,?
「綺麗!!!」
「ロボ一体に大袈裟すぎないか...」
また強いやつが出てきたな、と思った瞬間、
「きゃあ!?!!!」
僕は何も考えずこいしを突き飛ばしていた。同時に僕も跳ね飛んで避ける。
「..嘘だろ...」
魔理沙のレーザーが暴走し、こちら側へ飛んできたのだ。自分たちのいた場所には巨大な穴が空いていた。
「な、何が起こったの!?」
「霧雨のやつ、まだレーザーを扱い切れてないようだな...」
「だ、大丈夫か...?その...すまん」
騒然とする人々をかき分けて魔理沙が現れた。彼女は素直に謝る。
命の危機を回避した僕は、彼女に注意をする。
「いや、もっと気をつけないt...」
「ねぇ!!あなた霧雨魔理沙って言うんだよね!!とってもレーザー綺麗だったよ!!今度どうやって出すか教えてね!!!」
「こいし...」
先程のことなどなかったように明るい笑顔で魔理沙に話しかけるこいし。こちらも怒る気力が削がれてしまった。
...まぁ、こいしがいいならいいか...
話し込んでしまった2人を横目に僕はため息をついた。
そして、
「次ー。古明地こいし。」
「うぅ、緊張してきたよぉ...」
「大丈夫さ、なんとかなる」
「なんとかなるって全然安心できなーーい!!」
こいしが呼ばれ、彼女は前に出ていった。まだ僕は彼女の【能力】しかしらない。どのような戦い方をするのか楽しみだ。
「それでは、はじめ!!!」
するとその瞬間、こいしの周りの空気の様子が変化した。濃くなった、とでも言うのか。いや、これはこいしが薄くなっている...?
すると、みんながざわつき始めた。なるほど、これが【能力】か。
きっと今、こいしは無意識になっているのだろう。相手のロボットもどこにいるのか分からない様子だ。
そんな中、こいしはロボットの周りをぐるぐるして、にこにこしながらロボットを眺めている。自由すぎるだろ...早く倒してくれ、制限時間もあるんだが...
「【本能】イドの解放!」
こいしが小さく叫ぶ。すると、手からハート型の弾幕が射出され、ロボットを射抜いた。ロボットは突然の背後からの攻撃に為す術なく叩きつけられ、動きを止めた。
「そこまで!」
「いや、やっぱりこいつの【能力】は強いな...」
何が起こったかわからずざわざわする生徒たちに混じって僕もそう呟いた。無意識を操る、はチートだろう。機械にも認識されないとか、スパイとかやらせたらなんでもとってきそうだ。...まぁ、こいしがスパイとか泥棒とか想像を絶するが。
「うーん、何とかできた!」
「やっぱり強いよこいしは」
「ほんと!?ありがとーー!!」
「でもなんで、ロボットの周りぐるぐるしてたんだ?」
「ロボットがどんな作りしてるかみてたの!!」
「んで、どんな作りだったんだ?」
「わかんなかった...!」
「なんでそんなドヤ顔なんだよ」
そんな話をしているうちに人がまた1人、1人と審査を終えていき、
「次。魂魄妖夢。」
前に出てきたのは剣を持った白髪の少女だった。【能力者】で剣を持つのは珍しい。どんな動きをするのだろうか。
「はじめっ!!」
声が響くと同時に少女は間合いをとる。剣の扱いに慣れていそうな動きだ。ロボットは体当たりをしかけに行った。
「【獄神剣】業風神閃斬...」
早い。あまりにも早かった。剣の残像だけを残して、ロボットは分離した。上胴体が下に落ちる前に、彼女は剣をしまっていた。
「か、かっこいい!!!」
「強すぎるだろ」
正直めっちゃかっこいい。技名が厨二っぽくてどうなるかと思ったが、名前に見合ったかっこいい技だった。
「私も剣とか持ったら強くなれるかな!?」
「振り回して自分に当たりそうだからやめとけ」
僕はこいしのアホな発言を受け流しつつ、ロボットの動きを見ていた。
基本ロボットには3種類の動きしかない。体当たりか、手を振り回して突進してくるか、後方に動いて軽いビームを放ってくるかだ。
まぁ、倒すのは難しくなさそうだな...
「...た!奏多!」
「んえ?」
「何変な声出してるの!?呼ばれてるよ!!」
こいしからの呼びかけで僕は思考を辞める。いよいよ僕が前に出る時が来たようだ。
「頑張ってきてね!」
「あぁ、できる範囲でな」
そうして僕は、ロボットと対面する。ロボットはこちらの出方をじっとみていた。
先に動いたのはロボットだった。
ロボットが手を振り回して突撃する。僕はタイミングを見計らって地を蹴った。