ある日の早朝、たまたま何となく外に出る輝やんとあまねんについて行った日。蝉の声すらもの寂しげに響く空気の中、ゆっくりと歩いて着いたのは広い広い墓地であった。
それらは全て、殉職した鬼殺隊士達の物。ずらりと立ち並ぶ物言わぬ墓標を弱々しい歩みで進みながら一つ一つ丁寧に名を呼んでいく輝やん。その後ろを手を頭の後ろに組みながらついて行く。
もう視力は全くと言っていいほど無いだろう。体も歩く度に痛む筈だ。彼の体は常人とは比べ物にならないほど虚弱であり、そして病に犯され想像しただけで顔を顰める程の苦痛と常に戦っている。
歩くのすら辛いだろうにこんな広大な面積を歩くなどセルフ拷問でしか無い。しかし、彼は毎朝ここに来ては故人を悼み、その心に強い決意を固め直している。いや、それはもはや執念や執着と言っていいものだ。
「輝やんさぁ」
「なんだい、クロ」
ポツリ、と呟く程度に呼んだはずが妙に澄んだ空気をしているここには酷く大きく響き渡り、輝やんの小さな返事もハッキリと聞き取れた。
そういえば蝉の声が妙に遠い、この場所だけがまるで死者の眠りを守るように静けさが包み込んでいるようだ。まぁそんなことはいいかと輝やんに分かりきった質問をしてみる。
「マジに毎朝ここに来てんの?」
「勿論、鬼を滅する為に命を賭して戦った子供達。彼等の魂の鎮魂を願う為にね。」
マジかー、と言いながらチラリとあまねんに支えられるその貧弱な、今にも折れて崩れ落ちそうな体を見やる。
「その体じゃキツイだろ」
「全く苦じゃないさ、ここに眠る彼等の戦いに比べれば私の痛みなど塵芥に過ぎない」
義務、使命感、はたまた罪悪感。滲み出るそれに目を細めた。
「・・・・・・輝やんさぁ」
生きてて楽しい?とは、何となく聞けなかったんだ。
「あまねんもキツいよねー?」
「私も全く」
言い淀んだ言葉を飲み込んで何事も無かったかのようにケロッと振る舞い、あまねんにも聞いてみると真顔でそう返された。うーん、クールビューティ。私が人間だったら速攻口説いてたね。
「かー、良妻賢母だわ。もっといたわれよ輝やん。」
「そうだね、感謝してもしたりない程だよ。いつもありがとう、あまね。」
「いえ、当然の事をしている迄です。それに・・・貴方の支えになれる事が、私は嬉しい。」
サラッと言いのけているが、若干耳が赤くなっている。やだー、可愛いとこあるじゃない?流石にこれをバラすほど終わっちゃいませんよ私ゃ。お口チャックねこれ。
「けどさぁ、毎日毎日仕事使命宿命血命・・・そらー、体も壊すさね。たまにはさー、遊んだらどーなのよ。例えば甘味屋巡りの一日!例えば馬に乗って気ままに乗馬逢瀬!例えば家族旅行!楽しぜ〜!特に甘味屋巡りがお勧めな!」
身振り手振りを大袈裟にブォンブォンと動かして楽しげに笑いながらそう誘って見るが、輝やんはいつものペースを崩さない。いつも通りの蓋をした優しげな微笑みを浮かべた面を貼り付けて、憎悪に狂った腹の中を僅かにさらけ出しながらやんわりと断ってきた。
「ふふ、そうだね。とても楽しそうだ・・・けど、それを楽しめるのは鬼舞辻無惨を倒した暁に、かな。」
それがやはり面白くない、こいつは何時だってその使命とやらに追われてる。生き急いでる。死を前提として先を考えない。それが堪らなく気に食わなかった。
人間、生きてなんぼだろ。楽しんでなんぼだろ。何死んだ顔して生きてんだよ。腹立つな。
辛いって言えよ。苦しいって言えよ。助けてって言えよ。お前みたいなやつが自分だけ背負って勝手に死んでくんだ。友達になんも言わねぇ癖に。悔いは無いって笑っていくんだ。たまったもんじゃねぇ。
