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雨が降る中、オレは傘も使わずにただ立ち尽くしていた。その原因は今から数時間前に遡ることになる。
学校から家に帰ると1つの置き手紙とお金が置いてあることに気がついた。その手紙にはこう記されていた。
『そのお金で生活しときなさい』
ただ、そのように書いてあったのだ。その簡素な文面を見てオレは察してしまった。
"オレは捨てられたのだ"と。
オレの父親は物心がついた頃にはもう亡くなっていて、母親の手1つで育てられてきた。オレは1人っ子だから2人暮らしで生活してきたのだ。オレは小さい頃からヤンチャをしていて手が掛かる子供だったせいか母親をイライラさせてしまっていた。
4年前から母親が帰ってくるのが遅くなったことが増えた。どうやら好きな人ができたらしく嫌いなオレを放っておいて会いにいっていたようだ。きっと日頃のストレスを和らげる為だろう。
ご飯は置いてあるお金を使って食べに行ったり、自炊をしたり。時には食べないこともあった。オレ自身、嫌われていることはわかってたけど母親のことは嫌いじゃなかった。だからこそ自炊した時は2人分作ったりしてたのだが、それも呆気なく捨てられる日々。段々と心が崩れていったのだ。
オレはその頃からあらゆる場面で嘘をつくようになった。三者面談の時、授業参観の時、宿題を忘れてしまった時など。嘘をついたら少なからず罪悪感を感じる筈なのに、オレはとっくに心が壊れているみたいで罪悪感は微塵も感じなくなっていた。
「お前はすぐ嘘を付くよなー」「嘘つくことに罪悪感を感じないの?」「そんなんだから友達は離れていくんだ」「嘘ばっか吐くやつなんて嫌いだよ」
そんな言葉を言われてもオレは何にも感じなかった。既に壊れてしまったオレには何を言われても響かないんだと君に会うまではそう思っていた。
「そのままだと風邪、引いちゃいますよ?」
長い緑髪に真っ白な羽。ここら辺では見かけないセーラー服。そんな天使のような彼女はオレを心配そうに話しかけてきたんだ。
「…いいんだ。オレはもう、とっくに壊れてしまっているから」
「…知ってます。私はずっと、貴方を見てきましたから。小さい頃からずっと」
「…ずっとだって?」
「はい。私はそんな貴方を救うために、ここにきたんです」
オレを救うためにきたという彼女は真剣な眼差しで見つめてくる。どうやら嘘ではないみたいだ。そんな彼女は一呼吸開けて再び口を開く。
「私に貴方を、救わせてはくれませんか?」
「…なんで、助けようとしてくれるんだ?」
初対面な筈なのにどうして目の前の彼女はオレを助けようとしてくれるのか疑問だった。こんなクズみたいなオレを何故…。質問を質問で返したオレに彼女は微笑みながらこう答えたんだ。
「私が貴方を放って置いておけないと思っているからですよ。ずっと大変な思いをして、心も壊れてしまって。貴方がつく嘘の中には優しさがあります。確かに嘘をついて傷つけてしまった相手もいるでしょう。ですが、その嘘に救われた人がいることも知っています」
彼女のその言葉を聞いて、オレの目から雫が零れ落ちる。壊れてしまった心を癒し直すように。彼女はオレを抱きしめてくれた。
「私は貴方の味方です。ずっと、味方であり続けます。だから私を信じてくれませんか?必ず、私は貴方を救ってみせます。絶対に救って見せますから…」
これが彼女、ガブリエルとの出会いだ。