ケリーは片足を引きずりながら、納屋の庭を歩いていた。
ジョージ達が爆破をしてくれたおかげで、地下道への入り口は瓦礫で塞がれてしまった。
これ以上の追跡は無理だろう。
ケリーは、自分が乗ってきた大型バイクを目指す。
見上げると夜空を彩る星たちが爛爛と輝いていた。
俺は星が嫌いだ。
フィクサーとしての仕事は、その性質上夜に活動することが多い。
その明りは仕事の邪魔になることもあるし、何より人が任務をおこなっている中で吞気に光るそれは見ていて癪に障る。
星を死んだ者の魂として見るものもいるそうだが、俺はその考えを受け入れられない。
今まで殺してきた奴が、俺を空から常に見ているようだからだ。
バイクに何とか跨ると、主の屋敷へと顔を向ける。
これからのことを考えると荷が重い。
木に衝突して主を失った車を横目に、ケリーは愛車を走らせた。
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「ふむ。つまり君は標的にまんまと逃げられ、おめおめとここに帰ってきた訳だ。
挙句の果てに『始祖花』を盗まれてね。」
書斎の奥にて椅子に座るスペンサー卿は、俺の報告を聞いて鋭く睨んできた。
俺は部屋の真ん中で両膝をついて、首を垂れる体制を取らされている。
後ろでは、執事長が腰に手を回して2人の様子を伺っている。
あのじいさんは一見無防備だが、俺が少しでも反抗する態度を取れば隠し持った銃で躊躇なく撃ってくるだろう。
スペンサー卿はため息をつく。
「爆発音にざわめく貴族達を落ち着かせるのにも骨が折れたよ。
彼らの信頼を取り戻すのにもまた時間をかけねばならないだろう。
がっかりだよ。君の今までの働きは見事なものだった。
素晴らしいと感嘆に打ち震えるほどにね。その評価を君は地の底まで落としたんだ。
覚悟は出来ているかね?」
俺は黙っているしかなかった。
スペンサー卿は立ち上がり、目の前の机を回り込んで私のすぐそばに立つ。
彼から伸ばされた手は私の肩に置かれた。
顔を上げると、スペンサー卿は笑っていた。
「しかし、今までの功績を考えると君の能力をここで無くしてしまうのは実に惜しいことだ。
それで君に最後の依頼をしたい。
すぐにでも君の妻と子どもを作ってもらおう。」
スペンサー卿は笑ったまま語りかける。
「やはりフィクサーとして求められる能力を考えると、男がいいな。
10歳になるまでは、その子に何不自由ない暮らしをさせてあげよう。
これは私の温情だよ、ケリー君。
そこからは、私の元で教育をしていこうか。
もし、女の子が産まれた場合は・・・。
そうだな、我が社の研究員にでもなってもらおうか。」
淡々と俺の未来設計図が描かれていく。
当然、そこに口を挟む余地などはない。
執事長が見ているため、握り拳を作ることさえかなわなかった。
「その任務を終えたら君は用済みだ。
君の妻共々、洋館の地下研究室に収容しよう。
なに、君と妻の会話の機会は少しは与えよう。
君は愛妻家のようだからね。
食事もしっかりとってもらうつもりだし、心配はいらないよ。
パトリック執事長。」
スペンサー卿が執事長に声を掛けると、俺の首筋に痛みが走る。
どうやら何か注射を打たれたらしい。
薄れゆく意識の中、俺は仮初の付き合いをしていた時を思い出していた。
ああ・・・、少しだけお前らと飲んでいた時が懐かしいよ・・・。
ジョージ・・・、ジョニー・・・。
その後、俺は振り返ることでしか心が安らげないような絶望の道を進んだ。
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それはずっと先の未来の話
ケリーの妻は収容された研究室で『始祖ウイルス』を過剰に投与された結果、
死にたくても死にきれないような肉体を得ることになる。
ウィリアム・バーキンは彼女の状態に目をつけて分析し、のちにラクーンシティを恐怖に陥れる『Gウイルス』の発見と開発に成功する。
ケリーは地下研究室の大きな培養液の入ったカプセルに長い眠りについていた。
見上げる研究員は彼をこう呼ぶ。
”タイラント”と――――。
オリジナルキャラのケリー・ファブロンについての話をほんの少しだけします。
彼は『バイオハザード レジスタンス』に登場するダニエル・ファブロンの父親という設定です。
親子ともスペンサー卿に仕えてしまうわけですね。
普段の彼は、感情の起伏がほぼない男で仕事もそつなくこなすのですが、書斎でジョージと会話をした後はその辺剝き出しになっていますね。
そのことがジェシカ・トレヴァーの怒りを買ってしまい、失態に繋がってしまうわけですが。
それほど、ジョージやジョニーと過ごした日々は彼にとっても思い出深いものだったということです。
ちなみにですが、パトリック執事長は『バイオハザード5』で名前だけ登場します。
執事長ではなくただの執事ですが、スペンサー卿に仕えていたのは変わりません。
そのため、オリジナルキャラではありません。
ご存知でしたら野暮な説明、申し訳ありません。
以上、キャラ紹介でした。