だから、これはちょっとした
「・・・・・・ふーん、あっそ。んじゃあよ軽ーい契約な。」
「全部片付いたら、今までの分目一杯楽しめよ。んでもって、胸張って生きろ。ほら、同意しろよ。」
いつものようにおどける様にそう言ってみると、やはり微笑んでその契約に同意してきた。
「・・・・・・ああ、分かった。鬼舞辻無惨を倒したら、私はやりたい事をやるよ。約束する。」
嘘つけよ、悪魔に、友達に嘘が通じると思ってんのか。全くよ。
「忘れんなよ、そんでもってそれまで死ぬんじゃーぞ。死んだら地獄の底まで取り立てに行くからな」
「ふふ、地獄の底まで逢いに来てくれるなんて。良い友達を持ったね。」
「死なねー努力をしろって言ってんだよ!あまねん〜!コイツマジでさぁ!」
人間捨てた悪魔にここまで言わせたんだぜ?絶対死ぬんじゃねーぞ、輝やん。
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という訳で刀鍛冶の里に不法侵入した私ちゃん。まぁ見つかっちまったもんは仕方ねぇと開き直り、輝やんにバレるのマヂ上等卍とイキリたち
なんて言ったが帰った後はガン詰めされて笑顔で鬼労働を強いられるだろうという事実に震えが止まらないんだけどね・・・ふふ、コラコラ収まれよ私の可愛い小鹿の足よ。それ以上震えたら耐震テストに落ちちゃうよ。
こうなったら輝利哉君達に
「ここはいいねぇ、刀への熱が感じられて何だか居心地がいいぜ。婆ちゃん家の居間の隣の部屋みたいだ。心無しか刀の艶も良い。私ちゃんにとってはエステやね。」
「ほっほっほっ、そりゃあ『刀の
一応用意されたお茶とぶぶ漬けをじゃぶじゃぶ飲み喰らい、肘ついて寝っ転がって適当にあったかりんとうをバリボリと貪る。長のじじいは気にしてないがそれ以外の奴らはそうでは無いようで面の上から分かるくらいこちらに怒気を放っている。いやーん、怖いー♡そんなに熱っぽく見られるとポロリしちゃうよぉ〜♡てめぇの首がな。
そんな意味を込めて腕から生やした刀を向けてみると今度はあからさまに動揺して怯え始める。へっ、刀鍛冶が刀にビビってんじゃねぇや。じじいを見習えじじいを。
それはそれとして反応が面白いので刀を出し入れしてワタワタする様子を楽しんでいるとじじいがドスを聞かせた声で睨み付けてきた。
「とはいえ・・・・・・ワシらの刀に変なもん付けおった恨みは忘れとらんからな」
あんだよ、そんな事で怒んなよな〜。血圧上がってぽっくりしちまうぞ?つーかそれは私ちゃんに言われても知らんわって話ですわ。
なので鼻で笑って返してやる。
「ハッハー、知るかよんな事。文句なら
そう言うと我慢ならなかったのか周りの刀鍛冶のヤツらが顔を真っ赤にして怒り心頭と言った感じに立ち上がり抗議の声を上げた。
「き、貴様なんて事を!」
「それはそう」
「長!?」
しかし奴らの反応に反してじじいの反応は淡白で寧ろこちらに肯定的な様子を見て周囲は困惑している。
ゲラゲラゲラッ!そらそうだろうよ、そいつはこの里一番の刀鍛冶、つまりこの里の中で最も刀に対する情熱を持っている。任務中に刀が折れりゃ、職人の実力不足。刀が刃こぼれすんのも職人の腕が悪いから。
実力でその地位に着いてる男が
誰よりもそれを否とし、誰よりもそれを是とする。それが出来るから長なんだろうがよ。困惑する暇があんなら腕磨いて私の加護なんざ要らねぇって言われるくらいの刀を作れるようになりやがれ半端者共が。
「とはいえ、あんたの作る刀にありゃ不要だわな。あれほどの業に混ぜるのは無粋ってもんだ。その腕にゃぁ素直に敬意を表すぜ。」
