今世はベネリットグループの御曹司で、決闘委員会の筆頭で、ホルダーだった。……は? タヌキに気をつけろ……?   作:平積みされたディランザ

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第2話 呪われた未来

『ぐえキャン▽』という単語がある。

『ボブ』という名前がある。

一見、両方とも俺とは縁のないものだ。

時代の変化と共に、キャンプという文化はすっかり廃れてそれこそ地球のコミックくらいでしか見ないものになったし、ボブに至っては誰だよお前って感じだし。

 

しかし……まあ、このままのルートを直行すると、俺——というよりも、『グエル・ジェターク』の未来は、その二つととても縁深いものとなってしまう。

そんなこと思わないだろ、普通。仮にもベネリットグループ御三家の御曹司が寮追放されてキャンプ始めて、挙句の果てに『ジェターク』って名前を捨ててまでボブとして生きていくことになるなんて。ついでにボブになったらなったで前途多難じゃ済まなそうな目に合いそうだし。

『グエル・ジェターク』の強靭な精神力を持ってすればどうにかなるのかも知れないが……残念ながら、俺にはそこまでの呪いを背負って生きていける自信がない。

一度死んだんだから第二の人生でくらい好き勝手やろうって気にもならないし。

 

そりゃあそうだ。むしろ、前世が無念の死って具合だったからこそ、今世はせめて幸せにしたいってのが人の常。

前世の記憶が残っていなかったとはいえ、そんな意思だけは残っていたのか、今日までずっと安定した人生を送るにはどうすればよいのか考えてきた。

では、どうすればいいのかって簡単だ。

幸いなことに今世はベネリットグループ御三家の御曹司。多少の息苦しさくらいは我慢して、親と周囲の信用さえ勝ち取れば、将来はかなりの地位が約束されたも同然。性格はともかくとして……親ガチャは比較的当たりだったと言えよう。そして実際、日々研鑽を積み、学園最強の座であるホルダーにまで到達し、トロフィーとしてベネリットグループ総裁の娘まで手に入れた。もう完璧、ここまでは順風満帆だったと言えよう。……そう、ここまでは。

 

——バチンッ!

 

「ジェターク家の人間がジェターク社のモビルスーツを使って負けただと? お前は会社の信用を潰す気かッ!!」

「申し訳ありません、お父様」

 

 

ぶたれた頬はジンジンと痛み、思考を無理矢理現実へと引き戻してくる。

目の前には鬼の如き形相のお父様——こと、『ヴィム・ジェターク』。お父様なんて柄じゃないし、俺もあっちも気品とは程遠いけど敬称、大事。ずっと前に覚えた。

頭を下げること数十秒、それでようやく腹の煮えくりっぷりが収まってきたのか軽くフン、と鼻を鳴らすと、

 

「今回の決闘は俺の方で無効にしてやる……。これ以上恥をかかせるなッ!!」

 

最後に俺に怒鳴りつけ、来客の対応へと戻った。

そんな彼にもう一度お辞儀をし、背を向けながら、再び思索を巡らせる。

この間戦った女——『スレッタ・マーキュリー』。俺の将来に暗雲が垂れ込み始めたのは、こいつが原因だ。

 

……というよりも、ホルダー盗られて親父に怒鳴られるくらいじゃ済まないレベルのもっとヒートアップしていく人生をこのままだと俺は堪能することになってしまう。何故なら……グエルがそうだったからだ。

ホルダー盗られるわ、もう一回決闘で負けるわ、惚れた代償に他のやつにも負け、スタートするぐえキャン▽、その後も色々と不便な目に遭い、誕生するボブ……。視聴者目線から見ても本当に散々だと思う。

 

——おおボブ、どうしてあなたはボブなの?

——違う、俺はボブじゃないっ! ボブだけは……ボブだけは嫌だ……嫌なんだッ!

 

少々のパニックからかロミジュリった頭は隅に置き、思索を巡らせること幾星霜。

 

何が悲しくて今の立場を失ってまでボブにならなきゃいけないんだ……といったことはさておき。彼女に一敗したのは間違いなく俺に責がある。

決闘の時は前世の記憶がなかったとはいえ、見くびっていたことに違いがないわけだ。こんな危機管理能力じゃ、今世もすぐにポックリ逝ってしまう。

帰ったらジムの壁に貼ってある『反省しなきゃいけないことリスト』に追加しなければ。

しかして、まず一敗。確実に信用は落ちた。

落ちた信用は、勝利によって取り戻す。決闘だ、スレッタ・マーキュリー! といけば、どんなに良かったか……。

 

——『GUND-ARM(ガンダム)

 

端的に言ってしまえば、自身の命を代償に捧げればあたおかな機動性というリターンを与えてくれる、呪われた機体。

まず、前回戦ってわかったことだが、ディランザどころか、対策してなけりゃ、今の技術で造れる中で最高峰のモビルスーツを作ろうが、勝利するのは難しいだろう。それこそ、どれだけフィールドを自分に有利なようにしようが、最新鋭のAIを搭載しようが、である。

再戦なんざ論外。大人しく逃げておいた方がいい——というのが、俺の出した結論、だったわけだが……。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「いかがです? “ダリルバルデ“は。まだベータ版ですが、第五世代の意思拡張AIは中々のものでしょう?」

 

上を見上げれば、真新しい塗装と、まだ光沢のあるカメラアイ。ブレードアンテナと、巨大な肩部装甲、そして真紅の塗装を施された最新鋭のモビルスーツとやら——“ダリルバルデ”を見上げながら、思わず俺はため息を吐いた。

 

「どうしましたか? 御曹司」

「……いや、なんでもない。悪くない機体だ」

 

『もう一度決闘しろ、グエル』

 

昨日、寝る直前に送られてきたメッセージ。

原作通りこの男は——今世の父親は、全く懲りていなかった。

 

「このスタッフもダリルバルデも、お前を勝たせるために俺が集めたものだ。わかってるな?」

「……はい。当然です」

 

先ほど操縦して再認識したが、原作通りAIは相当に介入してくるようだ。

一度の敗北で失った信用は相当重いものだったらしい。大半をこいつに任せておけ、ということなのだろう。

 

……しかし、原作での流れを覚えているからこそ、気持ちは萎える。

どれだけの後ろ盾があろうが、ダリルバルデはあの女の機体には勝てなかった。

あちらでは、サポートどころかAIは勝手に動く代物だったし、それを止めて原作グエルは自分で操縦した訳だが……恐らく、どちらにせよ負けていただろう。

かと言って、俺が操縦して勝てるかといえば、それもまたNOだ。

ここまでは原作通り。そして、それはきっとこの先も変わりない。

 

であれば、大人しくAIに任せ、自分へのダメージを減らす。

どこまで親父さんがAIの仕様を知っていて、どこまで効くかはわからないが……AI共々通信を切ってヤツと戦うよりは、そっちの方がまだマシだろう。

 

親は説得できないし、相手は強い。

 

前世では最大限の抵抗を見せたグエルの姿に興奮したものだが、我が身に降りかかれば……保身にも走りたくなる。

 

——体が同じだとしても……俺は『グエル・ジェターク』ではないのだ。

 

「……まあ、精々頼む。ダリルバルデ」

 

全てを任せる機体へ、最低限の敬意を込めつつそう呟いて。

 

今後を思い出し、俺はもう一度ため息を吐いた。




どんな魂をぶち込まれてもグエグエが闘争から逃れる術はない。私がそう判断した。(ダブスタ並感)
ボブへの期待が止まらないですね。ホントに。
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