偵察騎士は波花騎士の心を溶かしたい   作:リヒス

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新連載始めました。
アンバーとエウルアの物語です。
楽しんでいただけると嬉しいです!


新米偵察騎士は大罪人と出会う

 モンドを取り囲む城壁の上に私は立っている。

 わたしは西風騎士団の偵察騎士、アンバー。

 いつもモンドの高い所から、怪しい人がモンドに入ろうとしていないか、ヒルチャールの活動を見張っている。

 

「あ! あの人モンドで見ない顔だ」

 

 わたしは城壁から飛び降り、風の翼を広げた。モンドの風を掴んだ翼は、前方へゆっくりと下降してゆく。

 トンと城門の前にある橋の前に着地すると、私に驚いた鳩たちが一斉に飛び立った。

 

「おねえちゃん! びっくりして皆逃げちゃったじゃないか!!」

「ごめん、ティミー。後で、小麦粉あげるから許して!」

 

 毎朝橋の前で、鳩に餌やりをしている少年に鳩が飛んでいったと怒られ、平謝りした私は街道を真っすぐ走った。

 

「風神のご加護があらんことを」

 

 わたしは見知らぬ女性に声をかける。

 身体が引き締まった、わたしより長身の女の人。

 水色の髪をガイア先輩みたいに肩に流している。

 女の人の背には身長と変わりない大きな剣があって、戦士みたい。それに、氷の神の目を持ってる。

 大剣と氷元素を使ってヒルチャールや宝盗団と戦うのかな。

 

「何かしら? モンド人が私に話しかけてくるなんて」

「私は西風騎士団の偵察騎士、アンバーよ」

「あら、西風騎士団の」

「あんた、名前と身分の証明はーー」

「名乗らなくても、私のことは知っていると思うけど」

 

 わたしの質問に長身の女性は冷ややかに答えた。彼女の言葉遣いは優雅だが、その中には冷たさが含まれているように感じる。

 さも、私は有名人ですといった態度。

 わたしは彼女の答えに臆することなく、名前を訊ねた。

 

「私はエウルア。名乗ったのだから、そこを通してくれないかしら」

「あ……、だめ! 通せないよ」

「……なに? 他に何が聞きたいの」

 

 エウルアの気迫に負けそうになったけど、わたしは偵察騎士。

 モンドにとって危険な存在ではないか、城の外で確認する任務がある。名前が分かったからといってモンド城に入れるわけにはいかない。

 エウルアはわたしの態度にため息をついた。

 

「どうしてモンドに来たの?」

「西風騎士団に入団するためよ」

「え!?」

「もういいかしら?」

「うん。城まで送って行くよ」

「別にいいわよ。もうすぐそこだし」

 

 エウルアの言う通り、わたしの誘導がなくてもモンド城へ着く。

 普段なら身分と目的を聞いたら、モンド城の場所を教えて別れるのだが、エウルアはまだ何か隠している気がする。西風騎士団員なのに、エウルアの入団の話は何一つ聞いてない。

 あの大団長のことだから伝え忘れたというのもあるけれど。

 

「西風騎士団本部までわたしが案内するよ!」

「分かったわ。アンバー、案内よろしくね」

 

 わたしはエウルアと共に、モンド城の橋を渡る。

 門の左右には西風騎士団員が一人づつ見張っている。

 わたしとエウルアはモンド城へ入る直前、二人にとめられた。

 

「どうして止めるの?」

「アンバー、こいつを知らないのか?」

「この人はエウルア。西風騎士団に入りたいんだって」

「なんだと!? なおさら通すわけにはいかない」

 

 二人はエウルアがモンド城へ入ることを拒む。

 

「アンバー、この女はローレンス家の一族だ。お前もローレンスという名前は聞いたことあるだろう」

 

 一人の騎士団員がエウルアを指して、”ローレンス”と言った。

 ローレンス。モンド人だったら誰でも聞いたことのある貴族の名だ。

 モンドを暴政と恐怖で染め上げた旧貴族。

 騎士団の祖ヴァネッサに倒された因縁があるのに、どうしてエウルアは西風騎士団に入団しようと思ったのだろうか。

 エウルアは二人の門番の態度から、深くため息をついている。面倒なことになったと思ってるに違いない。

 

「もちろん、聞いたことあるよ!」

「ならー-」

「ローレンス家だろうと、エウルアはモンド人よ。それに西風騎士団に入るには面接やテストがある。合格か不合格か決めるのはわたしたちじゃないわ。ファルカ大団長よ」

「……それはそうだが」

「さあ、エウルア。行こう!!」

 

 わたしはエウルアの手を引いてモンド城に入る。

 

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