ちなみにこれはホント。いやマジでこのじじいが作る刀はすげぇのなんのって。私ちゃんの加護無しでも上弦と打ち合っても余程じゃなきゃ壊れねぇ業物ばっか拵えてんぜ。初めて見た時は絶頂不可避だったわ。現代なら人間国宝レベルだね。
「おう、畳に額が着くまで頭下げてくれや」
「なんなら頭丸ごと置こうか?」
「畳が汚れるからやじゃー」
わっはっはっ!となんかよくわからんシンパシーを感じた二人は大笑いしているが他の物にとっては気が気でなく重苦しい緊張感で今にも吐きそうになっていた。
「んじゃあ私はそこら辺で刀打ってるやつにちょっかい出しに行くから、夕飯は栗ご飯でよろしく〜」
「ワシ喉に詰まるから嫌じゃ、五目ご飯にしとくわ」
「しゃーないなぁじーさんは、長生きしてくたばれよベイベー!」
「ついでに刀でも打ってけ、んで自分の頭でも打っておっ死ね」
「ははは!刀の悪魔としちゃあ寧ろ生き返る死に方だぜ!」
いやぁ、笑った笑った。こんなに上機嫌になるのは久しぶりだね。
さてと、適当な工房に入って刀打ち体験するかぁ〜。という訳で目に入った所にとぅっ!突撃!隣の刀鍛冶!
「オラァっ!刀の悪魔のお出ましだ!刀打たせろ!」
「なんだお前!?(驚愕)」
「出ていけ!」
「おろなゐん、抑えろ!」
ガラリと戸を開きズンズンと侵入してくる私を作業を中断して拘束してくる職人三人組。職人が三人・・・来るぞ遊馬!*1
「放せコラ!流行らせコラ!」
「(刀の悪魔が職人)三人に勝てる訳ないだろ!」
「馬鹿野郎私は勝つぞお前!」
勝った(天上天下唯我独尊傲慢不遜我思う故に我あり)
ただの刀鍛冶に悪魔が負ける訳ないだろいい加減にしろ!*2
はいと言うわけで刀鍛冶体験コーナーの時間だよ〜!良い子のみんな〜集まれ〜!イエイ☆
オラァ!私の神業を見よ!アァタタタタタタタタ!!どうだこの私の速い突きがかわせるかぁ〜!!
まだまだァ!!行くぜオイッ!!
ジョインジョイントキィデデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォナギッナギッナギッフゥハァナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケンK.O. イノチハナゲステルモノ バトートゥーデッサイダデステニー セッカッコーハアアアアキィーン テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーン FATAL K.O. セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ ウィーントキィ (パーフェクト)
デデーン!上手に焼けましたァ〜!
出来上がった刀は・・・おい、どうして刀身がバカ歪んでる・・・?(戦士人格並感)
「そら(あんだけ乱打すりゃ)そう(なる)よ」
「刀の悪魔なのに刀打つのは下手だな(笑)」
「おっと手が滑った」
「おんぎゃあああああ!?!?」
煽ってきやがった職人の脛に金槌を折れない程度に叩き込み、もう一回チャレンジ!トンテンカンテン天丼丼!ガタゴトゴットンズッタンズタン!!オラッ鍛造!鍛造解除(?)!鍛造!!
しゃあっ!タフ刀!
クロが手ずから打って出来上がったのは・・・いい感じの刀。*3
だが足りない、こんなんじゃ満足出来ねぇぜ・・・!まだだ!まだ行けるはずだ!満足のその先へ!私はこの刀を飲み込み、私自身でチューニング!リミッター解放レベルMAX!レギュレーターオープン!ナビゲーション!オールクリア!無限の力よ、時空を突き破り、未知なる世界を開け!GO!デルタアクセル!
カモン!凄く・いい感じの刀!!*4
「やめろー!こんなの刀鍛冶じゃない!刀っていうのはみんなを笑顔に・・・」
覇王トマトニキおっすおっす、大人しくスタンダード次元で親父エミュに勤しんでくれよな!
はい、という訳で刀出来ましたー。私が作ったって言うか、私産というか。まぁ凄くいい感じになったし、OKOK。
「銘を付けるのならば・・・星!名付けよう!この刀の名は『スタープラチ菜』!*5」
「うわぁ」
「ないわー」
「かわいそ」
「ッッャラップ!!ワッタファッ!!」
んだよ!冗談だろ!冗談!!マジの白けた目で見やがって!!我が子同然の刀にそんなパロディ満載の名前付ける訳ないだろ!パロディ先にも失礼だわ!!
「そうさなぁ、銘は大事だからなぁ。珍しく真面目に考えようか。むーん・・・」
お、ティンときた。
「『鬼灯』、お前は鬼灯だ。直感で決めた。」
そう告げてやると鬼灯は嬉しそうにその刀身を仄かに紅く輝かせた。はは、嬉しいかこやつめ。
さて、刀も作った事だし。もうこんな鉄と汗臭い場所に用は無いな。あーんと口を大きく開いて鬼灯を突っ込み、一気飲みして体内に仕舞う。職人共がドン引きの目を向けてくるが気にしない。
とりあえず刀を作らせてくれた礼をしようと良い刀の作り方を脳に直接ぶち込もうとしたら「余計な事すんな!!自力で身につけるわボケが!!」と罵倒され、金槌でぶん殴られたので全員はっ倒してケツに柄側から刀を突っ込んでやった。これがケツバトラーか。しかしその向上心、誉高い。
テメェらが良い刀を作る日を楽しみにしてるぜ・・・とキザったらしく言い残して意識の無いケツから刀を生やした大の大人三人をほっぽってきた私は次の目的を探しながら歩き回る。
「さーってさてさて、何だか炭治郎君も色々やってるみたいだしぃ。ちょっかいかけに行きますか〜。」
そう考えてルンルンスキップしていた私だったが、たーいへん☆!私ったら、熱の篭った工房にいたから汗かいちゃってた!いっけなーい☆!こんな汗だくじゃ炭治郎君の鼻も誤魔化しきれなーい☆!
「なので、そ、の、ま、えに〜♪温泉♪温泉♪」
ギュルッと行き先を変え、ルンルンスキップで温泉に向かう。しょうがないしょうがない、(温泉が)あるのがいけない!あるのがいけない!
ぐへへ、今回はお酒も持ち込んじゃうもんねー!いい湯に浸かり、いい酒を飲む・・・こんなに楽しい生活は無いぜ・・・?ついでにツマミもチョロっと頂いてくか。ゲヘゲヘゲヘ!楽しみでやんす!
という訳で運良く誰もいない温泉にぃ、浸かるぅぅ!!
んんぁぁああああああ”あ”あ”!!!いぎがえるぅぅ〜・・・
まじ最高可愛い(?)・・・この世の全てだろこんなん・・・ワンピースはここにあったんや・・・
さてさて、火照った体に更に酒を・・・ぶち込んでいくぅ〜!ッッカァァァ〜・・・!!ここが・・・天国・・・?あ、私悪魔だったわ。
うーん、酒が進む進む。肴の干し肉もあってじゃんじゃん飲んじゃって、途中から入ってきた職人達とも飲んでたら〜・・・気がついたらびっくり、めっちゃ暗くなってやんの。
「しまった・・・温泉が気持ちよくてついつい長居してしまった・・・もう夜じゃん。やだー指どころか全身シワシワ〜。」
流石に入りすぎたな、そろそろ出ないと晩飯を食い損ねちまうぜ・・・五目ご飯!最高!五目ご飯!最高!お前も五目ご飯最高と・・・ん?くんかくんか、おっとこれは・・・・・・。
何処からか漂ってきた悪臭に思わず顔を顰める。
おいおい、最悪だわ。こんなぶち上げテンションなのによぉ、萎えるぜ。
なんでここまで来て血に混じったこの鼻が曲がるような最低な臭いを嗅がなきゃ行けねぇんだよ・・・。
やーね、何処にでも虫のように湧いて。折角のいい気分に水をさしてくれるなよ。いい酔い気分だったのによォ〜。
ぶつくさと文句を言いながらスンスンと鼻を鳴らし、ドブ臭ぇ臭いを辿っていく。余りにも臭いので酒で誤魔化しながら歩いていると温泉から里に戻る階段の中心に何かが置いてあるのを見つけた。あれだねぇ〜。
不快な臭いを放つそれに向かって鬼の形相で駆け出し・・・!
「俺は・・・!ストライカーだッ!!*6」
「ほあああぁあぁああああぁぁ!?!?!?」
渾身のエゴイストシュートでその壺を粉々に蹴り砕き尽くした!!
「GOOOOOOOOAL!!!!」
粉砕☆玉砕☆大喝采ッ!!俺こそが、イナズマイレブンだァ!!見た目はオンボロでも中身は骨太だかんよ!
砕いた壺を更に踏みつけ粉塵と化すまでグリグリと躙っていると背後から焦りと怒りに満ちた声が響いてきた。チッ、生きてやがったか。
「き、きさ、きさっ貴様ァァァァ!!私の芸術をよくもぉ!!」
ずるんっと気色悪い効果音を出しながら壺から顔を出したのは、白魚と人間がフュージョンしようとして失敗したみたいな見た目をした激キモ生物であった。かァっ、気持ちわりぃ!ヤダおめぇ!
よくそんな激キショビジュで生きてこれたな。さぞグッズも売れ残ってるだろう(メタ)。お前のアクスタを作る金で少しでも他の柱のグッズに当てたかったろうに、制作会社に謝れ。
にしても芸術?芸術だって?美術3の私にそれを問うとは愚かな。というか鬼が芸術語ってんじゃねぇよ、偏屈で下劣な自分の性癖を相手に押しつけることを芸術と勘違いしてそうな面しやがって。*7
「あに!?あんだって!?聞こえねぇよ耳にバナナが詰まってるから!」
「貴様の遠い耳には何も詰まってなっ・・・!!」
「ワイバーン・・・!クラッシュ!!V2!!」
「うごぁぁあぁぁぁぁ!!?!?」
何か喚いていたが無視して再びシューッ!!ドンピシャだぜ!(ピシャ岡さん並感)
「くっ!無駄だ!私の血鬼術により何処にでも・・・!」
「ドラゴンスレイヤー!V3!!」
「最後まで聞けっおばあああああ!?」
だがまた別の場所に壺が現れて怒り心頭のキモ鬼が出てきた。ああ?なんだワニワニパニックか?そういうことから話は早ぇ、死ぬまで壺ぶっ壊してやるよォ!!オラッ積み上げたものぶっ壊せや!
「んぎもじぃィィィッッ!!普段壊しちゃいけないもの壊すの最高にエクスタシー!!もっとちょうだい!もっと!!」
「ちょっ!貴様ッ!!ヤメッ!!がァァァァァ!!!」
壺が現れる度に蹴る!蹴る!!蹴る!!!テメェが逃げまくって壺を増やし、私がそれをら蹴り壊しまくる!永久機関が完成しちまったなァ〜!ノーベル賞は私ンもんだぜェッ!!
「鬼舞辻ダディダディどすこいわっしょいピーポーピーポー鬼舞辻ダディダディ〜!!」
「あのお方の名を叫びながら珍妙な歩法で壺を壊すなァァァァ!!」
まるで踊るように壺を壊し続ける私・・・愉悦!圧倒的愉悦!素晴らしい・・・これ以上の愉悦は存在し得ないでしょう・・・。
「このっ・・・!いい加減にしろッ!!」
「おわっおさかな天国!?」
『一万滑空粘魚』によって放たれた秋刀魚みたいな魚が群れを成して襲いかかるが仰け反って交わし、距離を取るクロ。その隙に漸く息を整えられた上弦の陸『玉壺』が肩で息をしながら粘魚達を後ろに控えさせてクロを睨みつけている。
「この、気狂いめ、牡牛のように、暴れおって・・・!」
「全身ぬめぬめまみれのヒトガタモドキに言われたくねぇ〜」
「ぶち殺すぞ猿が!!」
「沸点ひきぃ〜、ストレス耐性大丈夫?マンボウみたいにぽっくり逝くんじゃね?」
「ぐ、ご、かぁ・・・・・・!!」
口と目が逆になってるゲロきも頭部に血管をビキビキに立たせる鬼。きっも、こんなんほぼち○こじゃん。この作品は清廉潔白健全作品なんだからやめてよね。
「ふ、ふん!貴様のような芸術のゲの字も知らぬような野猿の言葉など私には響かない!そうとも!私の芸術を理解出来ぬ下等な者の言葉などどうして聞こえようか!」
「顔真っ赤で草」
「ぶち殺すぞ猿がァッッ!!」
ちょっと煽ったら直ぐに爆発するの煽り耐性カス過ぎん?そんなんでよく生きてこれたもんだな、まぁあのケツ鬼の手下だし仕方ねぇか。
そう納得してると鬼はワナワナと震えながら何かをブツブツと呟き始める。なんだなんだ気持ちわりぃな、どうせ品のねぇ罵倒を口にしてるんだろ。ちっ、仕方ねぇな。こいつの語る芸術には微塵も興味はねぇが、見ないで評価するってのも私の格を下げてそうで嫌だし。
ここはいっちょこいつの作品を見てやろう。そう思った私は耳をほじくりながら手をクイクイと曲げて鬼に要求する。
「なら見せてみろよお前の芸術ってやつをよォ〜」
「はぁ、はぁ・・・なに?私の作品を見せろだと?何故芸術を知らん貴様などに・・・いや、素人にすらその美を分からせる。それもまた良し・・・か。」
ブツブツうるせぇなさっさと見せろよ、と思いながら見下していると鬼は得意げに壺を取り出し、その中から何かを引き摺り出した。
「ふん!ならば刮目せよ!これが私の至高の芸術だァ!!」
バシャッ、という水気の多い音を鳴らしながら壺から現れたのは・・・
「名付けて
「・・・・・・あらら」
血みどろになった職人達が5人、自身が造った刀によって滅茶苦茶に継ぎ合わされた悪趣味極まりないオブジェであった。
「見よ!分厚く豆だらけの汚い手をあえて!前面に押し出しているのだ!更に刀を刺すことで"鍛人らしさ"を強調!
『ギャアアアアアア!!』
「このように!刀を捻ると絶命時の断末魔を再現!何時でも新鮮な悲鳴を聞くことが出来るのだ!見て良し!聞いて良し!まさに完璧な逸品!あああ!素晴らしい!自分の才能が恐ろしい!こんなにも冒涜的かつ情熱的な作品を生み出せるなんて!歓喜の極みィィ!!」
なんか勝手に盛り上がってて草。
ブルブルと震えて自画自賛に夢中になってる鬼は放っておいて悪趣味なオブジェにされた刀鍛冶達を見る。割れた火男から覗く目には当然生気などありはしない。全員とっくに絶命している。
その内の3人は見覚えがあった。間違いない、刀を打った工房にいた刀鍛冶達だ。
それを見た瞬間、怒りで視界が赤く染まり激情に身を任せ鬼を攻撃・・・なんて、ジャンプキャラみたいな事はしない。
別に人がどんだけ殺されてようと私には無関係だし。かわいそ、運が悪いねぇ。こんな鬼に殺されちまうなんて、なんまんだぶなんまんだぶ。くらいのもんだ。
ていうか・・・
「・・・ハッ!ハハハ!ダァーハハハハハ!!せ、センスねぇぇ〜ッ!!」
だ、ダメだ!我慢できねぇ!笑いが止まらねぇ!
思わず吹き出し、そのまま腹を抱えて笑い始める私をさっきまでイキイキしていたのを止めて固まって凝視する鬼。
「・・・・・・・・・は?」
辛うじて漏れたであろうその声に、本気で分かってなさそうなその声に更に笑いが加速する。
「いひっ、いひひひ!ひ、人の死体を組み合わせて?要らねぇ仕組み付け足して?こんなんが至高の芸術ゥ!?よくもまぁこんな中身のねェペラッペラのお遊びを見せられたなぁ!!ガキの工作と何がちげぇんだ!?いや、理解されねぇぶんそれ以下かァ!よくそれで芸術家名乗れたもんだ!小細工ばかりで浅薄な小手先程度の才もねぇよ!その小さいお手手はそのためですかァ!?無駄な要素付け足さないで一目で惹かれるようなもん造ってみろやボケカスッ!!」
罵詈雑言と煽りの嵐。それを豪雨のように叩き付けられた鬼はブチブチと至る所から血管を浮き立たせ、そこから血を吹き出している。はっ、一丁前にブチ切れてやんの。Chu♡効きすぎちゃってご、め、ん♡
「し、審美眼の欠けらも無いゴミがァ・・・!私の至高の芸術を口汚く罵るとは・・・万死に値する!!」
「至高ゥ!?奇抜を芸術と勘違いした自己満限凸ガラクタオナ○ーでシコってるだけだろォが!!美大落ちは世の為に大人しく死んどけや!!」
「◎△$♪×¥●&%#!?」
邪魔なので煽りながら鍛人のなんたらが出てる壺を蹴り壊してやったら声にならない絶叫を上げて更にブチキレ始めた。どんだけ血管ちぎれてんの、おもろ。
ニヤニヤしながら鬼を煽りつつ、地面に散らばる刀鍛冶達を一瞥する。
それを見たって別に私の心は少しも揺らがない。人が死ぬなんざ珍しくもないし、どうでもいい事だ。
・・・・・・ってもまぁ?私ちゃんも刀の悪魔ですから?
それを生み出す者を殺されるってのは・・・ちょーっち、ムカつくのよね。
「あの刀鍛冶達はよ、確かに実力不足だったが刀に対する想いは目を見張るモンがあったぜ。より良い刀を、より鋭い刀を、より斬れる刀を。鬼殺隊士が思う存分に振れるように、一人でも生きて帰って来れるように。その為に長い長い苦難を屁とも思わねぇ筋の通った奴らだった。」
壺を蹴り壊していた間にズレていた帽子を外して、少し付いた汚れを払ってから深く被り直す。
「これは敵討ちじゃねぇぜ、契約による
珍しく、ヤル気沸いてきたぜぇ〜!?
月明かりによって出来た帽子の影から鋭い眼光が鬼を捉える。狂気の笑みが闇夜に踊り、鉛色の殺意が刃を研いだ。
「刀の悪魔の前で刀鍛冶殺すなんていい度胸してるナァ!!そのドブ汚ねえ命を全部毟って地獄の釜の生き餌にしてやるぜぇぇぇ!!」
「こちらの台詞だゲロクソ悪魔が!!すり身にして虫の餌にしてやるわァッ!!」
「やってみろよバァァァーカッ!!」
シャリンッと左手を抜き放つ音と一万滑空粘魚と壺から新たに現れた魚達が殺到するのは同時であった。
泳ぐように飛ぶ魚、飛び散る血肉、サムライソード
今宵、上弦の鬼二体が刀鍛冶の里へと襲撃した夜。上弦の伍『玉壺』、上弦の肆『半天狗』。前者は人知れず森の中でクロと接敵し、後者はクロを除く全員で対処している。
刀鍛冶の里を守る為の長い夜の死闘の幕開けであった。
冥刀・鬼灯
ハゲの斬魄刀では無い。斬れ味がめちゃんこ鋭い。めっちゃ切れる。魚の骨もなんのその。仄かに紅く光ってる。夜闇の中でもぼんやりと見えるくらいには光ってる。なんで光ってるのか、私にも分からんのです。